ガス・G:大いなる感謝と共にオジー・オズボーンの思い出を語る

by CHIZZY KAKIZAWA

2007年の「ALLEGIANCE」でFIREWINDがヨーロッパをツアーしたとき、フランスで初めてガス・Gに会った。ANGRAがヘッドライナーだったが、実はこのツアーはFIREWINDのために組んだのだとプロモーターが話していた。おそらくそれはガスがそれ以前に関わっていたDREAM EVILやARCH ENEMYと同じレーベルのプッシュがあったからだと思うが、そんな風に関係者を動かしてしまうほど当時のガスは注目されていて、若いのになかなかやるなぁと思ったことを覚えている。

それからしばらくして彼はオジー・オズボーンのギタリストになった時、私は「やっぱり」と思った。彼の着実な演奏力と謙虚な人柄を見抜いたオジーの目に狂いはなかった。2017年にザック・ワイルドがバンドに復帰するまで、ガスは歴代2番目に長くオジーのギタリストを務めた。そんな彼にとってオジーの訃報は育ての親を亡くしたようなショックだったに違いない。生前のオジーの話をするガスは、目を細めて懐かしそうに愛おしそうにしていた。オジーからもらった愛はずっとガスの中にある。その静かで確かな温かさが彼の言葉に溢れていた。

──あなたは2009年から2017年までオジーのバンドのギタリストでしたね。
 
  
ガス・G(以下G):厳密に言うと2015年までだったんじゃないかな? 2016年はオジーがBLACK SABBATHと『THE END TOUR』を行なって、その翌年にOZZY OSBOURNEとしての最後のツアーを、ザック・ワイルドを迎えて始めたから。僕がオジーと最後にステージに上がったのは日本だったんだよ。2015年11月の『OZZFEST』だった。その日までに僕はオジーのワールド・ツアーを2回行なっていた。僕がアルバムに参加した「SCREAM」のツアーは2010年から1年以上掛けた大きなツアーだった。それから2012年に『OZZY & FRIENDS』ツアーでヨーロッパを廻った。その後、覚えているかな、トニー・アイオミが病気になったんだよね。彼が回復してからオジーはBLACK SABBATHとして「13」のツアーをやって、その後にまたOZZY OSBOURNEとして南米のツアーに出てフェスティヴァルにも出演したんだ。そして僕がオジーと演奏した最後が『OZZFEST JAPAN 2015』だった。

──一緒にアルバムを作り、ツアーをやって、近くで彼と接したあなたから見て、オジーはどんな人でしたか?

G:
彼はとても優しくて面倒見のいい人だった。そして面白い人だったよ。彼のことを知る人はきっとみんな同じことを言うと思うけど、彼は本当に陽気なんだ。彼と同じ部屋にいると2分以内に彼が何か言ってみんなを大笑いさせる。彼は近くにいると楽しい人だった。彼の話す過去のストーリーを聞くのも面白かったよ。独特なユーモアの持ち主で、一緒にいて楽しい人なんだ。そして仕事面でも一緒に仕事をしやすい人だった。僕は何かを要求されることもなかったし、彼はいつも「ショウはステージに置いてこい。ステージを降りたらもうショウは変わることがないんだから」って言っていた。普通はショウの後「あの曲のあそこでミスをした」とか「あそこではああやるべきじゃなかった。これをやるべきだったんだ」みたいに悔やみがちだけど、オジーは「気にするな、ロックン・ロールなんだから。あの瞬間はあれでよかったんだ。次にもっと良くなるように頑張ればいいんだ。」って言ってくれた。彼は沢山のことを肯定的に受け止める人だった。

──そうは言っても、最初は緊張したのではないですか? 

G:
勿論さ。まず沢山の人が働いていてびっくりしたよ。マネージャーが何人もいて、そのマネージャーのアシスタントっていう人が何人もいて、アシスタントのそのまたアシスタントまで、凄く沢山の人がいたんだよ!(笑) でもツアーになると、オジーは僕達バンドと一緒に移動したんだ。同じ飛行機で移動し、みんなと同じホテルに泊まっていた。最初のツアーでのいい思い出は、ショウのない休みの日もみんなでディナーに行って一緒に過ごしてお互いをよく知る機会があったことだ。あの時は凄く楽しかった。オジーは大きな舞台に来た小さな僕の立場をよく判っていてくれた。とにかく総ての規模が大きかったから、彼はいつも僕が心地好く感じるように気を遣ってくれた。ストレスがないようにって、彼は常に優しくて思いやりがあったよ。

──今思い出される特別な出来事はありますか? 

G:そうだね、典型的なオジーの瞬間っていう話だと、僕のSNSでもシェアした話だけど、彼はアイディアが浮かぶとすぐに行動に移すんだ。あれは「BLIZZARD OF OZZ」の30周年記念で最初の2枚のアルバムのボックスセットがリリースされるタイミングだった。彼はきっとそのことを考えていて「あの2枚のアルバムを演るべきだ」って思ったんだと思う。彼が僕の結婚式に来てくれた時、30分後に教会に行くっていうタイミングで手書きのセットリストを僕に渡してきたんだ。そして後に彼はバンドとクルー全員をロンドンに集めてリハーサルさせた。僕達は毎日集中してリハーサルを進めていた。そして1週間ぐらいして彼がスタジオに様子を見に来たんだけど、「これはもう忘れて。普段のセットリストに戻そう」って言って総てがその場で終わりになった。(笑) 典型的なオジーだ。僕達全員をロンドンに呼ぶ飛行機代、リハーサルの期間に滞在する全員のホテル代、リハーサルの間の全員の給料、食事代、リハーサル会場の使用料等々、沢山の経費が掛かっていたはずなのに、彼の一言で総てが一瞬にして消えたんだ。(笑)

──オジーとの仕事で難しいことはありましたか?

G:
僕の仕事は時間どおりにそこに行ってギターを弾くことだった。難しかったのは、僕のポジションというのかな、スポットライトが当たることがプレッシャーだった、みんなの目がオジーの次にギター・プレイヤーに行くからね。僕はそのポジションに来た新しい人間だったから、精神的に強くなって克服しなくてはいけなかった。オジーはいつも僕を勇気づけてくれたよ。「ヘイ、心配しないで、自分らしくいればいいんだ。ランディ・ローズやザック・ワイルドみたいになろうとしなくていいんだよ。君らしく、ガスのままでいればいいんだ。そして自分のやりたいようにやればいい」って言ってくれた。

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1. Let It Die
2. Let Me Hear You Scream
3. Soul Sucker
4. Life Won't Wait
5. Diggin' Me Down
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9. I Want It More
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GUS G.
歴代2番目に長くオジー・オズボーンのギタリストを務めたガス・Gが語る思い出!

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オジー逝去の翌日、“最終公演”に参加したデイヴィッド・エレフソンを緊急直撃!

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