メロディック・メタル/パワー・メタルの祭典『Evoken Fest 2019 Extra』9月1日@吉祥寺Club SEATA
初日8月30日(金)の渋谷 duo Music Exchangeでのレポートはこちらになるので合わせて読んで欲しい。
『Evoken Fest 2019』8月30日渋谷 duo MUSIC EXCHANGE公演レポート
ALLEGIANCE REIGN
前の仕事が押してしまい到着した時には既に終了していたALLEGIANCE REIGN。重厚なシンフォニック・サウンドの国産バトル・メタルで、ステージ衣装が戦国時代を思わせる武士のコスチュームというので実は楽しみにしていたのだが…、残念無念だ。写真とセットリストを提供していただいたので雰囲気だけでも楽しんでくれたらと思う。
EPIDEMIA
到着した時には既にEPIDEMIAのショウは始まっていた。全てを観ていないので正しいかは分からないが、初日30日がイケイケの攻めのセットリストだとしたらこの日は懐の深さを見せたように思えた。
ドラマチックに盛り上がっていくバラード調の“Vsadnik Iz Lda”は、哀愁のメロディがグッと胸に突き刺さり、情感タップリに歌い上げるヴォーカルが素晴らしい。ロシア語ならではの独特の語感と巻き舌発音が曲の感情の起伏を鮮明にしていた。客席からはスマフォのライトがステージに向けられ、メンバーは嬉しそうな笑顔を見せながら憂いに満ちた旋律を奏でていた。ヘヴィ・メタル=英語と思っている人にこそ聴いて欲しいパフォーマンスだった。
バラード調の楽曲から一転してベースから始まる陽気なメロディの“Gde Rozhdayutsya Rassvety”で会場の雰囲気をガラリと変えて、ラストはダークなイントロから影のあるメロディで疾走する“Vybor est'!”で盛り上がりの中終了となった。
MANTICORA
続くスピード・ナンバー“A Long Farewell”ではどことなく BLIND GURDIANのハンズィ・キアシュの声を彷彿させるラーズ・F・ラーセン<vo>は顔を上に向け手を広げファンをMANTICORAの世界へ更に誘う。ミドル・ナンバーの“Gypsies' Dance Part 2”ではそれまでのアグレッシブな彼らとガラっと表情を変え、抒情的なメロディをじっくりと聴かせる。
初来日出来たことの感謝を述べたMCの後に最新作「TO KILL TO LIVE TO KILL」と同じくチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が優雅に流れ、そこからヘヴィで雄大な冒頭からスラッシュ・メタルばりのアグレッションを内包して疾走する“Echoes of a Silent Scream”へと流れる。各メンバーのパフォーマンスの高さに、メタル然とした曲の中にある起承転結のメリハイの利いたドラマチックな展開がファンを唸らせていた。
スラッシュ色が強く様子見といったファンも見受けられたが、そんな人たちも最後には彼らショウに引き込まれていったし「思った以上に良かった」や「音源よりもライブの方が凄かった」という声をいくつか耳にした。個人的にはマッズ・ウォルフの凄まじいドラミングに終始圧倒された。
NORTHTALE
キラキラしたメロディをまといながら突っ走る“Shape Your Reality”で会場のボルテージも天井知らずで上がっていく。ファンの反応に感謝の言葉を述べ、続くキャッチーな“Time to Rise”でビルはステージ中央でその腕前を見せつける様に流麗なギター・ソロを披露。その後ろでパトリックは腕を振り上げビルのギター・ソロを応援しているかの様だ。
曲が終わるとそのままパトリック・ヨハンソン<ds>がバスドラでファンの歓声と拍手を呼び込み、それが最高潮に達するとパトリックのツーバスはギアがトップとなりスピード・ナンバーの“Siren’s Fall”へと流れていく。クリスチャンのハイトーン・ヴォーカルも冴え、ギター・ソロやキーボード・ソロと見せ場もタップリで終わると会場を大きな拍手が包んだ。
派手なライトに照らされた中、少し湿り気のあるメロディでドラマチックに盛り上げる“The Rhythm of Life”が始まるとパトリックは力強く歌い上げ、コーラスも美しい。ファンは大きく手を振り上げ、パトリックのアカペラで静かに曲が消えていくと賞賛の拍手がステージに向けられる。
短い時間ながらもパトリック・ヨハンソン<ds>のドラム・ソロからヘヴィでユニークなメロディの“Bring Down The Mountain”ではビルとミカエルはネックを立てお互い見せつける様にプレイ、そしてクリスチャンは両手を交互に突き上げながら熱唱と、ショウの後半に向け盛り上げていく。
ビルが今度は俺の出番といった風にステージ中央にやってくると両手でファンの声援を集めてから美しいメロディを織り込んだテクニカルなギター・ソロで注目を集める。後ろを見ればパトリックがメロイック・サインで援護射撃。少しコミカルなメロディを盛り込みながら突っ走る“Welcome to Paradise”へとなだれ込み、ここでもビルとジミーの美しいメロディを盛り込んだ激しいバトルがファンを熱狂の渦へと巻きこんでいく。
アルバム1枚のリリースでの来日ということで時間も短かったが、今回出演した中でも一番の美メロを誇っていた彼らのショウは何度でも見たいと思わせた。多くのファンも大満足していたのは、彼らがステージから姿を消すまで大きな喝采が会場を包んでいたことがその証明だと思う。
BLOODBOUND
前回の掲載時と同じく“Battle in the Sky”でショウはスタート。この日は機材のトラブルもなく、メンバーも激しく首を振りながらフロアの歓声を集めオペラチックなコーラスを決める。パトリック・J・セレビー<vo>は特殊メイクに日の丸ハチマキ姿でこの日は登場、力強いメロディが響く“In the Name of Metal”では腕を振りファンを鼓舞する。
陽気でフォーキッシュな“The Warlock’s Trail”では「ジャンプ!ジャンプ!」と盛り上げるのは変わらずだったが、MCに続く“Stand and Fight”は前回プレイされなかったので二日間足を運んだ人にとっては嬉しかった曲だっただろう。コーラスでバンドが「STAND!」と歌えばファンは「FIGHT!」と大きな声で返し、メンバーは嬉しそうな笑顔を見せる。
ラストは“Nosferatu”で物悲しいメロディと共にローブ姿の怪物がステージを登場するとショウもいよいよ最後。正統派色の強いドラマチックな曲が劇的に盛り上げ、メンバーもフォーメーションを決めたりファンと共にヘドバンギングしたりと日本最終公演を楽しみ完全燃焼といったところ。彼ら目当てのファンも多く、その期待を裏切ることない良質なこの日のパフォーマンスも素晴らしかった。
DERDIAN
EVOKEN FESTと共に歩んできたDERDIANが『Evoken Fest 2019 Extra』のトリとして出演。マルコ・バンフィ<b>が諸事情で来日出来ず代わりにILLUSION FORCEのオリー<b>がヘルプでの出演となったが、3年連続の出演となる彼らがEXTRAとはこうして最終日を締めくくるのは感慨深い。
ドラマチックなSEに続きアニメ調のメロディでスピーディな“Human Reset”で攻撃開始。アイヴァン・ジャンニーニ<vo>はフードを被り少しミステリアスな雰囲気を出しつつ、伸びのあるハイトーンでファンを最初から魅了していく。エンリコ・ピストレーゼ<g>がメロディを奏で、ほんのりとフラメンコを感じさせる陽気な“Battleplan”が始まると会場の雰囲気は明るく盛り上がっていく。エンリコは最前列のファンと顔を見合わせ、人懐っこい笑顔も見せながらソロを披露。アイヴァンは大きく手を振り上げ更に会場を一つにせんと盛り上げる。
バンド紹介のMCの後にバロック調のピアノの調べに導かれてツイン・ギターが疾走していく“These Rails Will Bleed”では、この曲のカギを握るエンリコとダリオ・ラダエッリ<g>は顔を見合わせながら息ピッタリの哀愁のメロディをプレイ、心を震わせる。
マルコ・ガラウ<key>がゴッドファーザーのテーマをチラっと弾いてヒントを出した“Mafia”では硬派でダークな曲調が会場の雰囲気をまるでオセロの様にシリアスに変えていく。
今回ヘルプを務めたオリーに感謝の言葉を述べた後にILLUSION FORCEのジン<vo>を呼び込んでのツイン・ヴォーカルのキラキラしたメロディでドラマチックに“DNA”展開していく。ジンからアイヴァンの順でハイトーン・ヴォーカル対決が始まり、サビでは一緒に歌っているが、どちらが高く伸びのあるハイトーンを歌えるかせめぎ合っている様。
他のメンバーもこの二人に引っ張られる様に凄まじいパフォーマンスを見せ、会場のボルテージも上がっていく。
続く泣きメロに酔わせられるミドル・ナンバーの“I Don’t Wanna Die”で少しクールダウン。
この後、キーボードがトラブルで中断してしまうが、アイヴァンがアカペラで日本語の曲を歌ったり、SLAYERの“Raining Blood”を少しだけプレイしたりと場を繋いでダレた空気を流さない。
トラブルが解消されると、そのキーボードから美しいピアノの音が流れ流麗なメロディが胸を締め付ける“Never Born”の調べが再びファンの心に深く入っていく。しかも日本語ヴァージョンというのが更に泣かせ、アイヴァンが力強く歌い上げる。
主催者、そして日本のファンへの最大の感謝がこの曲に込められ、その思いはしっかりと伝わったであろうことはリアクションからも明らかだった。
キーボードと共に劇的に盛り上がる“Burn”から再びゲストをステージに呼び込む。ゲストはANCIENT MYTHのミカル<vo>で、彼女とのツイン・ヴォーカルで“Forevermore”がしっとりと始まる。時に悲しく、時に力強くアイヴァンとミカルは見つめ合いながら歌い上げ、ステージではミュージカルの一場面を切り取った様な感動的なシーンが次々と展開されていく。
眩しい光の中で音が消えていき、それに代わり感動に酔いしれたファンから万雷の拍手が会場を包んだ。
ライブも終盤戦に突入となり、パワフルな疾走曲である“The Hunter”が自然とファンの首と手を大きく振らせていく。そんな場内の様子にエンリコとダリオの大満足といった風に肩を組み、そしてかかって来いよと攻撃的なツイン・ギターを弾きまくる。
本編最後となる“Red and White”が始まるとファンからのプレゼントと思われるフラッグを羽織りながらアイヴァンは熱唱。そのフラッグを使ってダリオと闘牛風にじゃれ合ったりと最後までこの日のステージをファンと共に楽しみ、大歓声の中で終了となった。
これで終わるには早いとファンの大きなアンコールの声に押されて再びステージに姿を現すメンバー。そして劇的な泣きメロスピ曲である“Eternal Light”が炸裂、ステージではそこかしこでメンバーが笑顔を見せながら絡み、最後のパフォーマンスを心の底から楽しんでいる。勿論、ファンもそれに負けずと楽しみ声援を送っている。
曲が終わり大きな拍手とDERDIANコールの中で、ステージには次々とフラッグがメンバーに渡される。彼らが愛され、そしてファンと共に歩んできたのかがよく分かる。
そんなファンへ最後のプレゼント代わりに感謝の言葉と共に新しいアルバムを作っていると告げられる。そのニュー・アルバムと共にまた日本に戻ってきて欲しい。
Evoken de Valhall Productionが事業停止を発表したのは残念という他にない。この日本ではヘヴィ・メタルの情熱がなかなかビジネスとして成立しない場面に直面することが多く、色々と考えさせられることもある。
非公表を含み現在進行中の興行をもって事業を休止するとのことだが、残りの興行の収益によっては早期の事業再開も可能だとのこと。今はただ早期に事業再開できればと祈るのみ。この日、多くのファンが笑顔で会場を去っていったのを見てそう思うのだった。
Text by 別府 “VEPPY” 伸朗
Photos by Towy Karin
「DNA」
2018年
この記事へのコメントはまだありません
RELATED POSTS
関連記事
記事が見つかりませんでした
LATEST POSTS
最新記事
01.Dawn of Warring States Era (Intro)~A Signal Fire of Battle
02.Ei Ei O
03.Allegiance Sword