『LOUDNESS JAPAN TOUR 2019 “HURRICANE EYES + JEALOUSY”』ツアー最終日@Zepp Tokyo

完全ソールド・アウトとなった『LOUDNESS JAPAN TOUR 2019 “HURRICANE EYES + JEALOUSY”』ツアー最終日の東京公演を完全レポート。

 

Report by 別府“VEPPY”伸朗

Photos by JOHN CHEESEBURGER

LOUDNESSの数ある作品の中でも名盤の誉れ高い『HURRICANE EYES』と、第一期編成最後の作品となったミニ・アルバム『JEALOUSY』を軸にした構成となる公演のショート・ツアーが行われた。この作品がリリースされた頃のLOUDNESSは海外での活動が主軸になっていた。それまで持っていたアグレッションにメロディアスさとダイナミックさをプラスして更に進化していった時期と言える。その時期の曲を中心としたセットとなれば当然ファンの注目度も高く、最終日のZepp TokyoはSOLD OUTとなった。

どこか80年代を思わせるドラムライザーの左右には『JEALOUSY』のアートワークを縦半分にした書き割りパネルが設置され、80年代と今のLOUDNESSがクロスオーバーしたかのようなデザインの巨大なバックドロップが、ファンの期待感を高めている。開演時間が近づいていくにつれ席が埋まり、今日は何が起きるのかとの期待感が、場内をざわつかせていた。

ほぼ定刻に場内暗転、オープニングのSEが鳴りいくつものライトがステージを照らす中、両手を大きく広げてサポート・ドラマーの西田竜一<ds>が登場、高崎晃<g>、二井原実<vo>、山下昌良<b>が姿を現し、80年代を想起させる衣装が今晩のスペシャルな一夜を華やかに盛り上げる。

二井原がライブの開始を告げるシャウト、西田のシンバルが鳴り響き“S.D.I.”の始まりを告げる。通常のライブであればショウのクライマックスでプレイされるこの曲がオープニングで披露されるというのは何とも贅沢なスタートだ。メンバーもオープニングからエンジン全開といった感じで山下はドラムライザーに駆け上がり、ステージに戻ればクルっとターンをキメ、高崎は鬼タッピングを惜しげもなく披露している。音圧とスピード感に圧倒される。

          二井原 実<vo>

          高崎 晃<g>

続けてオリジナルの『HURRICANE EYES』と同じ曲順で“This Lonely Heart”が始まると二井原は両手を上げ大きく拍手をして「みんな元気でしたか? 会いたかったですよ、いきましょう!」とファンを煽れば、場内から大きなリアクションがステージのメンバーへ返される。流麗な高崎のギター・ソロも絶品で、毎度のことだが聴き惚れてしまう。曲の終わりに二井原が深く礼をすると大きな歓声が津波の様にステージに押し寄せる。ファンへの感謝の言葉、コール&レスポンスからQUEENの“We Will Rock You”を少しプレイしてファンとの絆を陽気に深めている。

『HURRICANE EYES』と『JEALOUSY』からの曲をガッツリやるとこの日のショウの主旨を告げると、「楽しみにしてるぜ」とばかりに会場から大きな歓声が飛ぶ。それをかき消す様に“Jealousy ”の少しダークなメロディが高崎のギターから放たれる。ミドル・テンポの佳曲で、二井原の語りにも似た歌唱にも引き込まれてしまう。やや切ないミドル曲はLOUDNESSの違う世界を見せてくれる。

「一緒に歌えますか?」と始まったのは、力強いヘヴィ・バラード的な“Rock This Way”。山下は両足をグッと広げネックを揺らし、西田は派手なスティックさばきを見せながらボトムを支える。派手なライトの中でダークさが漂う“In This World Beyond”が始まり、二井原がステージ前でファンに拍手を促すとその輪は次第に大きくなり最後は会場全体へと広がっていく。

          山下昌良<b>

     西田竜一<ds>※サポート

MCで今日がツアーの千秋楽であること告げる二井原に大きな拍手が起きる。場内に向かって「まだまだこれからやで」と高崎。ここからは今のLOUDNESSの姿を見せるべく、昨年リリースの『RISE TO GLORY -8118-』からの曲が続く。

パワー・メタル的で高崎の凄まじいギター・ソロを聴かせる“No Limits”、今のLOUDNESSはどうだとばかりに堂々と二井原が大きく広げ、高崎が鋭い視線を送りながらギター・ソロを披露した“Soul On Fire”、過去最強のアグレッションで突き進むスラッシーな“I’m Still Alive”と畳みかける。80年代からLOUDNESSが変わらず持ち続けている要素と、ギラリと輝く懐刀の様な懐の深さを同時に見せつける。深読みかもしれないが、この曲名からも今を生きるLOUDNESSの覚悟も感じる。“I’m Still Alive”からメドレーの様に高崎のギター・ソロを挟む形で西田のドラム・ソロへと流れていく。

再びステージに登場した二井原が「史上最強の助っ人ドラマー!」と西田を紹介すると、彼に向けて大きな拍手と歓声が送られる。シンバル・カウントから“Why And For Whom”が始まると再びファンはLOUDNESSの世界に引き込まれていく。キャッチーかつ勇壮なメロディ、ほんのりとオリエント感の漂うこの曲も今のLOUDNESSの素晴らしさを伝える曲で、聴けば聴くほどにスルメの様な味が出てくる。

ここから耳休めと二井原が少し自虐的に告げ『HURRICANE EYES』からバラードを2曲。まずはメロウなパワー・バラードと言っていい“In My Dreams”をプレイ。後半に向けて勇気づけられる様にドラマチックに盛り上がっていく名曲。高崎のギターが悲し気なメロディを刻みミラーボールのライトが場内を照らす中、名バラードの“So Lonely”がファンの心を震わせる。コーラスでは手をあげ横に大きく揺らすオーディエンス、もっと声を聴かせてくれと二井原は両手を広げマイクをフロアに向ける。最後に二井原はアカペラでブルージーに曲を締めくくる。

演奏陣のパフォーマンスも素晴らしかったが、この2曲では二井原実というシンガーの表現力に酔いしれたファンも多かったであろう。曲が終わり、暗転するステージと反比例し、拍手は大きくなっていった。

笑いを交えながらアットホームな雰囲気でメンバー紹介、高崎が「もう少し元気出して行きましょうか!」とファンへ喝を入れる。そして二井原の口から「METAL WEEKEND」の開催、某夏フェスに出演するかもしれないとの発表から、ショウは後半戦へと突入していく。

ポップでキャッチーな“Rock’n Roll Gypsy”では山下はステージを駆け、ファンは楽しそうに手を上げ歌う。そんな場内の様子を並ぶようにプレイしながら見ている高崎と二井原、西田も楽しそうに笑顔でプレイしている。場内の盛り上がりに満足そうにガッツポーズする二井原、両手を高く上げ、ファンの拍手を煽りながら“Long Distance Love”へとアメリカンな雰囲気の楽曲でファンを盛り上げていく。

縦ノリの“Heavier Than Hell”は『JEALOUSY』からのレアなナンバーで、シンプルなメロディで力強さもある。その心地よいグルーヴがファンを揺らしていく。また、軽快で疾走感溢れる“Dreamer And Screamer”もファンにとっては嬉しいレア曲だったろう。曲終わりには「東京最高だぜ!」と二井原がシャウトを一発決める。

大歓声の中、二井原が感謝の言葉を述べて本編最後となる曲名を告げる。高崎がモニターに足をかけメタリックな切れ味鋭い“Die Of Hunger”のリフが放たれる。LOUDNESSの疾走系の曲の中で隠れた名曲的なポジションなのが不思議な感じだ。もっとライブでもプレイして欲しいと思いながら、LOUDNESSの熱演に目と耳を奪われていた。短いベース・ソロ、ドラム・ソロ、そしてギター・ソロを織り込んでいるのもニクイ。そのギター・ソロでは高崎を挟み込む様に山下と二井原がフォーメーションを決めていた。「また会いましょう!」と二井原の言葉を残しメンバーはステージから去っていった。

アンコールを求める拍手の中、それまで左右に分かれていた『JEALOUSY』の書き割りパネルがドラム・セットを隠す様に中央で合体する。ステージではスタッフがドラム・セットの入れ替えに忙しそうに動き回っている。あの男の登場かと場内の拍手は更に大きくなり、すでにその男の名を叫んでいるファンも多くいた。

SEが鳴り、ブルーとレッドのライトが場内とステージを舐める様に照らし、ファンの注目と独特な緊張感が場内に満ちた中、フード付きのガウンを着た大柄な男が姿を現す。その顔はフードに隠され、まだ見えない。まるでリングに向かうボクサーの様に登場して、両手を高く突き上げた時にこの男の顔が明らかになる、鈴木“あんぱん”政行<ds>だ。札幌公演では登場がアナウンスされていたが、最終日となるこの日は彼の登場はアナウンスされていなかったので、このサプライズにファンは喜びの声を上げていた。

鈴木は一礼してドラム・セットに座る、そして大きく手を上げドラムを一発鳴らしてアンコールがスタートした。アンコール一発目、高崎が刻んだリフはDEEP PURPLEの“Burn”だったが二井原が歌い始めると演奏はストップしてしまう。「やらんのかい!」と二井原が突っ込み、ファンのやんやの歓声の中、再び高崎が刻んだリフは“Crazy Nights”。ファンがサビを声高らかに歌う中、フロントの3人はステージ中央でフォーメーションを決める。ドラムを叩く鈴木に向かって、高崎、二井原、山下の3人がエールを送る様に向かい合っていたシーンはファンにとってはたまらないであろう。

     鈴木”あんぱん”政行<ds>

曲が終わり、声高らかに鈴木を紹介する二井原、どうだと言わんばかりに手を上げる高崎、ファンは鈴木を大きな拍手で歓迎する。

“Crazy Doctor”が始まると口を開き魂のドラミングを見せる鈴木だが、昨年末のパフォーマンスよりも格段に復調してきているのが分かる。そんな鈴木のドラミングに他のメンバーも嬉しいのか、ステージ上手、下手と駆け回る。

いただいていたセット・リストはこの“Crazy Doctor”で終わりだったのだが、まだまだ叩き足りないぜとばかりに鈴木の激しいドラミングから初期の名曲でLOUDNESSでも屈指のスピードを誇る“Esper”へと続いた。疾走系で激しい曲の2連発に大丈夫かと最初は少し思ったのだが、曲が始まって直ぐにそれも無用だと鈴木のドラミングが答えを出す。二井原が何度も手を振り上げファンを煽る中、熱狂と興奮に包まれこの日は終了となった。

エンディングのSEが鳴り響く中、カーテンコール。西田と鈴木はエールの交換をしている。鈴木はLOUDNESSのロゴの入った大きなバスタオルを誇らしげに広げ、それを場内のファンに投げ込んでプレゼントしていた。

『HURRICANE EYES』と『JEALOUSY』からの楽曲中心セットでスペシャルな一夜であり、LOUDNESSという歴史あるバンドにはライブで定番ではない曲の中にもギラりと光り輝く曲がまだまだ沢山あると再認識させられた日でもあった。残念ながらこの日はセットから外れてしまったが、『HURRICANE EYES』収録の“Strike of the Sword”もかなりの名曲だと思うのでいつかプレイして欲しい。そして最後に鈴木がステージに立ち、魂燃やすプレイをしたのも心をアツくさせた。

この後、札幌で初日を鈴木が、二日目に西田が叩くこれまたドラマー対決となっているLOUDNESSのライブが控えている。この対決の結果次第で、鈴木の完全復活の日が決まるかもしれない。鈴木はバックステージで「まだ70パーセントですよ」と笑っていたが、完全復活ももう目の前と思わせるパワフルなドラミング見せてくれたのは心の底から嬉しかった。プレイされた楽曲だけでなく、完全復活間近の鈴木がステージに立ったということもファンにとっては忘れられない一夜になっただろう。

LOUDNESS@Zepp Tokyo
2019年5月31日
<SETLIST>

OPENING SE(Eruption)
01. S.D.I.
02. This Lonely Heart
03. Jealousy
04. Rock This Way
05. In This World Beyond
06. No Limits
07. Soul on Fire
08. I'm Still Alive~Drum Solo
09. Why and for Whom
10. In My Dreams
11. So Lonely
12. Rock 'n' Roll Gypsy
13. Long Distance Love
14. Heavier Than Hell
15. Dreamer and Screamer
16. Die of Hunger
ーencoreー
SE(8118)
17. Burn(DEEP PURPLE COVER ※INTRO)~Crazy Nights
18. Crazy Doctor
19. Esper
ENDING SE(Farewell)

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