藤木昌生の密かな楽しみ Vol.34 ~ 気まぐれプレイリスト 18

1年ほど前に解散した日本のシンフォニック・パワー・メタル・バンドCROSS VEINに関しては、以前にも気まぐれプレイリスト13で取り上げたことがありましたが、その元CROSS VEINのMASUMI<g>のYouTubeチャンネルを観てみたら、興味深い動画がたくさんあって、思わず見入ってしまいました。恥ずかしながら、CROSS VEINを聴いていて、MASUMIがこれほど超絶技巧の持ち主だとは気づきませんでした。

で、いろいろな動画がアップされている中で、ALCATRAZZ「LIVE SENTENCE」の”Night Games”のギター・ソロ・カヴァー動画は最高でした。僕にとって、あれがイングヴェイ・マルムスティーンが生み出したベスト・ソロの1つだということもあってね。まあ、あれはライヴ・アルバムを出すにあたって、イングヴェイが後から録り直したソロではあるんですが。(録り直す前のヴァージョンはライヴ・ビデオで楽しめるけど、それもそれで凄いソロ!)

あと、RACER Xの名盤2nd「SECOND HEAT」のオープニングを飾る”Sacrifice”のポール・ギルバートとブルース・ブイエの高速ツイン・ギター・ソロを一人二役で再現している動画も嬉しかった。

”Night Games”にしても”Sacrifice”にしても、CDでは今ひとつ不明瞭だった部分が、MASUMIのカヴァー動画でクリアに聞こえて、実際にどんなフレーズを弾いていたのかがよく判ってありがたい。MASUMI本人は「基本的にはすべて耳コピでやっているので、細かい部分は絶対にオリジナルとは違っていると思います」と言っているけど、それでもかなりの精度でコピーされていると思います。

MASUMIのYouTubeチャンネルには他にもクリス・インペリテリやレブ・ビーチなどのカヴァー動画もアップされているし、ギターの心得がある人には興味深いテクニック解説動画もたくさんあるので、興味のある人はチェックしてみてください。彼はもっぱら「ヴォーカル曲のギター・ソロ」を取り上げてるんですかね。初期のヴィニー・ムーアなどのインストゥルメンタル曲の(ソロ・パートだけでも)取り上げて解説してくれると嬉しいんですが。

MASUMIAには何かいい形でメタル・バンドを組んで(あるいは加入して)もらって、その才能を多くの人に披露してもらいたいですね。単に「物理的にギターが上手に弾けるだけの人」じゃないってことは、CROSS VEINで証明済みなので。
【若き王者の圧倒的インプロヴァイズな名演】Night Games / ALCATRAZZ ギターソロカバー!!
 
【最強の師弟による高速ツイン名演】Sacrifice / Racer X ギターソロカバー!!
 

それでは、気まぐれプレイリストの第18弾に行ってみましょう。

SIDE A
1. THE SIGNAL ”Arms Of Stranger”→ Spotifyで聴く
KING KOBRAを脱退したマーク・フリー<vo>が結成したバンド。1989年に残した唯一のアルバムのオープニングを飾っていたのがこの曲。爽快この上ないハード・ポップ・ナンバーで、マーク・フリーの張りのあるハイトーン・ヴォイスが映える。ただ、この曲は秀逸だったんだけど、アルバムの他の曲には聴くべきものがなく、アルバム1枚で終わったのも頷けると言えば頷けるかな。長いことアルバムを聴いてないので、久々に聴いてみたら新たな発見があるかも?
2. THE RODS ”Power Lover” → Spotifyで聴く
1981年の2ndアルバムにして日本デビュー作「THE RODS」のオープニング曲。当時はデイヴィッド”ザ・ロック”フェインステイン<vo,g>が元ELFだとかロニー・ジェイムズ・ディオの従兄弟だとかは全然知らずに(もしかしたらライナーノーツに書いてあったかも)、単にカッコイイ新人バンドという感覚で聴いてました。東のTHE RODS、西のY&Tと言われてましたね。この曲は、カール・カネディの小気味いいドラムがミソだし、最後にヴォーカル・ハーモニーが入ってきて一気にメロディアスになるところがナイスよね。
3. BILLY JOEL ”Movin' Out(Anthony's Song)” → Spotifyで聴く
先月の来日公演も盛り上がったみたいですね。ビリー・ジョエルを初めて知ったのは1978年に日本で”Stranger”のシングルが大ヒットした時。ただ、僕としては曲のイントロは素晴らしかったけど、イントロ以外は退屈だったので「聴かなくていいアーティスト」に分類してしまった。でも1986年、コンビニ・バイトの同僚で洋楽ファンだった音田君が当時の新作「THE BRIDGE」を聴かせてくれて、「なんだ、聴かず嫌いだったけどいいじゃん!」と目覚めて、そこからビリー・ジョエルのアルバムを速攻で買い揃えていったのでした。ほんと数々の素晴らしい曲を生み出した偉大なソングライターですね。
5. JON BON JOVI ”Santa Fe” → Spotifyで聴く
BON JOVIに関しては、1stは好きだったけど、2ndがつまんなくて、3rdは優れた作品だと感心したけど、4thがつまんなくて…という感じだった。そんな時にジョン・ボン・ジョヴィがソロ・アルバムを出すと。映画のサントラでもあるということで、ほとんど期待はしてなかったんだけど、その「BLAZE OF GLORY」は予想外にいいアルバムで…というか強力な曲をいくつか収録したアルバムで嬉しかった。その強力な曲の1つがこのバラードだった。日本盤のジャケは当然のようにジョンのソロ写真に差し替えられたんですよね。
4. MANOWAR ”The Power” Spotifyで聴く
僕がことあるごとにオススメしているMANOWARの傑作「LOUDER THAN HELL」(1996年)のラストを飾る感動的なメタル・ナンバー。これを聴いて血液が沸騰しないメタル・ファンはもぐりでしょう。(笑) ちょっと前に中山きんに君がBON JOVIから直々に感謝のツイートをされて話題になってたけど、きんに君にはこの曲こそテーマ曲に使って欲しいね。MANOWARのイメージはマッチョ&マッスルだし、曲名もまさに「パワー!」で、ピッタリじゃないですか。どうですか、お客さん!(©アントニオ猪木)

SIDE B

1. SARACEN ”Heroes, Saints & Fools” → Spotifyで聴く
一応このバンドもNWOBHMに入るんでしょうね。1981年当時、彼らのデビュー・アルバム「HEROES, SAINTS & FOOLS」を聴いて、激しくはないけど味わい深い音楽だなと思って、気に入りました。ライナーノーツに”シンフォニック・ロック”と書いてあって、初めてそのワードを耳にして、なるほどと思ったのを覚えてます。この曲は、当時の技術を駆使してヴォーカルの声色を変えて、色々な登場人物が主人公に語り掛けて惑わせるという形になっていて、歌詞もある意味で哲学的なので、結構考えさせられる曲ではないかと思います。もちろん、音楽としてメロディとして魅力的である、ということが大前提としてあるわけですが。
2. RUN FOR VICTORY ”It Happens To Me All The Time” → Spotifyで聴く
以前にもこのコーナーでRUN FOR VICTORYは取り上げたことがありましたね。日本のJ-POPにも曲を提供して数々のヒット曲を生んでいるスウェーデンの作曲家エリック・リボムのソロ・プロジェクトです。RUN FOR VICTORYの「GAME OVER」は音の万華鏡のような幻想的とも言える秀逸な作品だったけど、どんだけ売れたんでしょうか? HM/HRファンにとってはポップすぎる、一般の音楽ファンに対しては宣伝が少なすぎる、という感じで一部のマニア受けで終わったのかな。そろそろ2作目を出してくんないかな~と思ってるんですが…。
3. Rose'n'Ciel ”宴の痕” → Spotifyで聴く
男女ツイン・ヴォーカルを擁する日本のバンド。王道のメロディック・メタル的な部分と昭和歌謡的な風情がミックスされた独特の魅力的な世界観を持ったバンドです。この曲は歌謡曲的な要素の方が強いかな? 哀愁のメロディがたまりません。曲の背景として歌うような絶品のベース・ラインを弾いているerieはすでに脱退してしまったみたいですが…。男性ヴォーカルのCharは強力なハイトーンの持ち主なので、彼をメインにした純粋なメタル・アルバムを作ったらいいと思うんですが、どうでしょう?
4. SECRET ”Since I Fell For You” → Spotifyで聴く
スペインのメロハー・バンド91 SUITEの主要メンバーだったヘスス・エスピン<vo>とイヴァン・ゴンサレス<g>によるバンドの2014年のデビュー作「THE END OF THE ROAD」からの曲。とにかくメロディック・ロック愛好家のツボを心得た曲作りには敬服させられるし、胸キュンの叙情メロディにうっとりしてしまいます。ギター・ソロの構築美も見事で、絶好調時のヴィト・ブラッタを想起させる。ディミニッシュ・スケールが出てきた時にはもう顔面が放送禁止状態ですよ。彼らは去年2作目を出したので、それも聴いてみなきゃ!
5. MIKAEL ERLANDSSON ”The 1” → Spotifyで聴く
日本のメロディック・ロック愛好家には紹介不要の天才ミカエル・アーランドソンの1994年のデビュー作「THE 1」のタイトル曲にして、アルバムのラストを飾るバラード。少し前にYouTubeでこの動画を見つけたんだけど、もしミカエルが70年代にデビューしてたらどうなってたんだろう?って思ったり。こんな日本人好みの哀愁あふれる音楽をやってるシンガーで、しかもブロンドのイケメンを、日本の女子は放っておかなかったんじゃないか?(笑) 当時はたくさんの女子中学生・女子高生・女子大生が普通に洋楽ロックを聴いてたからね。だからこそ、QUEENやCHEAP TRICKがああいう風になったわけで。

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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