KISS東京ドーム公演にYOSHIKI登場のサプライズ! そして本誌から全KISSファンへの「大切なお知らせ」
場内にLED ZEPPELINの“Rock And Roll”が流れ始めたのは、午後6時59分のこと。この曲が開演間近であることを知らせるサインであることはすでに広く知れ渡っていて、すぐさまどよめきが起こり、客席は総立ちに近い状態に。ほどなく同楽曲がフェイド・アウトし、暗転。「Alright Tokyo! You wanted the best, you got the best. The hottest bad in the world, KISS!」というお馴染みのアナウンスに続き、オープニングの定番というべき“Detroit Rock City”のイントロが聴こえてくる。ステージを覆い隠していた幕が取り去られると、スモークと爆裂音にまみれながら、4人の怪物たちが上空から降臨する。事前情報そのままの、いわば想定通りのシーンではある。が、それでもやはり興奮を抑えきれない。しかも続く2曲目は“Shout It Out Loud”。序盤から惜しみないキラー・チューンの連発だ。
同楽曲が着地点に至ると、ポール・スタンレーが「コンバンワ、トウキョウ! みんな気分はどうだい?」と挨拶する。仙台公演でも感じたことだが、明らかに声がかすれている。11月に組まれていたオーストラリア/ニュージーランド・ツアーが中止されたのは、彼がインフルエンザと喉の感染症を患い、一定期間の安静を要する事態になったためだが、どうやら今も喉は完全な本調子ではないようだ。ただ、歌唱への影響はほとんど感じられないし、しかもプログラムが進んでいくにしたがって、その声の響きは彼ならではの張りと伸びを取り戻してくる。しかも、4人全員がヴォーカルをとれることがKISSの強味のひとつであることは、昔も今も変わらない。筆者には、ジーンが自らリード・ヴォーカルをとる曲において、これまでの彼の平均以上に力強い歌声を披露していたように感じられたし、コーラスで支えるトミー・セイヤー、エリック・シンガーの存在も実に頼もしく思えた。
さまざまな時代の楽曲を織り交ぜながらの演奏内容は、仙台公演の際と基本的に変わらない。ジーンは“War Machine”では火を吹き、“God Of Thunder”では血を吐き、上空から場内を見下ろすように歌う。ポールは「少年時代に出会った、意味はまるで分からないけれどビューティフルな曲」と言って、坂本九の全米No.1ヒット・ソング、“Sukiyaki(上を向いて歩こう)”を口ずさんでみせ、オーディエンスに合唱を促したかと思えば、次の瞬間にはアリーナ後方に設えられたセカンド・ステージへと空中移動する。例によって、見どころは過剰なほどにある。しかも繰り出されるのは長い歴史の中から厳選された鉄板曲ばかりだから、時間はあっという間に過ぎていく。仙台公演の際にはアンコールに組み込まれていた“Crazy Crazy Nights”が本編の終盤で演奏されるという変化はあったものの、ライヴ本編は良い意味で筋書き通りに進んでいき、“Black Diamond”で幕を閉じた。
だが、アンコールにはサプライズが仕掛けられていた。ポールが「良き友人で、日本最大のロック・スター」と言って、予定外のスペシャル・ゲストを紹介する。YOSHIKIである。実はこの日の夕刻、ジーンが自身のツイッター・アカウントで彼の登場を匂わせていたのだが、彼はまずエリック・シンガーが歌う“Beth”のピアノ伴奏を務め(仙台公演ではエリック自身の弾き語りにより披露されている。彼は本誌12月号に掲載のインタビューのなかで、この曲の演奏をマスターするにあたり、デレク・シェレニアンに手本を見せてもらったことを認めている)、続く“Rock And Roll All Nite”ではドラムを演奏。この先、よほどのことが起こらない限り、この夜のライヴはKISSにとって最後の東京公演になるだけに、その最終場面はメンバー4人のみで締め括るべきであるようにも思えたが、当然ながらこれはKISS自身の判断により選択されたこと。そこから感じられるのは、このツアーが“別れ”や“終焉”を悲しむためのものではなく、5つのディケイドをまたぎながら最先端を走り続けてきたKISSのライヴ・バンドとしての人生をオーディエンスと共に“祝福”することを目的とするものなのだ、ということだ。
少年時代にKISSとの出会いによりロックに目覚め、それによって人生が変わったと認めているYOSHIKIにとって、これはまさに夢のような出来事だったはずだし、実際、彼は同日、ツイッター上から「KISSに出会わなければ、自分は生きていなかったかもしれない。今夜、夢が叶う!」というメッセージを発信している。KISSはこの機会を通じて、YOSHIKIに何かを継承させようとしたのかもしれないし、彼と同様にKISSとの出会いによって何かに目覚め、このバンドの音楽を人生のサウンドトラックとしてきたオーディエンスに対する想いを伝えようとしたのではないだろうか。
こうしてジャパン・ツアーの第二夜となる東京公演は終了した。この先には盛岡(14日)、大阪(17日)、そして名古屋(19日)の公演が控えている。すでに盛岡と名古屋の公演チケットはソールド・アウトになっているが、17日に行なわれるKISS史上初となる京セラドーム大阪での公演にも注目したいところだし、この機会を逃さずにおきたいものだ。
さて、ここでひとつ重要なお知らせがある。今回のジャパン・ツアーに関する記事は当然ながら1月8日発売のBURRN!2月号にも掲載されるが、1月31日には『KISS来日大全』と銘打ったスペシャルな1冊が登場する。
こちらには1977年から今回に至るまでの来日公演すべてを網羅したさまざまな記事が掲載され、まさに「KISSの日本公演の歴史」が凝縮された内容になっている。当然ながら今回のツアーについても全公演のレポート、さらには勿論、貴重なインタビューやデータも満載となっているので、楽しみにしていて欲しい。詳しい掲載内容などについては、また機会を改めて。
<12月11日 東京公演セットリスト>
Detroit Rock City
Shout It Out Loud
Deuce
Say Yeah
I Love It Loud
Heaven’s on Fire
War Machine
Lick It Up
Calling Dr.Love
100,000 Years
Cold Gin
God of Thunder
Psycho Circus
Let Me Go Rock’n’Roll
Love Gun
I Was Made for Lovin’ You
Crazy Crazy Nights
Black Diamond
-encore-
Beth
Rock and Roll All Nite
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