【BURRN! 1月号ちょい読み】
【BURRN! 1月号ちょい読み】MAMMOTH──ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンが最新作「THE END」を語る
EXCLUSIVE INTERVIEW WITH
MAMMOTH
Wolfgang Van Halen
BY YUMIKO HABA/BURRN!
1991年3月16日、エドワード・ヴァン・ヘイレンの息子として生を享け、2007年にはVAN HALENにベーシストとして正式加入して2013年6月の日本ツアーにも同道したウルフギャング・ヴァン・ヘイレン。2020年10月6日に父エドワードが他界した後、2021年6月にソングライティングのみならずヴォーカルからドラムまで総てのパートで自身の能力を全開放したバンドMAMMOTH WVHのセルフ・タイトル作でデビューを果たすと、その1st収録曲 “Distance” はグラミー賞にノミネートされた。2023年8月に2ndアルバム「MAMMOTH II」をリリースし、この10月にはバンド名からWVHが消えてMAMMOTHという表記に改められての3rdアルバム「THE END」を発表し…と、2020年代にデビューしたバンドとしては順調な活動ぶりだ。
スタジオ・アルバムでは全パートを自分でこなすというやり方を貫いているが、バンドを率いてのツアーも精力的に行なっており、そのスケジュールの都合で、当初は出演予定だった7月5日の英国バーミンガムでのオジー・オズボーン/BLACK SABBATH最終公演『BACK TO THE BEGINNING』への参加を取り止めざるを得なかったのは、ファンにとっても本人にとっても残念なことだった。7月から8月末まではオープニング・アクトとしてCREEDの全米ツアーに帯同したMAMMOTHは、アルバム・リリース直後の10月末から12月7日までヘッドライニング・ツアーを行なっている。そのツアーに出る直前、ウルフギャングにZoomで話を聞いた。
——3rdアルバム「THE END」がリリースされたばかりですが、今の心境はいかがですか?
ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン(以下W):いい気分だよ。少なくともSNS上では、皆からの反応がとてもポジティヴだ。アルバムのことは本当に誇りに思っているけど、リリースしたからには、ツアーに集中しないと。今はこれから先のことばかりを考えているよ。
——アルバムはエナジーとポジティヴな感覚に満ちていて、とても楽しめました。しっかりハードにロックしているけれど、ヘヴィ過ぎず、ダーク過ぎず、最近では珍しいタイプの作品ではないかと思いましたが、このアルバムを作るにあたってのプランや目標はありましたか?
W:結局のところ、僕はただ、もっと音楽を作りたいと思っていただけだった。曲作りはセラピーみたいなもので、曲を書くことで感情を吐き出すことが出来る。1年半か2年ごとにこうしてアルバムをリリース出来るのはいいことだ。これまでと今回で一番大きく違ったのは、プリプロダクションのやり方だったんじゃないかな。以前はラップトップでデモを作っていたけど、今回はそうじゃなくて、デモ作りをスタジオで行なったんだ。エンジニアのジェフに特定のテンポでメトロノームを鳴らしてもらって、僕はそれに合わせてギターを弾いた。それから部屋を走り出てベースを弾き、さらにドラムを叩き、また戻ってきて今度はヴォーカルを録った。その場で素早くデモを作ることが出来たんだ。1人の人間がプレイしているという状態にしては、可能な限りライヴ感を出せたんじゃないかな。今までとは違うその環境が、デモ制作に新しい刺激をもたらしたんだ。
——最初のビデオ “The End” は5月に公開されました。マイケル・ジャクソンの “Thriller” に対する素敵なオマージュにもなっていますね。あのビデオが世に出たのは1983年で、あなたはまだ生まれてもいませんでしたが、いつ、どのようにあのビデオを知ったのですか?
W:おかしな話だよね。でも、大人になる過程で誰しも「THRILLER」を避けて通るわけにはいかない。あれは伝説的なアルバムだ。それに、僕にとっては父親があのアルバムでプレイしていた(笑)という事実も後押しになったと思う。そういう繋がりもあったんだ。あと、僕のあのビデオはロバート・ロドリゲス監督の映画『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(1996年)へのオマージュにもなっている。彼は僕のビデオの監督も務めてくれたんだよ。とどのつまり、そういったお楽しみを詰め込んだものになったと思う。
——マイルス・ケネディも含めたバーの客が最後には皆、ゾンビやモンスターに変身してしまいますが、ただ1人、後方からただ観ていたスラッシュは変身しませんでしたね。彼はゾンビのメイクをされるのを嫌がったのですか?
W:いや、そうじゃなくて、スラッシュだけは “無敵の傍観者” みたいな存在でいる方が、面白いジョークになると思ったんだ。彼ぐらいクールでいれば、ゾンビ大発生というあの大惨事も無傷で乗り切れる、みたいな感じでさ。
——マイルスはゾンビ役を楽しんだのですね?
W:うん、実はそれがきっかけで出演する気になってくれたというのもある。彼に「あの特殊メイク界の巨匠、グレッグ・ニコテロがメイクしてくれることになってるんだけど」と言ったんだ。「僕のビデオに出てくれたら『ウォーキング・デッド』のゾンビ・メイクをフルで体験出来るよ」と言ったら即答で「やる!」って。(笑) それで現場に来てくれて、本当に頑張ってくれた。あのメイクには3時間も掛かるから、めちゃくちゃ早起きして来てくれたんだと思うけど、最高の出来映えだった。今では、彼から電話が掛かってきた時にはあのメイクをした写真が着信画面になるように設定してあるんだ。凄く面白かったから。
——あなたのお母様(女優のヴァレリー・バーティネリ)と奥様も出演しているんですよね?
W:おかしいのは、彼女達はただ見学しに来てただけだってこと。2人を出演させたのは監督のロバートなんだよ。彼が「ちょっとこっちに来て、こうしてみて。この方が絶対クールな出来になるから」とか言って、2人を動かしたんだ。最後には、僕の妻は男の頭でボトルを叩き割り、母はゾンビにパンチを喰らわしていた。(笑) とにかく楽しかった。ビデオを作るというプロセスに対するロバートの熱意が皆に伝染したんだと思う。1日12時間、それを2日間やって本当に大変な作業だったけど、全員がとても楽しんでいたし、あっという間に終わった感じだったな。
——その後に公開された “The Spell” と “I Really Wanna” の2本のビデオでは、4人のウルフギャングがそれぞれのパートをプレイするバンドになっていましたが、“The Spell” は特に古き良きロックン・ロールという感じで、今のこの時代にああいう曲が聴けるのはある意味貴重だと思いました。どういうきっかけで書かれた曲なのですか?
W:多分、あのコードから始まったんじゃないかな。どう呼ばれているコードかは判らないけど、父がVAN HALENの昔の曲でよく使っていたコードだと思う。それが凄くヴィンテージっぽい感覚を起こさせるんだろう。グルーヴの面ではレニー・クラヴィッツっぽい感じがあるなと思って、そこが気に入った。それと70年代っぽいヴィンテージ感覚を混ぜ合わせるのが楽しかったんだ。曲を書いている時は、特に意識して〇〇っぽくしようなんて考えてはいない。気づいてみたら何かを思わせるサウンドになっていて、だったらそれを追い掛けてみようかな、となるんだ。あれっ、何だか70年代っぽいヴィンテージ風のヴァイブがあるんじゃないかな?と思ったら、その“ウサギの穴”に飛び込んでいく。それが楽しかった。
このアルバムでは他にも色々とそんなことをやっていて、例えば “Happy” もそうやって出来上がった曲だった。最終的にあの曲は90年代のグランジっぽい雰囲気になっていったんだけど、ある時点でそういう感覚があることに気づいて、そこからは意図的にそっちに向かっていった。そういう要素がふと浮かび上がってきた時に、それを追い掛けていくのが楽しかったんだよね。
—— “I Really Wanna” のビデオではあなたの笑顔がとても印象的ですが、あの曲はどういう風に書いていったのですか?
W:あの曲を書いていた時は、それがシングルになるとは思わなかった。サビで使っている特定の言葉がシングル向きではないと思ったから。曲を書いている途中でプロデューサーのエルヴィス(マイケル “エルヴィス” バスケット)にも訊いたんだよ、サビでこんなことを歌ったら変かな?って。でも彼は、逆にそこがクールだと思うよ、と言ってくれた。書いている途中というか、サビのその部分はもう既に出来ていたんだけど、それでいいのか確信が持てなくて。でもスタジオでレコーディングし始めたら凄く楽しかったし、シングルにはならないけど、それでもいいや、と思っていた。そうしたら皆が気に入ってくれて、シングルにもなるなんて、愉快な気分になったよ。今回のアルバムでは、クリエイティヴなカオスを楽しむチャンスが前よりも多くあったんだ。限界をちょっと押し広げるという感じで楽しかった。あの曲ではまさにそれが実現出来たと思う。
——ギター・ソロでは右手の中指でタッピングをしていましたが、それは、あの曲だから敢えて中指を使ったのですか?
W:あの曲だから、だと思う。あの曲のコンセプトは全体的に……今のこの時代って、特にSNSではどこからでも批判が飛んでくるよね。それが正当な批判かどうかなんてお構いなしにさ。この曲は「君が何をやろうが、腹を立てる奴はきっとどこかにいる」ということを歌っている。それが現実だと悟るんだよ。だったら、君はとにかく楽しんで、その中に幸せを見つけようとする方がいい。そういう思いから生まれた曲だ。
——最新のビデオは “Same Old Song” で、“The End” のビデオの続きのようになっていますね。こういう流れで4本のビデオを作ろうというのは最初から計画していたのですか?
W:いや、実は “The End” の次に出した “The Spell” も “I Really Wanna” も、元々はリリック・ビデオの代わりに作ったものなんだ。これまでのアルバムではYouTubeで画面に歌詞が流れるリリック・ビデオを沢山出したけど、そんなのはつまらないと思ったから、今回は違うことをしたかった。スタジオで僕がプレイしているのをひたすら撮ったらいいんじゃないか?と思ったんだ。あの2本のビデオは同じ日に撮ってしまった。凄く楽しくて、あっという間だったよ。歌詞が映るだけの動画より、観て楽しめるものになったと思う。“The End” でバンドのメンバーが全員ゾンビに殺された後に、僕しか登場しないあの2本が続いたのは面白い偶然だった。で、“Same Old Song” のビデオを作ることになった時、メンバー達を実際に殺すわけにはいかないなと思って、「あれは全部夢だった」ということにしたんだ。
続きはBURRN! 2025年1月号で!
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「THE END」
2025年
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ウルフギャング・ヴァン・ヘイレンが全パートをこなして3作目を発表!
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「VOW WOW Ⅲ」40周年を祝福する1月のライヴを前に現在の胸中を激白
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2枚組ベスト「Brand New Best 2025」制作の真意を核の2人に直撃!
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