藤木昌生の密かな楽しみ Vol.43 ~ 気まぐれプレイリスト 23

もう2024年も終わりですよ。歳を取ると、月日の過ぎるのが加速度的に速くなってくるので、本当に嫌になります。今年も、数はそれほど多くなかったですが、このコラムに目を通していただいて、ありがとうございました。今年はこれで終わりになります。皆さん、良いお年を!
SIDE A
1. GRAND MAGUS ”I, The Jury”→ Spotifyで聴く
元SPIRITUAL BEGGARSのJBことヤンネ・クリストファソン<vo,g>率いる正統派メタル・バンド。SPIRITUAL BEGGARS時代の作品も悪くなかったし、DIOの前座として来日した時にライヴも観たけど、この自分のバンドを結成してからが彼の本領発揮じゃないかと。疾走感も派手な技巧もないし、シンフォニックでもなければ凝った展開もない、何の変哲もないメタルなのに、これだけカッコいい音楽をやってるバンドは稀有じゃないでしょうか。JBのセンスあふれる遅弾きギターを聴いてると顔面が放送禁止になってしまいます。(笑) この曲ってライヴのオープニングに最適じゃないすか?
2. DYNAZTY ”Starlight” → Spotifyで聴く
このバンドは、デビュー当初はスリーズ/R&R系のイメージもあったけど、アルバムを重ねるごとに硬派のメロディック・メタルに移行していって、この曲が入った4th「RENATUS」で自分達のスタイルを確立したような気がしますね。僕は「RENATUS」を2014年のベスト・アルバムに選んだと思うけど、改めて聴くとAMARANTHEからの影響も感じられて、その後にニルス・モリーン<vo>がAMARANTHEに加入したのも納得ですね。DYNAZTYの初来日公演を観た時は、なんだかバンドの雰囲気が自分の期待してたのと違ったので、結構冷めた感覚で眺めてた記憶がありますが…。(苦笑)
3. PRISM ”Crime Wave” → Spotifyで聴く
このカナダのバンドは、気まぐれプレイリストの1回目でも取り上げましたね。まだ売れる前のブルース・フェアバーンが70年代後半にプロデュースとマネージメントを手掛けてたバンドです。曲としては、まあそれほど大したことはないんだけど、とにかくカッコいいのが2分11秒あたりからのギター・ソロ・パート。ベースの音の動きがクールだし、背後でティロリロいってるキーボードも秀逸。この間奏を聴くためだけに存在する曲…なんてのは言い過ぎですが。(笑) 80年代に和田 誠さんがラジオで、この曲を入場テーマ曲に使ってたプロレスラーがいた、と言ってたんですが、誰なんでしょう? 検索しても見つからないんですが…。
4. 38 SPECIAL ”If I'd Been The One” → Spotifyで聴く
このバンドも以前取り上げたことがありました。サザン・ロックの名門とも言うべきヴァン・ザント兄弟の1人、ドニー・ヴァン・ザント<vo,g>を擁するバンド。元々は鷹揚なアメリカン/サザン・ロックをやっていたのが、BOSTONやJOURNEYの成功に触発されて産業ロックの方向に舵を切った(当時はあらゆるタイプのバンド/アーティストがそうだったと思うけど)のが我々メロハー愛好家にはありがたかった。1983年の「TOUR DE FORCE」からシングル・カットされてヒットしたこの曲は、とにかく馬が走りまくるMVが脳裏に焼き付いてます。
5. あべ静江 ”みずいろの手紙” Spotifyで聴く
すみません、また昭和歌謡です。この曲がリリースされたのは1973年で、まだ歌謡曲よりもアニソン主体の人生を送っていた小学生の僕は、この曲を耳にはしていたけど全然ピンと来てなかった。このメロディの素晴らしさに気づいたのは、30歳を過ぎてからじゃなかったかな。懐かしの歌謡曲集みたいなのを聴いてた時にね。たぶん、メタラーの皆さんは曲が始まってほどなく出てくるセリフの場面でズッコケるかもしれないけど、その後の歌メロの美しさは絶品だと思います。オーケストラ・アレンジしても映えそうな美旋律。そして、まさに「涙色」とも言うべきクリスタル・クリアな声質。昔の映像を観ると、あべ静江さんはその他アイドル系とは一線を画す真のぺっぴんさんだったんですね~。

SIDE B

1. IMPELLITTERI ”Secret Lover” → Spotifyで聴く
最近ニュー・アルバムを出したIMPELLITTERI。BURRN! ONLINEでアップしているニュース記事への反応から見ても「みんなIMPELLITTERIが好きだよね~」と思うんですよ。(笑) ずっと興味を失わずにフォローしてくれて、新作が出るとなればエキサイトしてくれる。アーティストとしてこんなに嬉しいことはないよね。ただ、僕としてはやっぱりデビュー作「STAND IN LINE」に匹敵するインパクトのある作品はないかなと。もちろん、グラハム・ボネットの存在も大きいんだけど。この曲もその「STAND IN LINE」の中で特に光っていた曲。こういう緩急のギター・ソロで心をえぐってくれるクリス・インペリテリというのも久しく聴いてない気がするんだけど…。
2.FIGHTER V ”Can't Stop The Rock” → Spotifyで聴く
気まぐれプレイリストには珍しい2020年デビューの新しいバンド。スイスのFIGHTER V(ファイター・ファイヴ)です。この曲の、初期BON JOVI meets STAN BUSH & BARRAGEといった感じのキャッチーな哀愁ハード・ロックは最高じゃないすか? シンガーはちょっとうわずり気味で、もうちょい歌唱テクニックがあった方が良かったかもしれないけど、ロックに対する情熱はビンビン伝わてくる。そのシンガーは喉の病気で離脱を余儀なくされて、他のメンバーも入れ替わって、新生FIGHTER Vのニュー・アルバムが今年リリースされたんですが、今後も頑張ってほしいですね。
3. DIRE STRAITS ”Sultans Of Swing” → Spotifyで聴く
マーク・ノップラー<vo,g>率いるブリティッシュ・バンドの1978年のデビュー作「DIRE STRAITS」からの1stシングル。当時はメタルとかロックとかダンス(ディスコ)とかヴォーカルものとかの区別はなく、すべてが「洋楽/ポップス」と呼ばれて、ラジオでもKISSやEAGLESやABBAが同じジャンルとして紹介されてたので、そういう番組を聴いてた時に耳に入ってきたのがこの曲。ちゃんと歌唱してないボブ・ディラン的な(?)ヴォーカルは好みじゃなかったけど、ギターが奏でる哀愁の旋律にすっかり魅了されてしまった。歌の合間に入ってくるオブリがいちいち泣かせるじゃないの。僕は早い時期にこういう素晴らしい曲に出会っていたから、その後、ロジャー・ウォーターズやフィッシュやウリ・ジョン・ロートなどのヴォーカルも受け入れられたのかもね。(笑)
4. Li-sa-X Band ”Just Be My Treasure” → Spotifyで聴く
日本が誇る超絶技巧ギタリストのLi-sa-X率いるバンドの2020年のダブルA面シングルの曲。作曲はバンドのもう1人のギタリストの葉月<g>。そう、NEMOPHILAでも活躍してる彼女です。葉月に初めて会ったのは2016年、彼女がDisqualiaに加入した頃で、素朴でちょっと天然系の(?)お嬢さんという印象だったけど、まさかこんな哀メロ炸裂の素晴らしい曲を作ってくれるとは…。島根が生んだ2大ロック・ギタリストは山本恭司と葉月でしょう。そして、秀逸なのが里奈のヴォーカル。日本の女性ロック・シンガーではなかなかいないタイプの、絶品のフィーリング/節回しを持った人で、それがこの曲をよりスペシャルなものにしてると思います。葉月はこんな良い曲が書けるんだから、葉月-X Bandでもやればいいのに。あ、別にXは要らんか。
5. SABBRABELLS ”ルルドの泉” → Spotifyで聴く
高校時代に同級生の岡野君が「いいバンド見つけたぞ、埼玉のBLACK SABBATHと言われてるんだけど」と教えてくれたのがSABBRABELLSでした。彼がカセットにダビングしてくれた自主1stアルバムを聴いた時は、最初からピンと来たわけじゃなかったけど、何度か聴くうちにクセになってね。なんだかんだで曲がキャッチーだしメロも良いんですよ。でも、このバンドを凄い!と感じたのは、『ALL NIGHT METAL PARTY '84 TO '85』というライヴ・ビデオ作品でこの曲に触れた時。高橋喜一<vo>の魂の歌唱に心が震えました。元々はオムニバス作品にのみ提供されたレア曲だったらしいんですが、メジャー2nd「ONE NIGHT MAGIC」のCDボーナス曲としてようやく広く聴かれるようになったと。

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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