CHEAP TRICK──47年後のフェアウェル・ツアーで見せた “最後のAT BUDOKAN”

BY YUMIKO HABA/BURRN!

武道館を世界に知らしめ、武道館によって世界に知られたバンド

47年後のフェアウェル・ツアーで見せた“最後のAT BUDOKAN”

遂にこの時が来てしまった。CHEAP TRICK、最後のAT BUDOKAN。1978年の初来日時に渦巻いた黄色い歓声にバンドが驚き、ファンへの感謝を込めて当初は日本限定で作られたライヴ・アルバムによって「こんなに人気のある凄いバンドだったのか!」と全米が驚いた。逆輸入される形でCHEAP TRICKは本国で知名度を上げ、その波は世界に広がり、「AT BUDOKAN」を聴いてミュージシャンになった者達は自分もいつか日本で武道館のステージに、と憧れを抱いた。「武道館が俺達を有名にし、俺達が武道館を有名にした」とはリック・ニールセン〈g〉の名言である。

 

最後の来日とはいえ、バンドはまったく止まる気配がない。何しろ11月14日には新作を出すのだ。残念ながらその「ALL WASHED UP」について取材する機会はまだ得られていないが、資料ではロビン・ザンダー〈vo,g〉が「世界最高のロック・バンドからまた1つ素晴らしいアルバムが出ただけのこと」とサラリと語っている。本当に、これが最後だという悲愴な覚悟や限界といったものがまるで見当たらない、相変わらずどこを切ってもCHEAP TRICKらしい素敵な作品だ。

 

もっとも、リックは76歳、トム・ピーターソン〈b,vo〉は75歳、最年少のロビンでも72歳。2018年4月の “「AT BUDOKAN」40周年記念ライヴ” はリックの体調不良で延期され、半年後の振替公演の会場は武道館ではなくなっていた。2022年11月の日本ツアーでは元々武道館公演が組まれておらず、リックが手術を受けたことからツアー自体が延期→中止になっている。2021年の全米ツアーはトムが心臓の手術を受けて療養のため欠席していた。今回はオリジナル・メンバー3人が揃って武道館公演が実施されただけでも大成功と言える。なお、2021年のトムの代役は2018年の来日時にサポート・メンバーとしてギター&コーラスで参加していたロビンの息子のロビン・テイラー・ザンダーが務めた。ドラムは2010年からバン・E・カルロスに代わってリックの息子のダックス・ニールセンが任されており、バンドのサウンドを若返らせることに成功している。

 

満員の武道館の客席は同窓会の様相を呈し、久々の再会の挨拶が飛び交う。年齢層は総じて高めだが、開演した瞬間、誰もがバンドと出会った若かりし日にタイムスリップする。バンドが出す音も、年齢も体調の心配も吹っ飛ばす活気に満ちていて、安心して没入することが出来た。1曲目の “Hello There” に “Come On, Come On” が続き、リックの「オハヨーゴザイマス!」の挨拶を挟んで “Lookout” “Big Eyes” “Need Your Love” と、立て続けに披露された頭5曲はオリジナルの「AT BUDOKAN」をそのまま再現するものだ。(20周年記念で1998年にリリースされた「AT BUDOKAN : THE COMPLETE CONCERT」では、外されていた曲が追加されて当時のセットリストどおりの曲順に変更されている) 曲と曲の間は、さすがに47年前ほど甲高くはないが盛大な歓声が埋める。ロビンの歌声も、“Need Your Love” の超高音パートこそファルセットを駆使して絞り出していたが、それ以外は何ら衰えを感じさせない力強さと変わらぬ魅力が溢れていた。

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