『MR.BIG~3・11から10年 被災地とともに歩んだ外国人バンド』先行特別上映会&トークイベント ・レポート

【TBSドキュメンタリー映画祭】MR.BIG~3・11から10年 被災地とともに歩んだ外国人バンド


3月 8 日(月)に開催された 『MR.BIG~3・11から10年 被災地とともに歩んだ外国人バンド』先行特別上映会&トークイベント ・レポート。
3月18日(木)より開催される TBS ドキュメンタリー映画祭の先行特別上映会&トークイベントが、3月8日(月)LOFT9 Shibuya にて開催された。東日本大震災直後の2011年4月、「東北の人々を音楽で元気づけたい」と、いち早く被災地でコ ンサートを行った米ロックバンド「MR.BIG」を追った、映画『MR.BIG~3・11 から 10 年 被災地とともに歩んだ外国人バ ンド』が特集された。本作の監督・川西全さん、音楽評論家・DJの伊藤政則さんが、LOFT9 Shibuya に登壇した。

会場は満席で、MR.BIG ファンが駆け付け、大きな拍手と共にトークイベントが始まった。「ヘヴィメタルファンとして、会社 のイベントでメタルの神様・伊藤政則さんと一緒にイベントができるなんて、とてもうれしいです!」と、川西監督が挨拶をした。 「川西監督の撮った『MR.BIG~3・11 から 10 年 被災地とともに歩んだ外国人バンド』は、まさに愛情が毛細血管のよう に張り巡らされた作品」と、伊藤さんが本作に絶賛コメントを寄せた。

川西監督は、「伊藤さんのラジオを聞いて育ったロックファンで、当時 NEWS23を担当していて、MR.BIG を報道でど う追えばいいのか、最初は悩んだ。でも 2011 年、東日本大震災のあと、MR.BIG が来日することに運命を感じた。被災 地の静けさの中で、日常はいかに音楽があふれているのか、そしてこの静けさの中で MR.BIGの音楽を届けたい」と取材 のきっかけについて話した。なぜ東日本大震災のあと MR.BIG が誰よりもはやくライブを開催したのか、その背景には 「1989 年サンフランシスコ大地震、94年 LA 大地震のあと、チャリティーコンサートなどを通して、音楽が多くのひとの心 を励まし、そしてコンサートスタッフなど雇用や経済面からも復興を助けたということ」が大きく、だからこそ MR.BIG は、 阪神淡路大震災の際に、チャリティーコンサートに続き、東日本大震災の後も誰よりもはやく被災地のファンに音楽を届け た」と、伊藤さんが MR.BIG の日本に寄せる思いを伝えた。

ここでMR.BIGのメンバーであるビリー・シーン<b>さんからのメッセージ映像が上映された。

コロナ禍における音楽活動につい て、「今の状況は多くのミュージシャンにとって厳しい状況だ。多くのバンドにとっては非常に厳しい状況だ。」と話した。ま た自身の活動について、「自分は幸運にもMR.BIGで成功することができたが、僕らも2022年までライブができるかわ からない。」とし、そのような中でも「自分はPCで世界中の人たちと連絡をとっていて、届いたメールは2万通にも達した。 彼らにとにかく返事をして、前向きな言葉で励まして、練習して、曲を書いて、レコーディングする。これが自分に今できる すべてだよ。」とコロナ禍だからこその、新しいコミュニケーションについても言及した。「僕は政治家でもないし医療関係 者でもない。自分なりの考えはあるが、あくまで個人的意見だ」と、自身がいまできることについて思いを述べた。「世界中 の人々が安全で病気にかからずにいてほしいが、同時に働いてお金を稼ぎ、生活できるようになってほしい。みんなが早 く働くことができるようになってほしいんだ」と、日常生活が早く戻るよう願っていた。

いま全世界においてエンターテインメント業界は困難な時代を迎えている中、MR.BIG の再結成はあるのか、という問いに対し、「ビリーさんを取材をした際に、やはりパットさんの不在は大きいと感じた。パットさんが亡くなったあとのヨーロッパツ アーでの違和感、パットを失った喪失感から抜け切れていないのではないか」と川西監督が語った。「パッとみて、パットがいな い!のはやっぱり大きい。でも可能性はないわけではないと思う。ここは川西監督が“MR.BIG 再結成委員会”を立ち上げて、 働きかけないと!」と伊藤さんの言葉に、会場からは大きな拍手が巻き起こった。 「映画祭で上映される劇場版のナレーションを担当し感じたのは、川西監督が MR.BIG の未来を描こうとしていること。」と、 映画の見どころを伊藤さんが語ると、「タイトルに“10年”とあるけれど、これがゴールではなく、ここからまだ未来の MR.BIG を見せてくれるはず、そしてそれを追いかけたい。見どころというより、決意表明をする場になってしまいました」と、川西監督 が映画、そして MR.BIG への熱い思いを語り、トークイベントが終了した。

そして最後にMR.BIGのメンバー・ビリー・シーンさんから、会場へのメッセージ映像が届くと、会場は最高の盛り上がり を見せた。

【ビリー・シーンさんからの会場へのメッセージ全文】
『今回MR.BIGの日本での“現象”についてドキュメンタリーを作ってくれてありがとう。1988 年に結成し、来日して以降、 みんなはバンドを愛してくれた。僕らは素晴らしい人々に囲まれ、素晴らしい経験をし、貴重な時間を過ごしてきた。自分 の人生の中でMR.BIGの日本での体験はもっとも人生を変えた出来事のひとつだ。だから信じられない体験をさせてく れたみんなにどんな感謝の言葉を贈ればいいのかわからない。みんなのことを本当に愛しているし会えないのが本当に 寂しい。またみんなに会って一緒になれる日が一日も早く訪れることを願っているよ。 』

『MR.BIG~3・11から10年 被災地とともに歩んだ外国人バンド』

■作品概要■
被災地から消えた娯楽—— 東日本大震災直後の 2011年4月。
被災地から日常が失われる中、「東北の人々を自分たちの音楽で元気づけたい」として、 外国人としていち早く被災地・盛岡でコンサートを行ったアーティストがいた。 アメリカ出身のロックバンド「MR.BIG」だ。コンサートのみならず、被災者のために新曲を収録し、チャリティーソングとして発売したり、コンサート会場でメンバー自ら 募金活動を行うという真摯な姿勢は、多くの被災者を勇気付け、希望を与えた。

それから3年。再びバンドは来日するが、ドラマーのパットが難病であるパーキンソン病を発症し、通常の演奏活動ができなく なったことが判明する。苦境に陥ったバンドを救ったのは、「恩返しをしたい」と話していた被災地・仙台のファンだった。ヴォー カルのエリックがソロツアーを行った 2015 年にはパットも帯同し、被災地・石巻のライブハウスでショウを行うなど元気な姿を 見せていたが、2018 年にパットは死去。

結成30年という節目を前にバンドは空中分解状態となってしまった。結局、バンドは解 散を決めるが、ひとつだけ心残りがあるという。そう、深く関係を築いた日本のファンの前でもう一度ショウを行うこと・・。 震災や難病という困難に翻弄されながらも互いの絆を深めていくバンドと日本のファンたち。その一部始終をカメラは追い続け た。

■MR.BIG(ミスター・ビッグ)■
アメリカ合衆国出身のハードロック・バンド。1989 年、セルフ・タイトル『MR.BIG』でデビュー。デイヴィッド・リー・ロス・ バンドなどで活動していたベーシストのビリー・シーン、実力派ヴォーカリストのエリック・マーティン、世界最速の技巧派ギタ リストのポール・ギルバート、セッション・マンとして知られるドラマーのパット・トーピーの4人により結成。1996 年に発売さ れたベスト・アルバム『Big, Bigger, Biggest』が100万枚に迫る巨大なセールスを記録し、文字通りのスーパー・ロック・グルー プとなった。
2001 年にリリースしたアルバム『アクチャル・サイズ』を最後にバンドは解散。デビュー20周年にあたる 2009 年に、13年振りとなるオリジナル・メンバーで再結成し、活動を再開させた。2011 年には、東日本大震災に見舞われながらも、北は 北海道から南は九州までの日本全国縦断ツアーを行い、日本各地を再び熱狂の渦に巻き込んだ。2014 年、ドラマーのパットがパー キンソン病を罹患、闘病中であることを公表。アルバム『…ザ・ストーリーズ・ウィ・クッド・テル』を携え日本公演を敢行。2018 年2月7日、パットがパーキンソン病の合併症により死去。

■監督プロフィール■
川西全(かわにし・ぜん) 1978 年9月28日、神奈川県生まれ。2002 年 TBS 入社。スポーツ局に配属され「Dynamite!」「 K-1 WORLD MAX」など 格闘技番組の制作にADとして携わる。その後報道局に異動し、主に政治部記者として総理や官房長官、自民党などを担 当。「イブニング5」 「NEWS23クロス」などの報道番組ディレクターとして WBC(ワールドベースボールクラシック) 現地レポートや MR.BIG を含む海外の音楽アーティストインタビューなど幅広いジャンルの取材も経験。2016 年からは NY 支局特派員となり3年半にわたってトランプ政権誕生の瞬間やその後のアメリカ国内の混乱などを伝える。現在は報 道局政治部デスク。

■監督メッセージ■
現在 30~40 代の多くの HR/HM(ハードロック・ヘヴィメタル)ファンの方がそうであるように、私にとって HR/HM の世界と出会うきっかけとなったのが MR.BIG でした。当時中学3年生で、周りの友人は皆彼らのアルバム「Lean Into It」 「Bump Ahead」を聴いていました。私も買ってもらったばかりのアコースティックギターで必死に代表曲でる“To Be With You”や“Wild World”を練習したのを覚えています。

そんな私がファンとしてではなく、取材対象として MR.BIG に接するようになったのは、あの 2011 年の東日本大震災 がきっかけでした。当時、夜の報道番組「ニュース23クロス」のディレクターだった私は、震災発生直後から宮城、福 島と被災地を渡り歩きました。特に震災から2日後の仙台の歓楽街で感じたのは「音のない街」ということ。日々、音で あふれる我々の暮らしが、日常を奪われた瞬間いかにモノトーンなものになるか。それを実感させられたのです。
そんな 中で聞いた、MR.BIG が震災からわずか1ヶ月で被災地・盛岡にやってくるというニュース。外国人アーティストとして は初めての被災地でのショウ。果たして彼らは受け入れられるのか。どんな人たちがやってくるのか。そして、メンバー はどういう思いでやってくるのか。私はどうしても取材したいと思い、盛岡行きを決意しました。
当時、仙台公演は会場 が使用できず、早い段階で中止が決まりましたが、盛岡も直前で会場が変更となるなど予断を許しませんでした。そんな ドタバタを乗り越え、実現したショウ。盛り上がるファンの様子を見ながら、ずっと震災と向き合ってきた東北地方で、 この建物の中の空間だけが別次元に存在している、という感覚にとらわれました。その場にいた 1500 人が同じ思いを共 有し、終演後には口々に幸福感を語っていました。まさに MR.BIG の、そして盛岡の人々の記憶に永遠に残るだろう歴史的な一夜だったと思います。

その後もバンドは2度来日し、2011 年にはキャンセルせざるを得なかった仙台公演も成功させましたが、ドラマーのパ ットは難病パーキンソン病にかかり、2018 年に亡くなりました。このバンドがたどった数奇な運命を見るにつけ、彼らの 歴史と日本のファンが果たした役割について記録しておく必要があると考えました。

この作品を通じて、彼らの音楽に対 する好き嫌いは別にしても、彼らの被災地や日本に対する真摯な思い、それに対して日本のファンが送り返したメッセー ジを感じ取っていただければ幸いです。

監督:川西全
取材:永田大
撮影:藤本孝志
編集:小川友広
協力:WOWOW エンタテインメント ウドー音楽事務所 2021 年/ステレオ/60 分 © TBS テレビ

『TBS ドキュメンタリー映画祭~テレビで伝えきれないことがある~』

2021年3月18日(木)~21日(日) ユーロライブにて開催!

「真実を求めるには ストーリーを両面から見る必要がある」 (ウォルター・クロンカイト)
人生の数だけドキュメンタリーがある!
ニュースには続編があるのだ!!
日々のニュースでは、ストレートに今を伝えることが途切れなく続いていく……。
テレビとは違う時間と空間で、ニュースを追っていくと見えてくる景色がある。

放送されなかった膨大な取材映像を、さらに深く、鋭く掘り起こしていくと発見することが数多くある。その後に起き たことについて知りたくなることも沢山ある。 さらに、もっと、伝えなくてはならない! ドキュメンタリー映画という手法で、さらに奥深くにある事実を、やっと探し当てた事実を、余すところなくお届けし たい。

上映後には監督が登壇をして想いを直接お伝えします。コロナ、沖縄、福島、香港、中東、アフリカ、死刑制度…。すべては現在進行形であり、報道に終着点はない。東日本大震災から 10 年、そしてコロナ禍のいまだからこそ、監督たちが伝えたい作品を厳選。

コロナ禍において混迷を極める医療現場の最前線を追う『タブレット越しで“最期の別れ”~いのちと向き合うコロナ最 前線』、新型コロナウィルスの真の怖さを、感染から生還した医師が語る『NY 日本人医師が自ら語る 新型コロナ重症か らの生還』 。

2020 年、香港国家安全維持法が施行され、周庭(アグネス・チョウ)、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)などの民主 活動家に実刑判決が下され、高度な自治が脅かされる香港。香港メディア界の大物で民主活動家の黎智英(ジミー・ライ) 氏の突然の逮捕の直前の「報道特集」独占インタビューは、世界に衝撃を与えた。『香港2019―あの時、何があったの か-』は 2019 年の香港を見つめた注目作だ。

また、武装勢力による性暴力があとを絶たないコンゴ民主共和国で、ノー ベル平和賞を受賞した婦人科医デニ・ムクウェゲ医師の闘いを追った『ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘 う医師』。武装勢力によるレイプの連鎖には、日本も関わりがあり、遠い国の話では決してない。今なお戦闘が続く中東を 舞台にした国際社会の闇、『影の戦争 アメリカと中東の戦乱十五年』『大麻と金と宗教~レバノンの“ドラッグ王”を追う』 を見ると、世界情勢に無関心ではいられなくなる。

東日本大震災から 10 年、メンバー4人全員が歯科医師で、福島県で誕生した GReeeeN のリーダー・HIDE が、被災地 を取材した、 『GReeeeN 初告白 東日本大震災5年に HIDE が語っていたこと ディレクターズカット版』。

被災地への 支援を続けるアメリカの人気ハードロックバンド「MR.BIG」が、震災や難病という困難に翻弄されながらも日本のファン たちとの絆を深めていく様子を追った『MR.BIG~3・11 から 10 年 被災地とともに歩んだ外国人バンド』 。

犯罪を犯してしまった人たち、そして事件の背景に迫り続ける『“死刑囚”に会い続ける男』『死刑を免れた男達~カメラ が初めて捉えた無期懲役囚の実態』『女子少年院の後輩たちへ~元レディース総長、涙で伝えたメッセージ』『消えた事件、 弟の執念』 。

天才アーティストの創作風景、日々の思いに密着した『天才“鉄道画家”福島尚』『キャンバスの枠を越える 画家・山口 歴(Meguru.Y)IN NY』『 88/50 ギリヤーク尼ヶ崎の自問自答~と、それから』 。

認知症の母のシングル介護をする女性アナウンサーを追った『お母ちゃんが私の名前を忘れた日 ~若年性アルツハイマ ーの母と生きる~』など、テレビ放映時に話題となった作品にさらなる映像が加わって出揃った。

そのほか、 『米軍 アメリカ が最も恐れた男 その名は、カメジロー』2 部作で戦後沖縄史に切り込んだ監督 佐古忠彦が、新たに発 見された資料を交え、知られざる沖縄戦中史に挑んだ最新作『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』が全国公開に先 駆け上映される。

禁断のスクープ映像と共に稀代の天才作家・三島由紀夫と、血気盛んな東大全共闘の討論会の全貌が明 かされた『三島由紀夫 vs 東大全共闘~50 年目の真実~』。

がんで亡くなったモデルの妻の人生を夫が描いた『モデル雅子 を追う旅』など劇場公開時に話題になった作品も見逃せない。

是枝裕和監督が、影響を受けたテレビマンの人生とテレビが歩んだ足跡を描いた『あの時だったかもしれない~テレビ にとって「私」とは何か~』 。

報道特集の「原点」ともいえる、フィリピンのアキノ氏暗殺現場を捉えた映像から、政府発 表の不審点を告発、真犯人像に迫った『アキノ白昼の暗殺 特別編~この報道が歴史を動かした~』など、TBS ドキュメ ンタリーの原点にも迫る。

新型コロナ、震災、国際情勢、日本社会の歪み、介護、人権問題・・・幅広く、いまを伝える。

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