【BURRN! 9月号ちょい読み】
浜田麻里──「INCLINATION IV」を完成させた女王を直撃インタビュー
BY KAZ HIROSE/BURRN!
我が国の女性ロック・ヴォーカリストのパイオニアであり、デビュー以来40年以上に亘って頂点に君臨し続ける “気高く美しき女王” 浜田麻里。驚異的な声域を武器とするその圧倒的な歌唱力は今なお全く衰えを知らず、人気・実力ともに他者の追随を許さない孤高の存在だ。そのカリスマ浜田麻里が、待望の「INCLINATION Ⅳ」を携えて戻ってきた。
10周年、20周年、30周年と、アニヴァーサリーごとに発売されてきた「INCLINATION」シリーズは、浜田麻里が自らプロデュースするコンピレーション。いわゆる “ベスト盤” ではあるが選曲にも音作りにも浜田麻里の並々ならぬ“こだわり”が凝縮されている。
1994年に発表された第1弾「INCLINATION」は、デビューから1993年までの10年間の軌跡を集約したもの。DISC 1には国内録音の、DISC 2には海外録音の楽曲を収めたCD2枚組だった。20周年の2003年に発表された「INCLINATION Ⅱ」は “次の10年間” の楽曲を収めたCD2枚組で、続編という意味でDISC 3、DISC 4とされている。30周年の2013年には2003年から2012年までの発表曲に新曲や再録音を加えたCDをDISC 5、2002年から2012年までのライヴ映像を収めたDVDをDISC 6とする「INCLINATION Ⅲ」が発表された。
そして今回完成した「INCLINATION Ⅳ」は、2014年から40周年の2023年に至る10年間の音源に、この作品のためにレコーディングされた3曲の新曲を加えたCD2枚組となっている。「Celadon」と名付けられたDISC 7はスタジオ録音の楽曲で、「Mission」(2016年)、「Gracia」(2018年)、「Soar」(2023年)という3枚のオリジナル・アルバムからの選曲プラス新曲3曲。一方「Carmine」と名付けられたDISC 8には2014年から2023年までのライヴ音源を収録、全13曲中9曲が初音源化。ライヴ音源によるアルバムは41年ぶりということになる。2023年の40周年ツアーを終えて以降、プロデューサーとして膨大な時間を費やして遂に完成させた浜田麻里に、この労作について話を聞いた。
──ファン待望の「INCLINATION Ⅳ」が遂に完成しました。本当に大変な作業だったと思います。「INCLINATION」というと10周年、20周年、30周年、40周年といったアニヴァーサリーごとに出してきているベスト・セレクションのシリーズ、ということになりますが、そもそも1994年に最初の「INCLINATION」をリリースした時、麻里さんの中ではどういった発想でそれを作ったのでしょうか? 「INCLINATION」というタイトルの持つ意味も含めて教えていただけますか?
浜田麻里(以下M):最初の発想はもう30年以上前のことで、その後の人生があまりに濃かったから、記憶はうっすらなんですけど。(笑) 今回の「INCLINATION Ⅳ」も含めて、自分の中では、あまりベスト・セレクションという感覚はないんです。過去の10年をそのまま保存するというより、その時点の自分が過去をどう受け止め、現時点の自分にどうつなぎ直すか。その“接続”のための作品として制作してきました。
「INCLINATION」というタイトルには、その10年間における自分の音楽的な傾向と、自分の心がどの方向を向き、どのように傾いていたのか、という意味を持たせてあるんです。 最初の「INCLINATION」は、アメリカで必死に曲順を考えました。それを考え終えた翌日にノースリッジ地震に遭遇して。本来はその日からヨーロッパ・ツアーのリハーサルが始まる予定でした。1週間ほど避難生活をして、そのままヨーロッパへ向かった。苦しくも楽しい、非常に慌ただしい時期でしたね。
──その時には、10年後にはその続編を作ろうということを考えてましたか?
M:考えたかもしれませんけど、もちろん自分の未来がどうなるかは未知数でしたから。ただ、次の10年の節目を迎えた時に、当初の意味合いをシリーズ作品として踏襲しようと改めて意識したんだと思います。
──10年ごとの節目で振り返り、「どこに向かっていくのか」みたいなことでしょうか?
M:未来の方向を示すというよりも、その10年間に何を選び、何を創ってきたのかを、今いる場所から改めて見つめ直す。そうして自分の中で納得出来たものが、結果として次の創造につながっていく、ということだと思います。
──今回は、DISC 7がスタジオ作品と新曲、DISC 8がライヴ音源という構成です。いつ頃からこの形を考え、その後どのように取り組みましたか?
M:40周年ツアーの頃には、大枠は既に見えていたと思います。ツアーをやりながら、次は「INCLINATION」の第4章だなと考えていましたし、この10年間をどのように総括するべきか、ということは考え始めていました。 具体的な作業はツアーが終わってからで、まずは、この10年間に残した素材や音源を吟味し、それらを作品として使用するために必要な確認や了承を得るところから始めました。
──CDの形でライヴ・ヴァージョンが出されるというのは、実はかなり久しぶりですよね。
M:確かに。(笑) 今は映像を期待される方が多いですから、逆に、少し昔に戻ったようなオーディオ・セレクションという形が新鮮に感じられるのではないか、という思いもありました。 改めて振り返ってみると、当時、映像を撮らなかったライヴもかなりあったんです。2016年の東京フィルハーモニー交響楽団とのシンフォニック・コンサートもそうですし、2023年の『40th Anniversary Tour “Soar”』もそうでした。それぞれに音として残す価値のある演奏がありましたから、これは映像の代わりではなく、音だからこそ成立するオーディオ・セレクションにするべきだと思ったんです。
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BURRN! 2026年9月号
A4判/144頁/定価1,200円(税込)/2026年8月5日発売
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