グラハム・ボネットに代わるニュー・シンガーにドゥギー・ホワイトを迎え、新作「V」を発表したALCATRAZZにインタビュー!
2020年の終盤にALCATRAZZからグラハム・ボネット<vo>が脱退したというニュースが入ってきた時には、多くのファンが驚き、混乱した。イングヴェイ・マルムスティーンやスティーヴ・ヴァイといったギター・ヒーローを輩出したバンドとはいえ、ALCATRAZZは1983年のデビュー以来、今日まで常にグラハムのバンドであり、彼の歌声と強く結びついていたからだ。
結局、グラハムは新たなメンバーを集めてGRAHAM BONNET’S ALCATRAZZを立ち上げることを宣言し、一方、ALCATRAZZ本体は歴戦の実力派ドゥギー・ホワイトをニュー・シンガーに迎えて活動していくことになった。
そして、昨年の秋にそのドゥギーALCATRAZZの注目の新作「V」がリリースされた。この新作やシンガー交代の経緯について、ジミー・ウォルドー<key>に話を聞いた。
──ALCATRAZZの新作「V」が遂にリリースされました。ファンの反応は様々で、ドゥギーを受け入れる人が多かった半面、「グラハムの歌わないALCATRAZZはALCATRAZZではない」といったネガティヴな意見もありました。ファンの反応に関してはどう思っていますか?
ジミー・ウォルドー(以下J):そういった意見については理解してるつもりだけど、世界中の多くのバンドが様々な理由でメンバー・チェンジしてるわけで…。ALCATRAZZはゲイリー・シェア<b>と僕、そしてグラハムが対等な関係でスタートさせたバンドだった。1枚目と2枚目のアルバム・タイトルを考えたのはゲイリーだしね。だから、人々が今のバンドをALCATRAZZとして認めないと言うのなら、僕達はガッカリするだろうね。そういうことを言う人々の論理は、グラハムのソロ・アルバムを含む様々なプロジェクトがALCATRAZZだと言ってるようなものだろう。もちろん、それは間違いだよ。僕がグラハムと一緒にやった最近のGRAHAM BONNET BANDの2枚のアルバムには、音楽的な力強さを感じることはできなかったね。
──新作の内容自体は、初期のエネルギーを取り戻したフレッシュな作風だと思いますし、ドゥギーもジョー・スタンプ<g>も素晴らしいパフォーマンスを披露しています。あなた自身の考えはいかがですか?
J:「V」の出来には本当に満足している。ジョーとドゥギーは共に素晴らしいバンドメイトであり、素晴らしいミュージシャンだ。彼らと一緒に仕事ができてとても誇りに思うよ。
──ここで、グラハム脱退の経緯を改めて聞かせてください。最初に話があったのはグラハムの方からですか? それとも、バンド側が彼に脱退するように言ったのでしょうか?
J:グラハムがバンドを去る数ヵ月前、彼が「今後GRAHAM BONNET BANDをやっていくためにバンドを脱退するつもりだ。もうALCATRAZZにはいたくない」と周囲の人々に話していることが判明してね。僕達バンドのメンバーにはそんなことは一切言ってなかったよ。「BORN INNOCENT」(2020年)を完成させた後、彼は僕達とまったく話さなくなっていた。僕達は彼と話し合って問題を解決しようとしたけど、彼は全然コミュニケーションを取ろうとしなかったんだ。
──2019年にALCATRAZZを再結成した経緯はどうだったのですか? GRAHAM BONNET BANDが発展してALCATRAZZになったのでしょうか?
J:(バンドの再結成は)僕達は素晴らしいアイディアだと思っていたよ。僕達の進むべき方向性にピッタリのジョー・スタンプを加えて、ゲイリー・シェアをバンドに戻すことで、素晴らしいラインナップになると思った。グラハム自身も当時は「良い考えだと思った」と話していたよ。
──34年振りとなる4th「BORN INNOCENT」をリリースした頃のバンドの状況はどうでしたか? まだグラハムとは何も問題はなかったのでしょうか?
J:グラハムはそれまでのGRAHAM BONNET BANDのアルバムよりもはるかにヘヴィな方向性を好まなかったんだ。他のメンバーは1st「NO PAROLE FROM ROCK ‘N’ ROLL」(1983年)のようなヘヴィなアルバムを作ることに熱中していたけど、当時の彼はヘヴィな音楽は好きじゃないと公言していたんだ。
──ドゥギーが加入した経過についても聞かせてください。ドゥギー以外のシンガーも試したりしたのでしょうか?
J:最初からドゥギーがバンドにとって相応しいシンガーになることは明らかだった。グラハムと続けられないことが判ると、すぐにドゥギーに連絡を取ったんだ。僕はずっと彼の声と歌詞のファンだったからね。まさに彼はこのバンドにパーフェクトにフィットしたよ。
J:さっきも言ったけど、このバンドはグラハム・ボネットのソロ・プロジェクトではなく、常にお互いが対等な関係になるよう意図されたバンドだったんだ。グラハムと彼のマネージャーのアンディ・トゥルーマンは、バンドの最初のミーティングでこの点をとても明確にしていたよ。
──その後、イングヴェイ・マルムスティーンが加入し、デビュー・アルバムがリリースされ、アルバムは大評判となりました。イングヴェイとのアルバム制作やツアーなどを思い返してみて、いかがですか?
J:イングヴェイと一緒に仕事をするのは好きだったよ。僕達は一緒に曲を書いて、1stアルバムをレコーディングする作業を楽しんだし、ツアーも本当に楽しかった。当時のイングヴェイはまだツアーをしたことはなかったけど、ショウは本当に上手くいったからね。
──1984年にイングヴェイは脱退し、スティーヴ・ヴァイが加入しました。このギタリスト交代は大きな話題となりました。イングヴェイ脱退からスティーヴ加入の経緯はどういうものだったのですか?
J:イングヴェイが自分のバンドを作ることは知っていたから、彼の脱退は驚きではなかった。僕達は何人かのギタリストをオーディションしたけど、僕の友人のデイヴィッド・ローゼンタール(元RAINBOW)に連絡を取ったところ、彼がスティーヴを紹介してくれたんだ。そして、スティーヴに電話して、数回会って、一緒にプレイもしてみた。そうやって彼をバンドの新しいギタリストとして迎え入れたんだ。彼と一緒に仕事をするのはクールなことだったよ。
──スティーヴはアルバムを1枚出した後、1985年終盤に脱退しました。後任のダニー・ジョンソンともアルバムを1枚作りましたが、バンドは1987年に解散しました。あの時はどのようにして解散に至ったのですか?
J:当時、僕達は『Capitol Records』に所属していて、彼らは僕達に外部のソングライターを起用するよう提案したんだけど、グラハムはそれを拒否したんだ。それが原因で『Capitol』からドロップされたんだよ。『Capitol』としては、僕達にしっかりとした方向性を持たせたいと思っていたんだけどね。
──あなたはALCATRAZZ解散後も、BLACKTHORNEやGRAHAM BONNET BANDでグラハムと一緒に活動してきましたね。その頃はグラハムとの関係も良かったのですか?
J:ああ。僕達は一緒にいくつかのグッド・レコードを作ったよ。
──グラハムはALCATRAZZを脱退しましたが、彼は彼でALCATRAZZを続けると宣言しています。つまり、ALCATRAZZというバンドが2つ存在することになって、ファンは混乱すると思うのですが、そのことについては?
J:それについてはコメントしたくないんだ。本当にバカげた話だからね。
──では、また新作「V」について聞かせてください。アルバム制作の作業はどうでしたか? ジョー・スタンプの貢献は大きいようですね。
J:僕達はコロナウイルスが始まる時期にこのアルバムを作り始めたんだ。ジョーと僕はツアー中に曲を録り溜めていて、その後(ジョーの住んでいる)ボストンに行って、残りのデモを完成させた。ジョーはその時点でアルバムの大半の曲を書いていたけど、ドゥギーと僕、そしてマネージャーのジャイルズ(ラヴァリー)も加わって、追加の曲を書いたよ。ドゥギーとジャイルズは歌詞とメロディの大部分を書いたんだ。
──新作には1stアルバムに近い雰囲気があると言っていましたね。ALCATRAZZのアルバムの中では特に1stアルバムの人気が高いですが、あなたはファンの期待に応えるために1983年頃のようなスタイルのアルバムを作ろうとしたのでしょうか?
J:僕自身、ずっと1stアルバムが大好きだったし、僕とゲイリーが常に夢中になっている類の音楽なんだ。今回のアルバムは僕達にとって自然な進歩で、ジョー・スタンプはこの方向性を続けるために最適な人物だ。僕達は今回のアルバムがファンのずっと聴きたかったものだと感じているよ。
──ニュー・シンガーとして、ドゥギー・ホワイトがこのアルバムにもたらしたものは何でしたか?
J:ドゥギーは、このアルバムに必要な要素を確実にもたらしてくれたと思う。彼は素晴らしいメロディと歌詞を書いたし、人としても一緒に仕事をするのにベストな存在だ。
──新作にはスピーディーな曲、ヘヴィな曲、グルーヴィーな曲、メロディアスな曲、そしてバラードもあって、ヴァラエティに富んでいますが、どの曲にもバンドのスピリットが反映されていて、一本筋が通っているアルバムだと思います。あなたはどのように感じていますか?
J:そのとおりだよ。一本筋が通っているというのは良い表現だね! 僕達はこのアルバムの方向性がどうなるかは判っていた。それは、僕達全員が曲を書くこととプレイすることを愛した結果なんだ。実際、曲作りはとても簡単だったよ。僕達全員は同じページにいたんだ。
──今後の予定はどうなっていますか? コロナウイルスの影響はまだありますが、ライヴなどの予定はありますか?
「V」
2021年
<収録曲>
01. Guardian Angel
02. Nightwatch
03. Sword Of Deliverance
04. Turn Of The Wheel
05. Blackheart
06. Grace Of God
07. Return To Nevermore
08. Target
09. Maybe Tomorrow
10. House Of Lies
11. Alice's Eyes
12. Dark Day For My Soul
13. Midnight Won’t Last Foreve*
*日本盤ボーナス・トラック
<ゲスト・ミュージシャン>
ドン・ヴァン・スタヴァン(RIOT)bass on 1, 2, 8
クリフ・エヴァンス(TANK)bass on 6
ナイジェル・グロックラー(SAXON)drums on 1, 5
※以下、メーカー・インフォメーションより。
1983年LAにて、元NEW ENGLANDのメンバー、ジミー・ウオルドー(Key)とゲイリー・シェイ(B)に元RAINBOWでマイケル・シェンカー・グループを離脱したグラハム・ボネットが合流して結成されたアルカトラス。
デビューアルバムはあのイングヴェイ・マルムスティーンを、セカンドはスティーヴ・ヴァイをフィーチャーしMTV時代の時流にも乗りラジオフレンドリーな楽曲も相まって特に日本で人気が爆発した。が、スーパーギタリストが去った後の86年の3rdアルバムは全く売れず、バンドは活動を停止、グラハムはIMPELLITTERIに加入する。
途中でバンド名などの争いも有ったがその後、30年以上が過ぎた2019年突如グラハム・ボネット・バンドをアルカトラスと改名させての来日公演(ジミー・ウオルドーとジョー・スタンプも在籍)をきっかけにバンドは正式に再結成。ジミー、ゲイリー、グラハムのオリジナルメンバーの3人を中心に、ギターにはそのイングヴェイ直系のジョーを迎え4thアルバム『Born To Innocent』をリリース、デビュー作に肉薄するこれぞ様式美メタルな作風でファンを歓喜させた。
順風満帆に見えたアルカトラスで有ったが、毎度お騒がせ男のグラハムが翌年に脱退、新たにアルカトラスft.グラハム・ボネットを名乗って活動を再開するとしたため、アルカトラスという二つのバンドが存在する事態になっている。
今作『V』は残された形の本家アルカトラスにドゥギー・ホワイト(ex.RAINBOW,MSG,イングヴェイ etc.)が加入。ドゥギーの加入はバンドをさらに高みに導く重要なファクターとなっている。楽曲の鍵を握るギタリスト、ジョー・スタンプのネオクラシカル、メロディアスで攻撃的なプレイも炸裂!。プロデュースも手掛けるキーボードのジミー・ウォルドーは”このアルバムに大いに満足しているよ。音楽的な方向性と本来我々がやりたかったことがピタリと一致した稀有な作品となった。20曲以上から選ばれたこの楽曲は過去最高なポジティヴなエネルギーに満ちているよ!”と語る。
アルバムにはナイジェル・グロックラー(SAXON / dr)、クリフ・エヴァンス(TANK / b)、ドニー・ヴァン・スタヴァン(RIOT / b)ら、同時代を生きたレジェンド達が参加!!日本盤はボーナストラックを追加!
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