“メタルゴッド” 伊藤政則インタビュー~メタルヘッズの定番イベント『HEAVY METAL SOUNDHOUSE』開催直前SP!
日本の全メタルヘッズ、年一回のお楽しみがまもなく!
──2018年も終わりが近づき、サウンドハウスの季節がやってまいりました。去年、もの凄く盛り上がった印象があります。
伊藤 2017年が盛り上がった理由のひとつはね、やっぱりLOVEBITESなんじゃないかと。オヤジがいっぱい来たんだよ。上から見るとみんな頭がツルツルなんだよな(笑)。
──そんなこと言わないでください! お客さんは皆、伊藤さんより年下なんですから。
伊藤 じゃ若者がいっぱい来たということで。
──何のフォローにもなってないですよ! でも人生100年時代って言われているわけですから、50そこそこで老け込んじゃいけないですよね。
伊藤 そうだよ、「四十、五十は洟垂れ小僧」って言うだろ。
──なんですかその言葉は。永六輔さんの言葉ですか。
伊藤 もっと昔の言葉だよ(※01)。
──いい言葉ですねえ。
伊藤 それはともかく、去年はLOVEBITES効果だな。あとビールも売ったりして、そういう新たな展開が面白いってことだったんだと思うよ。
──あのビールがまた旨かったんですよね。
伊藤 クラフトビールなので、メジャーな会社の量産されたものと違ってホップの量が半端ない。確かに最初は飲んだことのない味で戸惑うんだけど、のどごしとか後味とか、かなり違って新鮮なんだよ。
──今年も岩手のビール工場ですか。
伊藤 そう、一関にある世嬉の一(せきのいち)酒造が作ってくれて。ディスクユニオンの担当者によると、去年サウンドハウスでビールを売って以来、ここを訪ねたロックファンが結構いたみたいなんだよね。でも世嬉の一酒造の人は事情がよくわかってなかったらしくて。伊藤政則は岩手出身だって教えたら驚いていたみたい(笑)。
──岩手出身の有名人といえば、伊藤政則の次に大谷翔平、菊池雄星ですよ。
伊藤 そんなわけないだろ! で、去年はゴールデンエールとイングリッシュスタイルのIPAだったんだけど、タワーレコードで作ったやつは厚木のビール工場で作ったもので、それも同じゴールデンエールとIPAだったの。同じ味が続いちゃうから、今回は変えたんだよ。その2種類を外すと、5種類の中から選ばなくちゃならなくてさ。まずフルーティなビールは除外したんだ。女性は喜ぶかもしれないけど、飲み続けられないんだよ。残ったのは、去年も候補に上がった山椒と黒ビール。山椒ってどうなのかと思ったらこれが旨かった。あと黒ビールも皆が思っているような味じゃなくて、クリーミーでソフトで旨いんだよ。
──ラベルを和風にしたからイメージもマッチしていますね。
伊藤 うん。去年のビールは会場で全部売り切ってしまって、店で売る分がなくて追加生産したんだよね。
──サウンドハウスのお客さんは酒飲みが多いですからね。
伊藤 会場では飲めないんだけどね。
──年末から正月にかけて冷蔵庫に入れておくといいんじゃないですか。
伊藤 そうだね、自宅で味わってもらえれば。ちなみに4本セットの箱には筆文字でサイン書くからね。
──筆文字って凄くいいですね。あとはカレンダーも楽しみです。
伊藤 今年はディスクユニオン制作で、単行本『月刊 伊藤政則(仮)』のアウトテイクを写真家の畔柳ユキさんに出してもらってね。池波正太郎のイメージで撮影したんだよ。
──和装はいかがでしたか。
伊藤 着心地はあまりよくないんだよな。和装ってさ、その気持にならないと難しいかも知れない。例えば歩き方とか過ごし方とかね。
──確かに和装の人って歩き方が似てるかもしれませんね。
伊藤 たぶん、和装なりの歩き方があるんだな。変な歩き方をすると、前が開いちゃうんだよ。慣れれば良くなるんだろうね。でもまあ洋服とは違った感じが面白かったよ。
──かなり似合ってました。
伊藤 あの写真は高円寺の文壇カフェみたいな場所で撮ったんだけどさ、盃を持ってるんだけど、昼間から飲むわけにはいかないから盃に水を入れたんだよ。水盃(※02)だから縁起が悪いんだけど、まあいいかって水入れてね。あと煙草もあった方がいいんじゃないかって、ゴールデンバットをコンビニで買ってきて。
──凝ってますねえ。
伊藤 煙草なんか8年くらいヤメてたんだけど、少し吸ったら舌が戻ってきちゃってさあ。その後3日間くらい吸いたくなっちゃったんだよ。我慢したけど大変だったぞ。撮影でちょっとくわえただけなのにね。たぶん脳が覚えてるんだろうね。これっが薬系だともっと凄いんだろうねぇ。なんてことを思ったよ。
──アウトテイクとはいえいい写真が揃っていますね。あとTシャツのデザインもカッコよかった。
伊藤 これ結構いいでしょ。
──今年はバックのMASA ITOの文字がJUDAS PRIESTのロゴになっていますね。
伊藤 去年のTシャツが完売したので、今年は少し多めに作ったんだよ。あとTHE MANのTシャツもいいでしょ。裏面に色んな曲名がプリントされているんだ。これはTHE MANのレパートリーが並べてあって、これから演奏する予定の曲とか。あとは僕の好きな曲が入ってるんだけどね。JERUSALEMの「Frustration」とかHEAVY METAL KIDSの「Hangin´ On」とか。
──面白いですね。これを眺めながら飲めますね。
伊藤 シンコーミュージックのブースではポストカードにサインを入れるし、タワーレコードのブースで僕のアナログ盤を買ったらメッタリマンシール全種もらえるよ。
──盛りだくさんですね。そしてDJ陣ではマーティ・フリードマンが久々に出演します。
伊藤 マーティってあまり観客を気にしない選曲だから凄いことになると思うよ。ヘヴィ・メタルっていうのは、とことんヘヴィじゃなきゃならないっていう姿勢だから。彼はDECAPITATEDやDEAFHEAVENみたいな音楽が好きなんだよ。
──マーティさんはSpotifyのプレイリストも凄いですよね。アイドル系もガンガン混ぜてるし、なんといっても「ラストアイドル」の審査員ですからね。
伊藤 予想つかないね。
──それにしても伊藤さんとマーティさんの付き合いって長いですよねえ。
伊藤 長いよ。だって彼がハワイでVIXENってバンドやってた頃からだもん。ヒゲ生やしててさ。きっかけは僕が海外の音楽誌を読んでいたらハワイにこんなバンドがいるっていう記事が載ってたんだよ。住所が載っていたから手紙を書いて、LOUDNESSのシングル盤を送ったんだ。“日本にもこんな凄いバンドいるんだぞ”って手紙を添えて。その後、彼がVIXENのプレスキットを送ってきたんだよ。
──メモラビリア展に飾ってあったアレですね。あの頃、マーティはいくつくらいだったんでしょう。
伊藤 たぶん20歳くらいだろうね。マーティが日本のジャーナリストでいちばん最初に出会ったのは僕だと思うよ。
──間違いないですね。その後、HAWAIIというバンドを結成してアルバムを2枚出しますけど、初期の『ロックトゥデー』でもオンエアされていたのを思い出します。
伊藤 そんな彼も日本に住んで15年くらい経つからね。
──さらにマーティの現マネージャーは、以前カルメン・マキ&5X(※03)のマネージャーだった方なんですよね。
伊藤 そうそう、高野君ね。こないだカルメン・マキ&OZのライヴ一緒に観に行ったよ。80年代初頭からの付き合いだもん。彼に無名時代のEARTHSHAKERのブッキングをよく頼んでいたんだよ。新宿ロフトとかさ。
──5Xは初期のサウンドハウスでもよくプレイされていたんですよね。
伊藤 よくかけてたよ。5Xってツバキハウスでライヴやったこともあったし。82年頃かな、日比谷野外音楽堂で5Xがヘッドライナーで出演したフェスがあったんだよ。その時にマキとジョージ(吾妻/G)に提案して、ある曲の演奏時に革ジャンを着たキッズがステージに20人くらい出てきてヘドバンするっていう、そういう演出をやったことがあったよ。ちなみにリーダーは有島博志だった。
──そんなことがあったんですか!
伊藤 その後、バンドはあっけなく解散しちゃったけどね。80年代初頭にLAへ行く度にOZレコードのブライアン・スラゲルに5Xとか日本のメタル・バンドのレコードを渡していた。彼は『The New Heavy Metal Revue』というファンジンを作っていたし、NWOBHMは詳しかったけど、日本のメタルは全然知らなかったんだ。当時知られていた日本のバンドってLOUDNESSとかBOWWOWくらいじゃない? あとEARTHSHAKERとか。5Xは知られていなかったからね。結構応援していたんだよ。
──マーティの話から一気に80年代初頭の5Xまで飛ぶという、それだけ付き合いが長いということですね。そして大人気のDJ MICKEY(二井原実)です。
伊藤 なんといっても彼はフロントマンだからね、トークも面白いし上手なんだよ。それに彼はTHE MANのライヴにも一曲参加する予定だよ。今回のTHE MANはGALNERYUSのYUHKIってキーボードが入るから、鍵盤の入ったブリティッシュ・ロックを演るんじゃないかな。
──楽しみですね。
伊藤 ただし、THE MANはひとつだけ欠点がある。それは遊びのバンドなのに真面目にやるんだよ(笑)。
──柴田さんの性格が出ちゃうんですね。
伊藤 遊びなのに遊びじゃないっていう(笑)。そのへんが面白いよね。
──そして去年話題になったMIHOさんです。
伊藤 MIHOは去年頑張ったよ。彼女は何が有名で何が無名なのかわかっていないから選曲が独特なんだよ。去年のプレイリストにGRIM REAPERが入っていたんだけど、滅多にかからないから、フロアがわーっと盛り上がっちゃってさ。MIHOが後で“こんなに受けるとは思わなかった”って(笑)。あとスラッシュ・メタル・バンドのWHIPLASHもかけたんだけど、ステージダイブする奴も出てきちゃったりして(※本当は禁止されています)。WHIPLASHって、たぶんサウンドハウス史上初めてかかったんじゃないかな。
──確かに選曲は新鮮でしたよね、他にもSODOMかけてましたし。もの凄くディープなメタル愛を感じましたよ。
伊藤 お客さんが“こんなにメタル好きなの!?”って驚いた人もいっぱいいたみたいよ。彼女はBIG4の中でいちばん好きなのはANTHRAXだって言ってるくらいで。しかもニール・タービンの頃だよ(笑)。
──1stですか!? なんだか凄いですねえ。
伊藤 『Fistful Of Metal』だもん(笑)。若いから価値観を自分で見つけていくんだよね。
──確かにYouTube時代になって、若い子は何でもすぐに聴けちゃう時代なんですよね。聴けないものがないという。
伊藤 我々は体系を立てて聴くからね。バーミンガムのBLACK SABBATHの次はJUDAS PRIEST、次はTRAPEZEも、みたいにね。
──今年は物販も凄くてブースの数が半端ないですね。
伊藤 THE MANとLOVEBITESのグッズは、特別にサウンドハウス用に作った。例えばLOVEBITESのポスターはディスクユニオンのブースで新作の『CLOCKWORK IMMORTALITY』を買った人がもらえるし、THE MANのグッズは『METAL MAN RISING』か『ANTHEM / SABBRABELLES HEADSTRONG FES.18』、どちらかの映像作品を購入するともらえるとか。面白いでしょ。
──面白いし、お得なイベントですよねえ。年一回ですから全国からファンが来ますし。毎週やっていた頃とは違って、詰め込みが半端ないです。
伊藤 だから普通のDJイベントとは全然違うよ。
──恒例のプレゼントも毎回凄いですよね。
伊藤 今回はAC/DCの“BALLBREAKER”ツアーのTシャツとか。
──まだそんなものがあったんですか!
伊藤 事務所から出てきたんだよ。一点物だけど、あげちゃう。あとBEHEMOSのサイン入ポートレートとかさ。なかなか無いだろ(笑)。
──レアですねえ。
伊藤 去年よりもチケットの売れ行きがいいみたいだけど、当日券もたぶん出るはずだから是非来て欲しいね。
──伊藤さんの選曲も気になります。昨年は後半の怒涛のキラーチューン連発、畳み掛ける選曲に痺れました。
伊藤 まだ何も決まってないんだけどね。今年も楽しくやりたいね!
<脚注>
(※01)「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ。」が全文。“日本資本主義の父”渋沢栄一の言葉とされているが出展は不明。
(※02)再び会えるかどうかわからない別れに際して、酒の代わりに互いに杯に水をついで飲むこと。
(※03)カルメン・マキ&5X。1981年に結成されたヘヴィメタルバンドで、1982年に1st『HUMAN TARGET』、ライブ盤『LIVE X』、1983年に2nd『CARMEN MAKI'S 5X』をリリースしている。
『HEAVY METAL SOUNDHOUSE 2018-Break All Limits-』
川崎 CLUB CITTA'
OPEN 16:00 / START 17:00
オールスタンディング 前売¥4,000(税込)
【出演】
伊藤政則
[GUEST DJ]
マーティ・フリードマン
二井原 実 (LOUDNESS)
miho (LOVEBITES)
[VERY SPECIAL GUEST]
THE MAN
◎主催:CLUB CITTA' ◎企画制作:マリオネット・ミュージック
◎Supported by:TOWER RECORDS
◎info. クラブチッタ 044-246-8888
BURRN! PRESENTS『 THE伊藤政則』
丸ごと1冊、伊藤政則!
本誌特別編集による永久保存版!!
<巻頭特集:日英メタル・ゴッド対談>
伊藤政則×ロブ・ハルフォード
※『DOWNLOAD JAPAN 2019』での来日時に行なわれた、初対面から現在に至る思い出を語り尽くす最新インタビューをノーカットで掲載! その他、盛りだくさんの内容でお届けする一冊!
『THE伊藤政則』
2019年9月14日発売
A4判 オールカラー 124頁
1,320円(税込)
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