【BURRN! 11月号ちょい読み】

大人が楽しめるロック・フェスティヴァル “THE GREATEST ROCK FUKUOKA” を徹底リポート

BY YUMIKO HABA/BURRN!

8月最後の土曜日、みずほPayPayドーム福岡で『THE GREATEST ROCK FUKUOKA』が開催された。「何故に福岡で?」と言えば、それはこれが福岡ソフトバンクホークス株式会社主催のイベントだからで、洋楽の大物アーティストが来日しても九州まで足を延ばすことが少なくなった昨今、「エンターテインメント事業で地元福岡を盛り上げたい」という意識と「野球の試合で使われない時にも自社の球場を活用したい」という実益を満たす企画が組まれたわけだ。気まぐれな思いつきではなく、“3年計画” で通称『FUKUROCK』というこの “大人向けのロック・イベント” を浸透させていきたいとの意思が明確にあることが頼もしい。

とはいえ、4月20日に発表されたのはイベントの開催と「JOURNEYとNIGHT RANGERが来日、日本のガールズ・ロック・バンドBAND-MAIDも出演」という情報のみ。5月7日にHOUND DOGとLOUDNESSの出演が決まり、さらにRED WARRIORSを追加して全ラインナップが決定したのが5月25日のことである。誰が出ようが毎年行くと決めているような固定ファンが多く付いている老舗フェスと比べても仕方がないかもしれないが、『SUMMER SONIC』は昨年の暮れに、『FUJI ROCK』も元日に今年の開催日程が告知されている。そういった夏休みの恒例行事に後から食い込んで日本全国から福岡に集客したい『FUKUROCK』としては、今後、いかに早期に、いかに魅力的なラインナップを集められるかが “3年計画” 成功の鍵になってくるだろう。

第1回のヘッドライナーはJOURNEY。2年前に結成50周年を祝うツアーで来日しているが、今年から来年に掛けては “フェアウェル・ツアー” で世界中を廻っており、おそらくはこれが最後の来日になるだろう。だとすれば福岡に駆け付けなければ!と遠方からもファンを引っ張ってくるのに格好のセレクトだ……と思っていたら、7月3日に東京・有明アリーナでの単独公演(9月1日)開催が発表された。それで福岡行きを諦めて東京で観ることを選んだ人が多かったとすれば『FUKUROCK』には気の毒だが、ファンにとっては選択肢が増えるのはありがたいことだし、バンド側がもっとプレイしたいと望んだのだとすれば、それも無理からぬこと。フェスに出ると判るとファンから上がる「単独公演は!?」の声にどう応えるかは、大抵の場合フェスを主催するプロモーターが様々な条件を考え合わせて決めているのだろうが、今回は誰がどう全体を仕切っていたのか。“フェス開催” には、実施に漕ぎ着けるまでも、当日の運営に関しても、門外漢がちょっと考えただけで頭と胃が痛くなる難問が山積している。

『FUKUROCK』のチケット代は、最高額のVVIP席が11万8,000円、VIP席が4万9,800円、アリーナ席が2万9,800円。スタンドならS席が1万9,800円、A席が1万7,800円。高額チケットの値打ちは推しバンドへの愛情と懐具合を天秤にかけて観客各自が決めるべきものだが、スタンドからのんびり眺めようという向きには、6バンドが観られてこの値段設定は破格なのでは…!? いずれにしても、休憩時に体を休められる座席があること、熱中症や風雨の心配をせずに快適に過ごせる全天候型ドームが会場であることは、“大人向け” のフェスとして大きな強みだ。

さて、8月29日当日。午前10時に開場し、開演は11時半。通路の物販エリアには早速行列が出来、JOURNEYとNIGHT RANGERのグッズには特に大勢の人が並んでいた。出演バンドを網羅するフェスの公式Tシャツなどは作られなかったようだが、それが売られていれば物販の行列はますます大変なことになっていたかもしれない。開演20分前ぐらいまではステージ上でBAND-MAIDがサウンドチェックを行なっていたが、客席の人の姿はまだまばらで、朝早くから駆け付けたものの物販購入に時間が取られたという人も多かったと見受けられる。11時半ちょうどに場内が暗転し、派手なジングルと照明が興奮を誘う中、10カウントダウンを経ていよいよ福岡の暑い一日が幕を開けた。

トップバッターBAND-MAIDの1曲目は2022年作「Unleash」1曲目のインストゥルメンタル曲 “from now on” だ。メイド服に身を包み、ライヴのことを「お給仕」、観客を「ご主人様」「お嬢様」と呼ぶ……などという彼女達独自の決まり事を知らなくても、AKANE<ds>が叩き出したビートの重さやKANAMI<g>が早速炸裂させたテクニカルなプレイから、このバンドが“出来る”ミュージシャンの集まりであることはすぐに判る。2曲目の “Shambles”(2023年4月発表の配信シングル)から歌い出したSAIKI<vo>の凛として艶やかな声も素晴らしい。そのSAIKIやMISA<b>の衣装が “メイド服” なのかどうかも私には判らないが、もはやそれはどうでもいいことで、メイドというワードから連想される甘くゆるい “萌え” の要素はこのバンドにはない。(出番を終えて去る時に小鳩ミク<g>が放った挨拶「バイバイっぽ!」が唯一の “萌え” ポイントか) KANAMIとMISAが笑顔で華やか且つ激烈なプレイの応酬を見せる場面も多々あり、その卓越したミュージシャンシップは徐々に人が増えてきた客席に度々感嘆のどよめきを巻き起こしていた。MCも殆ど挟まずに、今年6月にリリースされた最新EP「ENERGETIC」の3曲を軸にした40分のセットを勢い良く駆け抜けた彼女達はフェス一番手の職務を見事に果たしたと言えるが、この11月には日本武道館ワンマン2公演を予定しているバンドをオープニングに使うとは、考えてみれば実に贅沢なフェスである。

各バンドのセット転換には演奏時間よりも長い45分が用意されており、タイムテーブルが発表された時には「そんなに必要?」と疑問に思ったものだが、ベースに何やらトラブルが発生していたらしく、さらに5分押しでようやく2番手RED WARRIORSの登場と相成った。個人的な事情で恐縮だが、結果的にこうしてリポートを書くという “仕事” になったものの、私用でもいいから福岡に行くぞ!と私に決意させたのが最終ラインナップ発表で飛び出したこのバンドの名前だった。いや勿論、“これで最後” のJOURNEYと “去年が見納めだと思ったらまた来るって!?” のNIGHT RANGERだけでも理由としては充分だが、1986年のデビュー(私は当時高校生)の頃からハマっていたRED WARRIORSまで観られるとは嬉しい驚き。バンドは1989年に解散し、その後何度も再結成と解散を繰り返してきたが、今年はデビュー40周年ということで精力的に活動しており、その集大成として(「生前葬」でもあるらしい)来年3月14日に武道館ライヴを行なうことになっている。

時折TVで見掛けるDIAMOND☆YUKAI<vo>を「ロックなアティテュードとちょっと頓珍漢な言動が浮世離れしていて愉快な人」と認識している人は多くても、RED WARRIORSを知っている人はどれだけいるのか……と心配していたが、そんなのは杞憂だった。ステージに現われるなり側転2連発を決めたYUKAIは、長年追い掛けてきた中でも今が最も絶好調なのではと思える歌唱で聴衆を魅了する。皆さーん、RED WARRIORSはこんなにカッコいいロック・バンドなんですよ!と誰彼構わず訴えたいところだが、スタンド席にもちらほらいる同志が腕を振り上げているのが見えて心強い。ルックスもプレイも一向に老けることなくクールなギタリストであり続けている木暮 “SHAKE” 武彦とYUKAIがマイクをシェアする瞬間は “日本一絵になるロックなツー・ショット” だ。三度目の再結成時に作られた7thアルバムからの “7th Strip” 以外は総て80年代の初期3作からの曲( “ルシアン・ヒルの上で” は1987年のシングル)で、最後はゴージャスに盛り上がる“バラとワイン”(“WINE & ROSES” とも表記される)で大団円。単独公演ではこの曲でYUKAIがファンから投げ込まれたバラの花をわんさか抱えて歌うのがお約束だが、この会場ではステージが遠過ぎたようで、何本かバラが飛んでいくのは見えたものの彼の腕の中までは届かなかった。

スタンド後方の記者席から観ていた私は、RED’S終演と共に急いでバックステージへ。今月号巻頭記事でも書いたように、NIGHT RANGERのジャック・ブレイズ<b,vo>にTMGのことでインタビューすることになっていたのだ。それを何とか無事に終えて席に戻ると同時にHOUND DOGが開演した。予定どおりの時刻で、先程の遅れはこのセット転換で取り戻せたらしい。HOUND DOGは結成が1976年だというから、なんと50年選手である。1980年にデビュー、1983年には初の武道館公演に1万人を動員し、1988年には日本人バンドとして初の東京ドーム単独公演や通算17万5,000人を集めた西武球場5 days、1990年には武道館史上最多の15日連続公演などの記録も打ち立てている。裁判沙汰にまで発展したメンバー解雇騒動を経て、2006年以降は大友康平<vo>1人でHOUND DOGの名を背負って活動しており、彼が70歳を迎えた今年も精力的にツアーを行なってきたようだ。俳優・タレントとしても長年幅広い活動を続けてきた大友はDIAMOND☆YUKAI以上にお茶の間に知られた存在と言えるだろう。

個人的にHOUND DOGのライヴを観るのはこれが初めてだったが、ゴキゲンなロックン・ロールから大らかなバラードまで、腕利きサポート・ミュージシャン達による演奏に難があるはずもなく、大友の熱く太い歌声にも年齢を感じさせない迫力が漲っているのがさすがだ。エルヴィス・プレスリーの“Hound Dog”を導入に使った“だから大好きロックンロール”では曲が終わったかに見せかけてまたエンディングを繰り返す遊びを何度も繰り出して場内を沸かせ、その余韻から“BRIDGE〜あの橋をわたるとき〜”(1992年の曲で、バンド史上最大のヒット・シングル)を立ち上げる流れも文句なし。その曲以外は総て80年代の曲だったが、「昔チャック・ベリーの前座を務めた時にはビール缶が飛んできた。CHEAP TRICKの前座をやった時は罵声が飛んできた。今日は皆フレンドリーで嬉しい」と言って拍手を浴びた大友は、「HOUND DOGって誰?と思っている人にとっては、ここまで“新曲”をお届けしてきました」と笑いを誘った。「でも次の曲は知ってくれている人もいるんじゃないかな」と言って始まったのが、ご存知“ff(フォルティシモ)”、知名度で言えばバンドNo.1の代表曲である。やはり“日本人なら誰でも知っている”レヴェルのヒット曲を持つバンドは強い。アリーナもスタンドも一体となって拳を振り上げ、会場はこの日ここまでで一番の合唱に包まれたのだった。

続きはBURRN! 2026年11月号で!

THE WORLD'S HEAVIEST HEAVY METAL MAGAZINE

BURRN! 2026年11月号
 

<EXCLUSIVE COVER STORY:巻頭特集>
◆TMG
B'zの松本孝弘<g>を中心とする日米混合スーパーバンドが2年ぶりに再結集!
“SAYONARA”ツアーを開始する4人のメンバーに個別独占インタビュー!!

<EXCLUSIVE INTERVIEW:インタビュー記事>
◆NICKELBACK
今世紀において最もビッグなロック・バンドの前作から4年ぶりとなる第11作が登場!

◆ACCEPT
結成50周年を迎えたバンドの歴史の核心へと迫るウルフ・ホフマン独占会見パート2!

◆BLIND CHANNEL
フィンランドのバンドが活動休止を経て新体制で挑んだ会心作を引っ提げ、11月再来日!

◆FIVE FINGER DEATH PUNCH
結成20周年の節目を経て、これまでのあらゆる経験を昇華させた第10作をリリース!

◆AMON AMARTH
ヴァイキングの世界観の中で生きるメロディック・デス・メタルの巨人、通算13作目!

◆RACHEL BOLAN
SKID ROWのレイチェル・ボラン<b>がピュアなパンク/R&R愛に満ちたソロ作リリース!

◆VIOLET ETERNAL
日伊混合メロディック・メタル・バンドがデビュー作を遥かに超える2ndアルバム発表!

◆RUSSIAN CIRCLES
ポスト・メタルの代表バンドが紡ぐ“ヘヴィでダーク、耳障りでアングラ志向”の新作とは!?

◆NICK OLIVERI
KYUSS、QUEENS OF THE STONE AGE他のベーシスト、ニック・オリヴェリを直撃!

◆Rakshasa
日本の伝統文化を継承するメロディック・メタル・バンドが約4年ぶりに復活してEPを発表!

<SPECIAL EDITION:特別企画>
◆IRON MAIDEN来日予習講座
結成50周年を祝うツアーの歴史的意義を振り返り、セットリスト予習で日本公演に備えよ!

◆愛すべき「産業ロック」――普遍性という名のアイデンティティ
2026年現在の“ロック・ミュージックのど真ん中”を増田勇一氏が探る!

◆再考:イングヴェイ・マルムスティーン
今さら? 今だからこそ? 来日公演を大成功させたオリジネイターの偉大さを再確認!

◆特別連載『TALES FROM THKISS E FRONTLINE』
英国人記者ハワード・ジョンソンの回顧録:MOTÖRHEAD

◆特別連載『All Aboard!:Memories of Ozzy Osbourne』
シャリー・フォグリオ記者によるオジー・オズボーン追想コラム第11回!

<SPECIAL LIVE REPORT IN JAPAN:ライヴ・リポート>
◆『THE GREATEST ROCK FUKUOKA』
JOURNEY、LOUDNESS、NIGHT RANGER、HOUND DOG、RED WARRIORS、BAND-MAIDの豪華6組が登場! 福岡で開催された “大人向けのロック・イベント” をリポート!!

◆HAGANE
世界に通用するメタル・バンドとしての実力を見せた全国ツアーのファイナル公演!

◆八十八ヶ所巡礼
日本武道館で3人がいつもどおりに繰り広げた3時間の結成20周年記念ライヴ!

<POSTER:ポスター>
◆浜田麻里


※今月の『そこでだ、若旦那!』も立川談四楼師匠の病欠により、“落語評論家:広瀬和生”が代打で執筆! ウイリアム・ヘイムス氏の撮影裏話『Man Of Two Lands』、元BURRN!編集部員の奥野高久氏がHM/HRの歴史について綴る『WAKE UP AND SMELL THE RECORD』といった新コラムも好評連載中! 増田勇一氏のコラム『MUSIC LIFE』、喜国雅彦氏の『ROCKOMANGA!』、オーディオ専門店『ザ・ステレオ屋』店長・黒江昌之氏の『THE STEREO XXCKING』、梶原崇画伯の部屋、書評(古屋美登里氏)・映画評(岩沢房代氏)やアーティスト(ARCH ENEMY/SPIRITUAL BEGGARS他のマイケル・アモット、元CATHEDRAL/『Rise Above Records』主宰のリー・ドリアン、BE THE WOLF/FROZEN CROWN他のフェデリコ・モンデッリ)によるコラムなど、読みものコーナー充実!!

ニュースやアルバム・レビューほか情報も満載です!


BURRN! 2026年11月号

A4判/144頁/定価1,200円(税込)/2026年10月5日発売

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