藤木昌生の密かな楽しみ Vol.5 ~ このクオリティで日本盤リリースなしですか!?のNASSON
ロシアのリーダーは侵略者であるばかりか地球の破壊者じゃないかと思えてくる今日この頃、この状況を”ソ連”で生まれ育ったアンドレ・アンダーセンはどう見ているのか。洞察力と皮肉のセンスに長けたアンドレの思いを聞いてみたい…。
さて、今日このコラムで取り上げるのはチリ出身のマルチ・プレイヤーのNASSONことナッソン・コルバラン・プルーダント。この名前を聞いてピンと来るのはごく一部のマニアだけだと思うが、2020年に日本でもデビュー・アルバムがリリースされたSINNER'S BLOODのギタリスト/メイン・ソングライターである。そして、あのティモ・トルキがチリ出身の女性シンガーのカテリーナ・ニックスと組んだCHAOS MAGICで、アルバム1枚で離脱したティモの代わりに2作目の音楽作りを全面的に託されたのもこのナッソンだった。
そのナッソンが、今年1月にNASSON名義のソロ・アルバム「SCARS」をリリースしたのだが、その内容が素晴らしいのに日本盤が出ていないと知って驚いた。これだけ日本社会の不景気が続いていて、かつ配信やデジタル・コピーの文化(違法なものも含めて)が定着してきて、日本盤リリースが見送られる作品が多くなってきたことは多くのファンが感じていることだと思うが、この「SCARS」もそういった時代の犠牲になってしまったのか。
海外作品の日本盤リリースが見送られる理由の殆どは「日本では売れない」というレコード会社の(メタル系担当者の)判断だろうが、このナッソンの「SCARS」は僕からすれば「欧米ではどうか判らないが日本ではウケそうな音楽」だ。なのにこの作品がスルーされた理由として考えられるのは、①採算が見込めないほど契約金が高かったから②日本ではバンドものは売れるがソロ・アーティストは売れないから③ジャケットが(日本人の)購買意欲をそぐから④担当者の聴く耳がないから。①はまずないだろうから、他の3項目の複合技ではないかと思う。
確かに「SCARS」のジャケは(日本人的感覚からすれば)あまりよろしくない。HM/HR界でこういうジャケが許されるのはBON JOVIとイングヴェイ・マルムスティーンくらいのものだろう。でも、そこが問題なら日本盤だけジャケを変えて出せば済む話だ。過去にそういう例はいくらでもあった。
例えば、僕のお気に入りのARCH RIVALのデビュー作「IN THE FACE OF DANGER」(1991年)などは、かなりのタイムラグを経て日本のレコード会社の担当者が発見し、1993年になって新装ジャケットで日本発売が実現している。オリジナルのジャケはHM/HR史上最悪の1つに数えられる酷さで(笑)、あのまま日本盤を出していたらちょっとした事件になっていたと思うけど、「ジャケを変えてでもリリースして日本のマーケットにこの素晴らしい作品を紹介したい」という担当者の情熱があったのだと思う。まあ、その日本盤の新装ジャケも冴えない白黒のバンド写真で、お世辞にもクールとは言えないものだったんだけどね。(笑)
とにかく、ナッソンの「SCARS」に関しては、このまま人知れず埋もれてしまうとしたらあまりに不憫だし、1人でも多くの人に知ってもらえたらと思って、ここで紹介させてもらうことにしたわけです。
アルバムの音楽性は叙情的で重厚でドラマティックな正統派メタル。メロスピでもネオクラでも北欧ハード・ポップでもないので、それを期待してた人はここで読むのをやめてページを閉じてもらってOKです。(笑) この「SCARS」の魅力は何と言ってもその哀愁たっぷりのメロディと、それを堂々と歌い上げるナッソンのヴォーカル。「ギタリストだけど一応歌も唄えますよ」なんてレヴェルではなく、バンドのリード・シンガーとしても充分やっていける歌唱力だと思うし、どこかジェイク・E(元AMARANTHE~現CYHRA)を思わせるちょっぴり鼻にかかった歌声も魅力的だ。とにかく曲が良くて、しかも楽曲粒揃いで、泣きの入ったメロの曲が次々と登場する。近い感触のバンドを挙げるとするならNOCTURNAL RITESか。
SINNER'S BLOODもまあ言ってしまえば同じスタイルの音楽性だったけど、これを聴いてしまうと、「あっちでは本気出してなかったでしょ」と言いたくなったしまう。(笑) それくらいの楽曲の充実度と煽情力がこの「SCARS」にはある。
これがナッソンの自主リリース作品だとか、チリのインディ・レーベルから出た作品とかだったら、日本盤が出なくても仕方ないかなと思ったりもするけど、かの『Frontiers Records』の作品なのだから、日本の各レコード会社には間違いなく売り込みがあったはずなのだ。なのに、すべてのレコード会社が(様々な観点から)「これは日本盤を出す価値はない」と判断したわけで、それはとても残念に思う。ナッソン自身も「俺のアルバムはSINNER'S BLOODのアルバムほど良くないのか…」とガッカリしているかもしれない。いやいや、そんなことないよ、SINNER'S BLOODよりこっちの方がずっと良いから、と言ってあげたい。(あ、それはそれでSINNER'S BLOODの人達やそのファンに悪いか/苦笑)
というわけで、泣きの入った重厚な正統派メロディック・メタルが好きなら、NOCTURNAL RITESみたいな音が好きなら、ぜひ一度このアルバムの曲を試聴してみてください。
さて、今日このコラムで取り上げるのはチリ出身のマルチ・プレイヤーのNASSONことナッソン・コルバラン・プルーダント。この名前を聞いてピンと来るのはごく一部のマニアだけだと思うが、2020年に日本でもデビュー・アルバムがリリースされたSINNER'S BLOODのギタリスト/メイン・ソングライターである。そして、あのティモ・トルキがチリ出身の女性シンガーのカテリーナ・ニックスと組んだCHAOS MAGICで、アルバム1枚で離脱したティモの代わりに2作目の音楽作りを全面的に託されたのもこのナッソンだった。
そのナッソンが、今年1月にNASSON名義のソロ・アルバム「SCARS」をリリースしたのだが、その内容が素晴らしいのに日本盤が出ていないと知って驚いた。これだけ日本社会の不景気が続いていて、かつ配信やデジタル・コピーの文化(違法なものも含めて)が定着してきて、日本盤リリースが見送られる作品が多くなってきたことは多くのファンが感じていることだと思うが、この「SCARS」もそういった時代の犠牲になってしまったのか。
海外作品の日本盤リリースが見送られる理由の殆どは「日本では売れない」というレコード会社の(メタル系担当者の)判断だろうが、このナッソンの「SCARS」は僕からすれば「欧米ではどうか判らないが日本ではウケそうな音楽」だ。なのにこの作品がスルーされた理由として考えられるのは、①採算が見込めないほど契約金が高かったから②日本ではバンドものは売れるがソロ・アーティストは売れないから③ジャケットが(日本人の)購買意欲をそぐから④担当者の聴く耳がないから。①はまずないだろうから、他の3項目の複合技ではないかと思う。
確かに「SCARS」のジャケは(日本人的感覚からすれば)あまりよろしくない。HM/HR界でこういうジャケが許されるのはBON JOVIとイングヴェイ・マルムスティーンくらいのものだろう。でも、そこが問題なら日本盤だけジャケを変えて出せば済む話だ。過去にそういう例はいくらでもあった。
例えば、僕のお気に入りのARCH RIVALのデビュー作「IN THE FACE OF DANGER」(1991年)などは、かなりのタイムラグを経て日本のレコード会社の担当者が発見し、1993年になって新装ジャケットで日本発売が実現している。オリジナルのジャケはHM/HR史上最悪の1つに数えられる酷さで(笑)、あのまま日本盤を出していたらちょっとした事件になっていたと思うけど、「ジャケを変えてでもリリースして日本のマーケットにこの素晴らしい作品を紹介したい」という担当者の情熱があったのだと思う。まあ、その日本盤の新装ジャケも冴えない白黒のバンド写真で、お世辞にもクールとは言えないものだったんだけどね。(笑)
とにかく、ナッソンの「SCARS」に関しては、このまま人知れず埋もれてしまうとしたらあまりに不憫だし、1人でも多くの人に知ってもらえたらと思って、ここで紹介させてもらうことにしたわけです。
アルバムの音楽性は叙情的で重厚でドラマティックな正統派メタル。メロスピでもネオクラでも北欧ハード・ポップでもないので、それを期待してた人はここで読むのをやめてページを閉じてもらってOKです。(笑) この「SCARS」の魅力は何と言ってもその哀愁たっぷりのメロディと、それを堂々と歌い上げるナッソンのヴォーカル。「ギタリストだけど一応歌も唄えますよ」なんてレヴェルではなく、バンドのリード・シンガーとしても充分やっていける歌唱力だと思うし、どこかジェイク・E(元AMARANTHE~現CYHRA)を思わせるちょっぴり鼻にかかった歌声も魅力的だ。とにかく曲が良くて、しかも楽曲粒揃いで、泣きの入ったメロの曲が次々と登場する。近い感触のバンドを挙げるとするならNOCTURNAL RITESか。
SINNER'S BLOODもまあ言ってしまえば同じスタイルの音楽性だったけど、これを聴いてしまうと、「あっちでは本気出してなかったでしょ」と言いたくなったしまう。(笑) それくらいの楽曲の充実度と煽情力がこの「SCARS」にはある。
これがナッソンの自主リリース作品だとか、チリのインディ・レーベルから出た作品とかだったら、日本盤が出なくても仕方ないかなと思ったりもするけど、かの『Frontiers Records』の作品なのだから、日本の各レコード会社には間違いなく売り込みがあったはずなのだ。なのに、すべてのレコード会社が(様々な観点から)「これは日本盤を出す価値はない」と判断したわけで、それはとても残念に思う。ナッソン自身も「俺のアルバムはSINNER'S BLOODのアルバムほど良くないのか…」とガッカリしているかもしれない。いやいや、そんなことないよ、SINNER'S BLOODよりこっちの方がずっと良いから、と言ってあげたい。(あ、それはそれでSINNER'S BLOODの人達やそのファンに悪いか/苦笑)
というわけで、泣きの入った重厚な正統派メロディック・メタルが好きなら、NOCTURNAL RITESみたいな音が好きなら、ぜひ一度このアルバムの曲を試聴してみてください。
NASSON
「SCARS」
2022年
<収録曲>
01. Not Today
02. Room 108
03. Mother Moon
04. Runaway
05. On The Other Side
06. Bringer Of Sorrow
07. King Of Lies
08. A New Beginning
09. When It Rains
10. We Are The Army
11. Rising
LINE-UP:
Nasson - Vocals, guitars, bass, piano, programming
Rodrigo Leiva - Drums
Caterina Nix - Backing vocals
Guests Musicians:
Caterina Nix, Giu Oliver, Mizuho Lin & James Robledo in “We are the army”.
Mistheria - Additional Synths on “Mother moon”.
Alessandro del Vecchio - Guest vocals on “When it rains”
Ignacio Torres - Guitar (Solos on “Not Today”, “Bringer of sorrow” and “We are the army”)
「SCARS」
2022年
<収録曲>
01. Not Today
02. Room 108
03. Mother Moon
04. Runaway
05. On The Other Side
06. Bringer Of Sorrow
07. King Of Lies
08. A New Beginning
09. When It Rains
10. We Are The Army
11. Rising
LINE-UP:
Nasson - Vocals, guitars, bass, piano, programming
Rodrigo Leiva - Drums
Caterina Nix - Backing vocals
Guests Musicians:
Caterina Nix, Giu Oliver, Mizuho Lin & James Robledo in “We are the army”.
Mistheria - Additional Synths on “Mother moon”.
Alessandro del Vecchio - Guest vocals on “When it rains”
Ignacio Torres - Guitar (Solos on “Not Today”, “Bringer of sorrow” and “We are the army”)
余計なお世話ですが、前述のARCH RIVAL「IN THE FACE OF DANGER」のジャケが下記です。酷いでしょ。(笑) オリジナルのジャケがこんなデザインだったと知ったのは日本盤が発売されてから何年も経ってからだったので、発売当時のBURRN!のインタビューでジャケの件について訊くことは出来なかったけど、もし質問していたら「俺達はあのジャケが気に入ってたんだけど、何故か日本のレコード会社がアートワークを変えたいと言ってきてね」などという答えが返ってきた危険性はあったかも。(笑)
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