ANTHEMの35周年記念第一弾『PROLOGUE 1』@表参道GROUND ライブ・リポート

Report by 別府 “Veppy” 伸朗
ANTHEM結成35周年となる2020年。そんな記念すべきアニバーサリー・イヤーの第一弾ライブとして行われたのが「PROLOGUE 1」と冠されたこの日のイベント。第一部が長き眠りから覚め復活作となった「SEVEN HILLS」の完全再現、第二部が現ラインナップ初のツアーとなった2014年の『FIRST CONTACT』をモチーフにしたセットとファンにとってはたまらない一日となった。
この後に続く「PROLOGUE 2」、「PROLOGUE 3」と共にチケット入手がかなり困難で、涙した人も多かったようだ。当然ファンの期待も高く、結成35周年の幕開けとなるこの日のライブは2020年のANTHEMの活動を占う意味でも重要な一日となり、メンバーのプレッシャーも大きなものとなっていただろう。
リハーサルの後半から会場入りしていたのだが、少しピリっとした空気が流れていたのが肌で感じられた。サウンドは勿論ステージセットの細かい見せ方など、リーダーの柴田直人<b>は開演直前までスタッフと共に忙しく動き、指示を出していた。
 

第一部「SEVEN HILLS」完全再現ライブ

開場時間となり、あっという間に会場となった表参道GROUNDのフロアがファンで埋まっていく。その殆どがANTHEMのシャツ、私が見た感じでは『FIRST CONTACT』ツアーのシャツを着ていたファンが多かった。開演15分前ともなるとざわつきと共にファンの期待が次第に高まっていくのも伝わってくる。

開演時間を10分過ぎた頃にそれまで流れていたBGMから開始を告げるBLACK SABBATHの“Heaven And Hell”へと変わり、場内が暗転するとファンのボルテージが一気に上がっていく。“Heaven And Hell”からANTHEMの登場を告げるSEへと切り替わるとANTHEMのロゴが大きく描かれたバックドロップが誇らしげに浮かび上がり、それまで拍手していたファンからは怒号にも似たANTHEMコールが起こる。

それを打ち破る様に田丸勇<ds>が右手を突き上げステージに登場、続いて柴田、清水昭男<g>が姿を現すと更にフロアからの声も大きくなっていく。最後に森川之雄<vo>がステージに姿を現し、「ANTHEM、PROLOGUE1『SEVEN HILLS』いくぞ!」と言うと天井を吹き飛ばすような大歓声と共に、“Grieve of Heart”が会場を駆ける。力強くもどこか悲しみを秘めた様な名曲で、森川は坂本英三がオリジナルであるこの曲を見事に自分の色に染め上げていく。先行シングルにもなったこの曲、ANTHEMがシーンに帰ってきたと嬉しくなった当時の気持ちを色々と思い出し、歌詞がANTHEMの歩みとダブりオープニングにして既にグッと胸が熱くなり自然と声を出し歌っていた。

オープニングから全力疾走のANTHEMだが、その中でも己の魂のアツさをファンに示す様に柴田は前に出て激しく首を振りながら愛機を操っている。「SEVEN HILLS」をリリースして復活した時の覚悟、そして35周年を迎える今年、様々な思いが渦巻き柴田を燃え上がらせていたのかもしれない。そしてこの後も何度も見られたシーンだが、清水のギター・ソロでも柴田は前に出てギターとベースのバトルを見せていた。

そんなバチバチな柴田の魂が他のANTHEMのメンバーにも伝染した様で、まだ1曲目だというのにパワー全開のパフォーマンスがステージで繰り広げられる。超戦闘型のANTHEMに『今日は凄い夜になる』とこの時確信した。
「久しぶりだな!今夜も楽しんでいこうぜ!」とヘヴィなミドル・ナンバーの“Raging Twister”へと続き、田丸は何かを叫ぶ様に大きく口を開けながらビートを支える。「激しいの行くぜ!」とアグレッシブな“XTC”がファンの首を嫌でも振らせていく。森川はもっと魂焦がしていけとぐっと両手でマイクを握りしめシャウトし、最後はどうだと拳を突き上げる。MCでは35周年の最終公演にグラハム・ボネットの出演が決定したことを告げ、この日のシャツのマル秘話を盛り込み場を和ませる。

「バラエティに富んだアルバムの世界をタップリ味わって欲しい」と“The Man With No Name”がコールされ、再び会場がシリアスモードに包まれ清水の流麗なギター・ソロがハートの深くまで突き刺さる。そのままウネリの強い“March to the Madness”と続いていく。森川の「3人のアツイアツイ男たちが魂込めてプレイするぜ」との声に導かれANTHEM初のインスト曲となった“D.I.M. 422”で柴田、清水、田丸の火花散るバトルが始まる。フロアの誰もがプレイに魅入られる。特に清水と柴田のユニゾンでのプレイは本当に鳥肌ものだった。

森川がステージに戻り「俺たちと一緒に腐った魂をガッツリ蹴り上げていこうか!」と喝を入れ、凄まじいリアクションの中、「SEVEN HILLS」の中でも人気が高い“Running Blood”が疾走すると体中の血が騒ぐ。ANTHEMならではのキャッチーで美しいメロディラインにメタルの力強さが絶妙にミックスされた名曲だ。この曲にシンクロする様に、ステージはレッドライトに染まる。森川はオーディエンスを指さしながら熱唱、サビではファンと一緒に魂を焦がす。
柴田はフロアの盛り上がりと同調する様に首を激しく振り、メロディを操る清水とパワフルなドラミングの田丸もその表情からテンションの高まりが伺える。このまま続けていくぞとドライブ感溢れる“Freedom”に続き、曲の終わりに清水はギターを宙に突き上げる。
後半戦に突入し、柴田が「SEVEN HILLS」制作当時の思い出話を色々と語り、ファンは聞き耳を立てていた。次いでヘヴィな“Silently and Perfectly”がそれまで熱狂的に盛り上がっていた会場をヘヴィにダークに染め上げる。こうして「SEVEN HILLS」を完全再現で聴いていると、復活作にしてANTHEMの持つ様々な面を見せつけた奥の深い作品だったなと再認識する。第一部のラストはブルース・テイスト溢れる渋めの“The Innocent Man”。ANTHEMの中で異色ナンバーのこの曲、柴田と田丸のリズム隊がグッと生える曲だ。自然と身体が揺れグルーブが心地よく染み入っていく。

約1時間の第一部は拍手喝采の中で締めくくりを迎えた。
第二部 Selection From FIRST CONTACT 2014

インターバルの後にメンバーがステージに姿を現し第二部がスタート。FIRST CONTACTツアーをモチーフにした第二部のオープニングに、何が飛び出すか色々と楽しみに予想していたファンも多かったと思う。

「6年前にさかのぼるぞ!」という森川のMCから放たれたのは“Gypsy Ways (Win, Lose or Draw)”。FIRST CONTACTツアー最終日となった川崎公演に準じたこの曲に当時と思いをダブらせたファンも少なくなかっただろう。ANTHEMの数ある楽曲の中でも人気の高い名曲のパフォーマンスにファンは腕を振り上げ、誇らしげに歌い、早くもトップギアに突入している。どうだこれがANTHEMだと言わんばかりの視線を柴田はフロアに投げかける。

森川にとってはANTHEMに加入して初となるアルバムのオープニング、そしてANTHEMに再加入して最初のステージで歌った曲ということで色々な思いを歌に込めていたかもしれない。ANTHEMの王道ど真ん中の名曲に清水のギター・ソロも美しさの中に殺気を忍ばせる。

柴田が誇らしげに右手を宙に突き上げて、強力な毒を打ち込む“Venom Strike”が続く。ハードでストロングな曲調がファンのハートを更に燃え上がらせる。これは清水がANTHEMに加入して初となるアルバムのオープニング曲。切れ味鋭い清水のリフがフロアを切り裂いていく。田丸のバスドラの連打も腹の底をえぐり込んでいく。ANTHEMもファンも第一部の疲れなど微塵も感じさせないエネルギーの放出量だ。続いて力強さの中に哀愁滲むパワー・バラード調の“Love in Vain”が感情を大きく揺さぶってくる。

現ラインナップ初のアーティスト写真撮影時のメイクのマル秘話で盛り上がり、柴田が「覚悟してください」と述べるとかかってこいといった拍手と歓声がステージへ返っていく。

勿論、第二部のオープニング3連発からファンは当然喜びと共に十分覚悟もしていたと思う。森川が思いで深い曲と述べ声高らかに“Shine on”をコールする。今度は森川が再加入後、そして田丸が加入して初のアルバムとなった「ABSOLUTE WORLD」のオープニング曲。FIRST CONTACTツアーをモチーフにしているが、この曲にはそれ以上のドラマを感じる。田丸は激しくドラムを叩き、森川は最後にシャウト一発ファンを圧倒する。

正統スピード・ナンバーの“Stranger”で柴田はもっと盛り上がっていくぜと清水そして森川に絡み、ネックを立てステージの燃焼温度を上昇させていく。ここで上昇一方だった熱を少し冷ます様に“Blinded Pain”がしっとりと始まる。アダルト感あるムーディなメロディに森川の情感タップリの歌が絡みつく様が絶品だ。クールダウンと言いつつ、ANTHEMの内に秘めた青い炎が静かに燃え上がる曲で個人的にも好きな曲だ。

第二部の内容の濃さに時間が過ぎるのを忘れ、森川の後半戦突入というアナウンスに、もうそんな時間が過ぎたのかと我に返る。歌えるヤツはガンガンいってくれと鐘の音が“Black Empire”の開始を告げる。ほんのりとモダンな香り漂い陰を感じさせる曲調とサビがグッとくる。まだまだ行くぞと“Evil One”へと続き後半戦もあっという間に時間が過ぎ去ってしまう。

MCでちょっと噛んでほんわかとした空気が流れたが、この日は長丁場のイベントで、それがファンにとって息抜きにもなって楽しめたと思う。『ダーク茄子』(ダークネス)なんてその場の人全てがツボにはまった珍語も良い思い出となっただろう。

そしてファンとの一体感が素晴らしいポジティブなポップさのある“Shout It Out!”で盛り上がり、柴田はいい感じだとフロアを指さし煽っていく。第二部本編ラストにANTHEMの数ある名曲の中でも人気の高い“Bound to Break”が間髪入れずプレイされる。いつもよりも体感スピードは速め、ファンの誰もが最初から歌い、サビでは拳を振り上げ汗を飛び散らせ、ANTHEMへの忠誠を誓っている様だ。森川は清水のギター・ソロの場面ではエア・ギターで絡み、サビでは柴田の肩に手をまわしマイクを向ける。そんなフロントの後ろで田丸は野獣の如き表情でビートを叩き出している。

ANTHEMもファンも魂を燃やした第二部はエンディングを迎えた。

そしてアンコールでファンにまさかのプレゼント

メンバーをステージに呼び戻す大ANTHEMコールの中、ライトでANTHEMのロゴのバックドロップが再び浮かび上がる。そのコールに負けましたといった表情のメンバーがステージに再び姿を現す。

ここで柴田がこの日来場のファンに突然「何が聴きたい?」とリクエストを求める。リリース30周年記念として行われ映像作品となった「GYPSY WAYS + HUNTING TIME 30th Anniversary Live」から限定のリクエストだが、ANTHEM初の試みはこの日来場したファンにとって本当にスペシャルなプレゼントとなったであろう。勿論、仕込みやヤラセもないガチンコで、セットリストには曲名の記載はなし。もしかしたらこの日一番のハイライトはこのリクエストだったのかもしれない。

じゃんけんの勝者がリクエスト曲を選ぶということで始まり、途中経過では“Hunting Time”といったメンバーをホッとさせる名曲、そしてメンバーをドキっとさせる“Bottle Bottom”や“Legal Killing”が告げられ、「お~」といったどよめきと共に盛り上がっていく。誰が勝者になるのか、曲名は何を告げるか皆が注目する。

勝者が告げた曲名は、“Bottle Bottom”。

柴田が絶句した後に、凄まじい後悔とボソリと口を開く。しかし、その後直ぐにやりますと告げるとフロアから大きな拍手が沸き起こる。ある意味ファンからの挑戦状とも言えるこのリクエストに真正面から応えなければANTHEMではないだろう。ファン注目の中、柴田が右手を突き上げ開始の合図をする。田丸のシンバルワーク、そして森川のシャウトから“Bottle Bottom”がプレイされ、ファンはANTHEMの思いにヘッドバンギングで応える。

終演後控室でヒヤヒヤしたとメンバーは謙遜していたが、プレイヤーANTHEMのとてつもないポテンシャルの高さとギラリと光る懐刀を見せつけたアンコールだった。またやって欲しいと告げると柴田は苦笑いをしていたが、ファンの声が高まっていけばまたこういったリクエストをやるかもしれない。本当にユニークな試みだったし、35周年を迎えて攻めの姿勢を崩さないANTHEMの凄みを見せつけられた場面でもあった。

思いっきり歌って叫んでとファンに向け、森川が「WILD!」と叫ぶとファンは「ANTHEM!」とそれに続き、この日最後の曲となった“Wild Anthem”がプレイされる。完全燃焼を視覚化したような真っ赤なライトの中、柴田は突き上げた右手拳に力を込め、森川はステージに突き出されたオーディエンスの手とタッチする。そして「昭男!」とシャウトからギター・ソロを呼び込む。田丸はサビでは大きく口を開けながら、ダイナミックなドラミングでファンの思いに応える。

第一部、第二部合わせて2時間を超えたものだったが、そんな長時間だとは全く感じさせないもので、もっと時間を共有したいと思わせる強烈なイベントだった。

こうしてANTHEMの35周年は見事なスタートダッシュを決めたが、「PROLOGUE 2」、「PROLOGUE 3」がどんな名場面を我々に見せてくれるかと思うとワクワクも止まらない。そしてアニバーサリー・イヤーに相応しく歴代メンバーを迎えてのツアー、スペシャル・ゲストにグラハム・ボネットを迎えての最終東京公演と期待も高まっていく。

そして12月にはまだ全貌が明らかにされていないエピローグ公演とANTHEMファンにとっては間違いなく忘れられない1年となるだろう。

<2月25日セットリスト@東京・表参道GROUND>

第一部:SEVEN HILLS完全再現

01. Grieve of Heart
02.Raging Twister
03.XTC
04.The Man With No Name
05.March to the Madness
06.D.I.M. 422
07.Running Blood  
08.Freedom
09.Silently and Perfectly
10.The Innocent Man

第二部:Selection From FIRST CONTACT 2014
11.Gypsy Ways (Win, Lose or Draw)
12.Venom Strike
13.Love in Vain
14.Shine on
15.Stranger
16.Blinded Pain
17.Black Empire
18.Evil One
19.Shout It Out!
20.Bound to Break

-encore-
21.Bottle bottom(ファンからのリクエスト)
22.Wild anthem

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