VOLCANO「VIOLENT再発記念ライブ」レポート
廃盤でそれまで入手困難だったVOLCANOのシーンを震撼させた1stアルバム「VIOLENT」の再発記念として2019年1月26日に渋谷CLUB ASIAにて行われたワンマン・ライブをレポート
Report by 別府 “Veppy” 伸朗
シーンに衝撃を与えたVOLCANOの1stアルバムにして名盤「VIOLENT」。リリースされたがの2000年の1月、ついこの間リリースされた様な思いもあったのだが19年も経ったのかという思い(これは個人的なものだが)。最近彼らのファンになった人にとっては、この幻の作品を入手出来て嬉しかったファンも多かっただろう。そして、昔からのファンにとっては再発に辺りボーナス・ディスクに収録された曲に驚きと新たな発見があったことと思う。そして、「VIOLENT」の再発記念ライブが1月26日に東京渋谷のCLUB ASIAにて行われた。会場には多くのVOLCANOファンが集まり、彼らの着ていた様々なVOLCANO関連のシャツを見ながら彼らの歴史を感じていた。
ステージ上で慌しく動いていたスタッフが去り開演予定時間を10分程過ぎた頃に場内暗転、「VIOLENT」のオープニングを飾るオープニングSE“The Present”が場内に鳴り響くと、この時を待っていたといった風に「オイ!オイ!」と力強い歓声がSEに負けじと上がる。その歓声とSEが入り混じる中、下手からShun<ds>、Akira<b>、川島<g>が、上手から屍忌蛇<g>がメロイック・サインと共にステージに登場する。最後にステージに駆け込んで登場はサングラスをかけたNOV<vo>で、役者が揃ったステージからは“Kill All Of Me”が放たれる。
すし詰めの場内、ステージ前はグッと圧が高まった風だが殺伐とした感じはなく、誰もがVOLCANOによる名曲のパフォーマンスに酔い楽しんでいる。そんな様子を見て満足そうな笑顔を見せるNOV、屍忌蛇の泣き泣きのソロには指揮者の様に振舞う。“Kill All Of Me”のアウトロ余韻のを引き裂く様に“Ghost”のリフが弾き出されると更に熱気が高まっていく。アグレッションと泣きのメロディが見事に融合したVOLCANOのクラシックかつ名曲2連発、アルバム収録順と分かっているが、何とも贅沢な流れがライブ初っ端から繰り広げられる。
ツイン・ギターのハモリが美しいソロの最中、場内の反応に嬉しそうな表情を見せる川島。レッド・ライトが眩しいステージでは屍忌蛇とAkiraが右に左にポジションを変えながらステージを駆けてのパフォーマンス、屍忌蛇の見せ場であるソロではいくつもの拳とメロイック・サインが上がる。曲の終わりにどうだとばかりにAkiraはメロイック・サインを突き上げ、NOVは両手を大きく広げる。
名曲2連発が終わると爆発した様な大歓声が会場を包む。その歓声を破る曲名コール、ヘヴィで縦ノリな“Brain Dance”のグルーブが会場を支配する。ツイン・ギターのハモリが美しいソロの最中、場内の反応に嬉しそうな表情を見せる川島。
「カッコよくてスイマセン。後半もっとカッコよくなるんで!」と笑いと歓声を浴びる屍忌蛇。「VIOLENT再発おめでとうございます。アノ頃のお前達、アノ頃の俺達の生き様を見せてやるぜ!アノ頃の恐怖を与えてやる!!ノホホンとライブを見るんじゃねえぞ!!!」と序盤から気合タップリのNOV。そして告げられた曲はヘヴィなミドル・ナンバー“Fear Of The Scarlet”、ステージには絶対倶楽部の瑠美奈<key>が登場。この曲での屍忌蛇の奏でる泣きのギター・ソロは絶品、瑠美奈と屍忌蛇の絡みも見せ場。
MCになって今までプレイされた曲を順番に口にし、これが何を意味しているのか分かるかとファンに投げかけるNOV。そしてそれをAkiraに振ると「聞いていなかった」となり場内は爆笑に包まれる。来場していたVOLCANOのファンならこれが「VIOLENT」の完全再現ライブということに気がついていただろう。
次の曲が分かっていることを前提にNOVが「俺は何者だ?」と言うと、「ポケモン!」とボケるファン。それに突っ込みを入れると「I AM?」と叫び、ファンに「WHAT!」と返させ、メタリックでヘヴィなグルーブのある “I Am What”が会場をイーヴィルな雰囲気に変える。そのままShunのドラムと共に“I Am What”のヘヴィネスを引きずった様なイントロから泣きのメロディと共にドラマチックに展開していく“Cloud Covers”に。ヴォーカリストNOVの魅力を最大限に引き出した曲で、この曲でのNOVの歌唱は素晴らしいの一言。
そのNOVが人差し指を突き上げると、フロアからはいくつものメロイック・サインで返される。そのまま北欧メロデス群を想起させるスピード・ナンバーの“Devil May Care Boy”では激しくヘッドバンギングするファンも。NOVはそんなフロアを指差し、サングラスをずらして熱狂のフロアを見回す。ロング・シャウトを決めた最後に舌を鳴らし笑いを誘い、かまいたちから教わったと述べるNOV。楽しんでいるかいと言えば、当然といった風に大歓声が返ってくる。
Akira<b>
再発に関してスタッフがかなり動いてくれたことを、「VOLCANOらしい」言葉で感謝を述べるNOV。そして再現ライブは残り2曲と言うことを告げる。「アツい祈りを俺達にぶつけろ!」というMC、そして「カモン、屍忌蛇!」とNOVのシャウトで炸裂したのは高速ナンバーの“The Prayer”。NOVは曲名を意識してか祈るようなアクションでシャウトを決め、屍忌蛇と川島がギター・バトルをしている脇でスタッフとハイタッチしている。
Shunのバスドラに導かれあのイントロが始まると場内からは自然と「VOLCANO!VOLCANO!」の大コールが発生。「VIOLENT」のラストを飾り、VOLCANOにとってはアンセムとも言える“Volcano”が会場を揺るがす。どんなにファンが声を張り上げようともそれじゃまだまだ俺達は満足出来ないぜとばかりにファンに「もっと腕を上げろ!」と激を飛ばすNOV。一瞬の間があって屍忌蛇のギターから禁断の果実とでも言うべきリフが刻まれると首をへし折らんとばかりにヘッドバンギングするファン。泣きのメロディと攻撃性が見事に融合したこの曲はVOLCANOのアイデンティティそのものと言えるのかもしれない。NOVはお立ち台の上から勢いよくフロアに向かってダイブを決める。
曲が終わると大きな拍手と歓声が上がり、屍忌蛇の「これからやぞ!」という言葉を残しメンバーはステージから姿を消していった。場内には渦巻く熱気をクールダウンさせるかの如くエンディングSEとして流れていた“Unchained”の美しい調べが染み入っていった。
Shun<ds>
そのままアルバムと同じくスピーディな“Flight To The World”で一気に場内を引き締める。NOVは川島、Akira、屍忌蛇と絡みながら鋼鉄シャウト。次の“Warrior’s Play”の屍忌蛇のギター・ソロの場面では屍忌蛇とNOVが顔を見合わせ、ふざけて軽くキスをしていた様にも見えた。
MCでは先程のダイブにも触れながら疲れたと笑いながら言うNOV。そして第一部でもステージに登場したゲストの絶対倶楽部の瑠美奈をステージに呼び込み、彼女はメロイック・サインと共に再びステージに登場。そして曲名のイメージぴったりなダークな雰囲気たっぷり“Shadow”が忍び寄る。しっとりと言うと語弊があるかもしれないが、NOVの感情振り絞る歌唱も素晴らしい。瑠美奈の操るキーボードから放たれるハモンドの音が更にダークさにアクセントを与える。
曲が終わるとその瑠美奈のピアノの音に導かれ“Blood Soldier”が始まる。勇壮でドラマチックながらどこか陰のある悲しみに溢れた曲はVOLCANOの懐の深さを感じさせる。そしてそのままヘヴィ・バラード風な“Coming Hill”を最後に瑠美奈はステージを去っていった。MCでは瑠美奈を少しイジッてからの屍忌蛇の自虐ネタへと移り、場の雰囲気を和ませ長丁場のイベントの良い形での休憩となっていた。
「VOLCANOと一緒に歴史を作っていこうぜ!」と休憩はもう終わりだとばかりに始まったのは“History Cries”で、この曲が放たれるとMCでの緩んだ雰囲気がVOLCANOの世界へと変わっていく。寡黙なAkiraは少し腰を落とした一目で彼と分かるポーズで黙々とビートを刻む。屍忌蛇はファンとタッチしつつ哀愁のメロディを解き放つ。
川島<g>
サイレンが鳴り響き戦場にいるかの様なSEが場内を包み、NOVは「暴れる準備はいいか?」とファンを煽る。ShunのヘヴィなドラムとNOVの掛け声と共に始まったのは“Tokyo Panic”。途中からグラインドコアばりの勢いで突っ走っていくユニークかつ極悪なナンバー。勢いを殺さずにノリの良い“Democracy Intersects”のリフが間髪いれずに刻まれる。NOVはお立ち台の上で激しく拳を振り上げる。Akiraはモニターに足をかけ、Shunと共にVOLCANOのボトムを支える。シャウトし首を振るNOVは屍忌蛇と共に哀愁のメロディを奏でる川島に絡んでくる。後ろで悪戯をするNOVをどこにいるんだとキョロキョロする川島。そんなNOVの掛け声でいくつもの拳がフロアから突き上げられると満足そうに、そして少し悪戯っ子っぽく笑うNOV。
曲が終わるや否や「ごめんなさい」と謝る屍忌蛇。ミスした様だが、流れには大きな影響はなかった様に思えた。NOVが後にそれもライブならではと言っていたが、確かにそれもライブならではの楽しみ方だと思う。「座ろう」とフロアに呼びかけるNOV。疲れているだろうからとのNOVの提案であったが「So Tired?」とフロアに投げかけると「NO!」とファンからは力強い返事。そしてメンバーに同じく「So Tired?」と振るとAkiraがボソっと「Yes」と笑いを誘う。そして屍忌蛇のギターによる物まねコーナーへと突入し、その妙技にファンは感嘆の声を上げる。
「このCLUB ASIAをとてつもなくでかい会場にするぞ!あと2曲で死ぬぞ!」とプレイしたのは“Arena”。キャッチーでポップな曲調がNOVの「アリーナ!」のシャウト一発でコアな疾走パートに突入する異色かつユニークなナンバー。Akiraの顔に近づき歌うNOVだったが、先程の屍忌蛇とNOVのキスの件を見ていたからか笑いながら少し嫌そうに顔を背けるAkira。フラれたNOVはお立ち台に駆け上がりファンを煽り、そのファンに身体を預けて歌っていた。
屍忌蛇と川島のギター・ノイズが流れる中NOVが「ラスト」と告げた曲は“Guardian Deity”。勇壮でヘヴィ・メタルならではの高揚感に溢れるスピーディなナンバーは締めくくるのにぴったりの曲。屍忌蛇と川島の泣きと共に疾走していくツイン・ギターもグッとくる。フロアも疲れを感じさせずテンションも全く落ちていない。NOVが「サンキュ」と一言口にして、ステージから去っていった。
瑠美奈<key> ※サポート
ここまででほぼ2時間。ファンはまだ疲れていないとばかりに拍手でVOLCANOをステージに引っ張り出そうとしている。拍手はしばらくすると大きなVOLCANOコールへと変わり、まずはステージにNOVが登場する。IRON MAIDENのブルース・ディッキンソンの物まねをしたNOVは「THE TROOPER」と曲名を告げ、もしやと思ったがそのまま口でNOVがリズムを歌う。そしてそのリズムはドリフターズのコントの退場テーマへと変化して一つ笑いを取ってから「アンコールいこうか」とファンの歓声を浴びる。
「無謀にもアンコールで新曲をやる!」とプレイされたのは高速パワー・メタルといった感じの“Revolution”で、NOVの「革命を起こせ!」と煽りを入れてから始まった。曲に合わせて激しく点滅するストロボ・ライトの中で頭を振るNOVとAkira。NOVはステージ脇の壁を伝いフロアへと降り、ファンにもみくちゃにされ、そして肩車されながらシャウトする。
そしてVOLCANO 流スラッシュ・メタルといった風の“8 O'clock five minutes”と高速ナンバーが続いていく。共に再発された「VIOLENT」のボーナスCDに収録されていた曲で、新曲と言うよりも20年ぶりに再発掘された曲といった方が正しいのかとは思うが、そんなことはどうでもよくなる程のカッコよさ。当時アルバムから漏れていなければもしかしたらVOLCANOの重要なレパートリーになっていたのではないかとも思わせる。是非、これからもライブでプレイしてもらいたい曲だ。拳を振り上げるNOVとそれに応え、拳を突き上げ返していくファン。曲が終わるとステージはライトで真っ赤に照らされた。
セットリストではこれで終わりのはずだったが、ステージではギター・ノイズが鳴る中メンバーがアイコンタクト、NOVの口は「やる?」と動いていていたように見えた。雷が落ちたようなShunのドラミングから始まったのは“4148”。屍忌蛇のテーマとでも言うべきこのナンバーはラストに相応しい。そしてNOVのシャウト、そして伸びる声は完璧にも思えライブ中全く疲れも衰えも感じさせなかった。
ステージを右に左に駆け回った2時間半のステージ、それでもこんな声が出せるのかとNOVという天性のヴォーカリストのポテンシャルの高さと凄まじさを実感したライブでもあった。ライブ終了後の楽屋では当時「VIOLENT」のディレクターが訪問、メンバーと涙と感動の再会を果たしたという。再発に向けてスタッフが動いてくれたとライブ中にNOVが言っていたが、そのスタッフのアツい情熱が思いがけない舞台裏の感動劇も生み出したと思う。ファンも、バンドも、スタッフも、アツきこの一夜を共感出来たことが「VIOLENT」再発の意義の一つでもあったと思う。
VOLCANO
2019年1月26日@渋谷CLUB ASIA
<SETLIST>
第一部
1.The Present(Opening SE)~Kill All Of Me
2.Ghost
3.Brain Dance
4.Fear Of The Scarlet
5.I Am "What"?
6.Cloud Covers
7.Devil May Care Boy
8.The Prayer
9.Volcano
10.Unchained(Ending SE)
第二部
10.Darker Than Black(Opening SE)~ Flight To The World
11. Warrior's Play
12. Shadow
13. Blood Soldier
14. Coming Hill
15. History Cries
16. Tokyo Panic
17. Democracy Intersects
18. Arena
19. Guardian Deity
ーencoreー
20.Revolution
21.8 O'clock five minutes
22.4148
「VIOLENT」(2CD再発盤)
BFLC-001
<収録曲>
DISC 1
01. THE PRESENT
02. KILL ALL OF ME
03. GHOST
04. BRAIN DANCE
05. FEAR OF THE SCARLET
06. I AM "WHAT"?
07. CLOUD COVERS
08. DEVIL-MAY-CARE-BOY
09. THE PRAYER
10. VOLCANO
11. UNCHAINED(Inst.)
DISC 2
01. Revolution
02. 8 O'clock five minutes
クイーン全曲ガイド2 ライヴ&ソロ編
BOOK・2021.02.12
3/19発売 クイーン+アダム・ランバートは2022年のラプソディ・ツアー新スケジュール発表! そして、クイーンのライヴの魅力を深く知るには最適のガイド本が発売決定!
この記事へのコメントはまだありません