FROZEN CROWN/WAR HEARTS OVER JAPAN──新編成で臨んだ来日公演リポート&インタビュー

REPORT & PIX:YUMIKO HABA/BURRN!

イタリアのメロディック・パワー・メタル・バンド、2年3ヵ月ぶりに来日!

トリプル・ギターの6人編成となって遂に理想の状態に辿り着いたバンドが

テーマもセットリストも異なる2日間で1つの物語を紡ぐ連続公演を敢行!!

9月下旬、イタリアからFROZEN CROWNがやって来た。昨年10月に5thアルバム「WAR HEARTS」をリリースし、今年4~5月には初のヘッドライン・ツアーで欧州を廻り、順調にステップアップしているようだが、フェデリコ・モンデッリ〈g,vo〉の本誌連載を毎号読んでいれば判るとおり、バンドは様々な変化も経てきている。そもそもフェデリコが「トリプル・ギターにする」と決心してアレッシア・ランゾーネ〈g〉を迎え入れたのは前回の来日(2023年6月)直後のことで、6人編成のバンドを日本のファンが観るのはこれが初めて。しかも2020年に加入したファビオラ “シーナ” ベッローモ〈g〉が今年5月に脱退、代わって欧州ツアー最後のミラノ公演に登場したアレクサンドラ・ライオネス〈g〉の正式加入が発表されている。アレクサンドラはセルビア(イタリアからはアドリア海を挟んで東側のバルカン半島の内陸部にある国)でJENNERというガールズ・トリオを率いていた人物で、これまでも腕利きの若き女性ギタリストを次々発掘してきたフェデリコのこと、その目と耳に狂いはあるまい。

 

今回の来日は東京2回、大阪1回の計3公演で、各々『戦乙女の夜』『覇王の夜』『竜王の夜』とテーマを決め、内容も変えてくる凝りよう。5枚のアルバムからテーマに合わせて選び抜いた曲で各公演を構成するフェデリコの熱意と、それが出来るだけのレパートリーが揃ったバンドの歴史、そして今のメンバーなら毎回異なるショウも思い描いたとおりに実演してくれるという確信があればこその趣向だ。勿論、その前提には受け手である日本のファンへの絶対的な信頼がある。元々、フェデリコがBE THE WOLFでの経験から日本のファンに感謝を示すべく作り始めたソロ・アルバムに端を発して生まれたバンドがFROZEN CROWNなので、その根幹は揺るぎない。

 

東京1日目には日本のバンドMana Diagramが前座に付いた。このライヴを最後にメンバー2人が去り、同時に新体制での再出発を発表するという節目になったようだが、UYU〈vo〉は2年前のFROZEN CROWN来日公演を観て「いつか一緒にライヴを」と願った夢が叶った、と感激も露わに語っていた。FROZEN CROWNも誕生して8年、既に後進に憧れられ、背中を追い掛けられる存在になっていたのかと思うと感慨深い。

 

『戦乙女の夜』はThe Shieldmaiden、すなわちジャーダ “ジェイド” エトロ〈vo〉のクリーン・ヴォイスを中心にしたセットで、最新作「WAR HEARTS」のタイトル曲で幕を開けた。ジェイドの澄み切った歌声は経験に裏打ちされた自信を宿して一層パワー・アップしており、涼やかな笑みを浮かべて観衆に歌い掛けるその姿は神々しいまでの輝きを放っている。その両脇にはウェービー・ブロンドを振り乱してフライングVを掻きむしるアレクサンドラ、赤毛に顔が隠れがちだがこれまで写真で見てきたよりぐっと垢抜けた印象のアレッシアと、ステージ正面はどこに目を向けようか迷うほど華やか。さらに両脇をフェデリコとフランチェスコ “イッキ” ゾフ〈b〉という黒服・黒髪で長身の男性2人が固め、中央後方には強力かつ豪快なビートでバンドを牽引する(照明が暗いのと奥に引っ込んでいて見えにくいが実はアドニスの彫像並みにイケメンの)ニーゾ・トマシーニ〈ds〉が鎮座する。なるほど、これがフェデリコが見せたかったバンドのヴィジュアルか、と思うとついニヤけてしまうほどのクールさだ。

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PART 2:INTERVIEW

1日目のショウを終えた翌日、昼前にサウンドチェックのため会場入りしたバンドにインタビューを行なった。レコード会社担当氏からは相手は「フェデリコとジェイドと新メンバーのアレクサンドラ」と聞かされていたが、着いてみれば長テーブルに6人全員がズラリ。取材前後の和気藹々とした掛け合いからも現在のバンドの良好な状態が伝わってくる。この布陣での活動が続いていって、「今のまま変わらないこと」というフェデリコの願いが叶うよう祈らずにはいられない。

 

──昨夜のショウはいかがでしたか?

 

フェデリコ・モンデッリ:Amazing!

 

ジャーダ “ジェイド” エトロ:本当に、楽しかった! ファンの皆からのフィードバックにもとても満足しているし、何と言ったらいいのか……。

 

フランチェスコ “イッキ” ゾフ:力を貰った?

 

フェデリコ:パワーを注入されたよね。

 

ジェイド:ええ、力づけてもらって幸せよ。

 

──アレクサンドラとアレッシアは日本に来ること自体、今回が初めてですか?

 

アレクサンドラ・ライオネス&アレッシア・ランゾーネ:(同時に)イエス!

 

──何日前に日本に到着したんですか?

 

ニーゾ・トマシーニ:今日が5日目だ。着いたのは月曜日だった。

 

──皆で観光みたいなことは出来ましたか?

 

イッキ:特には何も。

 

ジェイド:そんなことないでしょう!

 

イッキ:あ、そうだ、明治神宮に行ったね。原宿だっけ? それから、原宿から渋谷まで歩いて帰ったりもした。でも日本でのショウはやるべきことが沢山あるから、そっちに集中しないと。

 

フェデリコ:色んな店が並んでいたあの場所は何てところだったっけ?

 

ジェイド:原宿。メタルっぽい服が沢山置いてある店があったから、ライヴ用の衣装を充実させるために色々と買い物もしたわ。

 

——アレクサンドラは加入して数ヵ月という新メンバーですが、元々、何年も前にメンバー候補になっていたこともあるんですよね?

 

フェデリコ:ああ、そのとおり。2020年のことだった。勿論、その頃このバンドにはラインナップ・チェンジが起こっていたわけだけど、そのメンバーを決めるよりもさらに前の話だよ。コロナ禍になってしまった影響で、自分の住んでいる地域から出ることも出来なくなった。イタリアの人とも直接会うことが出来なかったから、イタリア出身だろうがセルビア出身だろうが、大した違いはなかった。どうせ遠隔でアルバムを作らなきゃならないんだったら、最高のメンバーを選ぼうと思ったんだ。実は彼女がやっていたバンドJENNERのEPをたまたま見つけてね。YouTubeでその新曲の動画を探して、観て、思った。このギタリストはFROZEN CROWNに完璧に合うじゃないか、って。だって、凄く怒っている感じに見せようとしていて、見事に成功していたんだ。

 

アレクサンドラ:いつも怒ってるわけじゃなくて、私、普段は凄く優しいのよ。(笑)

 

フェデリコ:うん、知ってる。(笑) でも、思いっきりアグレッシヴな感じでプレイしているのが凄くロックン・ロールだ!と思えて、そこがとても気に入ったんだよ。オールドスクールなロックン・ロールのヴァイブを保ちつつ、クールでカッコ良かったんで、「彼女こそ完璧だ」と思った。それで彼女に連絡して、それから基本的にずっとやり取りしていたんだ。その時はレーベルとの話とか、アルバムを急いでリリースしなきゃいけないとか、色々と事情があって彼女に入ってもらうということにはならなかったけどね。単純に、タイミングが合わなかった。彼女もそう言ってたし。そして今こそ、活動を共にするべき時が来たってことなんだと思う。

 

アレクサンドラ:私からもひと言、いい?

 

フェデリコ:勿論、どうぞ。

 

アレクサンドラ:2020年は誰にとっても大変な年だった。特にミュージシャンにとってはね。それに私はまだ大学に通っていた。勿論、彼とはずっと連絡を取り合っていたけど、あれから何年も経って、FROZEN CROWNもバンドとして大きく成長したと思うし、私自身も、自分のバンドやソロ活動を通じてミュージシャンとして確実に成長したわ。だから今こそ、私達が一緒に仕事をするのに完璧なタイミングだったと思う。お互いに、より経験を積んだミュージシャンになっていたからね。今なら5年前のあの当時よりもずっと多くのことを一緒に出来ると思う。

 

フェデリコ:ああ、まったく同感だ。それに、当時のFROZEN CROWNはまだまだ規模が小さくて、イタリア以外の地域からメンバーを招き入れようなんて考えるだけでも色々とややこしいことになっていたと思う。でも、今ならそれが出来る。プロモーターにもこちらの希望する条件を提示出来るし、何もかも楽になっているからね。まさに今こそ正しいタイミングだったんだ。だって、ほら、ARCH ENEMYとかみたいにスウェーデン出身のメンバーもいればアメリカ出身のメンバーもいる、というようなバンドも上手く活動しているわけで、今はどこの国の人だろうと関係ないよ。大体、ニーゾが住んでいるところなんか、3時間半も離れているから……

 

ニーゾ:4時間だ。

 

フェデリコ:もうセルビアにいるのも同じだ。

 

ニーゾ:でもフェデリコは声がデカいから、それだけ離れていても彼が話せば聞こえる。(笑)

 

フェデリコ:(笑) 声量と言えば、皆、話す時は大きな声で話してくれよ。ちゃんと録音されてないと記事に起こすのが大変なんだから。

 

──ご協力ありがとうございます。(笑) ところで、セルビアで活動しているロックン・ロール・バンドは多数存在するのですか?

 

アレクサンドラ:それは難しい質問ね。というのも、セルビア全体、そしてバルカン半島全体でも、ロックやメタルがとても人気のある地域とは言えないから。それでもアンダーグラウンドなシーンは存在するし、私のバンドを始め、それを維持しようと頑張っているバンドは幾つかある。でも、時々思うのよ。この地域で成長していく音楽ではないのかもしれない、って。一般的に言って、フォークとか、トラディショナルなタイプの音楽の方がずっと人気がある。でも勿論、私達はロックやメタルが大好きだし、素晴らしいバンドは沢山いるわ。小さいバンドから大きいバンドまで……まあ、この地域にしてはビッグな、という意味だけど。そうね、愛があるから私達はやり続けることが出来るんだと思う。でも、私自身はこうして自分の住んでいる地域ではない場所に暮らす人達と仕事が出来ることを嬉しく思っているわ。私はいつだって、自分と同じくらいプロ意識が高くて、物事を真剣に受け止め、同じ考えを持つ人達と仕事をしたいと思っていたから。だから、どうしてもセルビアで仕事をしなきゃいけないとは思ってないの。どこでだって仕事は出来るわ。

 

──あなたのロック・ヒーローは?

 

アレクサンドラ:MEGADETHのデイヴ・ムステインが大好き。あと、あまり知られていないかもしれないけど、ROCK GODDESSのジョディ・ターナーも好きよ。イギリスのバンドで、80年代に活躍していたんだと思う。私が歌を始めたのは彼女の影響なの。私の今のバンドは彼女のバンドと同じくトリオ編成で、私も歌っているんだけど、最初はギターを弾くだけだった。彼女のエナジーを目の当たりにした時、「私もこういうエナジーを発する人になりたい!」と思ってね。その生々しく怒りに満ちたアティテュードに凄く共感して、私も彼女みたいに歌うようになった。だから最大の影響源は彼女だと言えるわ。

 

──なるほど。アレッシアのヒーローは?

 

アレッシア:私のギター・ヒーローはDREAM THEATERのジョン・ペトルーシかな。

 

──何がきっかけでギターを弾くように?

 

アレッシア:たまたま動画で女の子がギターを弾いてるのを目にして、「女の子でもギターを弾けるの? じゃあ、私も!」って思って。(笑)

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