【BURRN! 10月号ちょい読み】

BON JOVI──復活を宣言したNYレジデンシー公演をレポート

BY MASA ITOH

BON JOVIの復活を告げるツアー、『FOREVER 2026』は、ニューヨークのロックの殿堂『マディソン・スクエア・ガーデン』での9回公演で幕を開けた。声帯の移植手術を受けて懸命なリハビリを続けていたジョン・ボン・ジョヴィの姿は、あのドキュメンタリー映画『BON JOVI : THANK YOU, GOOD NIGHT』に生々しく描かれている。それは壮絶なリハビリであり、軽々しく復活について語ることが出来ない、非常に重い空気を孕んでいた。2024年、注目のニュー・アルバム「FOREVER」を発表。さらに、2025年、新曲 “Red, White And Jersey” を収録し、また、豪華なゲストを迎えて再構築されたアルバム「FOREVER (LEGENDARY EDITION)」が登場した。時代の激しい流れの中で、日々、音楽シーンの主人公が変化していく状況に危機感を持っていたジョンは、「FOREVER」に重しをくくり付けて、この再構築アルバムでその流れに歯止めをかけ、自信作への聴き手の再認識を求めた。この時、既に復活のツアーのやり方についても答えを出していたはずだ。

『M72 WORLD TOUR』で『NO REPEAT WEEKEND』という男気溢れる企画を打ち出していたMETALLICAは、多くのミュージシャンたちにも刺激を与えていた。ジョンもその中の1人であり、彼はラーズ・ウルリッヒに連絡して『NO REPEAT WEEKEND』の企画の意図と、それがBON JOVIにも通用する企画であるかどうかを尋ねている。当然ながら、『マディソン・スクエア・ガーデン』で9回公演という、いわば、離れ業に近いレジデンシー公演を実現させるためには、かなり前から関係者と話を詰めておく必要がある。復活という重要なイベントに最大級のインパクトを与えるためには、空前のスケールと衝撃性を併せ持った、緻密で、大胆な計画がなければならない。ジョンは自身がプロデューサーとなり、前面に出て、この壮大なイベントを成功させるための戦略を練り続けた。結果、『マディソン・スクエア・ガーデン』を合計9回と、スコットランド、ダブリン、ロンドンの3ヵ所、全5公演というツアーが実現した。

2025年10月22日、日本時間の深夜に発表されるツアー『FOREVER 2026』には、実は日本公演も含まれているという話があった。これは信頼できる筋からの情報だ。ところが、発表の前週になって「日本公演は含まれなくなった」と言ってきた。理由はよく判らない。察するに、ジョンのヴォーカルのコンディションの様子を見る、無理はせずに2027年のツアーも視野に入れるという意思表示だった可能性がある。さらに、衝撃的だったのは、これがフェアウェル・ツアーとして発表されるかもしれないという情報だった。いずれにしても、『FOREVER 2026』の発表がカウントダウンの状況に入った頃、それを確かなものにするリークのニュースが打ち上げられた。『Radaronline』という聞きなれないサイトでの発表だ。明らかに、意図的なリークである。かくして、2026年7月7日を初日に『マディソン・スクエア・ガーデン』からツアーは開始されることになった。

注目の初日のオープニング曲がBEATLESのカヴァー曲である “With A Little Help From My Friends” だったことが話題になった。声帯の移植手術を乗り越えてステージに立ったジョンは、自身の現在の素直な心境をこの曲に映したのではないか。観客のみんなの力を借りたい、と。確か、出産に立ち会うためにジョンの来日が遅れて日本公演の初日がキャンセルになり、振替公演がマチネで行なわれた時、この曲でショウが始まったことがある。そういう事情を知っていると、なるほどと思う選曲だった。『マディソン・スクエア・ガーデン』でのセットリストを調べていただきたい。キーが高いという理由で一時期演奏していなかった “In These Arms” や “Always” も選曲に入れ、まさに、ベスト・オブの構成でライヴを組み、しかも、その選曲を変えながらレジデンシー公演を続けていたことが判る。日本公演があるかもしれないという噂が出た時、日本のプロモーターに本当に公演があるのかどうかを確認した。「会場は押さえていない。まずは初日の様子をみて、それからのことを判断するのではないか」との返答だった。実際、“初日の様子をみた” ジョンは、その後、ギアを入れてフル回転を始めた。セットリストにそれが如実に表われている。ところが、徐々に雲行きが怪しくなっていく。私は自分のスケジュールに合わせて幾つかの渡米パターンを用意していた。

そして、最終的に『マディソン・スクエア・ガーデン』の最終公演に照準を合わせていった。出発の前日、ユニバーサル・ミュージックの担当ディレクターと会った時、彼はいかにも言いにくそうに、8回目の公演が途中で打ち切りになったことを話し始めた。ジョンは副鼻腔炎の症状が辛くなり、“Livin’ On A Prayer” をプレイした後、コンサートを打ち切ったという。副鼻腔炎を患うと、声が枯れることがあり、また、激しいのどの痛みを伴うことがある。デイヴィッド・カヴァデールはそれが引退の引き金になった。ただ、ジョンは最後の9回目の公演を必ずやり遂げるだろうという確信めいたものがあった。終わりよければ総てよし。そういう見せ方をして、アイルランド、イギリス公演への力強いメッセージを送らなければならないからだ。たとえ中止になったとしても、“中止の現場にいる” ことが、物語を語る際の1つの大きな要素になると思っていた。

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