藤木昌生の密かな楽しみ Vol.21 ~ 気まぐれプレイリスト 11
YouTubeには毎日のように色々なアーティストのカヴァー動画がアップされていて、僕もたまにお気に入りのアーティストの名前や曲名を入力して検索して、出てきたカヴァー・ヴァージョンを試聴して楽しんだりしている。中には本当に上手くて感心するものもあれば、「大好きなのは判るけど…」と思わず笑ってしまうカヴァーもあって、飽きないと言えば飽きない。(笑)
カヴァー・ヴァージョンといえば、僕には1曲、すごく気に入っていて、忘れられない音源がある。それは、イタリアのCMKYというバンドによるDREAM THEATERの”Surrounded”のカヴァー。1999年にリリースされたイタリアのバンド達による「VOICES - A TRIBUTE TO DREAM THEATER」というカヴァー・アルバムに収録されていた音源で、参加しているバンドはマイナーなバンドばかりだったので(日本デビューしていたのはEMPTY TREMORくらいか)、そのCMKYというバンドもまったく未知の存在だったのだが、彼らの”Surrounded”を聴いて、すっかり聴き惚れてしまった。曲の冒頭とエンディングのバラード・パートにおける女性シンガーの歌唱があまりに素晴らしくて、うっとり夢見心地で聴き入ってしまった。
本家のジェイムズ・ラブリエ自体が、バラードを歌わせたら天下一品で、そこいらの上手いプロのシンガーが彼の曲を歌ったところで十中八九は聴き劣りすることは避けられない中、このCMKYというバンドのローラ・ベネデッティーニ(Laura Benedettini)という女性シンガーは、独自の解釈で”Surrounded”に挑み、絶品の節回しと声の表情で感動的なヴァージョンを作り上げてくれた。曲の中間部分のロック・パートに関しては、歌も演奏も実に平凡で、そこが玉に瑕かもしれないけど(笑)、オープニングとエンディングのバラード・パートの彼女の歌を聴けただけでこのCDを買った意味があったと思ったものだ。
残念ながら、僕の家でこのCDはどこかに紛れ込んでしまって見つからず、ディスク2に収録されたCMKYのオリジナル曲の方はもう20年以上聴けていない。ネットで検索してもCMKYに関する情報はほとんど出てこなくて、ローラ・ベネデッティーニが今どこで何をしているのか、他に音源は残していないのか、そのあたりは不明だ。
とりあえず、そのCMKYによる”Surrounded”はこちらで聴けるので、良かったら試聴してみてください。上の文章でかなりハードルが上がってしまったので、「聴いてみたけど大したことないじゃん」と言われるのは覚悟してますよ。(笑)
「VOICES - A TRIBUTE TO DREAM THEATER」
1999年
<収録曲>
CD1: Dream Theater Tribute:
1. Evil Wings: A Fortune in lies (4:52)
2. Moon Of Steel: You Not Me (5:07)
3. Aztec Jade: Another Day (4:29)
4. Accomplice: Pull Me Under (8:53)
5. Empty Tremor: dream Theatre Medley (13:23)
6. Overlife: Metropolis Part 1 (9:32)
7. Fifth Season: Peruvian Skies (6:19)
8. CMKY: Surrounded (5:52)
9. Eleventh Hour: Learning To Live (11:45)
CD2: Original Songs Performed By The Same Bands:
1. Evil Wings: Colors Of The New World (5:41)
2. Moon Of Steel: We're Nothing (6:05)
3. Aztec Jade: The Calling (4:18)
4. Accomplice: Couragerous (6:05)
5. Empty Tremor: The Message Keeper (7.32)
6. Overlife: The Last Martyr (6:51)
7. Fifth Season: Destroy My Beauty (8:09)
8. CMKY: Il Miraggio (8:54)
9. Eleventh Hour: Inside Out (9:28)
さて、それでは2ヵ月近くブランクが空いてしまいましたが、気まぐれプレイリストの11回目を紹介していきましょう。
この曲を聴くと、HM/HRの新しい時代が始まりそうな予感にワクワクしていた1983年当時を思い出しますね~。日本でも放送され始めたMTVを観ていて、この曲が掛かると音量をデカくしたりしてね。当時は一般家庭に録画機器なんてないから、常にTVの前で待機してなきゃいけなかった。(笑) RATTに関しては、ギター・リフはめちゃカッコいいんだけどヴォーカル・パートに入るとガッカリなバンド(歌の上手・下手ではなく歌メロがない)…というイメージだったんですが(笑)、俳優のようなグッド・ルッキングなメンバー達と、ロック・アルバムの音響水準を塗り替えたボー・ヒルのプロダクションの相乗効果によるゴージャス感が多くの女性ファンを引き込んで、それが80年代メタルの隆盛に繋がったんだろうなと思います。
「BENT OUT OF SHAPE」はRAINBOWの有終の美を飾ったアルバムと言えるんじゃないでしょうか。個人的には、リッチー・ブラックモアのアルバムというよりも、ジョー・リン・ターナーとデイヴ・ローゼンタールのアルバムという気がしてます。RAINBOWのアルバムは音質が悪いものが多くて、特に「LONG LIVE ROCK'N'ROLL」以降は酷すぎて話にならないんだけど(お城とかで録音すんなよ!)、「BENT OUT OF SHAPE」でやっとまともな音質のアルバムを作ってくれたなと…。2006年にジョーが日本でオーケストラと共演してこの曲をやった時は、生のパイプ・オルガンでこのイントロが聴けて感動したな~。その年のBURRN!の人気投票キーボード部門に新日本フィルのオルガン奏者の名前を書いてきた読者がいて、笑っちゃうと同時に「判るよ判る!」と膝を叩いたのを思い出します。(笑)
このバンド(プロジェクト)はメロハー史上に残る美しき一発屋ということになるのかな。フィンランドのメロハー・バンドLEVERAGEのトースティ・スプーフ<g>とノルウェーの叙情派プログレ・メタル・バンドCIRCUS MAXIMUSのマイケル・エリクセン<vo>が組んで、期待以上の化学反応を披露してくれた。彼らが2011年にリリースした最初で最後のアルバムの中でも抜群のメロディ展開を持った曲がこれ。『Frontiers Records』のことだから、忘れた頃に2作目を企画してくれるかもね。
すみません、完全なJ-POPです。この曲は、当時仕事中にちょっとしたものを買いに会社近くの文房具店に入ったところ、そこでBGM(有線放送?)として流れていた曲に心を奪われてしまい、その日の夜にうろ覚えの歌詞や「女性ヴォーカル」「バラード」といったワードで検索しまくったところ、この曲であることを突き止めたという…。曲を特定できた時はガッツポーズものでしたね。(笑) 幸い僕はゲームを一切やらないので(ただでさえ人生の時間が足りないのにゲームの面白さを知ってしまったら…)、この曲がかの有名な『ファイナル・ファンタジー』の主題歌だと知っても何も感じなかったんだけど、とにかくサビのメロディ展開が胸キュンです。たぶん、僕の人生の中でこれに似たメロディと繋がっている良い思い出があるんじゃないかな。それが何かは思い出せないけど。
ドイツが生んだ天才ハード・ロッカー、マット・シナー率いるSINNERの名曲の1つですね。1985年のSINNERの4th「TOUCH OF SIN」でこの曲を初めて聴いた時は、イントロのギター・リフは実にありがちなものだったので一切期待は膨らまず、しかし続いて聞こえてきたギターのアルペジオと憂いのある歌メロに「オッ!?」となり、2ヴァース目から被さってきた白玉キーボードに「うわ、堪らんなコレ!」と色めき立ったのを昨日のことのように思い出します。マットはソロ・アルバムでもこの曲をリメイクしていたし、その後SINNERでもリメイクしていたけど、このオリジナル・ヴァージョンの方が遥かに良いと思います。
SIDE B
アンドレ・アンダーセンはROYAL HUNTのデビュー作「LAND OF BROKEN HEARTS」ですでに桁違いの才能を披露していたけど、この曲はその最たるものじゃないかな。歌メロ、譜割り、リズムの展開、フックの設け方など、天才としか言いようがありません。プロダクションやヴォーカルのクオリティのせいでちょっと安っぽく聞こえてしまうかもしれないけど…。アンドレの歌詞というのは、若い頃を厳しい社会主義のソヴィエト連邦で過ごした影響がかなり出ていると思うんですが、どうでしょうか。彼は音楽以外のことを尋ねても常に興味深い答えを返してくれるインタビューしがいのある人だったので、昨今のロシア・ウクライナ戦争についてどう感じているのか、ぜひ訊いてみたいな。
北アイルランド出身のバンド。80年代終盤にアルバム・デビュー直前まで漕ぎ着けながらも、不運にもそのチャンスを逸してしまい、その後、紆余曲折を経て、2018年になって遂に『Frontiers』からデビューを果たしたバンド。ということで、オッサン・バンドです。(笑) 今どき、こんな美しいメロハーを聴かせてくれるのはオッサンしかいないでしょう。(笑) 日本盤もリリースされなかった地味なバンドですが、この曲はグッときますね。癒やされるし、こういう音楽を聴くと心が豊かになった気がする。ありがとう。
元ZED YAGOのユッタ・ヴァインホルト<vo>が結成したVELVET VIPERの1991年のセルフ・タイトルのデビュー作からのナンバー。ZED YAGOは、妖艶な雰囲気はあるもののモッサリ&マッタリな感じのメタルで煽情力に欠けるな~と思っていたけど、このVELVET VIPERで一気にキャッチーな(?)ネオ・クラシカル・メタル路線になって嬉しかった。かつては正統派メタルの女性シンガーが出てくると何でもかんでもすぐに「女性版ロニー・ジェイムズ・ディオ」と言われたもんだけど、個人的にはユッタ・ヴァインホルトほど”女性版ロニー”という称号に相応しいシンガーはいないと思います。
オラフ・トーセン率いるVISION DIVINEの3rd「STREAM OF CONSCIOUSNESS」はあの超絶シンガーのミケーレ・ルッピの世界デビュー作。中でも抜群の煽情力を持つ疾走曲がこれ。彼らの来日公演で、ミケーレがこの曲を固まって神経を集中して歌のではなく、楽しそうに笑顔を振りまきながら余裕で歌い上げていたことに度肝を抜かれたな~。その日本公演ではないけど、ライヴで彼がこの曲を歌う姿はこちら。こんな凄いシンガーの今の職業はWHITESNAKEのキーボード奏者兼バック・シンガーだという…。(苦笑) そういえば、SIN ISOMERという日本の女性シンガーが「ミケーレ・ルッピがライヴで”La Vita Fugge”を歌うのを聴いて衝撃を受けて歌のレッスンを受け始めた」と言っていて、なんて素敵なお嬢さんだ!と思いましたね。(笑)
ボビー・コールドウェルに関しては僕は完全に後追いです。70年代後半からヒット曲を出していたので名前は知っていたけど、AOR=ポップスということで自分とは縁遠い人だと思っていたのが、ある時、もう90年代に入っていたと思うけど、たまたまTVでライヴ映像を観て「うわ、このオッサンめちゃくちゃ歌が上手いじゃんか!」と思って聴き始めたのでした。この曲は50年代のEVERLY BROTHERSのヒット曲のカヴァーらしいけど、それは後から知った話。とにかくこのロマンティックでドリーミーなムードが堪りません。この綿雪のようなエレピ・サウンド、最高じゃないすか? クリスマス・シーズンにぴったりというか。歌詞も、リスナーがそれぞれ「自分にとっての理想の美女・美男」を思い浮かべながら妄想できる歌詞だと思います。(笑)
★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く
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