【BURRN! 2月号ちょい読み】

SABATON──最新作「LEGENDS」を引っ提げた圧巻のショウ

新作「LEGENDS」を引っ提げての『THE LEGENDARY TOUR』スタート!
さらにエスカレートし、殆ど信じがたい規模で展開される
“ヘヴィ・メタル×演劇”のハイブリッド・ショウ!!


pix & report by TIMO ISOAHO

「SABATONは、あなたがこれまで体験したことのないショウを作り上げた。従来の考え方は窓の外に放り投げて、これまで以上に “SABATON尽くし” の体験に備えてほしい」

SABATONのプレス・リリースに書かれていたその力強い言葉が、12月1日、アムステルダムの収容人数15,000人の『Ziggo Dome』へ向かう途中、私の耳の中でこだまし続けていた。その日は月曜日——ヨーロッパの基準では、ヘヴィ・メタルのライヴには理想的とは言い難い曜日だ。にもかかわらず、この名高いアリーナは最上段の席に至るまでぎっしりと埋まっていた。この今夜の戦場『Ziggo Dome』について一言述べておきたい。この近代的アリーナは、SABATON独自の神話の中では既に伝説的な存在となっている。『THE TOUR TO END ALL TOURS-LIVE IN AMSTERDAM』は、まさにこの屋根の下で2023年5月3日に収録され、後に世界中の1,000以上の映画館で上映されたのだ。

今は2025年の終わりだが、この『THE LEGENDARY TOUR』へ足を踏み入れる前に、少し時間を巻き戻さなくてはならない。それがSABATON流なのだ。典型的なコンサートがどうあるべきかというルールブックを破り捨てるのが……。もし前回のツアーがヘヴィ・メタル劇場と純粋なロックのスペクタクルを融合させたように感じられたのだとすれば、新作「LEGENDS」を掲げたこのツアーはバンドが約束したとおり全くの別物だ。あらゆる面でより大規模になっている。

では、今回のツアーでは一体何が起きるのか? その答えを知るためには、あの月曜日の夜19時丁度のアムステルダムへ足を踏み入れなくてはならない。まさにその瞬間に、本当に物事が動き始めたからだ。

観客は歓声を上げる——まずは30名以上のTHE LEGENDARY ORCHESTRAのメンバーがステージに現われた。これらのミュージシャンの殆どは地元アムステルダム出身で、彼らにとっては胸躍る凱旋公演となった。そして、ステージだ。オーケストラによるオープニング・セットの間には、SABATONの新たな視覚的兵器の総てが明らかになっているわけではない。だが、その多くは確かに姿を現わしている。新しいSABATONのステージは、ロック・ショウのセットと言うより、“Templars” のミュージック・ビデオから飛び出してきた要塞都市のように見える。そう、総てがこの“城塞”コンセプトに基づいて組まれており、“城の塔” がステージ前方の角からそびえ立っているのである。驚異的な光景だ。

THE LEGENDARY ORCHESTRAに関して言えば、SABATONの狙いは単にストリングスをメタルに加えることにあるのではなかった。それは興奮を呼び、心を奪い、非凡である必要があった。THE LEGENDARY ORCHESTRAは、その答えとして誕生した。このツアーは、ロック・ショウの持つ生々しいパワーと、シンフォニックな演奏が持つ優雅さと壮大さを融合させたハイブリッドな体験なのだ。SABATONのファンを、これまで味わったことのない方法でスリルへと導くことを意図した途方もない新フォーマットだ。このアンサンブル/プロジェクトはこのツアーのために特別に編成されたものだが、ツアー後も継続する可能性は充分にある。

THE LEGENDARY ORCHESTRAは、SABATONのカタログを巨大なシンフォニック・アレンジで再構築している。合唱、ソリスト、パーカッションの迫力、さらには劇的な語りまでを備えつつ……。エレキ・ギターも通常のドラムも存在しない。曲毎にアレンジは絶えず移り変わり、ある時はハンス・ジマー風の戦争叙事詩のように轟き、またある時は囁くように静まり返り、そして再び爆発するようにフル・シンフォニックの壮麗さへと戻っていく。来場者にとって THE LEGENDARY ORCHESTRAは、この夜へと溶け込んでいくための演劇的であり没入型であるサウンドトラックの役割を果たしている。

今回最も見事な点の1つだったのが、この “more  SABATON(もっとSABATON)” という要素だ。スタジオ・アルバムが増えるにつれて、バンドは総ての愛されるアンセムを1つのセットリストに収めることがもはや不可能になってきていた。そこで登場したのが最新の切り札、THE LEGENDARY ORCHESTRAなのである。70分間、このシンフォニックな軍団はSABATONの人気曲のオーケストラ版のみを披露し、観客にとってはメイン・ショウが始まる前に、バンドの音楽を全く別の角度から体験できるという貴重な機会となっていた。“Ghost Division” “Resist and Bite”“Bismarck” “Swedish Pagans” のオーケストラ演奏が、ファンが知るヘヴィ・メタルの怪物のように聞こえないのは当然だ。だが、それこそが狙いなのだ。長年のファンはそれらの曲を何度も何度も聴いてきた。だからこそ、壮大なオーケストラのレンズを通して聴くことで、思いがけず新鮮な感覚が得られるのだ。ただ、どの角度から見ても1つの真実だけは揺るがない。宣伝どおり、ファンはこれまで以上に確実にSABATONを手にしているということだ。

もしあなたが礼儀正しく背筋を伸ばしたオーケストラが静かに演奏している姿を思い浮かべているのなら、そんなイメージは捨ててほしい。この “音楽のウォー・マシン” の最前線に立っていたのは、3人の揺るぎない司令官達——リード・シンガー兼ホストのノア・グルーマン、エレクトリック・ヴァイオリン奏者のミア・アサノ、そしてハーディ・ガーディ奏者のパティ・ガーディだ。長い髪のノアは、まるで将軍のように中央を支配し、圧倒的な存在感で指揮して歌い上げる。ミアとパティはその両翼を固め、しばしばノアのもとへと進んで合流し、振り付けされた華麗な見せ場を展開してパフォーマンス全体を沸騰させる。彼女達の並外れたカリスマ性と存在感は、このセットを単なる “オーケストラがSABATONを演奏する” というレヴェルを遥かに超えたものに変えてしまっていた。これはショウの中のショウの1つという大規模な“総攻撃”だった。

THE LEGENDARY ORCHESTRAの演奏が終わる頃には、1つの考えが頭から離れなくなっていた。「この“more SABATON”というコンセプトは、他のバンドも盗もうとするトレンドになるかもしれない」というものだ。イングヴェイ・マルムスティーンの有名な言葉を借りるなら、「More is more. How can less be more? It’s impossible(多ければ多いほどいい。少ない方がいいなんてありえない)」である。

THE LEGENDARY ORCHESTRA がステージを後にすると、割れんばかりの拍手が鳴り響き、会場の緊張感はさらに高まった。誰もが判っていた——今夜の “メインディッシュ” は本当に特別なものになるだろう、と。もしかすると、誰も味わったことのない何かになるかもしれない、と。そして短い暗転の後、城壁に並んだ松明が轟々と燃え上がり——さらにもう1つ、ミキシング・デスクの横、アリーナの中央に設置された小さなセカンド・ステージに設置された炎の輪も燃え上がった。そして、最初の大きなサプライズの時間が訪れた。巨大な演劇的インタールードが始まったのだ。そう、ヘヴィ・メタルのショウで通常期待されるオープニング・リフの代わりに、ナポレオン・ボナパルトに扮した俳優がその小さなステージに登場したのである。彼は語り始めた——それは歴史講義のようでもあり、ユーモアを交えた独白のようでもあった。「アムステルダムは素晴らしい街だ。君達は良いビールを持っている」と、誇張したアクセントで語る。この時点で明らかになったことがある。SABATONは普通のコンサートをしに来たのではない。彼らは本格的な “劇場” をヘヴィ・メタルに持ち込んでいたのだ——大胆に、誇らしげに、そして一切の遠慮なく。正直なところ、他の誰がこの大胆な試みをやってのけられるだろう? SABATONのアイデンティティはこの世界の歴史と密接に結びついているのだから、この融合は彼らにとって鎧のようにしっくりと馴染む。

More is more? まさしくそのとおりだ。さらに多くの歴史上の人物がセカンド・ステージに現われる。チンギス・ハンとユリウス・カエサルがナポレオンに加わったのだ。勿論彼らの登場は偶然ではない。これらの人物は新しいSABATONのアルバムのテーマの示唆だ。「来た、見た、勝った」 カエサルは観客に唱和させた。「SABATON! SABATON!」の掛け声と共に。

およそ15分に亘る綿密に構成されたドラマ——カエサルが芝居がかった形で刺される場面も含めて——を展開した後、最後の声がアリーナに轟いた。テンプル騎士団最後の総長、ジャック・ド・モレーの声である。モレーと騎士達は松明を掲げて観客の間を行進し、ほどなくしてその姿が巨大スクリーンに映し出された。彼らがセカンド・ステージへと集結していく中、観客の間で「一体この先何が起こるのか?」というざわめきが広がっていくのを感じることができた。その時、数十メートルに及ぶ巨大な鋼鉄製の橋が天井から降下し始めた。その巨大構造物がゆっくりと下りてくる光景は、ただただ壮観と言う他なかった。橋が所定の位置に固定されると、それはメイン・ステージとセカンド・ステージを1つに繋ぎ、会場からは驚きのため息が漏れた。そして、雷鳴のような声がアリーナに響き渡った。「今夜、我々はヘヴィ・メタルの名のもとにこの炎を掲げる。アムステルダムの民よ……SABATONを迎えよ!」 その瞬間、騎士達は兜を脱ぎ、手に楽器を受け取った。彼らは俳優なではなかった。彼らこそSABATONだったのだ。ヴォーカルのヨアキム・ブロデーン、ギタリストのクリス・ローランドとトーベ・イングランド、ベーシストのペール・スンドストロムだ。ハネス・ヴァン・ダールは、既にメイン・ステージのドラム・セットの後ろで待機していた。観客は驚愕した。バンドのメンバーが観客の中を実際に歩いて“戦場”へと向かったのだから。多くのファンにとって、これはコンサート史上最も壮大なオープニングの1つだったに違いない。

4人のテンプル騎士が変装を脱ぎ捨て、その正体がSABATONであると明かされた瞬間、『Ziggo Dome』は既に爆発寸前のように震えていた。1曲目の “Templars” のリフが衝撃波のように観客へと叩きつけられる——屋根を吹き飛ばしかねないほどの凄まじい一撃だ。観客は嵐のような歓声と拳の波で応え、それはまるで戦場の雄叫びが北海の彼方へと届かんばかりに広がっていくようだった。アリーナを横断して伸びる巨大な鋼鉄橋は、ただ見栄えがいいだけではない。それ自体が戦場の延長となるのだ。ヨアキム、クリス、トーペ、ペールは勝利した戦将のような堂々たる足取りで橋を渡り、拳を掲げ、ギターを轟かせ、下にいる忠実なファン達とハイタッチを交わす。彼らがメイン・ステージへと進んでいくと、会場全体の構造物が目を覚ましたように動き出す。頭上ではライトが砲撃のように炸裂し、巨大スクリーンが迫力ある場面を次々と映し出し、松明はまるで包囲された城壁に炎が燃え広がるかのように轟々と燃え上がる。

そしてついに、パイロが襲来する。それも遠慮なしに。“The Last Stand” の最初の強烈な一撃が放たれ、リフと完全に同期しながら炎が天井へ向かって吹き上がる。これぞSABATONの標準的スペクタクル……なのだが、規模がここまで巨大だと、フォトピットやその近くのエリアにいても眉毛が焦げそうなほどの熱気を感じる。観客の「ヘイ! ヘイ!」という雷鳴のような掛け声が、炎に焼かれずに残っているものをさらに揺さぶる。テンプル騎士の装束をまとったバンドは、2番とコーラスのために再び橋の上を行き来し、戦線を見渡す将軍のようにアリーナの隅々に向けて演奏する。2番の後のファンファーレ調のリード・ギターが響いた瞬間、鳥肌が一気に走る。どこを見ても何かが爆発し、輝き、あるいは空気を切り裂いていた。

“The Last Stand”が壮絶な終わりを迎えると、セカンド・ステージにチンギス・ハンが登場した。彼は恐るべき雄叫びで観客を煽り、バンドは中世の鎧からSABATONの標準的な衣装である迷彩服に着替えるために舞台裏へと走り去る。チンギス・ハンがしばし語り、そして動きを止めると、その咆哮——「アムステルダム、感じているか!?」——がアリーナ全体にこだまして、バンドはメイン・ステージへと突撃する。“Hordes Of Khan” は、まるで騎兵突撃のように炸裂する。パイロは上方へだけでなく、まるで観客に向かっていくかのように噴き出し、最前列を再び溶けた金属のサウナへと変えていった。ヨアキムとペールがステージ中央を固め、その周りをギタリスト達が兵士のような精密な動きで駆け回り、旋回する。



続きはBURRN! 2025年2月号で!

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2025年10月17日発売
1. Templars
2. Hordes Of Khan
3. A Tiger Among Dragons
4. Crossing The Rubicon
5. I, Emperor
6. Maid Of Steel
7. Impaler
8. Lightning At The Gates
9. The Duelist
10. The Cycle Of Songs    
11. Till Seger

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