藤木昌生の密かな楽しみ Vol.15 ~ 気まぐれプレイリスト 7

オリヴィア・ニュートン・ジョンの訃報には少なからず動揺しましたねぇ…。僕は特に彼女のファンというわけではなかったかもしれないけど、70年代から洋楽を聴いてきた人間にとっては本当に大きな存在だったし、彼女の曲で素晴らしい曲はいくつもあった。シンガーとして優れていただけでなく、絶世の美女でもあっただけに、余計にその衝撃が大きいというか…。

僕が初めて彼女を存在を知ったのは、まだ本格的に洋楽ロックに目覚める前の小学6年生の頃、クラスの女子がBAY CITY ROLLERSに熱狂し始めていて、「歌謡曲以外にも(自分達が聴いて楽しめる)英語の歌というのがあるんだ」みたいな感覚が芽生えた時期だった。僕の場合、幼い頃から家では父親が英語の曲(主にジャズ)を毎日のように聴いてはいたけど、それは「大人が聴くもの」という感覚だったので、同い年の人間が外国の歌手にキャーキャー言ってるのは興味深かった。

当時、オリヴィアの”Take Me Home, Country Roads(カントリー・ロード)”が日本でヒットしたことで僕は彼女の存在を知ったんだけど、雑誌で写真を見て「こんな美しい人がいるんだ!」と思った。まあ、だからといってファンになることはなかったし、中1でKISSをきっかけに洋楽ロックに目覚めた後は、後追いで聴いたオリヴィアの”Have You Ever Been Mellow(そよ風の誘惑)”をいい曲だな~と思いつつも、硬派のロック・ファンがそんな女性ポップ・シンガーにうつつを抜かすわけにはいかないので(笑)、興味のないフリをしていた。それはABBAやCARPENTERSに関しても同じで、ロックに目覚めて粋がってるガキにとって、軟弱なポップスを好きだと言ってしまうことは「負け」を意味していたのだ。(笑)

そういった僕の粋がりは、1980年にオリヴィアがELOとコラボした希代の名曲”Xanadu”をリリースした時もまだ続いていた。まあ、当時の僕はELOの素晴らしさも「”Telephone Line”って意外といい曲だね」程度にしか判ってなかったからどうしようもないんだけど、とにかくオリヴィアの音楽をまともに聴こうとしていなかった。

しかし、その後、厨二病(?)から脱却して真っ当なリスナーに成長した僕は、オリヴィアの音楽も普通に楽しめるようになった。アルバムを買い集めるほどではなかったけど、”Have You Ever Been Mellow”や”Xanadu”といった曲は何度聴いても癒される名曲、と胸を張って言えるようになった。(笑) 確か、2000年代にBURRN!の『今月のおすすめ』コーナーでオリヴィアの当時の新作を紹介したこともあったんじゃなかったかな?

ライターの北井康仁さんもオリヴィアが好きで(彼はBAY CITY ROLLERSなど70年代ポップス全般について詳しい)、いろいろな情報を教えてもらったりしたな~。

オリヴィアは、歌が上手いのはもちろんだけど、声質も魅力的。透明感はあるんだけど、決してクリスタルじゃない…というか、ツルツルの声じゃなくて、細かい肌理が感じられる絹のような声で、それが独特の情感を生んでいたと思う。

彼女が当時どれだけ大きな存在だったかは、日本の歌謡曲(ニューミュージック)で”オリビアを聴きながら”という人気ナンバーがあることでも判ると思う。いや別に、オリヴィアを題材にしたからヒットしたわけじゃなくて、曲そのものが素晴らしいからヒットしたんだけどね。この名曲を作詞作曲したのは尾崎亜美で、オリヴィアの「MAKING A GOOD THING BETTER」(1977年)に触発されてこの曲を書いたそうで、”オリビアを聴きながら”の歌詞の中にも「Making good things better」というフレーズが出てくる。

あ、ちなみに、世間では「”Physical”の大ヒットで知られるオリヴィア・ニュートン・ジョン」という伝えられ方をしていると思うけど、”Physical”でオリヴィアを判断することは、”Smoke On The Water”でDEEP PURPLEを判断したり、”Eye Of The Tiger”でSURVIVORを判断するのと一緒だと思うので、そこは騙されないでくださいね。

ということで、オリヴィアの与えてくれたものに感謝しつつ、ご冥福をお祈りいたします。

Olivia Newton-John
- Have You Never Been Mellow (Live 1975)

※”その風の誘惑”という邦題でヒットした曲。
 
Olivia Newton John Xanadu Original Version Remastered HD (1980)
※オリヴィアが主演したミュージカル映画『ザナドゥ』の主題歌。音楽を担当したのはELO。
 
オリビアを聴きながら
※杏里の1978年のデビュー曲で、当時はヒットしなかったが、その後に多くのアーティストにカヴァーされるなどしてJ-POPのスタンダード曲となった。
 
さて、それでは気まぐれプレイリストの7回目をご紹介していきましょう。

SIDE A
1.JONO ”Crown”→ Spotifyで聴く
シンガー/メイン・ソングライターのJohan Norrby(ヨハン・ノービー)の名前を略してJONO。彼らがこの曲を含む3rd「LIFE」で日本デビューした時は、前2作はノーチェックだったので、「こんな凄いバンドがいたのか!」と衝撃を受けました。その音楽は、哀しいし、劇的だし、クサいし、まさに好みでした。「LIFE」の日本盤が出てしばらくしてからレコード会社の担当者に売れ行きを聞いたら、「悪くはないけど特別売れてるわけでもない」みたいな答えで悲しくなったのを覚えている。
2. DREAM EVIL ”In Flames You Burn” → Spotifyで聴く
フロドリック・ノルドストローム率いるバンドのデビュー作からのナンバー。ガス・Gもメンバーだったけど、まだこの頃はガスも駆け出しで、それほど注目されてなかったよね。一方、フレドリックはすでにメロデス系プロデューサーとして確固たるステイタスを築いていた。それなのに、来日した時にライヴの翌日にフレドリックに取材をしたら二日酔いの絶不調で、青い顔して机に突っ伏している。後で聞いたら、前日にバーで酔っ払って、椅子の上から繰り返し飛び降りるなどの愚行を繰り広げていたとのこと。「一流のプロデューサーのくせにそんなことするんだ?」と微笑ましく思ったのを覚えてます。(笑)
3. CYHRA ”Heartrage” → Spotifyで聴く
先日、ようやく初来日公演の振替日程が決まったバンド。元AMARANTHEのジェイク・Eと元IN FLAMESのイエスパー・ストロムブラードが組んだバンドとして最初から注目されていた彼らだけど、デビュー作「LETTERS TO MYSELF」収録のこの曲のサビメロを聴いた瞬間、「ああ、AMARANTHEのあの麗しいメロディの数々はジェイクのおかげだったんだな」と思ってしまった。この切なく哀しく美しいメロディ、最高じゃないすか? 2作目ではそれほど強力なメロディは見当たらなかったけど、今後またこういう胸に染みるメロディを生み出してくれることをジェイクには期待したい。彼は鼻にかかったポップな声質もとても魅力的だしね。
4. ALDO NOVA ”Cry Baby Cry”→ Spotifyで聴く
カナダ出身のシンガー・ソングライターで、デビュー前のジョン・ボン・ジョヴィを色々と世話してあげていた(けど、その後に立場が大きく逆転した)アルド・ノヴァ。1980年にデビューした時はかなり注目されてたような記憶があるけど(ソニーが大々的に宣伝してただけか?)、僕はデビュー作よりもこの曲が入った2nd「SUBJECT」の方が気に入っていた。彼の場合、歌唱力が致命的なので(笑)、ちゃんとしたシンガーを雇っていればもっと成功したんじゃないかと思うけど、曲作りの才能は間違いなくあると思う。最近また音源をリリースし始めたようだけど、相変わらず自分で歌いたいみたいで…。(苦笑)
5. FAITH HILL ”I Love You” → Spotifyで聴く
ポップ・カントリー界の人気者フェイス・ヒルがそのアルド・ノヴァ作曲のこのバラードを取り上げた。それ以前にセリーヌ・ディオンがこの曲を歌っていたので、そっちの方が有名だと思うけど、僕はこっちのフェイス・ヒルのヴァージョンの方が好き。サビでの歌のコブシの回し方とかね。歌詞は使い古されたラヴ・ストーリーのパターンなんだけど、曲が良いから思わず胸キュンしちゃう。(笑) 

SIDE B

1. KATE BUSH ”Moving” → Spotifyで聴く
僕がケイト・ブッシュを知ったのは、デビュー当時(1978年)にNHK-FMの渋谷陽一さんの『ヤング・ジョッキー』で彼女が紹介された時で、御多分に漏れず”嵐が丘”での歌声に「なんじゃこりゃ?」と衝撃を受けた。ただ、レコードを買ったのはそれから1年ぐらい経った頃で、お茶の水のディスクユニオンの輸入盤セールに意気込んで出かけたものの目ぼしいハード・ロック作品がなく、「なら、これでも買って帰るか」と手を出したのが彼女の1st「THE KICK INSIDE」だった。買ったアメリカ盤はこの冴えないジャケで、ちょっと不安だったが、聴いてみたらなかなかメロディアスな作品で良かった。目当ての”嵐が丘”も良かったけど、僕はアルバムの幕開けを飾るこの”Moving”が大のお気に入りになった。彼女のアルバムは2作目以降も何枚か聴いてみたけど、僕にはちょっと魅力が理解できませんでしたね~。(苦笑)
2. DERDIAN ”Forever In The Dark” → Spotifyで聴く
このバンドのことは名前だけは何となく記憶にあったので、この曲が入った4th「LIMBO」の音を受け取った時も、「ああ、あのダサいイタリアのバンドの新作ね」ぐらいのナメた姿勢で聴き始めたんだけど、「ん? なんか良くないか?」という感じになって、この”Forever In The Dark”が出てきた時には「いやいや、これヤバいよ!」となっていました。(笑) 欧州民謡的なクサメロはこれでもかとツボを突いてくるし、イヴァン・ジャンニーニの歌唱力は素晴らしいし…。後に日本のMinstreliXとコラボしたのが頷けるよね。両者ともクサメロにかけては抜群のセンスを持ってるから。
3. WIG WAM ”Bless The Night”→ Spotifyで聴く
ノルウェーの実力者集団WIG WAMの大ヒットしたデビュー作「HARD TO BE A ROCK 'N' ROLLER」からのナンバー。イントロからヴァースにかけての朗らか&爽快な感じはまあ想定内としても、サビ前のブリッジでのドリーミーな展開には完璧にやられました。アルバムを重ねるごとにイロモノ色(変な日本語?)が薄れていったし、再結成後はシリアス路線になって、それが大衆のニーズと合致しているのか?というのが問題になってくると思うけど…。
4. RICHIE SAMBORA ”Father Time'” → Spotifyで聴く
さっきアルド・ノヴァの歌唱力について書いたけど、このリッチー・サンボラの場合は1stソロ「STRANGER IN THIS TOWN」を聴いた時にまずその圧倒的な歌唱力にたまげた。単にバンドのギタリストでいるなんて勿体ない!って。アルバムには秀曲がいくつも入っていたけど、極め付きはこのドラマティックこの上ないバラードだった。しばらくは繰り返し曲を聴いて感動に浸っていたんだけど、ある日、歌詞を読みながら聴いてみたら、フラれた男が元カノへの未練を捨てきれず「神様、どうか時間をください」とすがりついてるような内容で、ちょっとガッカリ。(笑) いや、でもそれでこの曲(音楽)の価値が下がることは全然ないんだけどね。
5. RICHIE SAMBORA ”The Answer” → Spotifyで聴く
アルバムでも前の”Father Time”の次に収録されている曲で、この曲でアルバムが幕を閉じる。この曲単体でも素晴らしいメロディ(どこか郷愁を覚えるような)を持った美しいアコースティックの小品なんだけど、前の”Father Time”から続けて聴くことでより一層味わいが増すと思います。

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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