【BURRN! 3月号ちょい読み】
ERIC MARTIN──お馴染みの名曲をアコースティックで魅せるスペシャルな来日ライヴ
BY YUMIKO HABA/BURRN!
2025年の12月、エリック・マーティン〈vo〉が来日公演を行なった。15日・横浜、17日・大阪に続くビルボードライブでの1日2回公演が東京にやって来たのは23日、クリスマスに向けて街を彩るイルミネーションも真っ盛りという頃のことである。ちょうど1年前にもエリックは単身来日し、Li-sa-X〈g〉ら日本の女性ミュージシャンによる即席バンドを従えてMR.BIGナンバーをたっぷり歌いまくる『BIG NIGHT』を1公演と、『MR.VOCALIST 15TH ANNIVERSARY TOUR』で大阪と東京を廻って1日2ステージの公演を行なったが、後者では長時間のリハーサルが祟ったと見えて本来のパフォーマンスが発揮出来ず、本人も忸怩たる思いがあったはず。2月のMR.BIGの『The BIG Finale!』では見事に復調して素晴らしい歌声を聴かせてくれたが、今回のビルボードライブ・ツアーで1年前の借りを返したいと強く念じてきたことは、1月号のインタビューでもエリック自身が熱く語っていたとおりだ。
各回入れ替え制で内容が異なる今回の2ステージは、最初がMR.VOCALIST、後のステージがMR.BIGのナンバーに特化したもので、どちらもアコースティック・パフォーマンスであることが予め告知されていた。17時30分開演の1stステージに詰め掛けたファンは師走だろうと平日だろうと関係ない悠々自適なリッチ層なのか、この日のために必死で仕事を片付けて六本木に駆け付けたのか。ちなみに私はこのショウをリポートするのが “仕事” だが、2月号は前日に校了したので心置きなくエリックの歌を楽しむぞと、片手にメモ用のペン、片手にグラスを握ってスタンバイ。やがて壇上に2008年からMR.VOCALISTシリーズを支えるバンドの面々が登場し、Tatoo〈key〉が “戦場のメリークリスマス” のメロディを奏でる中、エリックも拍手を浴びて位置に着いた。
1曲目はB’zの “Alone”。2024年に “20年ぶりのTMG” で活動を共にした松本孝弘〈g〉に届けとばかりに熱唱するエリックの歌声は温かく力強く、かつ艶やかだ。彼の歌うパートは英語に訳したものだが、最後のサビはバック・コーラス隊のRIAが前に出て日本語で歌い、エリックはもう1人のシンガーNorishigeと肩を並べてハーモニーを付けることに専念した。RIAはコーラスだけでなくMCの通訳としても大活躍で、彼女がいてくれる安心感と、ステージの目の前にテーブルが並んで観客が着席しているという親密な距離感、その皆がグラスを手に食事も楽しんでいる(勿論アルコールとは限らないし、歌の間は料理をパクつくどころではないだろうが)という “ライヴ・レストラン” ならではのくつろいだ雰囲気も手伝って、エリックはMR.BIGの時よりついつい曲間のMCを長くしゃべりがち。そんな彼の “素” の部分に触れられるという意味でも、ファンにとってこういったライヴはまたとない貴重な機会だ。
2曲目の “Time After Time” はシンディ・ローパーの曲で歌詞は元から英語だが、今井美樹の “PRIDE”、AIの “Story”、一青窈の “ハナミズキ”、絢香の “I believe” といった曲は、日本の女性シンガーのヒット曲をエリックが英語でカヴァーすることによって魅力がさらに深まるというMR.VOCALISTの意義を見事に示していた。「君達はこんな素晴らしい曲を普通に聴いて育ったんだよね。でもこれらの曲は僕も知ってる。MR.BIGとかで日本を廻ってる時にラジオでよく聴いたから」とエリックが語っていたが、こういったディーヴァ達が歌い上げる曲がヒットし、特にそのアーティストのファンでなくてもそこかしこで耳にする機会があって、誰もが名曲を名曲として共有していたのは90年代後半から2000年代半ばぐらいまでではないだろうか。2008年に第1弾アルバムが出たMR.VOCALISTシリーズは時期も選曲も、ついでに言うとMR.BIGオリジナル再結成に至る前というエリック自身のタイミングも、総てがこれ以上ないくらい揃っていたのだ。
EVERY LITTLE THINGの1998年の曲 “Time Goes By” を挟んで披露された “川の流れのように” は元祖・日本のディーヴァと呼ぶべき美空ひばりの曲で、2011年に出た「MR.VOCALIST BEST」に新しく収録されたもの。これにて日本の曲のカヴァー・パートは一旦切り上げ、エリックが紹介したのは懐かしいソロ曲 “I Love The Way You Love Me” だった。MR.BIGの活動休止中、1997年のアメリカのTVドラマ『MAD ABOUT YOU』のサントラに提供したもので、当時の妻も出演するミュージック・ビデオを作ったっけ、と余計なことまでしゃべり出したのを何とか軌道修正して曲へ。ビデオは今となっては色々な意味で涙なしでは観られないが、エリックらしい歌が胸を熱くさせる素敵なラヴ・ソングだ。
ここで、10年ほど前からアコースティック・ソロ・ツアーの際には相棒として頼りにしている英国人ギタリスト、デイヴィッド・コットレルを壇上に呼び込み、エリックもアコースティック・ギターを掻き鳴らして “Superfantastic” がプレイされた。昨年のMR.BIGの “最終ツアーのアンコール” でも聴く機会はなかったが、バンドの歴史を支えたリッチー・コッツェン在籍時の重要なヒット曲の1つだ。そのままデイヴィッドも交えて、ステージ奥のカーテンが開けられて街の夜景も飾りにしながらジョン・レノン&オノ・ヨーコの “Happy Xmas (War Is Over)” に山下達郎の“クリスマス・イブ”という2曲(2009年の「MR.VOCALIST X'MAS」に収録)でクリスマスを祝うと、メンバー紹介からの “To Be With You” で1stステージは締め括られた。
BAND:Meki Toru〈g〉、Ueda〈b〉、Taro〈perc.〉、Tatoo〈key〉、RIA〈back vo〉、 Norishige〈back vo〉
SETLIST
1. Alone
2. Time After Time
3. Pride
4. Story
5. Hanamizuki
6. I believe
7. Time Goes by
8. Kawa No Nagare No Youni
9. I love The Way You Love Me
10. Supefantastic
〜X’mas set w/ David Cotterill<g>〜
11. Happy X'mas (War Is Over)
12. Christmas Eve
13. To Be With You
BAND:David Cotterill〈g〉、Ueda〈b〉、Taro〈perc.〉、RIA〈back vo〉、Norishige<〈back vo〉
SETLIST
1. Shine
2. Take Cover
3. Just Take My Heart
4. Promise Her The Moon
5. Goin’ Where The Wind Blows
6. Wild World
7. Green-Tinted 60’s Mind
8. Daddy, Brother, Lover, Little Boy
9. Alive And Kickin'
10. Superfantastic
11. Fragile
12. The Frame
13. Back In Blue
14. To Be With You
15. Chrismas Eve
16. Dancing With My Devils
《エリック、MR.BIGを歌う……来日公演決定!》
『BIG Night -HEY MAN 2026-』
5/16(土)大阪・Zepp Osaka Bayside
5/19(火)東京・Zepp DiverCity
★MR.BIGの1996年「HEY MAN」ツアーのセットを再現する30周年記念ライヴが開催決定! 演奏予定メンバーはエリック・マーティン〈vo〉、Li-sa-X〈g〉、わかざえもん〈b〉、佐藤 奏〈ds〉。詳細はこちらを参照のこと。
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BURRN! 2026年3月号
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シャリー・フォグリオ記者によるオジー・オズボーン追想コラム第3回!
◆特別連載『Remembering Ronnie James Dio : Brother, Father, Teacher, Friend』
シャリー・フォグリオ記者が周辺の人々に取材して綴るロニー回想録、第66回!
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BURRN! 2026年3月号
A4判/144頁/定価1,200円(税込)/2026年2月5日発売
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