世界最大にして最強のメタル・クルーズ『70000TONS OF METAL』体験記 初日

今年で9年目となる世界最大にして最強のメタル・クルーズ『70000TONS OF METAL』。2019年は1月31日から2月4日にかけて中南米のリゾート地ハイチへ向けて満員のメタルヘッズを乗せて出港した! その初日のレポート。

イントロダクション  出港の地フォートローダーディール



本誌のレポートからも流れてここを読んでくれている方もいらっしゃるかと思うが、まずは『70000TONS OF METAL』(以下:『70000TONS』)とは何かをざっくりと説明すると「大型クルーズ船を借り切って、そこでメタル・フェスが開催される」ということ。

恐らく多くの方がこのイメージで、実際に体験した人以外はそれ以上でもそれ以下でもないのではないかと思う。

私も実際体験するまではその一人、むしろ大型クルーズでやることに何の意味があるのだろうという思いが強かったので、マイナスのイメージが強かった。
しかも今回は取材がメイン、楽しめることはないなと…。

そんな私だったが実際体験したら、「『70000TONS』ってこんなにも楽しいものだったのか!」と180度その思いを覆させられた。
「リピート率が70%を軽く超えチケットが毎回即完売」というもの至極当然と思う。

前書きが長いとイライラしている人もいらっしゃると思いますので、この『70000TONS』で何があったのか初日から書いていきます。
出港の地、フォートローダーディールの朝のビーチ。

『70000TONS』の出港地となるのは、1月末でも日中はTシャツ1枚でも過ごせるくらいに温暖な気候で、「アメリカのベニス」とも呼ばれるフロリダ州にあるフォートローダーディール。
港近くに広がるビーチはリゾート観光地として栄えてもいる。

IRON MAIDENマニアなら、ドラマーのニコ・マクブレインがオーナーを務めるBBQレストラン「ROCK n ROLL RIBS」があることでも有名。
滞在場所にもよるがタクシーで30~40分もあればたどり着けるだろう。

「ROCK n ROLL RIBS」

因みに我々ONLINEチームは帰国前日にここで美味しいスペアリブをいただきました。
店内には貴重なIRON MAIDENのレア・アイテムも。
『70000TONS』とセットに楽しみにしているファンも多く、我々が来店した時はNIGHT DEMONやVOMITORYのメンバーやファンで大賑わい!

残念ながら取材はNGとのことで店内写真はなし、残念!

『70000TONS OF METAL』いざ出港!


フォートローダーディールの港に近づいていくと、乗船する「The Independence of the Seas」号が姿を現す。

この大型クルーズ船であるが実は7万トンではなく、実際には15万トンを超えている。
港に浮かんでいる姿を見れば、ちょっとしたショッピングモールがそのまま海に浮かんでいる様。
全長は約350メートル、旅客区画だけでも15層になっており、それだけでもいかにこのクルーズ船が巨大かということが分かると思う。
そんな大型クルーズ船を目の前にONLINEチームみんながテンションを上げていく中、実はテンションが低かった私。

と言うのも、予めこの『70000TONS』のタイムテーブルを見たのだが、フルで一日見れば朝10時から翌朝の6時近くまで4会場のスケジュールがビッチリ埋め尽くされていたから。

過去に参加した色々なフェスティバルの記憶の嫌な記憶も蘇る。

歩き疲れる会場から会場への移動
トイレや食事の大行列
困難な休憩場所の確保
etc
振り返れば笑い話や思い出にも昇華されるがその場ではどれもが悪夢。

その「サバイバー」ぶりをウリにしているフェス等もあるが、私も若くはないので仕事としては過酷な状況は正直避けたい。

そんな感じだったので、出発初日にテンションが上がる皆とは正反対に実はテンションがグングン落ちていたことを今告白します。
それがどう変わっていくのか、それも頭に入れてこれから読んでいくと面白いかもしれない。

とにかく、私はこの時までは乗船する大型クルーズ船が巨大な蟹工船に見えていたのだった…。

「The Independence of the Seas」号の全景。 船のすぐ傍を歩く人と比べるとその巨大さが分かる。


乗船手続き(アメリカから他国へのクルーズなので出国手続きも)を済ませると、まずは記念撮影ゾーン(有料)が登場。
テンション高めで、思い思いに叫びポーズを取って撮影に臨んでいるファンが多い。

乗船手続きの様子。小さいが写真右の様な感じで記念撮影。


少し話が前後するが、乗船手続きが終わるとまずカードが渡される。
部屋のカギとして使われるこのカードが財布代わりにもなっていて、アルコール類やマーチャンダイズなどの支払いが必要な際に使われる。

これを紛失してしまうと後が難儀してしまうし、もし使われたりしたら面倒なことにもなりそうなので注意が必要。
といっても乗船して直ぐにこのカードを拾ったし、乗船中も何度か拾ったのだが。

乗船時に渡されるカード。

こんな感じで乗船時に70000TONSガール達がプログラムを渡してくれます。


乗船時に『70000TONS』のイメージ・キャラクターとも言える70000TONSガールズが笑顔で配っているのがこのクルーズのプログラム。

冊子となったいて、「The Independence of the Seas」の船内図、簡単な出演アーティスト紹介、船内/寄港地で行われるイベント紹介、タイムテーブルなど必要な情報が全て掲載されている。
一人一冊なのでお土産にしたい人は紛失しないように注意!

タイムテーブルを見ると鬼の様なスケジュールなのがご理解いただけるかと。

プログラムの表紙

船内図。プログラム上部が船首部となる。

寄港地で行われるイベント紹介とアーティスト紹介のページ。

タイムテーブルのページ。朝から晩までビッチリとアーティストのライブが詰まっている。

『70000TONS OF METAL』の舞台となる「The Independence of the Seas」号


「The Independence of the Seas」号、先にも述べたが全長は約350メートル、旅客区画だけでも15層になっている巨大なクルーズ船。
ビルで言うところの「~階」は「デッキ~」と表現される。
例えばビルの「8階」の階層は「デッキ8」といった感じだ。

『70000TONS OF METAL』にこれから何度も登場する主要スペースについて簡単な説明を。

中央通路の脇にショップが並び、船首部分にライブ・スペース(『STAR LOUNGE』)、船尾部分にマーチャンダイズ販売エリアとなっていて、メインストリート的なのが「デッキ5」。

大小のバーやラウンジ・スペースが設けられが、ビリヤードやゲーム、そしてカジノなどが併設しているのが「デッキ4」。

ファンが連日アーティストのパフォーマンスに熱狂したのは以下の4会場。

屋外のデッキ11にあるプール・スペースに設営され、この『70000TONS OF METAL』メインのライブ会場となっていたのが『POOL DECH STAGE』。

デッキ2から4の船首部分をぶち抜いて船内最大のライブ会場となっていたのが『ROYAL THEATER』。

デッキ2と3の中央部分にあり『ROYAL THEATER』より一回りほど小さく、中規模のホール会場といった感じなのは『STUDIO B』。

一番小さい会場で、ライブハウスに近いイメージだったのがデッキ5の船首部分にあるのが『STAR LOUNGE』。

こんな感じでざっと説明しましたが、主要スペースが登場の際には写真等もアップして更に詳しく説明しますので、まずはこんな場所があるんだというイメージを持ってくれたら幸い。

参考までに「The Independence of the Seas」号の断面図も。

「The Independence of the Seas」号の断面図


部屋に荷物を置いてから同室のK氏と船内散策。

メイン・ストリート的な役割を果たしているのはデッキ5、ビルで言うところの5階に相当する。
中央通路の両脇にはちょっとした軽食スペース、バー、ショップが並び、船尾奥にある大きなダイニング・ルームはマーチャンダイズ販売スペースとなっている。

ONLINEチームでミーティングの為、このデッキにあるピザ屋で待ち合わせ。
一部レストランを除いて食事代は全てチケット代金に含まれているので全て「無料」で、このピザ屋の食事もアルコール類を除けば無料。
無料とは分かっていても最初にオーダーする時にはやっぱりお金とられるんじゃねぇかと、ドキドキしていた小心者の日本人である私。

待ち合わせしている間に近くの席のファンは「どこから来たのか?」「どんななバンドが好きなのか?」と話しかけられ、カメラを向ければ大騒ぎで陽気にポーズをキメるファンも。
皆、メタルTシャツやパッチGジャンを着込み、それを見ているだけでも楽しい。

ここでの再会を喜び祝杯と歓声を上げている集団も多い。
乗ってものの数分、もうお祭りは開始されていたのであった。

船内の様子。既に多くのファンがワイワイと楽しそうにしている

バーで無事の旅路を祈って乾杯の様子。

上から見たデッキ5中央通路の様子。

賑わいを見せる乗船直後のデッキ5中央通路。

      via www.youtube.com



バーやカラオケ・スペースやミーティング・スペースもあるデッキ4も賑わいをみせていて、このデッキにはカジノも常設されている。

お馴染みのスロットマシーン、ルーレットやブラックジャック等が設置されているが、驚いたのは日本ではゲームセンターでお馴染みのコイン落としやUFOキャッチャーも設置されていたこと。
景品は勿論現金、UFOキャッチャーに入っているのはぬいぐるみでなく札束の山。

その光景を見てゴクリと生つばを飲み込み、話題のネタにもなるかとチャレンジしようかとも一瞬迷ったけど。

残念ながらカジノ内の撮影は禁止なので写真はナシ。
それを、写真撮った後に知ったのだけどね。
ということでインパクト絶大な現ナマキャッチャーの写真は残念ながらここにアップ出来ません。
 

乗船直後にかなりの人が集まっていたデッキ4の中央部にあるバーの様子。

写真の奥にチラっと見えているがデッキ4にあるカジノの一部。これならギリギリOKかな?


軽く船内散策も終えると、出港前に必ずやらなくてはいけない点呼の時間に。

乗船者全員が全て外のデッキに集められるのだが、恐らくそこで乗船人数の確認と乗船中の注意事項が説明される…はず。
注意事項については勿論英語、英語が堪能ではない私にとっては何を言っているのか分からない。

英語が分かろうが分からなかろうが、まぁ関係ないのだろうと。
何故なら乗船して直ぐに宴会を始めたメタル集団が乗り込んでいるのだから。
そんな集団が一堂に会せば、大体想像はついているのではないかと。
そこかしこで歓声が上がっていたり、バカ騒ぎしている集団のおかげで注意事項の放送なんて全く耳に入ってこない。

この時点まででこのクルーズが「ヤバイ」ものだと期待値がグングンと上がり、乗船するまでの憂鬱な気持ちはほぼ吹き飛ぶ。
タイムテーブルを見るとまだ頭が痛くなるけど、この雰囲気を乗船中はずっと味わえるなら...、まぁいいかなと。

屋外のフェスではないのでずぶ濡れになったり泥まみれで足周りがグチャグチャになることもないしね!

点呼が終わってカメラ構えたら勝手にこんなポーズとってくれます。

      via www.youtube.com

 

2019年1月31日『70000TONS OF METAL』遂に初日が始まる!


点呼も終了、部屋に戻ってこれからの予定など極簡単に打ち合わせ。
揺れも全く感じないので船酔いの心配も全くなしで、部屋の中にいれば普通にホテルに泊まっている気分。
幸運にも窓際だったので見晴らしも最高。

初日はメインとなる屋外のプール・デッキ・ステージは設営中ということで船内の3ステージを使ってのライブで、軽めのスケジュール。

軽めとはいえ、17時から朝の6時までタイムテーブルは埋まっている。
私も初めての『70000TONS』で、まだまだ分からないことだらけなので初日はメインのバンドをいくつか見て半分様子見な感じでいこうかなと。

まずは船内で一番大きな会場である『ROYAL THEATER』へ。

私たちが泊まった部屋の様子。散らかっていてスイマセン。

部屋から見た航海前の風景。

部屋から見た航海中の風景。

初日1月31日のタイムテーブル

 

船内最大のステージ『ROYAL THATER』


『ROYAL THATER』は船首部分のデッキ2と3をぶち抜いての大型ホールで、普段のクルーズではミュージカル等が行われている会場のようだ。
初日はここ『ROYAL THEATER』でメイン・アクト級のバンドの出演が続くこともあって初日はここを中心に動いてライブを観ていこうと。

『ROYAL THEATER』のある場所。

『ROYAL THEATER』の様子。

 

ニュー・アルバム「HUNTER’S MOON」リリース間近!DELAIN


到着した時にはDELAINのショウが後半戦。
ステージには近くリリース予定の「HUNTER’S MOON」のアートワークのバックドロップが掲げられていた。

ステージでは“Don’t Let Go”が終わり”We Are The Others”がプレイされていたところ。
少し陰がありながらもキャッチ―なこの曲にファンは楽しそうにサビ歌い、リズムに乗っていました。

見始めたばかりだが次の”Pristine”でラスト。
シャルロット・ヴェッセルズ<vo>の甘く切ない声が会場に染み入りウットリ。
この曲ではゲスト・ヴォーカルとしてMAYANのジョージ<vo>が登場、シャルロットの澄んだ声とジョージのグロウルとの対比も面白い。

シンフォニックなエンディングSEと拍手の中、「『70000TONS』を楽しんで!」とシャルロットは笑顔でファンに言っていた。

DELAIN



暫く船内を詮索して分かったが、屋外の『POOL DECK STAGE』(この日はステージ設営準備中)も含めて、どの会場へ行くのもアクセスは楽。
デッキ3中央に入口のある『SUTUDIO B』へのアクセスがほんの少しだけ迷うかなといった感じ。
どの会場へのアクセスも歩いて5分もかからない位で、恐らく部屋やレストランへ行くのも同じ位だろう。

今までの体験でフェス会場内の移動は時間もかかる場合もあるし、体力も奪うのでこれはかなり有難い。
特にいくつもバンドを観たいならかなり重要だ。
今回かなり楽になるはずだと身も心も楽になったなんて思っているとDARK FUNERALの開演時間。
 

悪魔は再び... DARK FUNERAL

DARK FUNERALを待つ『ROYAL THEATER』は独特の緊張感が会場を覆っている。

バックドロップには巨大なバンド・ロゴ、そしてアンプ前には悪魔が描かれた幕が配置されていてそれだけでもかなりの迫力。
軍隊の行進曲を思わせる勇壮な曲が流れ、一旦ステージの照明が落とされスモークが静かに広がっていくと一人、一人とメンバーがステージに登場。
最後にヘルヤルマドル<vo>がマイク・スタンドに向けゆっくりと歩を進める。
物悲しいイントロと共に”Unchain My Soul”が始まる。
闇の様式に従ったオープニングだけで鳥肌が立つカッコよさ。

楽器隊は頭を振りながらプレイ、ヘルヤルマドルにしてもファンを煽ったりといった派手なアクションはほぼ皆無。
ステージ上ではゆっくりと歩き、時折魂を吸われたように動きを止めるのだが、そのどれもがこの世の者とは思えない不気味な雰囲気を漂わせている。

ラストは1stアルバムのタイトル曲” The Secrets of the Black Arts”と目下の最新作のタイトル曲である” Where Shadows Forever Reign ”。
共に冷酷な狂暴さを秘めたファスト・ナンバーであるが、こういった曲の並びで締めくくるところもマニア心を擽る。

最後にヘルヤルマドルは誇らしげにDARK FUNERALのフラッグを誇らしげに掲げ、ステージに突き刺しステージの闇の中に消えていった。

DARK FUNERALセットリスト

DARK FUNERAL

 

貫禄のパフォーマンス SOULFLY


開演時間を少し過ぎた頃にSOULFLYのショウが始まる。

ゆっくりとマックス・カヴァレラ<g,vo>がステージに登場すると歓声が一際大きくなる。
来日がご無沙汰のマックスはかなりご立派な体格になっていて、実際目にするとちょっとビックリ。
ドラム・セットにはマックスの息子のザイオン・カヴァレラが座る。
「CHAOS A.D.」の時には赤ん坊でその作品中に心音が使われた彼が、親子で同じバンドでプレイしているのを見ると感慨深い。
そんなザイオンは長い手足をフルに使って暴れ太鼓の様なドラミングだった。

ライブはファストなパートからウネリと共に疾走していく” The Summoning”からスタート。
マックスが「ジャンプ!ジャンプ!」と叫べば、フロアは縦に大きく揺れる感じ。
実際船首にあるこの会場は時折少し揺れてはいるのだが。

“Arise Again”ではブラジル系と思われるファンの盛り上がりが凄まじく、ブラジル国旗片手にクラウドサーフするファンも。
そんなファンに恐らくバンドの関係者と思われるカメラマンがハイタッチ。

“No”が終わるとマックスはフロアのファンを座らせる。
リフを刻み「ジャンプ!」と言い放ちファンを大ジャンプさせて始まったのは“Eye For An Eye”。

マイクとマークはネックを大きく振り上げ、体を激しく折り曲げながらヘッドバンギング、マックスは会場にマイクを向け、声援が足りないと柵前に降りてきて「オ~レ~オレオレオレ~、SOULFLY~SOULFLY~♪」と叫ぶ。

マイクが力強くガッツポーズをキメ、マックスはもっと声を聞かせろと耳に手をあて大歓声の中に終了となった。

SOULFLYセットリスト

SOULFLY

 

MIDNIGHT MOVER!真夜中を過ぎても熱狂のACCEPT


この日の実質的なヘッドライナーだったのはACCEPT。
長年ACCEPTのメンバーとしてウルフ・ホフマン<g>と共に歴史を築いてきたピーター・バルテス<b>が前年11月に脱退。
その脱退から初のステージとなるのが『70000TONS』でのこの初日のステージ。
彼らのファン以外にも興味津々といった表情でステージに注目しているプレス関係者や他のバンドのメンバーも多かった。
「新ベーシストお披露目になるのでは?」なんて噂もチラっと耳にしていたが、それはなし。
ベーシストはサポート・メンバーのダニー・シルベストリでした。

「ピーターが脱退してどうなるんだろう?」という風に観ていたファンが多かったが、ピーターの脱退のショックを全く感じさせないもので、逆に拍子抜けする位。
注目の1曲目は“Die by the Sword”、「俺たちは何も変わらないし、止まらないぜ!」とフォーメーションをキメ、マーク・トーニロ<vo>は力強く拳を握りながら少し塩辛く男臭いシャウト。

コーラスが印象的な“Stalingrad”に続いては“Restless and Wild”。
このACCEPTクラシックでファンは拳を振り上げ大合唱。
ステージでは力強く歌うマークの後ろで弦楽器隊がネックを立ててのフォーメーション。
勿論のその中にはダニーも加わっている。
サポートながらもダニーはもう何年もACCEPTでプレイしているといった錯覚を起こさせる位溶け込んでいて、ウルフとダニーのコンビネーションも随所で観られた。

“No Regrets”や“Shadow Soldiers”といったMark時代の曲も、“Princess of the Dawn”や“Midnight Mover”といった前任ヴォーカリストUdo Dirkschneider時代のクラシックまでファンはACCEPTに忠誠を誓う様に拳やメロイック・サインを高く上げ歌っている。
そんなフロアを見ながらウルフは嬉しそうな笑顔で、ACCEPTのメロディを刻んでいた。

そういえば“Midnight Mover”がプレイされたのは丁度真夜中の0時辺り。
シチュエーションにもピッタリで、ファンの歌声も一際高く聴こえたのは偶然ではなかろう。

マークがグッとマイクを握りロング・シャウトを決める“Fast as a Shark”の盛り上がりも凄かったが、この日のハイライトは“Metal Heart”がプレイされた時。
あの“エリーゼのために”のメロディを導入したコーラス部では会場のファンだけでなく、カメラマンを含めた取材陣、そしてセキュリティーも(もちろん皆やるべきことはやりながらだが)、ファンに戻って一緒にコーラス参加。
クリストファー・ウィリアムズ<ds>は立ち上がりドラム・スティックを指揮棒の如く扱うと、バンドの演奏音よりも会場のから上がる歓声の方が上回っていた。
正に会場が一体となったコーラスの光景は感動的だった。

ラストの“Balls to the Wall”でメンバーは最初からフォーメーションをキメて、ラストで弦楽器隊はネックを機銃掃射の様にフロアに嘗め回す姿にハートを打ち抜かれる。
マークが「God Bless You!Good Night!!」と会場のファンに向けて放つと、タイミングよくエンディングのSEが流れ出す。
そのSEに合わせて一緒に声を張り上げ、ACCEPTコールをするファンも。
そして皆大々満足そうな笑顔で会場を後に、恐らく私の顔もかなりの笑顔だっただろう。

ACCEPTセットリスト

ACCEPT

 

スケート・リンクを改造したホール会場 『STUDIO B』


ここで気になっていたTIAMATが『STUDIO B』でライブをやっていたので少し観ようかと、会場の視察も兼ねて移動。
『STUDIO B』であるが普段のクルーズではスケート・リンクとして使われていて、氷のない今はステージとフロアの差が結構あり中規模のホール会場といったところ。

『STUDIO B』のある場所。

『STUDIO B』の様子
 

静かに盛り上がる TIAMAT


TIAMATのショウは既に中盤~終盤といったところ。
ロジャー・オイェルソン<key>は長髪を振り乱し、鍵盤と体を大きく前後に揺らしているが、他のメンバーのアクションは演奏に集中といった感じだ。
ヨハン・エドルンド<vo,g>は中折れ帽子をかぶり、うっすらとゴシック風メイクを施している。
静かな不気味さが漂ってい少して怖い。

ファンは彼らが作り出す音空間の虜となった感じで、静かながらも体を揺らしながら集中して聴いているといった様子。
ジトっとした熱のある会場の雰囲気は、言葉にするには難しい独特な雰囲気。

初期の名曲“The Sleeping Beauty”では曲名が告げられると歓迎とばかりに大きな歓声が上がり、エピック・ドゥーム的側面も持つこの曲ではそれまでと違い大きく体を揺らす人が多かった。
この曲を聴くことが出来たのとパフォーマンスを観ることが出来たのは最高の一言。

3日目にも彼らは出演するがその時は「WILDHONEY」から中心のセット、楽しみにしているといった大きな拍手が沸き起こていました。
淡々と静かな内面は熱く盛り上がっていたTIAMATのライブだった。

TIAMATのセットリスト...だと思う。スウェーデン語で書かれているので分からん。

TIAMAT
 

新体制となり注目のステージ SODOM


『ROYAL THEATER』へ戻るとSODOMの攻撃が始まり、爆音が放たれ始めたばかり。

トム・エンジェルリッパー<b,vo>以外のメンバーが総入れ替えになり、初期SODOMのサウンドを支えたフランク・ブラックファイア<g>が復帰。
そして新たなSODOMの血となったヨルク・セガッツ<g>とステファン・ハスキー<ds>が加入しツイン・ギターの4人組となった新生SODOMを楽しみにしていたファンもかなり多そう。

中央にどっしりと構えるトムとは対照的に、フランクとヨルクはアクティブにステージを駆け、モニターに足をかけ、ファンを煽る。
フランクは勢い重視のラフなプレイで、ヨルクはカチっとしいたプレイで全体をまとめる風でその対比も面白い。
数多くのアンダーグラウンドの通好みのバンドでプレイしてきたステファンのスタスタとしながらもタイトなプレイは、今のSODOMに相性ピッタリに感じた。

会場に到着した時は“Sodomy and Lust”や“Blasphemer”といった初期の曲が終わっていたのは残念けだったが、“Tired and Red”や“One Step Over The Line”といった日本ではそれ程プレイされなかった曲を新生SODOMのメンバーで聴くことが出来たのは嬉しかった。

“Agent Orenge”や“Outbreak Of Evil”といったSODOM鉄板ナンバーでは2時近くの深夜にも関わらずファンはモッシュピットで大暴れ。
ラストは“Bombenhagel”で新生SODOMの重爆ライブは終了した。

SODOMセットリスト

SODOM
 

コロンビアの荒くれ者 MASACRE


4時も過ぎた『STUDIO B』に足を運んでみるとコロンビアの重鎮デス・メタル・バンドのMASACREが演奏中。
ギリギリで出演アナウンスされていて、私が彼らの出演を知ったのは出発の成田空港だったと思う。

朝の4時も過ぎていたこともあってファンも少なかったが、その分熱心なファンが残った感じ。
コロンビアの国旗を掲げ、スペイン語でメンバーと声援ともヤジとも取れそうな声を上げていた本国サポーターと思われる一団も客席に陣取っていた。

パッチを多数縫い付けたGジャンを着込んだ巨漢アレックス・オケンド<vo>はかなりの迫力。
ちょっとコロンビア・マフィア風(あくまでイメージですが)

何枚か初期の彼らのアルバムを持っていてそこで聴くことのできるサウンドはノイジーでプリミティブな粗暴なデス・メタルだったが、実際に目の前で演奏を聴くとかなりカチっとしたブルータルなデス・メタル。
少しだけ観て帰ろうかとも思っていたが、結局彼らのパフォーマンスの高さに最後まで会場に足を止める。

来日公演望み薄なこういったバンドを観ることが出来るのも『70000tons』の魅力の一つだと思う。

MASACREセットリスト

MASACRE
 

明け方に響くメロディ TEMPERANCE


朝4時半も過ぎたので部屋に戻りましょうかね。
丁度帰りに『ROYAL THEATER』の近くを通ったのでチラリと観るとTEMPERANCEが演奏中。
もう少ししたら陽が昇るというのにこちらも熱心なファンで盛り上がっていた。

モダン・メロディック・メタル・バンドだとの触れ込みだったが、モダンさよりもメロディックさが上回っている感じでなかなか美しいメロディを聴かせてくれる。
昨年から加入したアレッシア・スコレッティとミケーレ・グァイトーリの男女ツイン・ヴォーカルの絡みが素晴らしく、力強く伸びやかにその美しいメロディ・ラインを歌い上げていた。

初日から飛ばして『70000TONS後』の後半日程でバテてもと思ったので、半分程彼らのショウを楽しんだところで離脱。
そんなこと言ってもこの時点で朝の5時近くになっていたけどね。

TEMPERANCE セットリスト。ダメージは許してください!

TEMPERANCE
 

パーティーはまだ始まったばかり!『70000TONS OF METAL』の初日が終わって


デッキ4もデッキ5も朝の5時にもなろうかと言うのに結構な人が残っている。

カラオケでヘヴィ・メタルの名曲からマドンナやレディ・ガガといった楽曲を熱唱して盛り上がっている人たちも多い。
ビリヤードを楽しんでいる人も多かった。

彼らの夜はどこに行ってしまったのでしょうか?

カラオケの風景、彼らに朝も夜も関係ない。ビバ!エンドレス・パーティ。(笑)


カラオケを見ながら一杯ひっかけて部屋に戻るまで5分もかからず。
それから気持ちの良いシャワーをサッと浴びてフカフカのベッドの潜り込むまで先程のTEMPERANCEのライブから1時間もかからなかっただろう。

バンドのパフォーマンスをたっぷり楽しんで少しの移動(移動と言うのもはばかれる位直ぐに部屋に着くし)で部屋で休めるのは本当にありがたい。
この時間に寝ても朝1番のバンド開始まで睡眠時間も確保出来る。

「ここが蟹工船なんて誰が言ってたの?」と印象もがらりと変わっていた。
「もうメタル天国ですよ、ここは!」と思いながら夢の中に落ちていった。

ということで初日に撮った写真の中からファンのベスト・ショットで〆。

1月31日 ファンのベスト・ショット! DARK FUNERALのライブにて。

世界最大にして最強のメタル・クルーズ『70000TONS OF METAL』2日目に続く
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