【ライヴ・レポート】
METAL CHURCH──最強編成で7年ぶりに帰還した “鉄壁ヘヴィ・メタル・ライヴ”
レポート:斎藤新吉/BURRN! ONLINE
去る10月半ばの3連休にぶつけるかのように、METAL CHURCHが7年ぶりの来日を果たした。待望も待望だ。これまでに実現した彼らの来日公演は意外と少なく、1991年、1994年、2019年の3回のみ。音楽シーンがコロナ禍に襲われる前年に実現した前回来日時は、2代目シンガーのマイク・ハウ〈vo〉が復帰して2作のアルバムをリリースしていた時期であり、その後2021年に彼の急逝というあまりに悲しい結末が待っていた。
2023年にはマーク・ロペス〈vo〉を迎えて「CONGREGATION OF ANNIHILATION」をリリースし、完全復活を宣言したものの、いつの間にかそのラインナップは創始者カート・ヴァンダーフーフ〈g〉とリック・ヴァン・ザント〈g〉を残して崩壊。しかし昨年末に強力すぎる新メンバーの加入を大々的にアナウンスし、今年4月に最新作「DEAD TO RIGHTS」をリリース。そうして今回の来日が実現したわけである。
実はマイク・ハウ以外のシンガーが歌うMETAL CHURCHの来日というのは、歴史上初めてのことになる。そのシンガー=ブライアン・アレンは、VICIOUS RUMORSに在籍したことで知られる強烈スクリーマーで、2023年には同バンドの17年ぶりの来日公演に出戻り参戦して大活躍を見せていた。
ケン・メアリーもアメリカン真正メタル史を彩ってきたドラマーであり、彼がクレジットを残したバンドはTKOやFIFTH ANGELに始まり、CHASTAIN、HOUSE OF LORDS、IMPELLITTERI、BAD MOON RISINGなど数え始めたらキリがない。そしてベーシストは──MEGADETH脱退後にKINGS OF THRASHなど数多くのプロジェクトを同時進行させていた、デイヴ・エレフソンその人。METAL CHURCH はUSメタル界のアベンジャーズと化して日本に戻ってきたのである。
来日公演は東京のみで、会場はすべて新宿HOLIDAY。同会場で3日連続というのも一見強気の設定だが、しばらくご無沙汰だったMETAL CHURCHを観られるとなれば、ファンは当然集まってくる。唯一の平日開催だった初日は後の2日間に比べれば、集客が若干いまいちだった様子だが、フロアは連日、異常なほどメタル愛の強いマニアばかりが集まったことによる熱気が渦巻いていた。
ライヴのオープニングは、“Ton Of Bricks” に “Start The Fire” というアルバム「THE DARK」(1986年)同様の2連弾。USメタル界屈指のパワー・ヒッターであるケンのドラムが、リスナーをせき立てるようなビートを容赦なく打ち出し、カートも日本に戻ってきた喜びを隠せない様子で、刺々しいリフをゴリゴリと弾いていく。一方、今回のライヴでカートよりも多めにリードを担当していたリックは、愛機を立て気味に抱え、神妙な面持ちで堅実にギターを紡いでいる。
Kurdt Vanderhoof〈g〉
アルバム「DEAD TO RIGHTS」を聴いた時点でも説得力は十分感じていたが、ブライアンのハマり具合が予想以上だ。ざらついたダーティな声質で、そこから高音が突き抜けていくシャウト・スタイルには、故デイヴィッド・ウェインのテイストもしっかり受け継がれている。ゆえに耳に入ってくる音は「あのMETAL CHURCH」そのものだ。彼は愛嬌があってフレンドリーなMCも特徴的で、観客を指さして「お前、ビールを買ってくれるか?」とからかうシーンが何度もあった。このライヴを観るまで忘れていたが、そういえばVICIOUS RUMORSの来日時も全く同じ客いじりをしていたのだった。
3曲目は “Fake Healer”。ここでマイク・ハウ期の楽曲が初登場する。マイクのいい意味での甘さのようなものがブライアンの声には無いが、かと言って大きな違和感もなく、あの怪しく重厚な世界観は完璧に再現されている。リックのフィードバックなどを駆使したギター・ソロも曲のイメージ通りだ。それにしてもこの曲のリフ、単なるパワー・コードの横移動でしかない。構造自体はシンプルだと言うのに、なぜMETAL CHURCHの曲はこうもドラマティックで魂に突き刺さるのだろう。
さらにMETAL CHURCH流ドラマティック・ナンバーの最高峰である、“Gods Of Wrath” が炸裂。このブライアンの絶唱は、デイヴィッド・ウェインの影を求め続ける古参ファンも納得せざるを得ない出来だった。
この初日公演の数時間前に筆者はデイヴにインタビューを行なっており(こちらを参照)、彼がいかにMETAL CHURCHを愛しているか、直に聞くことができたのだが、その情報を聞いていたから頭でわかってはいたものの、ステージ上で激しく動き、時に歌詞に合わせて口ずさんでいるデイヴの姿を見ると、その愛は偽りのない本物だとわかる。
“Gods Of Wrath“ が終わった後、デイヴがマイクに向かって叫んだ言葉が「METAL CHURCH is back!!」。あのデイヴ・エレフソンの口からこんな言葉が聞けるなどと、誰が想像し得ただろうか。そして最新作からの1stシングルだった “F.A.F.O.”(Fuck around and you'll find out)をコールし、激烈ビートに乗せて観客もサビを大合唱。このパートに限らず、今回の来日公演ではデイヴの張り切りぶりが目立っていた。先の “Gods Of Wrath” を始め、ベースのフィルはオリジナルに忠実と思いきや微妙に違うところも多かったが、それはともかく、彼の打ち出す抜けのいいサウンドは楽曲を強力にドライヴさせており、METAL CHURCHとデイヴが相思相愛の仲だったことが音を聴くだけでもわかる。
ストレートな “F.A.F.O.” に続いては、METAL CHURCHが「キャッチー」に目覚めたとも言えるハウ期の名曲 “Badlands” が観客の合唱を誘発。さらにもう1つのウェイン時代を象徴する名バラード “Watch The Children Play” では、カートのエモーショナルな構築美ソロが披露された。
本日2度目となるデイヴのMCで始まったのは、やはり新作からのタイトル・トラック。他の名曲に比べてリスナーへの浸透度で負ける新作曲も、“F.A.F.O.” 同様に合唱を促すタイプの曲だけチョイスするというのが上手い。
中盤に1つの決め球が投入された。デビュー作「METAL CHURCH」(1984)における出色のスピード・ナンバーながら、バンド史上なぜかセットリストに加わる頻度が低い “Hitman”。ハイ・テンションなヴォーカル・ラインもさることながら、リックとカートが繰り出す狂気の弾きまくりソロがライヴの最高潮を演出した。これに続いたのが、ブライアンによるマイク・ハウ賛辞から始まった、METAL CHURCH史上最高にキャッチーな “Date With Poverty”。やはりブライアンの声はハウ期の再現としては荒さが強く、デイヴのフィルもオリジナルとちょっと違うが、細かい違いは今更どうでもいい。カートとリックのソロ掛け合いもビシッと決まり、一気にクライマックスへと加速していく。
ここまであえて書かなかったが、初日はギター・サウンドがいまいち抜けてこず、特にリックのギターは変にコーラスが厚くかかったような音で、サステインがまるで無いので本人も相当弾きづらかったのではないかと思う。とは言え、「HANGING IN THE BALANCE」(1993年)からの少し意外な曲 “No Friend Of Mine” には長いギター・ソロがあり、ブルージーな即興に両手交差タッピングを挿し込んだりと、己の持てる技を次々繰り出して無骨なソロを弾き倒すリックに万雷の拍手が贈られた。
そして不穏なコード・アルペジオが鳴り響いて “Beyond The Black” が始まり、狂気の猛攻が続く間奏を経て、ライヴはいよいよ終幕へ。間髪入れず不気味なドラムで “Metal Church” がスタートし、最後はフロント楽器陣3人がフォーメーションを組む、いかにもメタルらしいパフォーマンスを展開。デビュー作の冒頭を飾るこの2曲がエンディングとなった。そう言えば、“Beyond The Black” の前にブライアンが帰るフリをして、引き留めの拍手を促すというMCがあったのだが、これは関係者によれば「なんちゃってアンコール」だったそう。本物アンコールを求める観客に応え、ブライアンがもう一度戻ってきたと思った瞬間にステージの幕が閉じられるという、あっさりというか謎のエンディングだったが、とにかくパワー・メタル史上に残る名曲2連発で、初日は締め括られたのだった。
【10/9 DAY 1】
1. Ton Of Bricks
2. Start The Fire
3. Fake Healer
4. Gods Of Wrath
5. F.A.F.O.
6. Badlands
7. Watch The Children Pray
8. Dead To Rights
9. Hitman
10. Date With Poverty
11. No Friend Of Mine
12. Beyond The Black
13. Metal Church
2日目は三連休の初日に当たることもあって、客入りの良さが影響したか、メンバー各人の演奏はより力がこもり、5人のタイトさも向上していた。オープニングは “Fake Healer” に変更。結果的にセットリストに追加や削除はなく、曲順に微妙な変化があっただけだが、続けて観れば前日とはちょっと違った始まり方にテンションは上がったし、まずこの時点で、ギター・サウンドがかなり改善されていることがわかった。リックは “No Friend Of Mine” のソロ・コーナーもよりスムーズにこなしており(この日のみタッピングがなかった)、前日よりもダイレクトにパワー・メタルらしい圧力が増していることは明らかだった。
3日目はメンバーにもさらなる余裕が生まれたのか、ややネガティヴな言い方をすれば「粗い」、ポジティヴな言い方なら「勢いがある」パフォーマンスになった。威厳あるパワー・メタルらしい整合性を求めるなら2日目の方が上だろうが、個人的には最もキレた演奏を聴けたこの日がベスト。1998年に出た「LIVE」(1986年の発掘音源)の「キメがズレた! リズムが走ってる! そんなの知るか!」という過剰な攻撃性こそMETAL CHURCHだと思っているので、この日の尖り方こそ3日間の最後を飾るに相応しいパフォーマンスだったと思う。
この日のセットリストはほぼほぼ初日と同じ流れだったのだが、“Date With Poverty” が外され、その代わりにエンディングにちょっとした仕掛けが加わった。“Beyond The Black” と “Metal Church” の間に DEEP PURPLE “Highway Star” のカヴァーが挟まれたのだ。どうやらバンドとしては14年ぶりの演目復活らしく、2日目のリハーサルで入念に確認していたそう。ブライアンが「Ahhh〜It’s alright」などといった、デイヴィッド・ウェインがスタジオ盤でやっていた歌い回しを再現していたりと、まさか生で聴く機会が訪れるとは思いもしなかったMETAL CHURCHの “Highway Star” が、そのまま目の前で再現されている── “Metal Church” の後にやればショウがより締まったのではとも思うが、ここまで再現度が高いと文句を言う暇もなくなる。
1. Fake Healer
2. Hitman
3. Ton Of Bricks
4. Start The Fire
5. Gods Of Wrath
6. F.A.F.O.
7. Badlands
8. Watch The Children Pray
9. Dead To Rights
10. Date With Poverty
11. No Friend Of Mine
12. Beyond The Black
13. Metal Church
1. Ton Of Bricks
2. Start The Fire
3. Fake Healer
4. Gods Of Wrath
5. F.A.F.O.
6. Badlands
7. Watch The Children Pray
8. Dead To Rights
9. Hitman
10. No Friend Of Mine
11. Beyond The Black
12. Highway Star(DEEP PURPLE)
13. Metal Church
一介のメタル・ファンとして、この3日間は至福の時間だったとしか言いようがない。派手なトリックもギミックもなく、ただひたすらにメタルの音弾を打ち出すだけで観客をKOする老獪さ、そしてデイヴもインタビューで語っていた通りに「メタル好きなら誰でも恋に落ちる曲の良さ」。メタルが細分化して久しい現在、これこそヘヴィ・メタルとしか言いようのないヘヴィ・メタルを骨の髄まで味わわせてもらった。
最終日の終演後、カート、デイヴ、ブライアンと少し話をする機会があったが、いずれもも非常にご満悦の表情で、特に新入りであるデイヴとブライアンが「満足した? そりゃ当然だろう」と言わんばかりの不敵な笑顔を見せていたのが印象に残っている。
※10月末に公開された、“Dead To Rights” のMVはこちら。
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