藤木昌生の密かな楽しみ Vol.19 ~ 気まぐれプレイリスト 9

先日、このBURRN! ONLINEにもインタビュー記事を掲載したA-Zというバンドが意外と良かったです。現FATES WARNINGのレイ・アルダー<vo>と元FATES WARNINGのマーク・ゾンダー<ds>を擁するバンドだけど、FATES WARNINGというバンド名から多くの人が想像する「辛気臭くて盛り上がりにかけるプログレ・ハード」みたいなのとは違って、快活に躍動するメロディック・メタルで、適度なキャッチーさもあるし、HOUSE OF LORDSとかが好きな人なら気に入るんじゃないかな。試しに試聴してみてください。

さて、それでは気まぐれプレイリストの9回目を行ってみましょう。

SIDE A
1.DA VINCI ”Touch Down”→ Spotifyで聴く
このバンドのことを知ったのは確か1991年頃。この曲が収録されている2nd「BACK IN BUSINESS」が出てから2年以上経過していた。BURRN!の輸入盤レビューでも取り上げられず、ごく一部のマニアしか知らなかったバンドだったんだけど、当時友達だったマニアのサトウ君から教えてもらって「こんな素晴らしいバンドがいたのか!」と衝撃を受けたのでした。その後、僕がBURRN!に就職したんで、輸入盤レビューで取り上げたらゼロ・コーポレーションから日本盤リリース(ジャケを変更して)が実現してめでたしめでたし、という流れです。ただ、その頃すでにバンドは解散してたけど…。
2. HIBRIA ”Tiger Punch” → Spotifyで聴く
このブラジル産バンドが2004年にデビューした時は僕もBURRN!のレビューで興奮気味に絶賛したような記憶があるけど、なかなか衝撃的でしたね。その後、2作目までに4年もブランクがあったし、デビュー作が素晴らしすぎると2作目が期待外れなケースは多々経験してきたので、警戒していたけど、その2作目「THE SKULL COLLECTORS」のオープニング曲がこの曲で、思わずガッツポーズを取っちゃいました。でも、この2作目のツアーで初来日が実現するとマルコ・パニーキ<b>が抜けて音楽性に変化が表われ、その後ディエゴ・カスペル<g>も抜け、さらにアベル・カマルゴ<g>以外の全員が抜け…と。ある程度やって満足したらメタルは卒業しちゃうんですかね。ANVILと対極にあるような賢明な人生の送り方かもしれないけど。(苦笑)
3. WARLORD ”Lost And Lonely Days” → Spotifyで聴く
前にもこの気まぐれプレイリストで”Winter Tears”を取り上げたけど、基本的にはヘナチョコのクサメロ・メタルです。(笑) この曲はデビュー・アルバムの後にシングルとしてリリースされた曲で、当時BURRN!の輸入盤レビューで酷評されてたけど、僕はこの曲を聴いて「WARLORD、やっぱいいじゃん! BURRN!のレビューってアテになんねーな!」と思ったもんです。(笑) 当時、ライヴ盤「AND THE CANNONS OF DESTRUCTION HAVE BEGUN」のビデオ版があると知った僕は、バンド宛てに「ビデオを買いたいんですが」という手紙を(国際返信切手を同封して)出したら、半年ぐらい経って忘れた頃にセンチネル<key>(後のSAHARAのダイアン・アレンズ)がVHSを送ってきてくれて感激したな~。
 
4. 渡辺真知子 ”唇よ、熱く君を語れ”→ Spotifyで聴く
すみません、また歌謡曲です。渡辺真知子は大ヒット曲”かもめが翔んだ日”で知られる人で、あの曲ももちろん素晴らしいけど、僕はこの曲が秀逸なAORだと思うんですよ。爽やかで清らかなメロディにあふれていて、心の灰汁を洗い流してくれる。もちろん、昭和歌謡の神アレンジャーの1人である船山基紀氏のセンスも大きく貢献していることは間違いないけど。当時、化粧品のCMにこの曲が採用されたんじゃなかったかな。1977年デビューの渡辺真知子は、楽器を演奏しながら歌うタイプではなく、ハンドマイク1本で歌うタイプだったから、普通の歌謡曲歌手のように思っていたけど、当時のシンガー・ソングライター/ニューミュージックのブームを推進した存在だったかも。
5. ULI JON ROTH:ELECTRIC SUN ”Why?” → Spotifyで聴く
言わずと知れたギターの神様ウリ・ジョン・ロートです。SCORPIONS時代から聴いていて、ELECTRIC SUNの1stと2ndも聴いて、素晴らしいギタリストだと思っていたけど、この曲が収録されている3rd「BEYOND THE ASTRAL SKIES」を聴いた時に完全KOされましたね。失禁&脱糞ですよ。「なんで自分で歌いたがるんだろう?」という疑問は抱きつつも、ギター・ソロになるとそんなことはどうでも良くなってしまう。(笑) この人のギター・ソロを聴いていると、顔面が引きつってヤバい状態になってしまう…判ります?(笑) そういえば去年、RACHEL MOTHER GOOSEという日本のバンドのアルバムを聴いていたら、まさにこの曲のソロを再現したようなフレーズが出てきて、「ウリが好きなんだろうな~」とニヤついてしまいました。

SIDE B

1. WHITE LION ”Goin' Home Tonight” → Spotifyで聴く
彼らの3rd「BIG GAME」のオープニングを飾る曲。このバンドは前2作が良いアルバムだったから、それなりの期待を胸に聴き始めて、この軽快で爽やかな曲調に「おお、今回もいいじゃないの」と聴いていたんだけど、この曲のハイライトはギター・ソロにあった! このフレーズ構築の見事さにはブッ飛びましたね。ヴィト・ブラッタ、すげーな!と。何でもアドリブ(指グセ)でやれば偉いと思ってる某ネオ・クラシカル・ギタリストに爪の垢を煎じて飲ませてあげたい。(笑) ただ、「BIG GAME」はこの曲以外には聴くべきものが殆ど見当たらず、次作「MANE ATTRACTION」も同様で…。
2. A.C.T ”The Wandering” → Spotifyで聴く
スウェーデンのプログレ・ハード・ポップ・バンドのデビュー作「TODAY'S REPORT」からのナンバー。音の響きが生み出す色彩感、空気感、重力感だけでファンタジーを現出させることができる(すみません、歌詞は未だにノーチェックです)稀有なバンドで、DREAM THEATERくらい売れていてもおかしくないバンドだと思うんだけど、聴き手の頭を振らせるような攻撃性がないのが仇となってるのかな。もっと評価されてほしい、もっと多くの人に聴いてほしいバンドです。
3. MYRATH ”Braving The Seas”→ Spotifyで聴く
このチュニジア産バンドのことは、この曲が収録されている3rd「TALES OF THE SANDS」で初めて知ったんだけど、アフリカ大陸北部にあるチュニジアという国にメタル・バンドがいること自体が驚きだったので、かなりの衝撃でしたね。「KAMELOTに対するアラブからの返答」「MEDINA AZAHARA meets DREAM THEATER」など色々な形容が思いつくけど、エキゾティックでありながら普遍的なキャッチーさも備えていて、単なるマニア受けにとどまらない音楽性の高さが素晴らしい。RAINBOWの”Gates Of Babylon”が大好きなのにこのMYRATHの音楽が良いと思わないのなら、それは単に「リッチーがやってるから良い」という価値観の、レヴェルの低い音楽リスナーだと僕は思っちゃいますけどね。(笑)
4. MADISON ”Look In Your Eyes'” → Spotifyで聴く
ヨラン・エドマンが在籍していたことで知られる北欧メタル・バンド。この曲が収録されている2nd「BEST IN SHOW」がリリースされた1986年頃はアナログ盤からCDへの移行期で、同じアルバムでもCDだけ収録曲が多かったりした。で、この曲も「BEST IN SHOW」のアナログLPには未収録で、CD(と確かカセットテープ)のみに収録されていた。「BEST IN SHOW」はこの曲以外は聴くべきものが殆どない駄作なのでLPを買った人は本当に可哀想だな~と感じていたのを思い出します。(笑) 当時、この曲のMVを観たメタル女子たちが「ミカエル・ミリネン(マイケル・ムーン)かわいい~」と色めき立っていましたね~。(笑)
5. ERIC CARMEN ”The Way We Used To Be” → Spotifyで聴く
エリック・カルメンは70年代前半にRASPBERRIESというロック・バンドで活躍した後、ソロに転向してポップス界で成功したシンガー・ソングライター。この人はポップ曲もいいんだけど、とにかくバラードが百発百中で、すべてが名曲と言っても過言じゃない。様々な人にカヴァーされて音楽史に残る名曲となった"All By Myself”は最高だし、””Boats Against The Currentも”Foolin' Myself”も感動ものだけど、この曲もとことん胸にしみてくる。僕は根が後ろ向きな人間なもんで(笑)、こういう「昔は良かった。いつからこんな風になってしまったのか。あの頃が懐かしい」みたいな歌詞に弱いんですよね~。もちろん、曲が良い場合のみですが。

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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