藤木昌生の密かな楽しみ Vol.14 ~ 気まぐれプレイリスト 6

ちょっと前にWOWOWでやってた『コレクティブ 国家の嘘』という映画を観たら、これがかなり興味深くて”タイムリーな”感じの作品でした。ルーマニアのライヴハウスで、あるメタル・バンドのショウの最中に火災が起きて多くの犠牲者が出た事件をきっかけに、政府の腐敗や病院の腐敗がどんどん浮き彫りになっていき…というドキュメンタリー作品なんだけど、妙に今の日本の状況(特に7月上旬以降)と重なる部分があってね。

今の日本は、現政権と反社会的カルト宗教団体の癒着がどんどん浮き彫りになりながらも、大手メディアの多くがその問題に関する報道に及び腰で、特に公共放送という名のもと全国民から視聴料を徴収している(いや、実際には支払い拒否の人もいるからその野望は実現してないけど)N〇Kなどは現政権に不利な情報に関してはほぼ知らんぷりを決め込んでいるという状態。公共放送と謳っておきながら公共の利益になる情報を隠してるという…。皆さんの中にも何となく「N〇Kは公正中立」みたいなイメージを持ってる人が結構いるかもしれないけど、そこは騙されないようにした方がいいと思います。

あと、TVによく出てるコメンテーターの類の人達も、何か利権や縁故関係があるのか、現政権やその関係者に対して妙に擁護的だったりしてね。

だから、そういう権力組織とメディアとの関係という意味で、『コレクティブ 国家の嘘』は今の日本に生きる庶民にとっては「他人事ではない作品」として興味深く観ることができると思う。こんな国家ぐるみの悪行がまかり通るのか? 結局被害者は泣き寝入りなのか? 民主主義の選挙で腐敗した権力は排除できるのか? この映画で描かれてるのは実話ですからね。2015年の出来事ですよ。ついこの間じゃないの。「日本はここまで酷くない」という感覚で観るのか、あるいは「ルーマニアには”この状況を変えよう”と内部から立ち上がる人がいただけマシ」という感覚で観るのか…。

WOWOWに加入してる人ならオンデマンドでしばらく観ることができるし、それ以外の人もサブスクやレンタルで機会があったら是非!

さて、それでは気まぐれプレイリストの6回目、行ってみましょう。

SIDE A
1.SPACE ODYSSEY ”Despair And Pain”→ Spotifyで聴く
MAJESTICやTIME REQUIEMでそれなりに(日本では)高い評価を得ていたリチャード・アンダーソン<key>がさらなるニュー・プロジェクトとして立ち上げたのがこのSPACE ODYSSEYだった。そのデビュー作のオープニングを飾るのがこの曲。BメロがABBAのヒット曲そのままだけど(笑)、サビのクサメロがたまりません。このプロジェクトの最大のポイントの1つは、ニルス・パトリック・ヨハンソンという超絶シンガーを世に紹介したことかもね。気合入りまくりの暑苦しい声で「ニャ~」とかやられるとメタル魂に火が付くよね。アルバムでベースを弾いたマルセル・ヤコブは「リチャードは弦楽器をやったことないから平気で無理なフレーズを押し付けてくる」とボヤいてました。
2. Y&T ”Mean Streak” → Spotifyで聴く
彼らの曲の中でも個人的にはトップ3に入りそうな名曲。リフがカッコいいのは勿論、レナード・ヘイズのドラム・フィルも痺れるし、何といっても2コーラス後のブリッジ・パートがバック・ヴォーカルもギターのオブリも含めて完璧な美しさ。それに続くギター・ソロも、ラフに弾きまくった後に歌えるフレーズを奏で、そしてイントロに戻っていく構成が見事。1996年に10年振りにY&Tを観て、この曲に感動したのを思い出すな~。あの時は渋谷のO-WESTだったと思うけど、なんであんな小さい会場でやってたんだろうね? デイヴ・メニケッティはしっかり病気を治して、また熱い歌とギターを聴かせてほしい。
3. 紙ふうせん ”冬が来る前に” → Spotifyで聴く
すみません、歌謡曲です。「歌謡曲なんて入れるなよ」と憤るロック・スピリットあふれるリスナーの方々もいると思いますが、僕にとっては「心に響く曲かそうじゃない曲か」という2択の問題で、音楽のジャンルはどうでもいいんです。たまたまHM/HRの曲が多い、というだけの話でね。この曲は70年代後半のヒット曲で、悲壮感ただようメロディと、どことなくプログレ・ハードなアレンジが魅力だと思う。当時、デパートの階段の踊り場にジュークボックスがあってね、10円を入れてこの曲を再生して友達と聴いてたのを思い出します。誰かこの曲をメタル・アレンジでカヴァーしてくんないかな。
4. FORTUNE ”Smoke From A Gun”→ Spotifyで聴く
メロハー愛好家の間ではマストなバンド、アメリカ西海岸のFORTUNEです。爽やかなイントロから一転、哀しく壮大な曲へと展開していく様が感動的ですね~。数年前の復活アルバムは、頭脳だったロジャー・スコット・クレイグ<key>が不在にしては過去の焼き直し風で悪くなかったけど、復活第2弾はやっぱり厳しい内容でしたね~。L.A.グリーン<vo>は『トップガン』1作目のサントラで数曲歌っていたので、昨今のブームで多少はオイシイ恩恵にあずかってるんでしょうか?
5. NOCTURNAL RITES ”Against The World” → Spotifyで聴く
このバンドがメロスピの金字塔とも言うべき3rd「THE SACRED TALISMAN」の後、アンダース・ザックリソン<vo>が脱退した時はかなり残念だったし、後任のジョニー・リンドクヴィストの歌を聴いてもしばらくは違和感があったんだけど、聴いてるうにち「これもいいな」、いや「こっちの方がいいや」と思えるようになった。たとえばこの曲なんかも、ジョニーのようなシンガーが歌うからこその劇的さが間違いなくある。世界的にはなかなか過小評価されてるシンガーだと思うんだけど…。NOCTURNAL RITESという泣きメロが書けるバンドに、ジョニーのような泣きの入った歌唱ができるシンガーが加入した巡り合わせに感謝。

SIDE B

1. RIOT ”Flight Of The Warrior” → Spotifyで聴く
デビュー当時からリアルタイムで聴いてきたRIOTの曲の中でも個人的にはトップ3に入ると思うナンバー。マーク・リアリが亡くなってもう10年が経つんですね…。取材でマークと初めて会った時は、悪い意味ではなく、全然ロック・スターのオーラがなくて、普通の華奢なロック兄ちゃんみたいな雰囲気だったのが印象的でした。僕が「HALFORDのライヴを観に行ったら、ボビー・ジャーゾンベクのソロ・タイムがなかったんですよ、信じられますか!?」と言うと、「マジで? そりゃダメだな。ボビーは唯一無二のドラマーだ」と話を合わせてくれました。(笑)
2. RUN FOR VICTORY ”No Joke” → Spotifyで聴く
スウェーデンの作曲家で、日本のJ-POP(アイドル)にも数多くの楽曲を提供しているエリック・リボムのソロ・プロジェクト。ジャパン・マネーをガッポリ稼いでいるのが頷ける強力な作曲センスを誇る彼、このRUN FOR VICTORYの音楽は「A.C.Tのファンタジー・プログレ・ハード・ポップを思い切りハイパー&コマーシャルにした感じ」かな。彼にインタビューした時、好きな音楽としてコレルリ(イタリアのバロック時代の作曲家)を挙げていたのが何だか嬉しかったな。コレルリを知らない人は一度これを聴いてみてください。
3. HIGHLORD ”Perpetual Fury”→ Spotifyで聴く
今回のクサメロスピです。今は亡きサウンドホリックの敏腕ディレクターだったカミーン神山さんがプロモーションしてくるバンドはほとんどがダサくて完全マニア向けなんだけど(笑)、どこか光るものを持ったバンドも少なくなかった。その中で、イタリアン・メロスピのこのバンドは、僕にとってはこの1曲によって忘れがたいバンドになっている。このサビ・メロのクサさときたら、もう完全に異臭騒動ものでしょ! その後、まったく大成しなかったバンドだけど、この1曲だけで、このサビだけで、一生感謝ですよ。
4. RIK EMMETT ”El Cuento Del Gadjo'” → Spotifyで聴く
TRIUMPHのギタリストとして知られるリック・エメットの1997年のアコースティック・ギター・インストゥルメンタル・ソロ・アルバム「TEN INVITATIONS FROM THE MISTRESS OF MR.E」からの曲。彼はTRIUMPHのアルバムでも毎回のようにナイスなインスト小品を披露していたけど、特にスパニッシュ風の曲をやると絶品だった。この曲はそんな彼の泣きメロ・スパニッシュが炸裂したナンバーだと思います。
5. PRAYING MANTIS ”Letting Go” → Spotifyで聴く
僕が音楽を聴く時は歌詞は二の次、三の次で、曲(音楽)が良くて初めて歌詞も読んでみようかと思うんだんけど(日本語の曲でも何度聴いても歌詞の内容を理解してないことが多い)、この曲は音楽がとても良かったので歌詞も読んでみたらさらに魅力が増した曲。個人的には「この世に見切りをつけた人」を描いた歌詞のように感じるんだけど…。決して自殺を奨励するわけじゃないけど、一概に否定できないというか、僕も含めてたまたま自殺など考えずに済むラッキーな人生を送ってきた人間には理解できない酷い環境に置かれた人というのは山ほどいると思うからね。ある人が言った「死にたいと願う人を生かしておくことは生きたいと願う人を死なせることと同じくらい残酷なことなのではないか」という言葉は常に頭の中にあります。

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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