【インタビュー】
『METAL BATTLE JAPAN』に優勝し、世界本戦へと挑むゴシック・メタルコアの実力派、GIVEN BY THE FLAMESがクラウドファンディングを開始。フロントマン、Willianが語る理想と現実、そしてピュアな野望。

取材・文●増田勇一

由緒正しき世界最大級のメタル・フェス『WACKEN OPEN AIR』 が今年も7月29日から8月1日にかけてドイツで開催される。今回は同フェス自体が35周年を迎えることもあり、例年以上の盛り上がりが期待されているが、そこで注目を集めているのはJUDAS PRIESTやDEF LEPPARD、SABATON、POWERWOLFといった豪華な出演者の顔ぶればかりではない。毎年、世界各国の30組以上の代表バンドが優勝を賭けて競う『METAL BATTLE』の行方も気になるところだ。
その『METAL BATTLE』本戦への出場権を賭けて去る4月12日に開催された『METAL BATTLE JAPAN』を勝ち抜いたのが、2013年に結成されたGIVEN BY THE FLAMESだ。この『METAL BATTLE』においては過去にSABLE HILLS、PHANTOM EXCALIVERが優勝を果たしており、前回開催時には、惜しくも栄冠は逃したもののPARAMENAが強烈なインパクトを残している。
今回はそのGIVEN BY THE FLAMESのフロントマンを務めるWillianに、現在の心境や世界の大舞台に挑む意気込みを聞いた。なお、彼らは今回の『WACKEN~』での本戦出場に際して、渡航費等の工面を目的とするクラウドファンディングを立ち上げている。本記事を読んで興味を持った皆さんにも、是非チェックしてみて欲しいところだ。

――『METAL BATTLE JAPAN』の開催当日、GIVEN BY THE FLAMESの優勝が発表された瞬間のWillianさんの表情がとても印象的でした。まさに「報われた!」という声が聞こえてきそうな顔をしていましたよね?
Willian:
やっぱりそういう表情をしてましたか?(笑)本当にそんな気分でした。具体的な評価を受けるというのが初めてのことだったので。ことに自分たちの場合、今回は敗者復活枠での繰り上げ出場で、当日も一番手として登場することになり……しかも対バンでお世話になっているバンド、仲良くしてきたバンドもいる中でのことだったので、どの出場者も頑張っているのはわかっていたから、とにかく自分たちにできることをやろう、と。今回の『METAL BATTLE JAPAN』に限ったことじゃなく、普段のどんなライヴについても、安くないお金を払って観に来てくださってる人たちに対して全力の演奏をすることを常に心掛けているし、あの日もいつもと同じようにライヴをしたつもりだったんです。それが結果的に優勝に繋がるなんて思ってもみなかったので、本当に報われたというか、信じられないという気持ちでしたね。
――いつもどおりのことをやって認められた。そこにすごく価値があるように思います。
Willian:
ええ。「いつもどおり」のことをちゃんとしっかりやってきて良かったな、と思えました。これまでも規模の大小とかに拘わらず、1本1本のライヴを一切の妥協なくやってきたつもりなんです。ただ、もちろんそれはどのバンドにとっても同じことだと思いますけど、自分たちが優勝したんだと知った瞬間は、あまりにも現実味がなかったので、その事実を頭の中で整理するのにちょっと時間がかかりましたね。「ちょっと外に出て空気を吸ってこなくちゃ」という感じでした(笑)。

――GIVEN BY THE FLAMESはこれまで海外アーティストの来日公演に帯同する機会も重ねてきていますけど、当然、自分たちでも国外でのツアーを、という願望は持っていたはずですよね?
Willian:
もちろん。そういった気持ちがありつつもなかなか実行できずにいたのは、生々しい話ではありますけど、やはり費用面などの問題からでもあるんです。ただ、海外のバンドと仕事をする機会には恵まれてきたので、それを通じて知識を増やしつつ、裏事情なども学んできて……。やっぱり昨今は、円と外貨との兼ね合いとかの部分で、日本から向こうに行くのはかなり厳しいところもあるわけです。だから今回についても『WACKEN~』に出られるのであれば、その後に同じドイツ国内や近隣の国を何ヵ所か回りたいと考えていて、それに向けての調整も急ピッチで進めているところなんです。せっかくあの大きなフェスに出られるのであれば、それを土台にしながら繰り返し向こうに行けるような状況を作りたいですし、『WACKEN~』のような場では現地のエージェントやマネージメントなどと話ができるチャンスもあるはずなので、そこでいろいろな話を決められたらな、と思っているんです。
――Willianさんの場合、英語面での不安もないですしね。
Willian:
実は、英語は独学で。音楽活動のためだけに英語を覚えてきたんです。生まれたのは日本なんですけど、幼い頃にブラジルに渡って、公用語はポルトガル語だったわけです。その後、10歳の時に日本に戻ってきてまず日本語を勉強して……その後、音楽をやりたくなった時点から英語を学び始めたんです。少年期の僕はMY CHEMICAL ROMANCEが好きで、彼らが何を言っているのかを理解したくて……それを動機としながら身に付けてきた英語がようやく役に立つことになったわけです。今回の『WACKEN~』出場を、来年以降の活動展開に繋げていきたいですし、それが当面の目標ということになりますね。仮に今回の渡航が金銭面でマイナスになったとしても、次に繋げていくことに価値があると思っているので。
――それにしても「音楽が理由で英語を学び始めた」というのがとても興味深いです。
Willian:
その前にまず日本語を勉強しないとならなかったですけどね(笑)。中学生の頃にメタルに興味を持ち始めて、高校生の頃にバンドも組むようになり、その当時から英語をちゃんとやろうと思うようになって。元々英語ができるものと思われがちなんですけど、実は全然違っていて、いまだに勉強は続けてるんです。だから本当に『METAL BATTLE JAPAN』の結果発表の時に自分たちの名前が呼ばれた瞬間は、その当時からのことも含めて、まさしく走馬灯のように記憶が蘇ってきて「やってて良かった!」と思えたんです。
――そこで「苦労が報われた!」と感じるのは無理もないことだと思います。
Willian:
そうですね。苦労してきて良かったな、と思いました。というか、それを苦労だとは思っていなかったので。客観的に考えれば結構な苦労をしてきたようにも思いますけど、とにかく我武者羅に上り坂を進み続けてきましたし、この先もずっとそうしていきたいですね。
――このバンドの活動歴は13年ほどになると思うんですが、過去にはメンバー・チェンジなども経てきましたよね?
Willian:
はい。5人編成の時期もありましたし、今も本当は5人編成でやりたい気持ちがあるんですけど、なかなか難しいところがあって。これまで利益とか動員を最優先するような活動をしてきませんでしたし、そういった姿勢はこのまま貫いていきたいんですけど、どうしてもバンドを運営していくうえではビジネスの部分が必要になってくるじゃないですか。ただ、それでも変にがめついバンドには絶対になりたくないし、そういったスタンスを理解してくれる人じゃないと一緒にやっていくのは難しいところがある。ただ、過去に一緒にやっていたメンバー、辞めていった人たちとの関係も良い形で続いているし、仲たがいのようなことはほぼ皆無なんです。そもそも僕自身、メンバー・チェンジはできるだけしたくないですし。
――結成時からの不動のメンバーはWillianさんだけなんですよね?
Willian:
ごく初期からのメンバーは僕だけです。そもそもはギターだったんですよ。カッコいいヴォーカルを見つけるために東京に来てみたら「おまえがギターを弾いてると、その横で歌うやつは映えないから、おまえがヴォーカルをやれ」と言われて(笑)。それで仕方なく、いいヴォーカルが見つかるまでは自分で歌うことにしたんですけど、結局は誰も見つからず、この形が定着しちゃったんです。今でもギターは曲作りのために弾きますし、ステージでも弾きたい気持ちはあるんですけどね。

――しかしフロントマンとしてのカリスマ性を存分に発揮していくためには今のスタイルがいいんじゃないかと思います。先ほどバンド運営の難しさの話になりましたが、今現在は同じ志、同じ考え方のメンバーが揃った状態にあるといえそうですか?
Willian:
そうですね。とにかく音楽がやりたい、バンドがやりたいという気持ちの強いメンバーばかりなんです。しかもこの4人での活動もだいぶ定着してきて、4人の意向が完全に合致した状態にあるので、ここに新たな誰かを迎えるのは難しいだろうな、というのもあるわけです。ライヴハウスのチケット代は海外アーティストの来日公演に比べればずっと安いですけど、それでもアルバム1枚よりは高いわけじゃないですか。仮にその日の自分たちの持ち時間が30分だったとしても、少なくともアルバム1枚に値するもの、それ以上のものを提供しなきゃいけないと思ってるんです。ただ、そういう姿勢でライヴに取り組んでいても、すぐさまそれが収益に繋がるわけじゃない。そこで同じ熱量を持てる人たちじゃないと一緒にやっていけないと思うので。
――動機がとてもピュアなところにあるのがよくわかります。GIVEN BY THE FLAMESの音楽は、敢えてカテゴライズするとなればゴシック・メタルコアということになりそうですが、Willianさん自身もそうした認識ですか?
Willian:
ええ。そもそもはMOTIONLESS IN WHITEとかMENPHIS MAY FIRE、MISS MAY I、すでに解散してしまったUPON THIS DAWNINGといったバンドがストライクゾーンど真ん中という感じだったんです。アパレルブランドで言うとブラッククラフト・クロージングやキルスターからエンドースを受けるようなゴシック、ホラー・テイストの見た目と歌詞でありつつ、曲調はメタルコアというか。1stアルバム当時はまさにそういうことを直球勝負でやってましたね。ただ、昨年の夏に出した「A BOOK OF AGONY」というアルバムでは、新たにいろいろな要素を入れることに挑戦していて、ジャンルレスというわけはないにしても、1曲1曲のジャンル感はさまざまでありながらアルバム全体の印象としてはゴシックなメタルコア、という作風になっていて。それも、自分たちにしかできないものをやろうと模索してきた結果なんです。そのアルバム制作を通じて、改めて自分たちの特性について理解できたところも大きかったので、この先に出すものはもっと完成度が高くなっていくはずです。最近ではミュージック・ビデオについての構想を練りながら、それに合わせて曲を作るような作り方にも挑んでいて、それも楽しんでますね。映像のディレクションも、できる限り自分でやっているんです。
――現時点での代表曲というと、やはり『METAL BATTLE JAPAN』の際にも演奏された“NIHIL”ということになりそうですか?
Willian:
そうですね。メンバー個々に違う見方をしている部分はあるはずですけど、バンドの看板になるものという意味では“NIHIL”がいちばんわかりやすいんじゃないかと思います。あの曲を1回でも聴いて、少しでもいいなと思えるところがあったなら、おそらくアルバムの中にも何曲か気に入ってもらえるものがあるはずです。
――『WACKEN~』での本戦でも欠かせない曲になりそうですね。そして、やはり出場するからには世界の舞台でも優勝を目指したいところですよね?
Willian:
もちろんです。正直に言うと、僕は誰かと競うことがあまり好きじゃないんですね。音楽は競うものではなく共有して楽しむべきものだと考えているので、まずは楽しむことを前提にしつつ、そこに結果が伴ってくれば最高だと思っていて。今は大型フェスのチケット代も高騰してきてますし、インフルエンサーのような存在が増えてきたこともあって、フェスに行って音楽を楽しむこと以上に、そこに行ってきたという事実をアピールすることが大事になってきているような傾向があるじゃないですか。それに対して僕は、誰も聴いてくれなかったとしても音楽をやり続けていきたいというタイプの人間なんです。当然ながら今回も勝ち負けがあることを理解したうえで挑みますし「この4人で勝ちに行く!」という心構えでいますけど、まずはあの場所に立たせてもらうことに対する感謝の気持ちを忘れずに、自分たち自身が楽しみ、その場にいる人たちを楽しませることに徹したいですね。そうすれば、おのずと結果は付いてくるはずだと信じているんです。

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“NIHIL”のMVはこちら。

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