【BURRN! 10月号ちょい読み】

RUSH──11年の空白を埋めた奇跡的な復活ツアー

BY MASA ITOH

かつて、ロック・シーンの動きは、10年ひと昔という表現で語られた。考えてみれば、21世紀後半のロックン・ロール誕生以来、10年毎に周期が変わり、トレンドの動きは常に新しい潮流を生み出してきた。とりわけ、60年代からの40年間は、ある意味、規則正しく10年を区切りにして、大きな変化を呑み込んできたとも言える。第2次世界大戦後に新しい価値観を生み出し、カルチャーとしてストリートに定着させた60年代。その萌芽をさらに開花させた70年代。ヘヴィ・メタルの誕生や新世代のバンドがMTVの登場で映像と共に未来を 目指した80年代。そして、デジタルを取り込んで、80年代という爛熟の時代の余熱で繁栄していく90年代。しかし、その先には、数年でトレンドが激しく移り変わる、予想だにしなかったシーンが口を開けて待ち構えていることになる。

約11年ぶりにRUSHのライヴを観た。いわゆる “ひと昔前” に観たバンドということになるが、私にはそんなに長い空白があったという感覚がない。アレックス・ライフソン<g>、ゲディ・リー<b,vo, key>が、この11年の間に作品や書籍を出して空白を埋めていたから、時間の継続性が保たれていたという意味ではない。彼らの音楽は常にアップデートされ続けていたのである。2020年1月20日、強靭な三位一体を構成してきた重要人物、ニール・パート<ds>が悪性脳腫瘍の一種である膠芽腫で亡くなった。ニールが健在だったとしても、RUSHの再結成が実現したかどうかは判らない。彼がツアーからの卒業を願っていたことはよく知られていた。11年前に観たツアーは、バンドの40周年を祝う『R40 LIVE TOUR』だった。開演前の緞帳には「40+」の文字が躍っていた。40年ともう少し。2026 年のツアーは『FIFTY SOMETHING』、50年とちょっと。この微妙な細かな表現に、彼らのセンス・オブ・ユーモアの切れ味の良さが滲み出ている。伝説的なオープニングの映像が、笑いのツボに嵌まるかどうかはさておき、彼らが愛して止まない1960年代の有名な短編映画シリーズで、日本でもTV放映されて人気を博したコメディ・ドラマ『三ばか大将(THE THREE STOOGES)』から多大なインスピレーションを受けていることはつとに有名である。

その音楽性からシリアスなイメージを抱くファンが多いが、実はステージ・セットのスチームパンク風の柔らかいデザインを含めて、聴き手との距離が極めて近い、珍しいバンドである。そして、典型的なライヴ・バンドであることが、50年とちょっとの歴史を比類なく力強いものにしてきた。しかし、ニールはツアーに消極的になってきていた。『R40 LIVE TOUR』が限定的な本数しか出来なかったのは、ニールと事前に協議した結果だった。最終公演であるロサンゼルスは『フォーラム』での演奏終了後、3人はステージ前に出て来て肩を組んだが、その時のニールの晴れ晴れとした表情が印象に残っている。ゲディとアレックスの微笑みは、どことなくぎこちなかった。この表情の違いが、ツアーに対する考え方の違いであった。そのニールは亡くなった。事情は異なるが、ジョン・ボーナム<ds>が亡くなってLED ZEPPELINは活動を停止した。似たような色合いを感じさせる。ニールが存在しないRUSHが成立するかどうか。11年間の空白は、その問いに対する答えを求める時間だったのではないか。

11年前、RUSHの『マディソン・スクエア・ガーデン』公演前日にYESのクリス・スクワイア<b>が亡くなった。ゲディはクリスのシンボルでもあるリッケンバッカーを弾き、クリスを彷彿とさせるバキバキの際立ったベース・サウンドを轟かせている。後日、ゲディは追悼のメッセージを発表し、彼と会う機会はなかったが多大な影響を受けていたことを告白している。あれから、11年が経過した。『FIFTY SOMETHING』は『R40 LIVE TOUR』の最終地、ロサンゼルスからスタートした。さあ、物語の続きを始めようという、このスケジュールの組み方は、RUSHの作品に内包する精神性と呼応するものだ。何年も前から用意周到な戦略を立てていたことが窺われる。そして、彼らは『マディソン・スクエア・ガーデン』4公演に臨んだ。

続きはBURRN! 2026年10月号で!

THE WORLD'S HEAVIEST HEAVY METAL MAGAZINE

BURRN! 2026年10月号
 

<EXCLUSIVE COVER STORY:巻頭特集>
◆Zilqy
4人の個性が合体したモダン・メタル・バンドが初のフル・アルバムをリリース!
世界への飛翔を前にした彼女達の現在を解き明かす個別インタビュー4本立て!!

<EXCLUSIVE LIVE REPORT:海外ライヴ・リポート>
◆BON JOVI
ジョン・ボン・ジョヴィの復活宣言――NY9回公演の千秋楽を伊藤政則氏がリポート!

◆RUSH
カナダのプログレッシヴ・ロックの伝説が新ドラマーを迎えて11年ぶりにツアー再開!

◆ACCEPT
結成50周年を迎えたドイツの鋼鉄神が提供する、今なお最強のライヴをリポート!
未来を見据えて過去を振り返るウルフ・ホフマンのインタビューPART 1も必読!!


<EXCLUSIVE INTERVIEW:インタビュー記事>
◆FROZEN CROWN
イタリアのパワー・メタル・バンドが通算6作目を完成、“6人の王の伝説”が今始まる!

◆浜田麻里
自らプロデュースした「INCLINATION IV」の全貌を語る独占インタビュー第2弾!

◆HIBRIA
結成30周年を迎え、新体制で新作「ON THE SHORTNESS OF LIFE」発表!

◆VELVETEEN QUEEN
期待の若手ロックン・ロール・バンドが2ndを引っ提げて次なるステージへ!

◆GRAVE TO THE HOPE
元SERPENTの2人が立ち上げたデス・メタル・プロジェクト、5年半ぶりのEP発表!

◆NEKOMESHI (222)
ハードコアでコマーシャルで、モダンでオールドスクールなメタル・バンド、2ndリリース!


<SPECIAL EDITION:特別企画>
◆LOOKING BACK 1986
今から40年前、様々な分岐点が交差していた1986年のシーンを増田勇一氏が再考!

◆“映画館でメタルに浸る”のススメ
『マーダー・イン・ザ・フロント・ロウ~俺たちのベイエリア・スラッシュ物語~』『デス・バイ・メタル~デス・メタルを作った男~』――鋼鉄ドキュメンタリー2本同時公開記念企画!

◆特別連載『TALES FROM THKISS E FRONTLINE』
英国人記者ハワード・ジョンソンの回顧録:RUSH

◆特別連載『All Aboard!:Memories of Ozzy Osbourne』
シャリー・フォグリオ記者によるオジー・オズボーン追想コラム第10回!

<SPECIAL LIVE REPORT IN JAPAN:ライヴ・リポート>
◆DIR EN GREY
最新作「MORTAL DOWNER」の世界観が体現された二夜公演をリポート!

◆『SEX冠2026』
SEX MACHINGUNS×THE冠、日本のメタルを背負って立つ2組の激突ツアー!


<POSTER:ポスター>
◆YNGWIE MALMSTEEN


※今月の『そこでだ、若旦那!』も立川談四楼師匠の病欠により、“落語評論家:広瀬和生”が代打で執筆! ウイリアム・ヘイムス氏の撮影裏話『Man Of Two Lands』、元BURRN!編集部員の奥野高久氏がHM/HRの歴史について綴る『WAKE UP AND SMELL THE RECORD』といった新コラムも好評連載中! 増田勇一氏のコラム『MUSIC LIFE』、喜国雅彦氏の『ROCKOMANGA!』、オーディオ専門店『ザ・ステレオ屋』店長・黒江昌之氏の『THE STEREO XXCKING』、梶原崇画伯の部屋、書評(古屋美登里氏)・映画評(岩沢房代氏)やアーティスト(ARCH ENEMY/SPIRITUAL BEGGARS他のマイケル・アモット、元CATHEDRAL/『Rise Above Records』主宰のリー・ドリアン、BE THE WOLF/FROZEN CROWN他のフェデリコ・モンデッリ)によるコラムなど、読みものコーナー充実!!
ニュースやアルバム・レビューほか情報も満載です!


BURRN! 2026年10月号

A4判/144頁/定価1,200円(税込)/2026年9月4日発売

この記事についてのコメントコメントを投稿

この記事へのコメントはまだありません

ゲディ・リー自伝 我が奇妙なる人生

ゲディ・リー自伝 我が奇妙なる人生

5,500円
THE DIG presents ラッシュ その軌跡と栄光

THE DIG presents ラッシュ その軌跡と栄光

2,530円
もうすぐエピタフ どうしてプログレを好きになってしまったんだろう#9 第三印象

もうすぐエピタフ どうしてプログレを好きになってしまったんだろう#9 第三印象

2,310円
伊藤政則の“遺言” 3

伊藤政則の“遺言” 3

2,200円

RELATED POSTS

関連記事

LATEST POSTS

最新記事

ページトップ