【LIVE REPORT】聖飢魔II vs BABYMETAL〜悪魔が来たりてベビメタる〜 メタル界の悪魔とメタルの神“キツネ様”が遂に激突!
report by KAZ HIROSE/EDITOR IN CHIEF pic:Takahide“THUNDER”Okami

魔暦24(2022)年10月にスタートした地球デビュー35周年期間再延長再集結『35++執念の大黒ミサツアー』が魔暦25(西暦2023)年2月の国立代々木競技場第一体育館で千秋楽を迎え再解散した聖飢魔IIは、地球デビュー40周年に当たる今年、再び期間限定再集結を果たし、4月12日の東京ガーデンシアター公演から大黒ミサツアー『THE END OF SEASON ONE』に突入。さらに新譜大教典「Season II」を、まずはアナログ盤として6月6日、さらにCDとして7月2日に発布した。前回の新譜大教典「BLOODIEST」から3年の時を経て発布された「Season II」は聖飢魔IIが“次のステージ”に移行したことを示す傑作だ。個人的には“最高傑作”と言い切ってしまいたい名盤である。
「最新作が最高傑作」というのはアーティストにとっての理想だが、実際にそれを果たすことは極めて困難だ。聖飢魔IIは「Season II」でそれを実践したのみならず、本解散後も信者の数は増え続け、期間限定再集結を行なう度に活動のスケールが大きくなっている。こういう例は世界的にも稀有だろう。
一方、2010年結成されたBABYMETALは2023年4 月よりSU-METAL、MOAMETAL、MOMOMETALからなる新生BABYMETALとして新章をスタート。2024年には初の南米ツアーを含めたワールド・ツアーを敢行、世界22カ国、国内外通算51公演を行ない、スペシャル・ゲスト出演を除いた公演総動員数は約101万人に及んでいる。そして結成15周年を迎えた2025年、2月・3月にメルボルン、ブリスベン、シドニーで開催された『KNOTFEST AUSTRALIA』への出演、5月には初のUK & ヨーロッパでのアリーナ・ツアー(全8ヵ国12公演)を行ない、ツアー・ファイナルでは『The O2 Arena』でのワンマンをソールドアウト。6月〜7月に行なわれた過去最大規模の北米ツアーでは25公演で11万人超を動員し、米『Capitol』とのワールドワイド契約によって8月8日にリリースした通算4枚目のオリジナル・アルバム「METAL FORTH」は『BILLBOARD』の全米アルバム総合チャートで初登場9位という快挙を成し遂げている。
地球デビュー40周年の聖飢魔IIと結成15周年のBABYMETAL。キャリアは大きく異なる両者に共通するのは、HM/HRという枠を超えた存在であること。聖飢魔IIが創り上げた悪魔教の世界観は、その優れた音楽性に裏打ちされて信者達の絶大な支持を集めており、その在り方はどんなHM/HRバンドとも異なっている。一方、世界的にも類を見ない画期的な発想がグローバルに支持されているのがBABYMETALだ。言うなればどちらもその在り方そのものが見事な総合エンターテインメントであり、それぞれ“聖飢魔II”“BABYMETAL”というユニークなジャンルを創設した唯一無二の存在なのである。
その二組の“対決”が今年、遂に実現した。8月30日(土)と31日(日)にKアリーナ横浜で開催された『聖飢魔II vs BABYMETAL〜悪魔が来たりてベビメタる』だ。聖飢魔IIは人類を悪魔化するために地獄からやって来た集団であり、地球征服後も期間限定再集結を行なっているのはその視察のためであるのに対し、BABYMETALには「メタルの神“キツネ様”が3人の少女にメタルのパワーを与え、メタル界の救世主(メシア)となるべく召喚された」というストーリーがある。つまりこれは単なる“対バン”ではなく、悪魔と神との直接対決という構図なのである。
この『悪魔が来たりてベビメタる』は初日が『遭遇 -Encounter-』、2日目が『衝撃 -Impact-』と題されており、初日『遭遇 -Encounter-』の冒頭では「決戦」と題した映像が流れ、「敵なのか? 味方なのか? 勝ち残った方がこの世の真の支配者となるのか?」と対決ムードを盛り上げる。会場を埋め尽くした信者(聖飢魔IIファン)とTHE ONE(BABYMETALファン)が見守る中、最初に登場したのは聖飢魔IIだった。
暗転から轟音と共に構成員達が姿を現わし、いつものとおり“創世紀”でオープニング。そこから“1999 Secret Object”“Jack The Ripper”と代表的なナンバーが立て続けに繰り出された後、新譜大教典「Season II」からの“老害ロック”へ。新曲がすっかり浸透しているのが「今こそ最大の信者数を獲得している」聖飢魔IIらしい。デーモン閣下がお約束MCでBABYMETALファンを巻き込んだ“アダムの林檎”では、中間部で“BABYMETAL Is Dead”(“HMID”の替え歌)が披露されるという意表を突いた展開が会場をさらにヒートアップさせた。普通に考えればBABYMETALに対する挑発だが、これは聖飢魔II流のエールの贈り方なのだ。
“アダムの林檎”に続いては再び“Kiss U Dead Or Alive”“Next Is The Best!”と新曲を披露。改めて新譜大教典「Season II」の強力さを実感させられる。
閣下の長い前振りが入るお馴染みの展開で“蝋人形の館”が披露された後、ラスト・ナンバー“Fire After Fire”では炎のようにうねるLED演出がステージを赤く染め上げ、場内は熱狂に包まれた。
聖飢魔IIが去っていった後、今度はBABYMETALがステージに姿を現わす。オープニングを飾ったのは“BABYMETAL DEATH”。ここで既に最高潮の盛り上がりを見せるBABYMETALファン。続く“ヘドバンギャー!!”では文字どおりヘドバンの波が広がり、“PA PA YA!!(feat.F.HERO)”では観客が一斉にタオルを回す。パイロやレーザーが熱狂を煽り、フロアが大ジャンプで揺れた。
“PA PA YA!!”“BxMxC”と2019年の「METAL GALAXY」からのシングル曲が続いた後は、今年リリースされた「METAL FORTH」から“METALI!! (feat.Tom Morello)”“Sunset Kiss (feat.Polyphia)”“Song 3 (feat.Slaughter To Prevail)」と新曲3連発。これらコラボ曲ではステージ後方に海外アーティストのパフォーマンスが映し出される。
“RATATATA”“ギミチョコ!!”とヒット曲で畳みかけた後は再び「METAL FORTH」から“from me to u (feat. Poppy)”。攻めるセットリストでいよいよ初日の大詰めを迎え、“イジメ、ダメ、ゼッタイ”へ、ここでなんとデーモン閣下がBABYMETALのステージに乱入! BABYMETALを苛めに来たかのように振舞う閣下にBABYMETALは「悪魔、ダメ、ゼッタイ」と反撃。「悪霊退散!」とデーモン閣下を追い払うと、ステージから去っていった。クライマックスでの閣下サプライズ登場で大いに盛り上がったまま『遭遇 -Encounter-』は幕を閉じた。
『遭遇 -Encounter-』で歴史的な邂逅を果たした聖飢魔IIとBABYMETALだが、決着は持ち越された。2日目『衝撃 -Impact-』で公開されたストーリームービーで明かされたのは、聖飢魔IIの創始者ダミアン浜田陛下とキツネ様との10万年前の“因縁”だった。10万年前、傷ついたキツネ様を救ったのはダミアン陛下だったのだという。ダミアン陛下の目指した地球征服とキツネ様の標榜する“THE ONE”は、実は同じことなのだと両者は意気投合、共に地球に向かうと、そこで目にしたのは人類による環境破壊や戦争で荒廃していく世界だった。「嘆かわしい!」と異口同音に発した陛下とキツネ様は、聖飢魔IIとBABYMETALは対立する必要はなく、共に手を携えて地球を1つにするべきだというメッセージを届けようとする。
だが、そのメッセージが届かぬうちに2日目のステージが始まった。先陣を切ったのはBABYMETALだ。暗転と同時に地を揺るがす重低音。巨大スクリーンに「BABYMETAL」の文字が赤黒く浮かび上がると、雷鳴のようなリフが炸裂、ステージ全体から火柱が立ち上がり、BABYMETALが登場した。オープニングはやはり“BABYMETAL DEATH”。観客は早くも最高潮の盛り上がりを見せる。SU-METALの魅力的な歌声、MOAMETAL & MOMOMETALの鋭いダンス、そして観客の熱烈なコールが重なり、Kアリーナはこの人のタイトルどおりの“衝撃”に包まれた。
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