【HR/HM談義無法地帯】

何故いま!? ウド・ダークシュナイダーの実弟率いるドイツ伝統派メタル・バンドVANIZEのレア動画がYouTubeに出現

文:BURRN! ONLINE編集部

BURRN! ONLINE編集部はYouTubeでHR/HMの新着動画をチェックするのが日課になっているんですが、ある日ブラウザを開いてみるとオススメとして表示されたこんな動画が。

仕事と称してこんな動画ばっか観てるのかと怒られそうですが、VANIZEの名前を聞いてテンション上がった貴方とは美味い酒が飲めそうです。
 
このバンドを知らない方は動画を観て「ACCEPTっぽくない?」と感じたのでは。それもそのはず、ヴォーカリストのピーター・ダークシュナイダーはACCEPTの創始者でありU.D.O.の総帥ウド・ダークシュナイダーの実弟。ACCEPTにそっくりなバンドはドイツから多数現れましたが、このバンドは血統書付きです。歌声はウドばりに破壊的な「ああいう声」で、ルックスはウドにそっくりと言うより、90年代のジョン・ボン・ジョヴィをウドと一緒に物質転送機にかけたといった感じですがそれはさておき、サウンドはソリッドなリフと勇壮メロディで武装した暑苦しく汗臭いヘヴィ・メタル。よく聴けば細かい違いは多々あれど、一聴して「こりゃACCEPTだ」となるのは全人類共通のリアクションでしょう。

そっくり以前に今時こんなバンドが…

(左)1994年発売、ACCEPTの「DEATH ROW」。ラフな音楽性で物議を醸した。
(右)1995年発売、VANIZEのデビュー作「TWINS?」。

1995年の1stアルバム「TWINS?」は日本盤リリースは実現していないものの、輸入盤市場に出回った頃はそこそこ話題になりました。

その時期というのが、ACCEPTが2度目の解散に至る引鉄を引いた1994年の問題作「DEATH ROW」発表後。質実剛健メタルの象徴だったはずのACCEPTがちょっと路線変更しちゃって厳しいな、とリスナー間の不安が高まる中、あるべき姿のACCEPTを再現したかのようなVANIZEこそ正統派メタル・ファンの心の隙間を埋めることの出来る新人だ!なんてシリアスに期待した方が何人いたかは知りませんが、ACCEPTっぽいことを差し引いても90年代においてこんな正統派メタルは貴重も貴重。

日本で注目されていた所謂 “メロスピ”(まだこの時期にその呼称は定着していたかっただろうけど)とも一味違った骨太感があり、今時こんな色気ゼロ(褒め言葉)の正統派メタルをやる奴が出てきてくれたという信頼を持てるだけのクオリティを備えたバンドでした。ちなみに当時を知る濃いメタル・ファンの間では謎に高い知名度を誇り、VANIZEを聴いたことがない人の口から「なんかウドの弟がやってるバンドがあったよな! 声がウドそっくりなやつ!」なんて発言が出てくることも極々タマにあります。

VANIZE の結成は1991年で、1995年のデビュー以降に出したアルバムは計4作。もう20年も音源は出していないし、Encyclopaedia Metallumで検索しても活動状況が「Unknown」になっている始末。しかし、ぶっちゃけ忘れかけていたところにYouTubeチャンネルが誕生。記事冒頭のアーカイヴ動画が公開されたんだから驚くしかない。しかもチャンネル開設されたのは2025年11月。つい最近じゃないですか。
 
最初にアップしたのがアルバム・デビュー前の1991年のライヴ動画というレアもの。後にシングル・ギター編成でデビューしますが、結成当初はツイン・ギターの5人組だったことがわかります。こんなもんを令和の今になって観られるとは誰も思わなかったでしょう。しかも画質は相当に粗いのに、謎に音質がいい。何かの放送用か!?

続いては1993年の動画。デモ・テープが『Metal Hammer』誌で絶賛された(『BURRN!』にも載った)そうですが、多分その時代の映像でしょう。この時のドラマーは後にSILENT FORCEやRAGEで有名人になるアンドレ・ヒルジャーズです(「TWINS?」リリース後に脱退)。この “We’re Back”(1stでは “They’re Back” と改題)にはHELLOWEEN以降のメロディック・メタル的な味わいも感じられます。ACCEPTやU.D.O.そっくりだというのはVANIZEにとってプラスになるトピックでしたが、単なるモノマネだとネタ扱いされかねないのはピーター自身も最初から分かっていたこと。だからこそ似てはいても違ったものをやるのだという彼の意地がこんなところに透けて見えるような気がします。

「TWINS?」がマニアの間で小爆発したとは言え、わかっちゃいたものの時代の逆風を跳ね返すほどのブレイクもなく、程なくしてレーベルの倒産やピーター以外のメンバー全員脱退によってVANIZEは活動停止に追い込まれていたようです。1996年、RAGEを脱退した後のマンニ・シュミット〈g〉、ジャーマン・メタル界隈でおなじみイェンス・ベッカー〈b〉&ステファン・シュワルツマン〈ds〉、そしてピーターという4人で新バンドが結成されたというニュース記事が『BURRN!』に載っていましたが、数ヶ月後に何も起こらないまま消滅したことが記されていました。誰も覚えてないだろうし、多分記録しておかないと闇に消える情報だと思うので書いておきます。

そして歴史は繰り返す

左が2nd「BOOTLICKER」、右が3rd「HIGH PROOF」。
どちらもステファン・カウフマンのプロデュース。

しかしVANIZEはいつの間にか復活。4月後半時点でアップされている最新の動画は1997年のもので、同年に再結成アルバムをリリースしたU.D.O.とAXXISのツアーに前座で帯同した時のライヴです。1999年、VANIZEはやはりいつの間にか出ていた2nd「BOOTLICKER」でシーンに帰還しています。当時U.D.O.のギタリストを務めていたステファン・カウフマンのプロデュースで、ウドが設立した “Breaker Records” からのリリースという、頼もしい身内の全面バックアップを得ての復活。この年には「THE GATHERING」を出したTESTAMENTのサポート・アクトに抜擢されています。

2ndには “Call Of The Hunter” という曲が入っていますが、タイトルに見覚えがあるスラッシャーは結構いるでしょう。はい、OUTRAGEのカヴァーです。公式動画がないので原曲をどうぞ。

阿部洋介氏がこのカヴァーについて語ったところによると、「そうそう、なんかカヴァーされてるよって人に言われて知った。多分ステファンがやろうって言ったんでしょ」。この推測は正解で、OUTRAGEの「THE FINAL DAY」のプロデュースと、初期3部作のリミックスを手掛けたステファン・カウフマンの提案でカヴァーしたそうです。本人の弁によれば「俺が決めた。OUTRAGEのアルバムをリミックスした時、これはいい曲だと思ったんだが、元々のサウンドに納得いかなかったんだよ。それで俺がVANIZEにレコーディングしてもらって “リプロデュース” した」とのこと。

2000年には引き続きカウフマンのプロデュースで3rd「HIGH PROOF」をリリース。その後はソロ・プロジェクトのEMPIREでトニー・マーティンやニール・マーレイといった有名人を従えた豪華なアルバムを発表することになるロルフ・マンクスをギタリストに迎えています。欧州メタル・シーンでメロディック・メタルの再評価が急激に進んでいた時代、VANIZEも雌伏の時を乗り越えて躍進するのだ!と思ったらそうもいかないのがこのバンドのツイてないところ。またピーター以外のメンバーが全員脱退し、揃って新バンドのRAZORBACKを結成してしまうのでした(一時期はドイツのMANOWARと呼ばれたMAJESTYと掛け持ち)。

混迷の現代だからこそのVANIZE待望論

2006年にリリースした4作目「RAW」。

この数年後、デビュー前のツイン・ギターが復帰して5人組に戻ったという唐突なアナウンスがあり、2006年に「RAW」をロシアの “Mystic Empire” からひっそりとリリースすることに。これとほぼ同時に再発されたのがDANTONの1988年のアルバム「WAY OF DESTINY」。ACCEPTフォロワーの歴史を研究する人にとっては重要事項なので覚えておいてください(そんな人いるのかどうかわかりませんが)。

これこそピーターが初めてプロのレコーディングを経験したアルバムであり、ACCEPTを思い切り青臭くしたようなドイツ産マイナー・メタルの逸品。実はピーターはスタッフとしてU.D.O.に関わり続けているんですが、同バンドがロシア・ツアーを行なった際、“Mystic Empire” のオーナーが空港でピーターを見つけて「DANTONのファンなんだよ! アルバム再発していいよね?」と聞いたところ、もう当時のレーベルも存在しないし出しちゃってOK!と凄まじくアバウトな返事をもらえたのでCD化に踏み切ったという経緯があるそう。
 
これがその「WAY OF DESTINY」収録曲の1つ。“Stalingrad” と言ってもマーク・トーニロ加入後の現行ACCEPTとは当然一切関係ありません。

そして「RAW」発表後のVANIZEがどうなったかと言えば、やっぱり停滞。結成時に近いラインナップに戻ってデモを作っていたなんて情報もありましたが、今に至るまで音沙汰なし。2021年にウドから「今もVANIZEは生きてるよ」と証言が得られたこともありましたが、あれからさらに5年が経ってナンも無しです。それが今になっていきなりYouTubeチャンネルの開設。もしかしたら何度目かの復活が控えてるんでしょうか。

ピーターは元々ロック・スターとして華々しく目立とうとする野望はなく、証明やPAのスタッフとしてライヴハウスで働いていた頃、たまたま仲の良いバンドだったDANTONからシンガーが抜けたので代わりに歌っていたら正式メンバーになってしまったそう。そんな経歴の持ち主なので、活動がマイペースというより幻に近いぐらいレアなのはピーターの気質に依るものなのかも。

長々と書いてきましたが、要するに言いたいことは、今回のYouTube進出を機に本当にVANIZE復活したら応援しますよ!ということです。正直言えば今のご時世、ACCEPTやU.D.O.のような華麗なる復活劇は望むべくもないでしょう。しかし、こういう「このバンドの音楽はヘヴィ・メタルの中では何ていうサブ・ジャンルになるの?」と問われれば「そりゃヘヴィ・メタルでしょうが」と応えるしかないほどにメタルの中のメタルを貫くバンドこそ、ジャンルが細分化し過ぎた現代に存在してほしい、なんて思わざるを得ないんですよね。昔気質なメタル・ファンとしては。

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