PANTERA:全米ツアーに突入したPANTERAの独占インタビュー2本立て。フィリップ・アンセルモが赤裸々に明かすアボット兄弟との確執の真相、そしてチャーリー・ベナンテが語る現編成PANTERAの存在意義。

 今朝の私はフィリップ・アンセルモにとって好ましい存在ではないだろう。休日だというのに、彼は貴重な時間を割いて、真っ昼間にニューオーリンズの自宅で私と話してくれているのだ。それだけでも煩わしいと感じさせるのに充分なはずだが、それだけではなかった。
 「俺達、6週間ヨーロッパにいたんだ。そして戻ってくるとすぐに、俺はDOWNのリハーサルに取り掛かった」とアンセルモは言った。DOWNとは、彼がPANTERA以外に関わっている数多くのプロジェクトの1つだ。「ギタリストのカーク・ワインドスタインと俺は、いつものように一緒に出掛けて楽しくやっていた。そして、夜も更けてきたので帰ろうとした時、彼が『しまった、物凄く気分が悪い』と言い出したんだ。だから俺はずっとあいつの側にいたんだよ! 言うまでもなく翌日は最悪だったし、2週間後の今も、まだ最高とは言えないんだ」
 彼はふざけているのではない。アンセルモの今日の口調は、まるで道路の掘削機のように響く。彼が私との90分間のインタビューに喜んで応じているわけではないのも当然のことだ。苦痛にさえ聞こえる。
 とはいえ、苦痛はフィリップ・アンセルモにとって身近なものだ。今月57歳になる彼は、自己診断によると24歳の頃から慢性的な腰痛に悩まされており、損傷は初期のPANTERAでの激しいステージ・パフォーマンスが原因だったという。
 「そのことについては、あまり詳しく話す必要はない」と彼は言うものの、インタビュー中、何度も彼はその話題に触れた。明らかに、彼の多くの問題の原因は腰痛だったのだ。しかし、数々の手術(最初の手術は2006年)と数年に亘るリハビリを経て、2025年を迎えた今、彼はようやく回復した。縁を切ることが出来ない体調不良を抱えてはいるものの、フィリップ・アンセルモの状態は、それほど厳しくはないものになっている。
 「気分がすぐれない日よりは、気分が良い日の方が多い。それで判ってもらえるなら」と、彼は私に言う。「悪い日よりは良い日の方が遙かに多い」
 これはアンセルモの健康状態だけでなく、彼の音楽的な現状にも当てはまる。PANTERAが少なからぬ非難を浴びながら解散してから19年後の2022年7月、バンドは22年ぶりとなる大規模ツアーに復帰することを発表した。アンセルモは再び先頭に立ち、その傍らには不屈のベーシスト、レックス・ブラウンが立つ。PANTERAのクラシック・ラインナップを完成させたギタリストのダイムバッグ・ダレルとドラマーのヴィニー・ポールのアボット兄弟は2人とも亡くなっていた。ダレルは2004年12月8日、オハイオ州コロンバスで、PAN­TERA解散後のバンド、DAMAGEPLANの演奏中に38歳でステージ上で射殺された。ヴィニーは2018年6月22日、心臓病のため54歳で亡くなっている。この新しいPANTERAで2人の代わりを務めるのはBLACK LABEL SOCIETYのギタリスト、ザック・ワイルドと、ANTHRAXのドラマー、チャーリー・ベナンテだということが発表された。
 この動きの倫理的な妥当性について、当初、ソーシャル・メディアでは救いようのない辛辣な批判も幾つか見られたが、PANTERAのライヴ・パフォーマンスへの復帰は明確な成功を収めている。
2025年にもペースは落とさない。METAL­L­I­­CAのサポートを務めるアメリカでの一連のスタジアム・ショウに続いては、7月5日にイングランドのバーミンガムで行なわれるBLACK SAB­BA­THのファイナル・ショウに特別出演をするし、9月まで続くヘッドライナーとしての全米ツアーも予定されている。
 「俺が今、一番好きなのは、PANTERAの新しい聴衆をチェックすることだ」と、アンセルモは私に言う。「そして、新しいというのは、文字どおりの意味でだ。昔からの連中、俺達みたいなオールドスクールの連中が、子供達を連れてきているんだよ。生まれた時からずっと家でPANTERAを聴いてきた子供達だ。今やPANTERAのショウは家族で出掛けるイベントになっている。そして、それが俺が大好きなことだ。それが俺が一番気に入っている現象だよ」

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