【完全レポート】『LOUDNESS World Tour 2019-2020 THANK YOU FOR ALL Chapter 1:Ampan vs Dragon』

今年は12月28日(土)東京EX THEATER ROPPONGIにて行われた、年末恒例となりつつあるLOUDNESSのライブ。『LOUDNESS World Tour 2019-2020 THANK YOU FOR ALL Chapter 1:Ampan vs Dragon』と冠され、SOLD OUTとなった熱い夜を完全レポート。
 

Report by 別府“VEPPY”伸朗

Photos by Shigeyuki Ushizawa

11月からデビュー39周年に入り、その第一章となったのが年末恒例となっているLOUDNESSの単独ライブ。『Ampan vs Dragon』と冠されていることから、完全復帰に向け脳梗塞の後遺症と戦っている鈴木“あんぱん”政行と最強の助っ人ドラマーである西田“ドラゴン”竜一がステージで真正面からバチバチのバトルをする注目のライブだ。6月にも『Ampan vs Dragon』とタイトルに付けられたライブがあったが、その時は『Ampan Night』と『Dragon Night』に分けられ別々の日での対決だったが、今回の対決は同じ日同じステージでの直接対決、ファン注目の一日となっていた。

チケットは当然SOLD OUT、会場に入るとステージに並ぶドラムセットに嫌でも目がいく。下手側のドラムセットにはブルー・ライトが当てられバスドラにはドラゴンのアートが雄々しく描かれ、上手のドラムセットにはレッド・ライトが当てられバスドラにはLOUDNESSのロゴが誇らしげに描かれている。

開演時間が近づくにつれ、ファンの期待が熱気となって大きくなっていった。

開演時間を15分程過ぎて場内暗転と同時にオープニングSEの“Eruption”が流れるとステージがライトで照らされ、それが明るくなると同時にスクリーンにLOUDNESSのロゴが大きく映し出される。

一番の注目はどちらのドラマーが先にステージに登場するかだ、鈴木なのか?西田なのか? ファンは期待と興奮でその登場を待っていた。下手ステージ奥の暗闇からこの日の戦場であるライトに照らされたステージへとゆっくりと歩きだす一人の男。大きな身体、顎にはトレードマークの長い髭が見える、鈴木“あんぱん”正行<ds>だ。「あんぱん!」といくつもの大きな歓声がステージに飛んでいく。鈴木はそのままゆっくりと上手のLOUDNESSのロゴの入ったドラムセットに向かい、スタンバイ。そして準備OKといった感じに大きく手を宙へ広げる。

ステージに戻ると両手を広げコーラスを求める二井原、「ヘイ!ヘイ!」の掛け声では鈴木の口も同じく大きく動く。山下はファンをのぞき込む様な感じで笑顔を見せ、高崎がソロを弾くシーンではステージ上手へと駆ける。そんな高崎と山下の隣で二井原はファンにおどけた表情を見せ、「M.Z.A.」の掛け合いではドラムライザーへ上り鈴木を指さす。鈴木はそれに笑顔とドラミングで返答だ。

鈴木が手を広げると同時に上手からサングラスをかけた高崎晃<g>が登場、戦闘準備万端と愛機を携えている。その高崎の愛機からお馴染みの“Crazy Nights”のリフを刻み、二井原実<vo>と山下昌良<b>がステージ下手から登場。スクリーンには大きく“Crazy Nights”が収録された「THUNDER IN THE EAST」のアートワークが映し出されている。以降、スクリーンには演奏された曲が収録されたアルバムのアートワークが映し出された。

鈴木のシンバル・カウントからメタリックな“Like Hell”がスピーカーから解き放たれ、サビではいくつもの声と右手が上がり、鈴木も大きく手を振り上げ一打一打に魂を込める。山下はドラムライザーに足をかけ鈴木とアイコンタクト。高崎がソロを弾く場面では驚く様なアクションで覗き込む二井原と、序盤から様々なシーンがファンの目に焼き付けられていく。曲の終わりに鈴木が両手をグッと握り突き上げたシーンも忘れられない。

そのまま間髪入れず高崎が哀愁のアルペジオを静かに奏で、“Heavy Chains”のイントロが会場を優しく包んでいく。「行きますよ、トーキョー!」と二井原が告げると同時に曲は力強く展開していき、グッと足を踏ん張り魂の歌唱で魅せる。高崎はモニターに足をかけソロを弾き、その終わりにどうだとばかりに愛機をグッと高く掲げる。その後ろでは高崎のアクションにシンクロした様に鈴木が宙を見上げる。
 

二井原が来場したファンに感謝の言葉と恒例となりつつあるLOUDNESSの年末ライブがないと年を越せないと述べる。「今日は曲をたくさん用意したのでガッツリ楽しんでください」と言う大きな拍手がメンバーに向けられる。

いつの間にか下手ドラマーには西田“ドラゴン”竜一がスタンバイ、それに気が付いたファンから声援が飛んでいく。二井原が西田を史上最強の助っ人と呼び曲名をコールして“Soul On Fire”がスタート。ステージをレッド・ライトが焦がし、派手にフラッシュする。二井原がフロアにマイクを向け煽ると、西田ももっと来いよと右手を振る。高崎のメタリックな切れ味鋭いリフがファンの魂を焦がし、フロアが盛り上がる。二井原はサングラスをずらしそんなフロアの様子を見まわし、やるなといった表情を浮かべ、それに応えるべく魂を燃焼させる様に体をのけ反らせてシャウトする。

LOUDNESS史上最強のアグレッションを誇るであろうスラッシーな“I'm Still Alive”で西田は長い髪を振り乱してブラストビートを叩き、山下はクルっとお馴染みのターン、高崎はグッと腰を落としてソロを弾く。曲が終わると俺のドラミングはどうだとスティックを握った右手を突き上げる。「RISE TO GLORY -8118-」から三連発となる“Go For Broke”のファンの腹をえぐる様なヘヴィネスに震える。右手でスティックを回しながら左手では華麗にシンバルを操る西田が魅せ、芯の太いドラミングは最強の助っ人に相応しい。

曲が終わるとと右手を上げドラムセットから下がる西田。その西田を見送って今度は俺の番とドラムセットに鈴木が座る。「あんぱん君がやりたいと言った曲を立て続けにやります」と二井原、そして「途中で倒れてもあいつのせいですからと」らしいエールを送る。鈴木の激しいドラミングからLOUDNESSクラシック“Dream Fantasy”が始まる。メタリックな疾走感の中に日本人好みのメロディラインで味付けが絶品、この曲の高崎のギター・ソロは何度生で聴いてもゾクゾクさせられる。

叩き終えた鈴木に「あんぱん!」と声援と拍手がフロアから飛んでいく。高崎がもっと拍手をと鈴木に右手を向けるとそれは更に大きくなる。

その拍手を“In the Mirror”のリフが切り裂き、再びフロアは熱気に包まれる。初期の疾走曲を選んだのが何とも鈴木らしく、そして曲を叩きぬく彼に声援が飛んでいく。そんな鈴木を指さす二井原も楽しそうだ。高崎のギター・ソロが終わり一度ブレイクすると、「今年最後のスクリーム!」と天井よ吹き飛べとファンに声を上げさせる二井原。どんなに大きな声を上げてもまだまだ出せるだろと二井原とその後ろでは鈴木が大きく手を振り上げ、高崎は両手を耳に当てる。これ以上はないという大歓声に満足そうな表情を浮かべた高崎が鬼神となり再びリフを刻む。

曲が終わり叩き切ったと鈴木は大きく息を吸い、両手を上げる。拍手の中立ち上がると西田を迎い入れ一礼する。

一度ステージを去った鈴木をいじりつつ「ここでちょっとバラードを」と二井原が“In My Dreams”の曲目を告げる。重厚な中にしっとりとした哀愁のメロディを溶け込ませた感動的なナンバーに静かに首を揺らし聴き入るファン。後ろから見ていたのだが、多くのファンが曲に酔いシンクロしていた姿は言葉にならない感動的な光景だった。エンディングに向け盛り上がっていくにつれ、アクションが大きくなる西田のドラミング。

そのまま“So Lonely”とバラード2連発へと流れ、ファンのハートを更に揺さぶり続ける。「一緒に歌いますか?」と大きく両手を振る二井原に合わせて会場の皆も大きく手を振る。ミラーボールのライトが回る中、フロアからコーラスが自然発生的に起こり、それがどんどんと大きくなっていく。少しハスキーで情感タップリに歌い上げる二井原、ギターを泣かせる高崎、メロディに乗り静かに揺れる山下、優しいビートを叩き長い髪が揺れる西田。

そんなLOUDNESSのプレイに感情を揺さぶり続けられたファンのコーラスはどんどん大きくなり、二井原はその声をもっと届かせてくれと胸に手をやり、大きく両手を広げる。最後は二井原のアカペラと共に感動が広まる空間に音は吸い込まれていった。

しっとりした空間を二井原のMC、「マサキ君が歌っていた曲を歌います」がまるでオセロをひっくり返す様にどよめきに変える。

少し毒々しいレッドとブルーのライトがぎらつくステージ、西田のラウドなドラミングを合図に“Slaughter House”がヘヴィネスを纏い全てをなぎ倒す様に疾走していく。二井原は両手でガッとマイクを握り前後に揺れながらスクリーム。 

ギター・ソロを弾く高崎に近づき覗き込む山下、そして印象的なギターとベースのユニゾン・プレイをバッチリ決める。

曲が終わり山下のベースを軸にブルース・ジャム風に展開していく。そこに二井原が絡み、“Black Widow”の歌詞を挟み込む。暫くジャムを楽しんだ後に、粘りつくグルーブが凄まじい“Black Widow”本編が始まる。酩酊間も強く、そのグルーブに身を任せ大きく揺れるファン。

曲が終わると西田はここでまた交代だと、スティックを握った両手をフロアに向ける。

声援と拍手の中、鈴木が再び自分のドラムセットに腰を落とす。そんな鈴木をいじり笑いを取りつつ、「大丈夫?」と声をかける二井原。鈴木は勿論まだまだいけると大きな身体に優しい笑顔を浮かべて、二井原そしてファンに返す。「北海道は札幌市在住、鈴木君のリクエストで」と“Black Star Oblivion”と曲名が告げられると驚きの声が会場からステージへ返っていく。鈴木が復帰してから恐らく初のプレイではないだろうか?「SHADOWS OF WAR」収録の隠れた名曲的ポジションで、鈴木云々抜きに下もライブでもそれほどプレイされていないと思う。疾走曲でありながら複雑なリズムを練り込んでいて、それをセレクトした鈴木の気持ちが痛いほど伝わってくる。観ている私も知らず知らずの内に握った拳に力が入っていた。

曲が終わり一息ついて長い髪を後ろへ流す鈴木に拍手が集まる。

「Are You Metal Mad?」と邪悪な言葉を放ち“Metal Mad”がスピーカーから放たれる。80年代LOUDNESSと今のLOUDNESSがクロスした曲にファンは右腕を振り上げる。この曲のギター・ソロで高崎はワウを利かせたプレイをするが、その音に合わせて二井原は少しお茶目に歌う。ビートを叩き出す鈴木の隣には西田が既にスタンバイしている。西田はコンセントレーションを高めながら鈴木の叩き出すビートに体を揺らし、そのプレイに親指を立てていた。

“Metal Mad”の攻撃が終わると鈴木は両手を合わせファンに手を振りステージを去る。

鐘の音のSEが鳴る中、二井原が最後の曲だと告げる。和のテイストがタップリなイントロが会場に鳴り響き、そして曲が展開されていく。この曲を本編ラストに持ってきたという意味はとても大きいと思う。それは2020年に向けてのLOUDNESS、そして完全復帰に向けての鈴木の姿にダブっていく。懐古趣味でなく今のLOUDNESSならではのこの曲で締めるというのも胸をかなりアツくさせ、ファンもかなりの盛り上がりを見せる。ラストは二井原のロング・シャウトからのアカペラで見事に締めくくった。

アンコールを求める拍手を悲しく荘厳なSE“Requiem”が静め、ステージ後ろにはスクリーンに代わり巨大なLOUDNESSのロゴが描かれたバックドロップがゆっくり堂々と浮上していく。

西田の暴れ太鼓から“The King of Pain”が再び会場をヒートさせていく。鋭いリフが耳に突き刺さり、ステージの激しいライトが目を刺激する。西田の横では鈴木がスタンバイ、時折何度か肩で深呼吸しているように見えた。
 

“The King of Pain”が終わると同時に鈴木がシンバルを派手に鳴らして名曲“S.D.I.”の始まりを告げる。曲が始まるといくつもの右手が突き上げられ、二井原がもっと上げろを更に煽る。高崎が唸るしかないギター・ソロを決め鬼タッピングでファンを魅了すると、山下は駆けステージ上手でファンを煽り、二井原はゆっくりとステージ下手へ向かいサングラスを再びずらし盛り上がるフロアへ視線を向ける。鈴木は大きな体を揺らし時折自分に喝を入れる様に口を大きく開け激しいビートを叩き出す。

“S.D.I.”が終わると叩き切ったといった風に鈴木はタオルで顔を拭き、右足にしびれが出たのかストレッチをする。ファンからの声援に大きく手をあげ、届いているよと言った風に胸を叩き一礼、ステージには鈴木一人が残されていた。

ここで鈴木のドラムソロかと思ったが、下手から一人の男か現れる。西田を予想したファンも多かったと思うが、ここで登場は高崎、そして西田のドラムセットに座ると大きなどよめきが会場を支配する。

ファンにとってサプライズな高崎vs鈴木のドラムソロ対決が始まる。交互にドラムソロを披露した後に共演、高崎はスティックを投げ入れ「あんぱん!」と大きくコールする。「たっかん!」という二井原のコールを先頭に残りのメンバーが再びステージに姿を現す。ドラマーも鈴木、西田と役者は全てステージに揃っている。

二井原が自分以外のメンバーを紹介し、最後に高崎が二井原を「大阪実!」と紹介すると笑いと拍手が広がっていく。勿論、二井原は突っ込みも忘れない。

そんな楽しい時間も残り僅か、高崎の名残惜しそうなギター・ノイズがテーマ曲とも言える“Loudness”の開始を告げる。鈴木と西田は完全にシンクロしたビートを叩き、その二人のドラムセットの間に山下は立ちベースを操る。キャッチーなメロディにファンは笑顔で楽しみ、二井原も楽しそうに大きく手を叩く。ギター・ソロを弾く高崎に二井原、山下の順に寄り添いプレイを楽しむ。

「また来年!みんなにとって良い年でありますように。最後の最後です、みんなで歌いましょう!」と声高らかに“Crazy Doctor”の曲名を告げる。鈴木と西田はお互いのプレイをチラ見しながらシンクロ率を高めていく。二井原はシャウトの間に腰を落としエアギター、高崎と山下は愛機を操る。途中で一瞬プレイが乱れた瞬間があったが、アイコンタクトと共にあっという間に修正してしまう。そういったものが楽しめるのもライブならではの醍醐味、そして熟練の職人集団LOUDNESSの凄みに唸り、驚く。

最後の最後まで大熱狂、両手にVサインの二井原が感謝の言葉と共に2019年最後のLOUDNESSの曲が終わった。

エンディングのSEとして“Farewell”が鳴る中、エールを送り指さす鈴木と西田。西田がステージ下手、鈴木がステージ上手から中央に歩み寄り手を取り合って大きく手を上げる。この日の主役と言ってもいい二人にこの日一番と言える大きな拍手と歓声が集まる。その横でSEに合わせて歌う二井原も本当に嬉しそうだ。

メンバー横並びで名残惜しそうに何度も手を上げる。山下は手を振りステージを去り、「ありがとう、良いお年を!」と二井原も続く。ドラマー二人は肩を組みステージ奥へと歩を進める。最後に高崎が「良いお年を」と深く一礼してステージ奥へと消えていった。

LOUDNESSのメンバーが消えてもまだ場内はまだ暗いまま。ステージを見ればバックドロップが落ち、再びスクリーンが姿を現す。LOUDNESSの40周年アニバーサリー・イヤーに向けて2020年39周年のプランがスクリーンに映し出されていく。日本でのツアーだけでなく海外公演の予定も次々と発表されていく。

この日、2019年のLOUDNESSは終わりとなったが、39周年の始まりを告げた日でもある。2020年のLOUDNESSもファンは目が離せないだろう。

2019年12月28日@東京EX THEATER ROPPONGI
<SETLIST>
01.Eruption (OPENING SE)
02.Crazy Nights
03.Like Hell
04.Heavy Chains
05.Soul On Fire
06.I'm Still Alive
07.Go For Broke
08.Dream Fantasy
09.In the Mirror
10.In My Dreams
11.So Lonely
12.Slaughter House
13.Black Widow
14.Black Star Oblivion
15.Metal Mad
16.The Sun Will Rise Again
-encore-
17.Requiem (SE)
18.The King of Pain
19.S.D.I.
20.鈴木正行vs高崎晃 Drum Battle
21.Loudness
22.Crazy Doctor
23.Farewell (ENDING SE)

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