ライヴレポート「グレタ・ヴァン・フリートは本当に“ロックの未来なのか?”」

海外で話題騒然のグレタ・ヴァン・フリート(Greta Van Fleet)が日本にやって来た。
MARCH OF THE PEACEFUL ARMY TOUR in JAPAN 2019
2019年1月24日(木)@Zepp DiverCity (東京都)
 
report by 倉田真琴

photos by Yuki Kuroyanagi
海外で話題騒然のグレタ・ヴァン・フリート(Greta Van Fleet)が日本にやって来た。1月22日から25日にわたり東阪3公演が行われ、どの会場も盛況であった。東京はZepp Diver CityとStudio Coast。初来日公演とはいえ、ド新人のバンドがド平日に開催するにはちょっと大きすぎやしないかという心配の声もあった。しかし海外ではすでにソールドアウトが連発されている。昨年はNYで3000人規模の会場を3日間、ロンドンでも2000人の会場を3日間満員札止め。2017年3月にリリースされたデビュー・シングル「Highway Tune」は全米ロック・ラジオ・チャート5週連続1位、カナダのロック・ラジオ・チャート9週連続1位となった。そこから急速に評価を伸ばしていった。音楽評論家の伊藤政則氏曰く、これは“社会現象”である。今年5月には米国で2万人規模の会場でコンサートを行う予定だという。しかし、日本ではそこまでの現象ではなっていないように見えていた。

ところが、大阪公演が終わった直後から、凄まじい勢いで称賛の声がSNSを通して拡散されていった。“このバンド、マジでヤバいぞ”、“次に来る時はこの規模のハコじゃ見れないだろう”といった書き込みを多数目にした。すると、チケットの売れ行きがさらに伸びていったようである。いかにも今風の口コミだが、何かが起きていることは間違いなかった。彼らは何者なのか。よく言われている“ロックの未来”とは本当なのか。

ちなみに、僕が彼らが気になり出したのは、昨年10月に公開されたライヴ動画を観てからだった。30分近くに及ぶ「Lover, Leaver (Taker, Believer) 」だ。
Greta Van Fleet
- Lover, Leaver (Taker, Believer) (Live in LA / 2018)

フロアを見渡すと、観客の年齢層は高いように見えた。40代50代が多いのだろうか。男性率が高い。グレタ・ヴァン・フリートは若いバンドだ。双子のジョシュ・キスカ(Vo)、ジェイク・キスカ(G)は共に22歳、弟のサム・キスカ(B)は19歳、ダニー・ワグナー(Ds)は20歳。この若者達をクラシック・ロック好きの中年男性が見守るという、なんだか妙な空間である。

開演前、場内BGMでジョー・コッカーの「Feelin' Alright」やジョン・レノンの「Whatever Gets You Thru the Night」などが流れている。なんとなくオシャレで心地よい。客電が落ち、流れ出したのはデヴィッド・ラフィン「My Whole World Ended (The Moment You Left Me)」。テンプテーションズのリードシンガーで、あの有名な「My Girl」を歌っていたメガネの人のソロで、1969年のヒット曲である。モータウン・ナンバーをSEに使用するハードロック・バンドも珍しく、ここにもなんとなくオシャレ感が漂う。

注目のショウは「Highway Tune」で幕を開けた。

2曲目に披露された「Edge of Darkness」のジャムパートでは、一気に聴衆を自らの世界に引き込んでいく。このバンドが、ブルースロック、ハードロックから多大な影響を受けていることは間違いない。その証拠にハウリン・ウルフのカバー「Evil」は、カクタスのバージョンに近かった。

彼らはレッド・ツェッペリンと比較されることが多いけれども、このバンドにボンゾのような突出した存在はおらず、4人が同じバランスで存在している点が違っている。一応ドラムソロもあるのだが、実にコンパクトにまとめられていた。とはいえ、ジョシュの声がロバート・プラントに似ていることは否定できない。ちなみに“プッシュプッシュ”は言っていないが。華のあるジェイクはジミー・ペイジよりも弾きまくっているという印象である。そのプレイスタイルはロリー・ギャラガーやフランク・マリノのようなギタリストに近いのかも知れないと感じた。彼らはブルースを基盤にした骨太のヘヴィロックを、シンプルに演奏するバンドであり、そこから生み出される強烈なグルーヴは間違いなく“ロック”そのものだった。

グレタ・ヴァン・フリートにロックの未来は見えたのか?

今、このバンドが鳴らすサウンドを求めているロックファンは多いのは事実だ。我々はシンプルでナチュラルなハードロック・サウンドに飢えていたということなのか。それが退化だとは思わない。ロックの進化形だともあまり思わない。正直、よくわからないのである。

それでも僕は願う。もっと若いリスナー達にもこのバンドの存在に気づいてもらいたい。そして、実際に体験していただきたい。彼らのステージは、レコーディングされたものとは違う強力なエナジーに満ち溢れている。その凄さを知るには生で見るしかないから。

帰宅後、僕はFrank Marino & Mahogany Rush『Live』やRory Gallagherの『Irish Tour'74』、Ted Nugentの『Double Live Gonzo!』、果てはPat Travers Band『Live! Go For What You Know』まで聴き倒してしまった。自分はやっぱりロックが好きなんだとあらためて確認することができた。嬉しい出来事である。是非とも彼らにはライヴ・アルバムをリリースして欲しい。

そして、なるべく早く戻って来て欲しい。次回はもしかすると、日本の大きなフェスのヘッドライナー級になっているかも知れない。もちろん、そうなっていれば最高だ。とにかく、僕の体には“なんだか凄いものを見た”興奮がいまだに残っている。


MARCH OF THE PEACEFUL ARMY TOUR in JAPAN 2019
2019年1月24日(木)@Zepp DiverCity (東京都)
<SETLIST>

01. Highway Tune
02. Edge of Darkness
03. Flower Power
04. You're the One
05. Evil
06. Watching Over
07. When the Curtain Falls
-encore-
08. The Cold Wind
09. Black Smoke Rising
10. Safari Song
 

グレタ・ヴァン・フリート
『アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー』


ユニバーサルミュージック
UICU-1298
※日本盤ボーナス・トラック4曲収録(デビューEP「ブラック・スモーク・ライジング」全曲)

レーベル公式HPはこちら。
https://www.universal-music.co.jp/greta-van-fleet/
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