コンセプト3部作の最終章── ELVENKING 新作インタビュー:ダムナ(vo)&アイダン(g)

インタビュー&文●奥村裕司/Yuzi Okumura

 イタリアのペイガン/フォーク・メタラー、ELVENKINGのニュー・アルバム『READER OF THE RUNES - LUNA』はもうお聴きになっただろうか? 6月に日本発売された、幻想と神秘に満ちたこのオリジナル・スタジオ・アルバム第12作は、'19年リリースの『READER OF THE RUNES - DIVINATION』、'23年リリースの『READER OF THE RUNES - RAPTURE』に続く、コンセプト・ストーリー3部作の最終章だ。アルバム・タイトルにある “ルーン文字の読み手” “ルーンを紐解く者” こそがその主人公。彼と “8粒のダイヤモンド” にまつわる因縁・因果がここには綴られている。
 
 そんな “READER OF THE RUNES” クロニクルについて、最新作『〜LUNA』のあれこれに焦点を当てつつ、メイン・ソングライター・チームにしてコンセプターでもあるダムナ(vo)&アイダン(g)に語ってもらった…!

(CD/キングレコード:KICP-94102)
1. Season Of The Owl

2. Luna

3. Gone Epoch

4. Stormcarrier Feat. Mathias “Vreth” Lillmans

5. Starbath

6. On These Haunted Shores

7. The Ghosting

8. Throes Of Atonement

9. The Weeping

10. Reader Of The Runes – Book II

11. Silverseal (Live At Paganfest 2025, Milan It) *

12. Bride Of Night (Live At Paganfest 2025, Krakow Pl) *

13. The Horned Ghost And The Sorcerer (Live At Paganfest 2025, Lausanne Ch) *

*日本盤ボーナス・トラック

──三部作の最終章であるニュー・アルバム『READER OF THE RUNES - LUNA』の曲作りを始めたのはいつでしたか? 聞いたところによれば、前作『〜RAPTURE』制作時には、もう『〜LUNA』の楽曲にも取り掛かっていたそうで…?
 
アイダン:
そうなんだ。当初は1枚ずつ進めるつもりだったんだよ。第1弾(『〜DIVINATION』)をリリースしたら、それに伴うツアーに出て、続いて2枚目に取り組み、またツアーをやって…という風にね。ところが、『〜DIVINATION』のツアーを始めて間もなく、(共演バンド)BROTHERS OF METALとツアー・バスで移動している最中に、奇妙なウイルスが感染拡大している…という話を聞いてね。そう、新型コロナ・ウイルスの世界的パンデミックが始まったんだ。以降の予定は全て中止を余儀なくされてしまったよ。しかも、「これで数ヵ月の予定がなくなってしまった…」と思っていたら、それどころではなく、結局は(活動休止が)数年にまで及んでしまったのさ。
 
 それで俺達は、曲作りに専念することにした。「きっと状況はすぐに改善しないだろう」と早々に判断した結果、第3章の曲作りにも取り組んでしまおう…ということになったんだ。つまり『〜RAPTURE』と『〜LUNA』は、ほぼひと続きのセッションで仕上げられたということさ。実際、『〜RAPTURE』のレコーディングを始めた時点で、もう『〜LUNA』の全曲はデモの段階まで進んでいた。ただ、『〜RAPTURE』リリース後、『〜LUNA』のレコーディングを始めるまでには、アレンジにかなり時間をかけたけどね。

『READER OF THE RUNES - DIVINATION』(MP3

1. Perthro

2. Heathen Divine

3. Divination

4. Silverseal

5. The Misfortune Of Virtue

6. Eternal Eleanor

7. Diamonds In The Night

8. Under The Sign Of A Black Star

9. Malefica Doctrine

10. Sic Semper Tyrannis

11. Warden Of The Bane

12. Reader Of The Runes – Book I

13. Diamonds In The Night(Japanese version) ※日本盤ボーナス・トラック

『READER OF THE RUNES - RAPTURE』(CD)

1. Rapture

2. The Hanging Tree

3. Bride Of Night

4. Herdchant

5. The Cursed Cavalier

6. To The North

7. Covenant 

8. Red Mist

9. Incantations

10. An Autumn Reverie

11. The Repentant

12. Prime Evil  (※VENOM cover/日本盤ボーナス・トラック)

──今作も収録曲の殆どはダムナとアイダンの共作ですが、「Luna」にはヘッドマットもクレジットされていますね?

ダムナ:
「Luna」は、ヘッドマットがリフを幾つかと、他にも断片的なアイディアを送ってきてくれたんで、それを元にバンドで仕上げていったんだ。確かにこのバンドでは、俺とアイダンがメインのソングライターだけど、他のメンバーのアイディアを取り入れることだって勿論ある。『〜RAPTURE』でも、「The Hanging Tree」でヘッドマットのアイディアを使ったし、レシエンのアイディから(アルバム未収録曲の)「Ethel」が生まれたこともあったしね。

──その「Ethel」は'24年1月に公開されましたが、アルバム本編に収録しなかったのはどうしてですか?
 
アイダン:
『〜DIVINATION』から『〜RAPTURE』の狭間にも、「The Moon And Magic」という曲を(単独)リリースして、同じようなことをやったよね。俺達はそうして、それぞれのアルバムをつなぐ “橋” となるデジタル・シングルを制作してきたんだ。さらに、各アルバム毎にカヴァー曲も発表してきた。『〜DIVINATION』リリース後には、IRON MAIDENの「No Prayer For The Dying」('90年『NO PRAYER FOR THE DYING』収録)を、『〜RAPTURE』リリース後にはVENOMの「Prime Evil」('89年『PRIME EVIL』収録)を…とね。実を言うと今作『〜LUNA』でも、新曲とカヴァー曲をレコーディング済みなんだ。それらは今後、まとめてフィジカル・フォーマットでも正式リリースする予定だよ。
 
──「Ethel」も当然、三部作のコンセプトに関係しているのですよね?
 
ダムナ:
勿論さ! 彼女=エセルは最終章の中心的キャラクターで、アルバムの前にこの先行曲で登場することになったのさ。
──『〜LUNA』を聴いて、楽曲面でもソングライトの面でも、これまでの集大成という印象を受けました。前2作との違いを敢えて挙げるとすれば?
 
アイダン:
三部作の1枚なんだから、音楽的に一貫性を持たせる必要はあったよ。それにさっきも話した通り、『〜RAPTURE』と『〜LUNA』の楽曲は同時に書かれたので、どの曲をどっちのアルバムに入れるか吟味するのも重要だった。その上で違いというと、『〜LUNA』にはより幻想的でフォーキーな要素が強い…と言えるかな? 同時に、ツー・バスを活かしたパワー・メタリックなパートも目立っている。ただ、「The Ghosting」や「The Weeping」といった、これまでになく悲劇的でメランコリックな曲もあるから、多面性を持つアルバムと言うことも出来ると思う。
 
──もしや『〜LUNA』のレコーディングも、『〜RAPTURE』制作時に既に進められていたのでしょうか?
 
ダムナ:
ドラム・パートは『〜RAPTURE』制作時、2枚分まとめてレコーディングしてあったんだ。でも、ギター、ベース、ヴォーカルは、その後に各メンバーが自宅スタジオで、それぞれのペースで録音していったよ。
 
──前作と同じく、今回もスコット・アトキンスがエンジニアとミキシングを担当していますが、彼は英国からイタリアまでやって来て、レコーディングのディレクションを行なったのですか?
 
アイダン:
そうだよ。まだコロナ禍の影響下にあったから、俺達が英国まで出向くよりも、スコットをイタリアに呼ぶ方が現実的だったんでね。彼は数日間イタリアに滞在し、ドラム、ギター、ベースの基本的な音作りと録音設定をコナしてくれたよ。
──マスタリングに関しては、スコットが手掛けた前作とは違い、今回は『〜DIVINATION』を担当したトニー・リンドグレンが再び起用されていますね?
 
ダムナ:
『〜DIVINATION』でも彼の仕事っぷりにとても満足していたからね。あの時と同レヴェルのマスタリングを求めて、トニーに再度お願いしたということさ。
 
──新作『〜LUNA』のジャケットは、死体(骸骨)だらけでなかなか強烈ですが、この最終章で “ルーンを紐解く者” と “8粒のダイヤモンド” の物語はどのように展開するのでしょうか?
 
ダムナ:
アルバムのカヴァー・アートには、(前作で)運命に導かれて命を落としていったキャラクターが全員描かれている。中央の女性はエセルさ。仲間うちで “ルナ” というあだ名で呼ばれていた彼女は、幼くしてその仲間たちにより死に追いやられてしまうんだ。それは「Ethel」でも語られている。そして、森へと背を向けて歩き去ろうとしているのがルーンリーダー、つまり “ルーンを紐解く者” だね。物語全体を通して読み進めていけば、このアートワークの意味するところも全て理解出来ると思う。
 
 物語の結末については、まだアルバムを聴いていない人や、歌詞をじっくり読んでいない人のためにも、ここではあまりネタバレし過ぎないようにしなきゃな。“ルーンを紐解く者” という謎めいた存在と、彼やエセル=ルナを取り巻く8人のキャラクター、つまり “8粒のダイヤモンド” の関係については、今回『〜LUNA』でついに明らかにされるんだ。
──ところで、前作のCDブックレットでは、バンドのクレジットが “The Divinatators” となっていましたが、今作では “The Stormcarriers” と表記されていますね?
 
ダムナ:
それって雰囲気作りのためさ。歌詞や音楽、アートワークに詩的な雰囲気を持たせるためにそうしている。クレジットひとつ取っても、その世界観を表現しようとしているだけで、それ以上の深い意味はないよ。
 
──では、ダムナのクレジットが “Vocalist” だけでなく “Invocation” となっているのは…?
 
アイダン:
ダムナのヴォーカル・スタイルは、単に声がどうとか、ヴォーカル・テクニック云々といったところに留まらない。彼はある種、儀式やセレモニーの司祭のような存在でもあるのさ。だから、“歌う” という以上の役割を担っている…ということだね。
 
──ブックレットといえば、メンバー写真が全員死者のようになっているのは…?
 
ダムナ:
実は全員、エセル/ルナがどのようにして亡くなったのか…ということを象徴しているんだ。つまりは…溺死だな。これは彼女の死に対する、俺達からのオマージュなんだよ。
──「Stormcarrier」にはFINNTROLLのヴレス(vo)が客演していますが、彼をゲスト起用しようと思ったキッカケというと?
 
ダムナ:
単に彼の声が大好きだという、それだけのことさ。この曲にはストロングでパワフルなグロウルが必要だった。それなら彼がぴったりだと思ったんだ。
──これまでもゲスト参加してきたヴィオラ奏者のトンマーゾ・フラカッシが三度び起用されていますが、彼はクラシックの音楽家なのでしょうか?
 
アイダン:
そう、彼はクラシック畑出身で、メタル・シーンには属していないよ。元々はレシエンの友人なんだ。特定の楽曲に深みを与える上で、ヴィオラは非常に重要な役割を果たしているよ。
 
──ところで、今作からヨーロッパでの所属レーベルが、AFM RecordsからReaper Entertainmentに変わりましたね?
 
アイダン:
当初、このアルバムはAFMからリリースされる最後のアルバムになるハズだったんだ。AFMは俺達にとって、デビュー以来の付き合いとなる大事なレーベルだからね。ところが近年になって、レーベルとしての方針が大きく変わり、新しいリリースに力を注ぐことよりも、過去作品のカタログ管理を重視するようになってさ…。さらには、スタッフの入れ替わりも相次いでしまい、実を言うと、前作リリースの際も、色々と難しい状況だったりしたんだよ。それで俺達は、新たなパートナーを探し始めた。すると、多くのオファーを受ける中、Nuclear Blastの元スタッフが立ち上げたReaperが目に留まり、彼等の情熱と、バンドとの密な関係作りに感銘を受け、今回移籍を決めたというワケさ。
 
──では最後に、今後の予定を教えてください。再来日公演も心待ちにしています…!
 
ダムナ:
現在は──さっき少し話した、三部作とその物語に終止符を打つ特別なリリース作の準備を進めているところさ。勿論、俺達も日本でまたライヴを行なうのが待ちきれないよ! 本当に大好きな国だからね。
 
アイダン:また近いうちに、嬉しいお知らせが出来ると思う。それまで、ニュー・アルバムを聴いて待っていてくれ…!!
この記事についてのコメントコメントを投稿

この記事へのコメントはまだありません

2000年代ヘヴィ・メタル/ハード・ロック ディスク・ガイド

2000年代ヘヴィ・メタル/ハード・ロック ディスク・ガイド

3,960円
90年代ヘヴィ・メタル/ハード・ロック ディスク・ガイド

90年代ヘヴィ・メタル/ハード・ロック ディスク・ガイド

3,300円
ディスク・コレクション ヘヴィ・メタル

ディスク・コレクション ヘヴィ・メタル

2,420円
詳説 ジャーマン・メタル

詳説 ジャーマン・メタル

1,980円

RELATED POSTS

関連記事

記事が見つかりませんでした

LATEST POSTS

最新記事

ページトップ