【BURRN! 9月号ちょい読み】
MEGADETH(インタビュー編)──デイヴ・ムステインが語る現在の心境
by TIMO ISOAHO
アメリカのスラッシュ・メタル界のレジェンドMEGADETHは、シンプルに「MEGADETH」と題された、当初はバンド最後のスタジオ・アルバムになると考えられていた最新作の大成功によって、これまで以上の絶頂期を迎えている。この傑作アルバムはアメリカの『Billboard』のチャートで初登場1位を獲得した他、多くの国でチャートの首位を記録した。その後もバンドは、ここ数ヵ月にわたって続いているワールド・ツアーの行く先々でソールドアウト公演を連発している。
BURRN!は、このMEGADETHの大規模なツアーが6月下旬にフィンランドへやって来た際にヴォーカリスト兼ギタリストのデイヴ・ムステインに独占インタビューを行なった。彼は最新アルバムの制作を振り返るとともに、新たなリード・ギタリスト、テーム・マントゥサーリを称賛し、現在進行中のワールド・ツアーや執筆中の新刊について語ってくれた。そして他にも実に幅広いテーマについて話を聞くことができた。
──まず最初にはっきりさせておきたいことがあります。様々な憶測や食い違う情報が飛び交っていますが……現在行なわれているこのワールド・ツアーは、本当にMEGADETHにとって最後のツアーなのでしょうか?
デイヴ・ムステイン(以下D):まあ、バンドが大きくなればなるほど、色んなことを言い出す人が増えて、勝手な話を作り上げたりするものなんだ。でも、いや、おそらく違うよ。このツアーの目的は、あくまでも新しいスタジオ・アルバムをサポートすることなんだ。もし本当にフェアウェル・ツアーだったら、セットリストが「RUST IN PEACE」や「COUNTDOWN TO EXTINCTION」、それに新作といったごく限られた作品にここまで偏ることはないはずだからね。
日によって違うが、今は新作から “Tipping Point” “Let There Be Shred” “Puppet Parade” “Ride The Lightning” を演奏している。17曲か18曲のセットの中に新曲が4曲も入っているわけだ。これはかなり多いよ。まだアルバムを聴いていない人もいれば、たとえ聴いていたとしても、じっくり消化するだけの時間が充分になかった人もいることを考えればなおさらだ。
考えてみてくれ。俺達にはスタジオ・アルバムが17枚あって、曲は200曲近くあるんだ。だからもう一度言うけど、もしフェアウェル・ツアーだったら、セットリストはバンドの全カタログを均等に反映した内容にしたいと思うだろう。各アルバムから1曲ずつ演奏するだけでも、それだけで90分のショウになるくらいだからね。実際、演奏したい昔の曲は沢山ある。“Crown Of Worms” なんかがその1つだ。あれは本当にヘヴィな曲なんだよ。俺にはDIAMOND HEADとMOTÖRHEADが合体したようなサウンドに聞こえるし、ライヴでやれば間違いなく最高に映えると思ってきた。
だからもう一度強調しておくけど、もし将来フェアウェル・ツアーをやることになったら、それは俺達が長年やってきたこと総てを祝うような内容にしたいと思っている。そういうツアーは、今やっているものとは全く別の種類のツアーになるよ。でも今の計画は、あくまでも新作をサポートするためにツアーを続けることだ。俺達みたいな国際的なバンドの場合、それは普通2年半から3年くらい続く。その後で、次の章がどうなるかを見ていくことになるね。
──毎晩のセットリストは、どのように決めているのでしょうか?
D:基本的には毎晩新しいセットリストを組みたいと思っている。全く同じ内容のショウを二度やることはほとんどないよ。4人全員が順番にセットリストを考えるんだ。勿論 “Peace Sells” や “Holy Wars...The Punishment Due” “Symphony Of Destruction” みたいに、どうしても演奏しなければならない曲はある。それに新作からも何曲か。それ以外は、ほとんど何でも話し合いの対象になる。
──最近のツアー生活については、どのように感じていますか?
D:歳を取れば取るほど、ツアーは間違いなく楽じゃなくなるよ。10代の頃みたいな回復力はもうないからね。もしバンドと一緒に旅をしたことがあるなら、それがどれだけ大変かわかるはずだ。みんな“楽しく遊んでいるだけ”だと思っているが、実際はそんなことはない。言うまでもなく、一番楽しいのはステージに立っている時間だ。それ以外の時間は全く違う。睡眠不足、タイトなスケジュール、予想外のトラブル……何が起きてもおかしくない。
別に愚痴を言っているわけじゃない。これは俺がずっとやってきたことだし、ずっと愛してきたことだからね。でも、年月というものは確実に人間に負担を与えるんだ。
──デュピュイトラン拘縮については、あなた自身が率直に語ってきました。まさに今は時間との勝負ですよね。ギターを弾けなくなるまで、あとどれくらいツアーを続けられると考えていますか?
D:まさにそのとおりだよ。時間との勝負なんだ。俺の手を見ればわかるだろう。いずれ指が引っ張られてしまって、ギターを弾けなくなる位置まで曲がってしまう。どこかの時点で手術を受けるかどうか決めなきゃならないが、その時期はまだわからない。正直言って、手術が必要になるまであとどれくらい時間が残されているのか、俺にもわからないんだ。もし手術がうまくいけば、それこそ「ハレルヤ」だよ。まだ何年もギターを弾き続けられるかもしれない。でも、もしうまくいかなかったとしても……少なくとも俺は自分がやりたかったことは全部やったし、治すためにできることも全部やったって胸を張って言える。
──ヴォーカリストとして活動を続けることは考えたことがありますか?
D:勿論考えたことはあるよ。誰か別のギタリストに弾いてもらって、俺はMEGADETHで歌だけ唄うっていう形をね。でも今考えると、そんなやり方で俺が本当に満足することはないと思う。俺は、MEGADETHの大きな魅力の1つは、俺自身がギターを弾いていることだと本気で思っているんだ。それが俺なんだよ。俺はシンガーであり、同時にギタリストでもあるんだ。
──デュピュイトラン拘縮は、北欧系の人々に特に多いことから “ヴァイキング病” とも呼ばれているそうですね。あなたにはフィンランドのルーツがあります。
D:ああ、そうだね。俺達一族の元々の姓が、フィンランド語の “Mustonen” だったってことは知っているが、その北方のルーツと病気に何か関係があるのかどうかはわからない。ただ、フィンランドに来るたびに何か特別なものを感じるのは確かなんだ。トナカイを食べるのは好きじゃないが……それ以外は最高だよ!
──話をツアーに戻しましょう。今回の新作ツアーは今年2月にカナダから始まりましたが、いかがでしたか?
D:想像どおり、最高だったよ。カナダのファンは本当に素晴らしい。俺達は最初の頃からずっとカナダで演奏してきたし、初期のツアーの1つはカナダのEXCITERと一緒だった。カナダの人達はMEGADETHというバンドが何なのかをちゃんと理解しているし、心からメタルを愛しているんだ。今回はANTHRAXとEXODUSという昔からのスラッシュ・メタル仲間が一緒だった。それも勿論最高だったよ。本当に強力なパッケージだったし、ファンが3バンド全部を愛してくれているのは明らかだった。みんなが3バンド全部のTシャツを買いたがっているのも見ていてわかったよ。普通はどういうものか知ってるだろう? ヘッドライナーは50種類くらいグッズを用意していて、サポート・バンドはほんの数種類しか置けない。でもANTHRAXやEXODUSみたいなバンドがMEGADETHとツアーを廻る時は、できるだけ公平で寛大にしたいと思っている。俺自身、逆の立場がどんなものかを痛いほど知っているからね。
──そうですね。若い頃、ホームレスだったことも率直に語っていましたしね。
D:苦労するってどういうことか、俺は知っている。今では親が物凄く裕福なバンドも見かける。誰かの母親が高価なギターを買ってくれて、父親が高価なアンプを買ってくれて、キャリアを築くための資金はいくらでもある。まあ、それはそれでいいさ……。でも、それは俺の人生じゃなかった。俺はほとんど路上で育ったようなものなんだ。本当にホームレスだったし、総て独学で身につけた。裕福な家の子どもに、食べる物がないってどういうことかわかるか? 何もわからないよ。本当に飢え、食べ物を乞い、頭の上に屋根もなく、車やリハーサル・ルームで寝泊まりしてシャワーも浴びられず、何もない生活をしていたことを今でも鮮明に覚えている。決して楽じゃなかったし、それは長い間続いた。俺は本当の意味での下積みを経験してきたんだ。そういう苦難を全部くぐり抜けて、今はようやく反対側まで来た。だからこそ、俺にとって音楽や歌詞には物凄く深い感情的な意味があるし、きっと多くの人にとってもそうなんだと思う。もし今誰かがかつての俺と同じような苦しみの中にいるなら、俺達の音楽がその人の助けになればいい。そう願っているよ。
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