藤木昌生の密かな楽しみ Vol.28 ~ 気まぐれプレイリスト 14
2005年~2017年にNORAZOというコミカルな男性2人組のユニットでそれなりに成功を収めて、その後は自身のバンドH.Y.U.Kで日本デビューも果たした…というのは最近知った話。(笑) NORAZO時代から歌の上手さは評判で、E Hyuk名義のYouTubeチャンネルにはカヴァー動画が山ほどアップされていて、メタル系の曲も少なくない。生来の声質がソフトなので、曲によって合う合わないはあるかもしれないけど、歌唱力がレベチであることは間違いないと思う。
とりあえず、DREAM THEATERの”Another Day”とSTEELHEARTの”She's Gone”の動画を載せておくので、是非一度聴いてみてください。高い声が出る人は日本にもいくらでもいるだろうけど、静かなパートでじっくり聴かせるだけの歌唱技術・情感を持っているところが素晴らしい。
このイ・ヒョクやチョン・ホンイルに興味を持った人は、YouTubeであれこれ検索してみてください。色々と興味深い動画が見つかると思うので。
ここでついでに紹介しておきたいのが、韓国のプログレ・メタル・バンドSAHARAのイ・ジェホ(Lee Jae ho)。彼が参加したSAHARAの2nd「SELF EGO」(1996年)は優れたクオリティのアルバムで、当時テイチクから日本盤も出たんだけど、日本では「英語は喋りもヒアリングもできないけど聴く音楽は英語じゃなきゃイヤだ」という意味不明のリスナーが多いせいで(笑)、アルバムは全然売れずに終わったらしい。僕の中にはそれまで、白人崇拝や英語崇拝の感覚は特になかったと思うんだけど、「アジアの中では日本がロック先進国」みたいな根拠のない優越感みたいなものがあった。でも、このSAHARAのアルバムを聴いた時にそのおめでたい勘違いが粉砕されたという思い出がある。その数年後には僕はキム・ギョンホの存在を知って、さらなる衝撃を受けるわけですよ。そして、今はもう音楽シーン全体のレヴェルにおいて、日本は韓国を追いかけなきゃいけない状態にあるかもしれない。例えばアイドル・グループなんかを両国で比較してみても、その手に詳しくない僕が見てもそのクオリティの差は歴然としているのが判る。今「韓国を追いかける」と言ったけど、たぶん日本は競争心を抱いて追いかけるようなことはせず、従来のスタイルの中でビジネスをしていくことを選ぶような気がするけど…。そこまで追求しなくたって金儲けできるのなら、演者に高いレヴェルを要求しなくたって金儲けできるのならそれでいいじゃないか、という感じで…。
話がそれてしまったけど、僕はそのSAHARAの「SELF EGO」のラストを飾るバラードが大好きで、イ・ジェホの歌唱はいつ聴いても心を揺さぶられる。良かったら下に載せたそのバラードを試聴してみてください。イ・ジェホは今どこで何をしてるんだろう?
さて、それでは今回の気まぐれプレイリストに行ってみましょう。
クサメロ愛好家の間では知られたフランスのパワー・メタラー。初期2作はかなりイモだったけど、3rdで一気に覚醒し、この曲が収録された4th「VIRUS」で完成の域に達した。3rdが好評だったことで(たぶん札束を積まれて)日本での所属レコード会社を移籍したせいで来日できずに終わってしまった。当時、3rdを出したキングレコードの担当者は「うちだったら絶対来日させたのに」と本当に悔しがっていた。ベン・ソット<vo>の歌声にクセはあるが、彼がこのバンドの頭脳なのだから仕方ない。つーか、彼の作曲センスはただ者じゃないので、歌唱のクオリティなど二の次、三の次でいいんです。この曲のサビの大仰さなんてMANOWARばりで最高じゃない? この4thから加入したオリヴィエ・ラポーズがまた良いギタリストでねぇ。ほんと勿体ないバンドでした。
VANDENBERGのバラードといえば100人中99人が”Burning Heart”を挙げるだろうし、あの曲が名曲であることは間違いないけど、僕はどっちかと言えばこの曲の方が好きなんだよね~。泣きの入り具合はこっちの方が上でしょ?ロニー・ロメロに代わってマッツ・レヴィンが加入した次のアルバムはどうなるんだろうね。先行シングルを聴いた限りでは「ああ、やっぱダメか…」という感じだけど…。(苦笑) 正直なところ、マッツのヴォーカルで初期3作の曲を新録したリメイク・ベスト盤でも出してくれた方が嬉しいな。(笑)
このバンドにとって初めて全米TOP 10入りした5th「SPECIAL FORCES」からシングル・カットされて、これまた初めて全米TOP 10入りを果たしたヒット・ナンバー。1982年にこの曲を聴くまでは、サザン・ロックというと見た目どおりのもっさり&まったりの音だという先入観があったのでちょっと敬遠してたんだけど、この曲を耳にして「爽やかだし、ちょっと哀愁もあっていいじゃん!」と思ってアルバムを聴いてみたら、アルバムも全体的に良い感じでね。自分の中では、サザン・ロックに対する偏見を打ち消してくれた曲です。
まだ伊藤政則さんの『ロック・トゥデイ』(ラジオ関東)が始まる前、HM/HR専門ではなかったけど洋楽ロックの貴重な情報源だったのが大森庸雄さんの『ロッキュペーション』(文化放送)だった。その番組のニュース・コーナーのBGMだったのがこの曲で、長いこと誰の曲か判らなかったんだけど、ある日、テレ東の『おはスタ』でこの曲が流れた時にPABLO CRUISEというクレジットを見たので、曲名が判らないまま彼らのアルバムを中古盤で買い漁って、ようやくこの曲であることを突き止めたのでした。僕にとってはその『ロッキュペーション』でランディ・ローズの事故死を知らされた時に流れていた曲ということで忘れられない曲になってるけど、それを差し置いてもなかなか良い曲じゃないでしょうか。
この曲が収録された「LOUDER THAN HELL」はBURRN!本誌の『温故知新』コーナーでも取り上げたことがあったと思う。MANOWARは良くも悪くも暑苦しくて大仰なメタル・バンドだけど、彼らのポップ・センス(?)が発揮されたのが「LOUDER THAN HELL」だったと思う。ハイとローをカットして中音域だけでカチャカチャ鳴っていて、左右のセパレーションもクリアに分けすぎたサウンド・プロダクションが残念なので、できればアルバム丸ごと新録してくんないかな。サシャ・ピートとかにプロデュースしてもらえば荘厳なアルバムに生まれ変わるような気がするんだけど、どうでしょう?
SIDE B
このフィンランドのイモ・バンドを覚えてる人はどれくらいいるかな? テイチクの『Metal Mania』レーベルからアルバムが出てましたね~。最近、『Frontiers』からSTORMWARNINGというバンドがデビューしたのでこのバンドのことを思い出したんですが、個人的にはこの1曲だけで忘れ得ぬバンドになってます。(と言いつつ、曲名が思い出せず今回紹介するために検索しましたw) いや、でも、演奏や歌唱やプロダクションはイモだけど、この曲のメロディや曲展開の煽情力は北欧メタル史に残るインパクトを持ってると思います。H.E.A.TとかART NATIONみたいな現代の実力派バンドがこの曲をカヴァーしてくれたら、どれほど感動的なものになるだろう…なんて妄想を抱いたりしてね。
浜口 司<vo>と安宅美晴<g>によるこのJ-POPユニットは以前にもこの気まぐれプレイリストで取り上げましたね。THE UNCROWNEDの天才ソングライターTakeshiもリスペクトするユニットです。この曲は6th「BODY」からシングル・カットされた曲で、KIX-Sの全盛期の1曲と言えるかもしれない。元々のメロディ展開が絶品なのは勿論だけど、葉山たけしによるアレンジが神だと僕は思ってます。安宅さんは今は音楽教室をやってるそうなので、体験入学してみようかなと思ってます。(笑)
スウェーデンのトニー・ニーヴァ<vo>のプロジェクトの2011年の2ndアルバムのタイトル曲。ゼロ・コーポレーションから出た1st「NO CAPITULATION」はほとんど印象に残ってなかったので、この17年振りの2ndは何も期待せずに聴いたんだけど、なかなか良いアルバムでした。特にこのタイトル曲が秀逸で、イントロなんかはそのへんの高校生でも思いつきそうなリフだから油断してたら、サビの美メロで完璧なカウンターを食らって失神KOでしたね。
3月に亡くなったアメリカのシンガー・ソングライター。日本では”ミスターAOR”と言われるほど愛された、いわばAOR界の巨匠だった。以前に彼の曲をこの気まぐれプレイリストで取り上げた時にも書いたけど、僕は完全に後追いで、90年代に入ってから彼の音楽を聴き始めた。この曲は彼の最大のヒット曲で、元々はボズ・スキャッグスに提供してヒットした曲を後からセルフ・カヴァーしたのだという。僕は90年代中頃から2000年代中頃まで沖縄(石垣島)にハマっていて、毎年旅行に行っていたんだけど、初めて訪れた沖縄のホテルでこの曲が流れていたことが一生の思い出になっている。彼には、本当に美しくロマンティックな音楽をありがとうと言いたい。
南米のペルー出身という希少なバンドの2020年リリースの現時点での最新音源。このバンドが2013年にデビュー・アルバム「LEAVE ALL BEHIND」を出した時は、そのクオリティの高さ(というか曲の素晴らしさ)に衝撃を受けたけど、その後、長いこと音沙汰がなくて、久々にリリースされたのがこの曲だった。シンガーは代わっていたけど音楽スタイルは変わっていなくて、こりゃニュー・アルバムも期待大だなと思っていたら、そのまま再び音沙汰がなく…。最低でもHIBRIA程度に成功してもおかしくない才能を持ったバンドだと思うので、頑張ってほしい。
★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く
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