<ROCK BEATS CANCER Vol.6>完全レポート パート1
恒例となっているLOUDNESSの年末公演、2018年は初日に『Rock Beats Cancer』フェスがEX THEATER ROPPONGIで開催された。2013年からスタートしたこのフェスは、今回で6回目となる。LOUDNESSのドラマー樋口宗孝さん(2008年11月30日に肝臓がんで逝去)の意思を継ぎ、がんを体験した若者たちを音楽で勇気づけるために「樋口宗孝がん研究基金(MHF)」により企画された。
出演はLOUDNESSとLAZYに加え、GRANRODEO、初参加となる怒髪天。JAM Projectはユニットしてではなく、それぞれのアーティストに各メンバーがコラボ参戦し、MR.JIMMYからジミー桜井(G)、ジョンジー大塚(B)、ANTHEMの柴田直人(B)、ジョージ紫(key)、西田竜一(Ds)等、豪華メンバーが集結する要注目のフェスである。
結論から言うと、これが実に面白く楽しく素晴らしいイベントだった。各セクションに見せ場が用意されており、終始オーディエンスをステージに惹きつけ、各ミュージシャンのポテンシャルを存分に堪能することの出来る濃密な時間を過ごせたのである。
オープニングアクトは、若年性がん患者団体“STAND UP!!”公式音楽ユニットの「カラーボール」から女性ヴォーカリストのKAZUNAが登場。アコースティック・ギターで希望や目標を持って前向きに生きる人達にエールを送る音楽活動をしている。ハートウォーミングな演奏が会場を包み込んだ。
LOUDNESS
スクリーンに映し出された“Rock Beats Cancer”オープニング映像の後は、LOUDNESSがトップバッターとしてサプライズ的に登場。さすがに場内はざわめく。さらにドラム台には鈴木“あんぱん”政行が座ったのだから、さらにどよめくのだった。彼は現在も脳梗塞の後遺症からの完全復帰を目指しており、ここ一年以上、LOUDNESSはサポートドラマーを迎えてツアーを行っている。あんぱんはアンコールで1曲のみ参加するパターンだったが、ド頭からあらわれたのは久しぶりのことだった。
鈴木“あんぱん”政行<ds>
二井原 実<vo>
山下昌良<b>
続いてゲストが呼び込まれると、怒髪天のギタリスト、上原子友康が緊張の面持ちで登場。少年時代にLOUDNESSや同じ北海道出身のFLATBACKERといった、あの頃のジャパニーズメタルに大いに影響されたと語っているように、彼にとってLOUDNESSの高崎晃は“神”のような存在である。曲は「CRAZY DOCTOR」。高崎晃(G)の隣で、緊張しつつも嬉々としてストラトキャスターを鳴らしている。怒髪天のファンならよく知っているはずだが、上原子はギタリストとしてかなりのテクニシャンである。LOUDNESSがデビューした81年以降、ギターを手にした日本のロック少年達のほとんどが高崎のギタープレイに衝撃を受け、真似をしてきたはず。とくに「CRAZY DOCTOR」のソロはギターキッズの憧れであったわけだが、たくさんの人が挑戦しては挫折したことだろう。このコラボではバッキングに徹していたけれども、上原子はたぶん弾けるはず。現在のプレイスタイルは違えど、彼がそれくらい優秀なギタリストであるということを、この日初めて怒髪天を体験したメタルヘッズにも知って欲しい。レアなコラボであった。
GRANRODEO
フロアの熱が一気に高まったところで、2番手に登場したのはGRANRODEO。彼らはアニソン界のロックユニットとして大人気の二人組である。この日も熱心な“RODEOGIRL(GRANRODEOの女性ファンをこう呼ばれている)”達が来場していた。もちろん“RODEOBOY”もあの場にいたのだろうが、場内ではどうしてもGRANRODEOTシャツを着た女性の方が目立ってしまう。メンバーはKISHOW(谷山紀章)とe-ZUKA(飯塚昌明)。サポートのドラマーとベーシストを入れた4人編成でステージにあらわれた。“LOUDNESSの後に僕らが出てもいいのでしょうか”と、KISHOWは恐縮しながらもフレッシュでアグレッシヴなパフォーマンスで観客を煽っていく。
3曲目で披露されたのは、昨年放送されたTVアニメ『バキ』のOPテーマにして彼らの最新シングル曲「BEASTFUL」。最近ヘビロテしていたので、即座に体が反応してしまった。格闘マンガが原作である『バキ』は当然バトルシーンも多く、その作風に合わせた激しく疾走感のある楽曲となっている。もちろんアニソンだからサビでグッと盛り上げる。GRANRODEOの作り出す独自性の高いアニソンメタルは、もっと多くの人に知っていただきたい。
そしてコラボコーナーはJAM Projectから“きただにひろし”が参加し、TVアニメ『黒子のバスケ』OP主題歌にして人気曲「Can Do」を披露。爽やかに弾けるポップなロック曲とアニソンシンガーの歌唱力を存分に味わった。
きただにひろし<vo> & KISHOW<vo>
怒髪天
三番手は怒髪天。メンバー全員が北海道の出身で、増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Ds)の4人。今日のラインナップの中では多少アウェイ感のあるバンドかも知れないが、LOUDNESSのあんぱんとは北海道繋がりで古くから付き合いがあるという。84年結成で91年にメジャーデビューしているからキャリアは長い。彼らは“JAPANESE R&E(リズム&演歌)”という、唯一無二のロックを演奏しているバンドだ。他に類を見ないとは言え、楽曲はどれも親しみやすく、多くのCMでも使用されているし、TVアニメのテーマソングも担当している。良質のメロディをダミ声で歌い上げる増子のヴォーカルスタイルがあまりにも独特で、最初はそこに強烈な印象を受けるだろう。しかしライヴを体験すれば彼らが抜群の演奏力を持っていることがわかるはず。どこに出ても、どんなバンドと一緒でも怒髪天はハズさない。
MCでは増子が、LOUDNESSとコラボした上原子について「夢が叶った瞬間を目撃した」と、つい先程の出来事を嬉しそうに話していた。諦めなければ、いつか夢は叶う。バンドは96年に活動を一時休止し、99年に活動再開、2004年に再メジャーデビューを果たした。一度は諦めかけたけれども、それでもまたやり直した。そして今、このステージに立っている。今年でバンドは35周年を迎えるという。
坂詰 克彦<ds>
上原子友康<g>
清水泰次<b>
影山ヒロノブ<vo>(中央)
コラボコーナーではJAM Projectの5人が登場。彼らの作品はハードな楽曲も多く、かつては樋口宗孝さんも参加しているので、LOUDNESSのファンにもお馴染みである。影山ヒロノブ、遠藤正明、きただにひろし、奥井雅美、福山芳樹がステージに並ぶと、やはり壮観だ。増子曰く“バカみたいに歌の上手い人達”と一緒にJAM Projectのナンバー「限界バトル」、「Crush Gear Fight!!」の2曲を披露した。もちろん演奏は怒髪天。いくつもの声が重なり合い、より重厚でよりテンションの高いパフォーマンスを披露し、歌声のパワーがオーディエンスを包み込む。さらに、きただにが残り、今度は怒髪天の「酒燃料爆進曲」を共に歌い、大いに盛り上げた。ラストは「オトナノススメ」&「雪割り桜」。怒髪天の必殺曲が連発された。とくに「雪割り桜」は、冬なのに我慢できずに咲いてしまう花を人生に例えた名曲。春まで待ってられるか。だったら今、堂々と咲き誇ろうぜ。実にこの季節にタイムリーな沁みる歌詞であった。
楽しすぎるショウはまだまだ終わらない。
(パート2へ続く)
遠藤正明<vo> & 増子直純<vo>
福山芳樹<vo>
奥井雅美<vo> & きただにひろし<vo>
増子直純<vo> & きただにひろし<vo>
増子直純<vo>
2018年12月29日@東京EX THEATER ROPPONGI
<SETLIST>前半
Kazuna from カラーボール
01. For My Dear /with タクミマサノリ<support g>
LOUDNESS
01. CRAZY NIGHTS
02. HEAVY CHAINS
03. LET IT GO
04. IN THE MIRROR
05. CRAZY DOCTOR /with 上原子友康(怒髪天)
GRANRODEO
01. Pierrot Dancin'
02. ROSE HIP‐BULLET
03. BEASTFUL
04. Imaginary song
05. Can Do /with きただにひろし(JAM Project)
06. NO PLACE LIKE A STAGE
07. ナミダバナ
怒髪天
01. セイノワ
02. HONKAI
03. 限界バトル /with JAM Project
04. Crush Gear Fight!! /with JAM Project
05. 酒燃料爆進曲 /with きただにひろし(JAM Project)
06. オトナノススメ
07. 雪割り桜
クイーン全曲ガイド2 ライヴ&ソロ編
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