藤木昌生の密かな楽しみ Vol.20 ~ 気まぐれプレイリスト 10

世間が日本シリーズで盛り上がってる一方で、メタル界はNIGHT RANGERの来日で熱盛な状況でしょうか? それでは、気まぐれプレイリストの10回目、行ってみましょう。

SIDE A
1.X JAPAN ”Blue Blood”→ Spotifyで聴く
X JAPANはインディーズ時代の「VANISHING VISION」で初めて聴いて、過激なパフォーマンスはともかく、音楽的にはそれほど惹かれるものは感じなかったし、TVのバラエティ番組に出て「ヘビメタ」としてお笑いのネタにされてたりしたから、ちょっと怪しむ感じで見てたんだけど、その後、メジャー・デビュー作「BLUE BLOOD」のタイトル曲であるこの曲を聴いて、素直に「カッコいいじゃん!(音質は酷いけど)」と思いました。当時、こんな優れた曲をやってた日本のメタル・バンドはいなかったしね。ちなみに、「ヘビメタというのは蔑称だからファンであればヘヴィ・メタルまたはメタルと言いましょう」という考え方に関しては、僕は(昔BURRN!本誌でも書いたけど)「アホか」と思ってる人間です。そんなクダラナイ価値観をいつ誰が広めたんでしょうね~?
2. EAGLES ”Hotel California” → Spotifyで聴く
世紀の名曲であるこの曲は、ちょうど僕がKISSで洋楽ロックに目覚めた頃にヒットしていて、KISSを求めて洋楽を扱ってるTV番組やラジオ番組にアクセスすると嫌でも耳に入ってきた。で、哀愁溢れる良い曲だな~と思ったんだけど、EAGLESがハード・ロックではないことには気づいていたので、アルバムは買わずにこの曲のドーナツ盤シングルを買ってずっと楽しんでいました。その後、10年以上経ってから軽いロックも楽しめるようになって、EAGLESのアルバムは何枚も買い集めたけどね。この曲に関しては、EAGLESが1994年に12年振りに再結成した時のアコースティック・ヴァージョンのドン・フェルダーのソロが秀逸なので、こちらをチェックしてみて。
3. TOUCH ”When The Spirit Moves You” → Spotifyで聴く
このバンドを初めて聴いたのは、RAINBOW目当てに買った『MONSTERS OF ROCK』のオムニバス・ライヴ盤で、曲は彼らの代表曲”Don't You Know What Love Is”だったけど、当時の僕にはピンと来なかった。それから何ヵ月も経って(1年以上経っていたかも)、中古盤でTOUCHの1stアルバムが安く出ていたので、買って聴いてみたら、”Don't You~”以外に良い曲がたくさんあったのでお気に入りのバンドになって、”Don't You~”の良さも染みてくるようになって、という流れです。この曲はアルバムの中でも最上級のポップ&キュートな世界が楽しめる曲。縦横無尽に駆け巡るヴォーカル・ハーモニーも最高ですね。
4. CANDLEMASS ”The Dying Illusion”→ Spotifyで聴く
このバンドのことは1stアルバムから知っていて(友人の嶋津君がディスクランドで買ってきて聴かせてくれた)、なかなか良いなと思ってたんだけど、そのうちメサイア・マーコリンが歌う世界観に飽きてきて…。そんな時、ニュー・シンガーを迎えて1992年に発表されたのが「CHAPTER VI」で、そのオープニング曲がこの曲だった。「CANDLEMASS、化けたじゃん!」と興奮しましたね。(笑) そのニュー・シンガーとはトーマス・ヴィクストロム。彼の歌をちゃんと聴いたのはその時が初めてだったと思う。当時はTALK OF THE TOWNも知らなかったし。で、これからのCANDLEMASSに注目しようと思っていたら、そのまま数年後にバンドは解散してしまったという…。グランジ/オルタナ・ブームの影響だったのかな。
5. Dan Fogelberg ”Windows And Walls” → Spotifyで聴く
アメリカのシンガー・ソングライターのダン・フォーゲルバーグは、ロックというよりもポップスの人ですね。僕の場合、レンタル・レコードで初めて聴いたアルバムはつならなかったけど、1枚で判断はできないぞと思って借りてきた「WINDOWS AND WALLS」がとても良い内容ですっかりお気に入りになりました。そのアルバムのタイトル曲がこのバラードで、歌詞を読むことで味わいが何倍も増すはずです。実家でひとりで暮らしている親、あるいはお祖父ちゃん・お祖母ちゃんがいる人にはぜひ聴いてもらいたい曲です。そういう境遇にない人でも、メロディック・ロックが好きなら「WINDOWS AND WALLS」は純粋に音楽的にオススメですよ。

SIDE B

1. VANDENBERG ”This Is War” → Spotifyで聴く
このバンドは、楽曲粒揃いの1stアルバムと超強力ナンバーがいくつか収録された2ndアルバムとで甲乙つけがたいですね。この曲は、2ndアルバムに収録されている超強力ナンバーの1つ。HM/HR史を見渡しても、ここまで泣きまくる曲はそうそうないでしょう。歌メロも泣いてるし、ギターのオブリガートがいちいち泣いてるし、極め付きのギター・ソロの泣き具合といったらもう号泣もので、あの野々村竜太郎(古い!)も真っ青でしょう。エイドリアン・ヴァンデンバーグが何年か前にVANDENBERG復活を宣言した時は、この頃の音楽性に回帰するのかと思って期待したけど、完成したアルバムを聴いたらダメでしたね、やっぱり…。
2. FORTUNE ”Anonymous Lover” → Spotifyで聴く
80年代終盤になって北欧から北欧っぽくないサウンドのバンドが次々と出てくるようになって、北欧メタルという言葉が前時代的なものになっていた1992年、突如現われたこのFORTUNEのデビュー作はなかなかの衝撃でした。音作りに厚みがなく、ヴォーカルも不器用な感じなので、一般のメタル・ファンからすればマニア向きに映るんだろうけど、北欧メタル系のファンからすれば「これだよ、これ」という曲調じゃないでしょうか。2作目で大きく方向性を変えてズッコケさせてくれたけど…。初めてベニー・スドベリ<vo,key>にインタビューした時、「専任シンガーは入れないんですか?」と訊いたら、「僕が歌わなければいいと君が思ってないといいんだけど!(笑)」と心を見透かされたような経験をした思い出があります。(笑)
3. LEE AARON ”Powerline”→ Spotifyで聴く
カナダ出身のリー・アーロンは、デビュー当初はメタルメタルしたイメージを打ち出していて、2ndアルバムのジャケなんて女MANOWARみたいだったけど、3作目から徐々にポップさを取り入れて、4作目「LEE AARON」(1987年)ではこのジャケからも判るように一般リスナー向けハード・ポップ路線になっていた。それは個人的にはありがたい路線変更で、この曲で幕を開けるその4作目は、ジョー・リン・ターナーやデイヴィッド・ロバーツも曲作りに参加して、とても良いアルバムに仕上がっていた。2作目から彼女と活動を共にしてメイン・ソングライターも務めてきたジョン・アルバニ(g/元WRABIT)もやりやすくなったんじゃないかな。この曲ってデズモンド・チャイルドが発明した手法を見事に継承してるよね。
4. LORDS OF BLACK ”When A Hero Takes A Fall” → Spotifyで聴く
引く手あまたのロニー・ロメロ<vo>の本業バンド。彼らのアルバムはデビュー作も2作目も高いレヴェルで安定した内容に仕上がってるけど、繰り返し聴きたくなるような強力ナンバーがあまりないなぁ…なんて思っていた2018年、3rd「ICONS OF THE NEW DAYS」の中にこの曲を見つけた時は色めき立ちましたね。サビのメロディ展開が胸熱じゃないすか! Hero takes a fallというフレーズは、SURVIVORの名曲”Man Against The World”にも出てくるけど、それだけで何となくドラマティックじゃない? ちなみに、このバンドのギタリストのトニー・ヘルナンド(実際の発音はエルナンドでしょうね)はRESTLESS SPIRITSという素晴らしいメロディック・ロック・プロジェクトをやってますね。
5. CHARLENE ”Hey Mama'” → Spotifyで聴く
これはポップスです。彼女の日本デビュー作となった3rd「I'VE NEVER BEEN TO ME」(1982年)のタイトル曲(邦題:愛はかげろうのように)はかなり年月が経過してから日本のCMに使われて(TVドラマにも使われたかも)リヴァイヴァル・ヒットしたから、耳にしたことがある人は多いと思う。その曲も勿論素晴らしいんだけど、3rdアルバムは楽曲粒揃いの秀逸な内容で、郷愁をそそる叙情メロディがたっぷり詰め込まれている。この”Hey Mama”などはその最たるもので、いつ聴いても懐かしいような切ないような感覚に陥って胸キュンしちゃう。僕が幼い頃からCARPENTERSをよく耳にしていたから、そういう感性になったのかな。そういえば、今をときめくNEMOPHILAのSAKI<g>と知り合って間もない頃(10年前くらい)、音楽の雑談をしていて、彼女が「シャーリーンとかも好きなんですよね~」とか抜かすもんだから、「シャーリーンってあのシャーリーン!? なんでそんな古いポップス知ってんのよ!?」と驚きながらも感激したのを思い出しました。(笑)

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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