GHOST:ヨーロッパ・ツアー最終レグのフィンランド公演をレポート

私がフィンランド・タンペレの名高い会場、収容人数12,000人の『Nokia Arena』へと向かう道すがら、1つの思いが何度も頭をよぎっていた――2011年という年が、もうずいぶん昔になってしまったということだ。あの年、私はスウェーデンのオカルト系ヘヴィロックバンド、GHOSTのライヴを初めて観た。イギリスのゴシック・メタルの伝説的バンド、PARADISE LOSTのサポート・アクトとして、ロンドンの有名な『Forum』に出演した時だった。
GHOSTが影の中から、ほとんど何の予備知識もないイギリスの観客の前に登場した時の反応は実に見ものだった。バンドはまだ完全に謎に包まれていて、筋金入りのメタル・ファンでさえ正体を掴みかねていた。おそらく観客の98%は、この仮面をかぶった連中が誰なのか、“煙ったような色合いのドゥーム・メタル”を演奏するこのバンドが何者なのか、まったく判っていなかっただろう。だがGHOSTは、キャッチーでジャンルの枠を超えた楽曲をぎっしり詰め込んだ45分間のセットを披露し、ライヴの終わりには、ほとんど全員の心を鷲掴みにしていた。正直に言って、あれは本当に圧巻だった。
今なら「そんなの当然」と言うのは簡単だが、2011年の春の時点で、あの場に何か特別な空気が漂っていたのは間違いない。GHOSTは謎めいていて、不気味で、演劇的で、そして遠慮がなく大胆だった。その存在からは、何かとてつもない可能性が確かに感じられた。だが、彼らがこれほどまでに巨大な存在になるとは――それを予想できた者は、1人としていなかった。
そして14年後の2025年春。GHOSTの最新スタジオアルバム「SKELETA」は、すでにアメリカ・ビルボード・チャート(その他多くの国のチャートも)で1位を獲得し、長らく途絶えていたハード・ロック・バンドの快挙を達成した。今年春のヨーロッパ・アリーナ・ツアーも完全にソールド・アウトで(多くの会場ではチケットが数分で完売)、どの都市でも最大級の屋内会場で堂々のヘッドライナーを務めている。
ツアーのヨーロピアン・レグの最終盤となるこのフィンランド公演を前に、誰もが明確に認識していたことが1つあった――このショウは完全に“ノーフォン”になるということだ。昨年GHOSTは、ロサンゼルスの『Kia Forum 』での2夜公演で、観客のスマホをYondrポーチに入れて封印させるというコンセプトを初めて導入し、その模様は『Rite Here Rite Now』というコンサート映画として記録された。その試みがかなり有望だったのは明らかで、今年の『SKELETOUR』では全公演でそれが採用された。

THE WORLD'S HEAVIEST HEAVY METAL MAGAZINE
BURRN! 2025年8月号
●巻頭大特集:NIGHT RANGER
アメリカン・ハード・ロックの雄、10月“最後の来日”への想いをメンバー激白!
●独占インタビュー:イングヴェイ・マルムスティーン/COBRA SPELL/SAKI/Unlucky Morpheus 他
●海外ライヴ・リポート:GHOST/SCORPIONS
●メタル・フォーカス:BABYMETAL/SABATON他
●ライヴin Japan:リッチー・コッツェン/LOUDNESS
●特別企画:新時代の開拓者と「メタルの未来」
●ポスター:GUNS N’ ROSES in JAPAN
BURRN! 2025年8月号
A4判/144頁/定価1,200円(税込)/2025年7月4日発売
