【HR/HM談義無法地帯 Vol.2】

THUNDERHEAD復活! 初期作リイシュー作品と動画で振り返る爆走バンドの血と涙のR&Rロード

文:BURRN! ONLINE編集部

THUNDERHEADの新曲が今年3月に発表されていたことにお気づきだろうか? 1990年代の日本でコアな人気を誇ったが、意外とあっさり姿を消してしまった、あの米独混合のドイツ産豪快R&Rメタル・バンドが “Rev ‘N' Ride It” という曲を引っ提げて帰ってきたのだ。新曲が発表されるのは実に31年ぶりだ…いや、正確には27年ぶりだがその辺りは後述。
 
このバンドの名前を聞くとまず最初に唯一のアメリカ人メンバー:テッド・ブレット〈vo, g〉の顔が浮かぶが、ここにはいない。しかしヘニー・ウォルター〈g〉、オーレ・ヘンペルマン〈b〉、アレックス・スコッティ〈ds〉というオリジナル・メンバー3/4がいるから紛れもなくTHUNDERHEAD。ヴォーカルを務めているのはスティーヴン・スクリームズというテッド・ブレットに引けを取らず気合いの入った名前の人物だが、彼はドイツ在住のアイルランド人で、THE HOOCHIGANSというパブ・ロック・バンドでも活動している。同国のベテラン・バンド、MAD MAXに2023年から加入して「BEST OF 40 YEARS」で初期曲をリレコーディングしたこともある(すでに脱退)。

Stormchild

再結成の予兆はあった。一昨年末から昨年にかけて初期3作品がリイシューされていたのだ。NITROGODSで活動するヘニー、そのNITROGODS他で長らくエンジニアなどの裏方仕事に専念していたアレックス、現RUNNING WILDのオーレが集まってジャムをしたことをきっかけに、昔のカタログを出し直そうという話になったらしい。

そうしてリマスターの上でリイシューされたのが1989年のデビュー作「BEHIND THE EIGHT-BALL」。MOTÖRHEADを引き合いに出されるほどの暴走メタルR&Rで、暑苦しい、いや熱過ぎるヴォーカルが吠え、メロディアスなツイン・ギターが舞い、突っ走りまくるだけでなく異様に染みる男のバラードが涙を誘う…という、日本のリスナーが好きなもの全部乗せのような音楽性がいきなり詰め込まれた作品だった。1990年代はTHE ALMIGHTYのようにメタリックなR&Rが日本でウケる現象が何度も起こったが、THUNDERHEADには当時一部リスナーにとっては絶大なブランド化していたジャーマン・メタルらしい質実剛健さがあり、MONTROSEやリック・デリンジャーの曲を取り上げたりするヴィンテージ感覚と現代っぽさを併せ持っていたのも強みだった。

BEHIND THE EIGHT-BALL
1. Behind The Eight-Ball
2. Ready To Roll
3. Take It To The Highway
4. (You Don't Keep Me) Satisfied
5. The Fire's Burning
6. Let Go
7. Open All Night
8. Life In The City
9. Just Another Lover
10. Straight Shooter
11. Take Me To The Limit
12. Beyond The Universe
13. Alcohol (Live) 
Behind the Eight-Ball (2024 Remaster)

2ndの「BUSTED AT THE BORDER」には一流プロデューサーのトニー・プラットを迎えたが、プロダクションに関してメンバーと衝突したこともあり、サウンドの出来にはメンバーもかなり不満を抱いていたそう。実際ちょっと迫力に欠けるサウンドで、ファンの多くが同じように思っていただろうが、今回は “Refurbished”(改装済み)ヴァージョンとしてバンドの生っぽい部分を活かしたミックスに改良されている。

BUSTED AT THE BORDER
1. Busted At The Border
2. 42nd Street
3. Good Till The Last Drop
4. The Darker Side Of Yesterday
5. No Security
6. Hard Kind Of Woman
7. Terrified
8. 25 Or 6 To 4
9. Face To Lace
10. Wicked Love
11. Caught Between the Lies
42nd Street (Refurbished 2025)

3rdの「CRIME PAYS」も「BUSTED AT THE BORDER」と同様に “Refurbished”。リミックスで音の分離がやけに良くなった。ちなみにこのアルバム発表の翌年に初来日している。

CRIME PAYS
1. City Cornered Man
2. Make It Hard
3. N.Y. You Let Me Down
4. Crime Pays
5. Let the Dogs Loose
6. Forgive and Forget You
7. Torture Ride
8. Live with It
9. What Mama Don't Know (Refurbished 2025)
10. Life Is Only a Goodbye 
11.Ain't No Trust
12. If You Want Me to Love You
13. Space Station #5
Live with It (Refurbished 2025)
現時点でデジタル・リイシューされているのは「CRIME PAYS」までだが、多分日本のメタル・ファンが一番思い入れのあるのは次の1993年作「KILLING WITH STYLE」。今40〜50代のHR/HMリスナーだったら、ビクターから発売されたオムニバス「PURE METAL SAMPLER VOL.2」で本作収録の “Young And Useless” を聴いて脳天をぶち抜かれ、ラストに入ってる “Life Is Only A Goodbye”(「CRIME PAYS」収録曲)に涙してTHUNDERHEADにハマってしまったという人も多いことでしょう。
Thunderhead - Young and Useless (remastered)
翌年にRAGEとのカップリングで2度目の来日。名前の時点でカッコいい初のライヴ・アルバム「CLASSIC KILLERS LIVE!」も好評。動画はライヴの定番だったMOTÖRHEADのカヴァー “Ace Of Spades”。音源はハノーファーで録音されたものだが、映像に関してはさすが親日バンド、しっかり日本で撮られたものが使われている。
Thunderhead - Ace of Spades (Official Video)
そんな感じで日本での人気も右肩上がりかと思いきや、次の「WERE YOU TOLD THE TRUTH ABOUT HELL?」が若干「どうした?」と言いたくなるアルバムだった。ジャケがギュスターヴ・ドレの『神曲』の挿絵という時点でなんかおかしい。毎度のごとく音に気合いが溢れてはいるもののハジけきらない。テッドの私生活の問題などもあって暗く愛想のない作風になったそうで、先行公開されたのがこういうダウナー曲で唖然としたファンも多かったはず。
 
Thunderhead - Snap (Official Video)

最初の3枚だけリイシューされたのはオリジナルのリリース元がドイツの“Intercord” で、「KILLING WITH STYLE」から “G.U.N. Records” に移籍したということも関係しているのだろうか。上記の “Young And Useless” と “Snap” のリマスターはアレックス自身のチャンネルで公開されたもので、「WERE YOU〜」の次に出た「THE BALLADS ’88-‘95」で披露したTHE WHOのカヴァーなんかも上がっているので、そのうちこの辺も再発されると期待していいのかも。
 
さて1996年、日本で未発表曲入りのベスト盤が出たと思ったら、バンドはいつの間にかフェイドアウト。どうやら結成当初から主にテッドのアルコール問題もあってバンド内部は常に緊張状態にあったようで、ここに来て遂に糸が切れたということか。その後ヘニーがFAIR WARNINGのサポート・ギタリストになったり、テッドがイギリスで SAXONのオリジナル・メンバーたちと合体してSON OF A BITCHを結成したりといった話題が続き、やっぱりTHUNDERHEADは解散してしまったのかと落胆させられる時代がやってきてしまった。

すると1999年、テッド1人でTHUNDERHEADが突如復活。他のメンバーは、かのクリス・インペリテリに影響を与えた速弾きギタリストであり、後にHOUSE OF LORDSなどにも加入するジミ・ベル〈g〉、現在はDOKKENに在籍するB.J.ザンパ〈ds〉、ジミと共にJOINED FORCESにいたマーク・フランコ〈b〉。全員アメリカ人でレコーディングもアメリカ。完全にドイツ要素が省かれた新生THUNDERHEADは「UGLY SIDE」をリリースする(左は日本盤のみのジャケ)。
Thunderhead - Liar

が、後にヘニーも「あれは偽物。俺がいた時代にボツになったアイデアを使ったB〜C級の曲ばかり」と語っていたぐらいで、ヘニーのメロディアスなギターも無く、パワー・ダウンは否めない内容に。アルバムの頭3曲はなかなか痛快で、THUNDERHEADが帰ってきたと血沸き肉踊らせるものはあったというのに。リリースしてツアーに出てみたものの、ANNIHILATORに盗作で訴えられ、そうこうしているうちに一緒にツアーしたMETAL CHURCHから脱退したデイヴィッド・ウェイン〈vo〉率いるWAYNEにテッド以外のメンバーが全員引き抜かれ、気がついてみればフェイドアウト。その後テッドは音楽業界を引退してイギリスで平穏に暮らしているとのこと。

一方、SINNERとPRIMAL FEAR両方のメンバーとして活躍していたヘニーが、オーレと共にDONNERKOPFというトリオ・バンドを結成する。donnerkopfとはドイツ語で積乱雲、要するにthunderhead。別に「テッドしかいないTHUNDERHEADがアリならこっちはテッドのいないTHUNDERHEADだ!」というわけではなく、あくまでビジネスと無関係な遊びで結成したバンドながら、2005年にはアルバム「KRACHMASCHINE」をリリースしている。哀愁を取っ払ってハードコア・パンクに寄ってはいるが、ヘニーがヴォーカルを執るメタリックなリフ猛攻R&Rは旧THUNDERHEADに匹敵するものだった。ドイツ国内でしか流通しなかったため、ほぼ話題にならなかったが。
Donnerkopf - Kalaschnikow

アルバムが完成した後にドラムのアレックスが合流して、本当にテッド抜きのTHUNDERHEADになってしまったが、そのアレックスも程なくしてヘニーのPRIMAL FEARでの同僚クラウス・スペリングに交替し、そしてバンドはいつの間にかフェイドアウト(こればっかり)。ヘニーは2010年よりNITROGODSで暴走メタルR&Rの道を突き進み続けている。

どうやら2000年代に入ってからヘニーにテッドからの久々の連絡があり、彼もTHUNDERHEADの復活を考えたことはあったものの、「テッドは素晴らしいロッカーなんだが、あのクレイジーな野郎とまた一緒にやることを想像すると…なあ」と躊躇し、その考えは捨てたらしい。と、まあTHUNDERHEADとして動き出すことは無いだろうと思っていたところに、今回の再始動。しかもヘニー/オーレ/アレックスが関わった体制では31年ぶりの新曲発表だ。“Rev ‘N Ride It” でのスティーヴンのヴォーカルはテッドのように圧倒的パワーで捩じ伏せる歌声ではないし、バンド全体の爆走具合でいったらまだ控えめだが、とにかくTHUNDERHEADの新曲が聴けるというだけで奇跡的なんだから贅沢は言うまい。

Rev 'N' Ride It
THUNDERHEAD
“Rev 'N' Ride It”

2026年3月13日リリース

今のところはたまにライヴをやって新曲のプロモーションも派手にはやらず、という牛歩戦術を採っているようだが、ここは日本のファンの力で大いに応援すべきなんじゃないでしょうか!? バンドとアレックスの公式YouTubeでは初来日公演の動画も上げているぐらいだし、彼らも日本からの熱い反応を待ってるはず。

Thunderhead - Ready To Roll (Live) 1992 Tokyo Japan

それにしても、ちょっと前までは公式MVすらロクに上がってなかったというのに、ここに来てデジタル環境でTHUNDERHEADを気軽に楽しめる時代になったとは感無量。いい機会なので、近いうちに弊サイトでもヘニーにインタビューをオファーしてみましょうかね。

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