筋肉少女帯メジャーデビュー30周年記念オリジナルNew Album「ザ・シサ」リリース・ツアー

筋肉少女帯メジャーデビュー30周年記念
オリジナルNew Album「ザ・シサ」リリース・ツアー
12/9(日)マイナビBLITZ 赤坂
 

Report by 倉田真琴

 Photos by 齋藤 明

2018年12月9日(日)マイナビBLITZ 赤坂で筋肉少女帯のワンマンライヴ<筋肉少女帯メジャーデビュー30周年記念 オリジナルNew Album「ザ・シサ」リリース・ツアー>最終公演が行われた。

あの筋少がメジャーデビュー30周年を迎えた。たいへんめでたい出来事である。途中、活動休止期間があったものの、再始動から10年以上が経っており、バンドは常にパワーアップし続けている。さらに、ここ数年の大槻ケンヂ(Vo)の創造力も凄まじいことになっており、前作『Future!』から1年という早さで『ザ・シサ』をリリース、さらにはソロ・プロジェクトである大槻ケンヂミステリ文庫『アウトサイダー・アート』も発表したばかり。この2枚のアルバムについては、立て続けに作詞を行っていたという話である。活発な動きはファンとしてただただ嬉しく思う。

当然のように本日はソールドアウトとなっていた。レジェンドとしての存在感を放ちつつ、常に若いファンを引き寄せているところがこのバンドの凄さである。客席を見渡すと、層の厚さが見て取れる。老若男女と言ったら大げさだが、90年代の観客とは明らかに違うのである。特に男女の比率が以前と違うのだ。そんなバンドの凄みを感じつつ、30年の歴史を解雇しながら開演を待った。

SE「セレブレーション」が場内に鳴り響き祝祭の開始が告げられる。ステージに大槻、橘高文彦(G)、本城聡章(G)、内田雄一郎(B)とメンバーが現れる。サポートメンバーはお馴染みの三柴理(key)、長谷川浩二(Ds)。新作から「オカルト」で幕を開けた。

長い間このメンバーで固定されており、バンドのアンサンブルはより強固なものになっている。彼らの放つ音はメタリックでありながらも温もりがあり、ヘヴィな演奏は躍動感に満ちている。特に復活後の演奏は若返っているような気がするのだがどうだろう。これが老獪というやつなのか。アンチエイジングの賜物なのか。ステージ上手にはマーシャルの壁、その前で橘高がフライングVで強烈なギターソロを繰り広げている。下手では本城が確かな演奏で支え、中央では内田と大槻がフロアを扇動する。いつもの筋肉少女帯による、いつも通りの安定したステージなのに、このライヴを体験できるという喜び、幸福な感覚が身体を突き抜けていく。何度観てもいいものはいい。

バンドの長い歴史の中で、普段ヘヴィメタルを愛聴している人々に、どのくらい彼らの音が届いているのか気になっている。彼らの音楽にはメタルやプログレ、パンク、ニューウェイヴ等々、様々な要素が入り混じっているのだが、大槻は筋肉少女帯を“仕掛けが大きいヘヴィメタル・バンド”だと説明している。どこまで本気で言っているのかわからないところが実にオーケンなので、その言葉を100%受け止めていいのかどうか悩むところでもある。以前、ロック・イン・ジャパン・フェスティヴァルに出演した時も“40オーバー(※当時)のヘヴィメタル・バンドですよーっ! X JAPANのようなものだと思ってくださーい!”と叫んでいた人物である。もちろん受けまくりだった。それでも筋少がメディアでメタル・バンドとして扱われた記憶がほとんどない。彼らがメタルだと言えば言うほど、その部分はスルーされているような気もする。あまりにも独特すぎるバンドのキャラクターがジャンルを拒絶しているのかも知れない。別に十分人気があるんだから、そんな細かいことはどうでもいいのかも知れない。それでも40オーバーの筆者は思う。もっともっと多くのメタルヘッズに筋少の音が届くべきだと。

大槻のMCは本日も快調だ。“赤坂ウェンブリー・スタジアム!”と、映画『ボヘミアン・ラプソディ』が大ヒット中であるクイーンのネタをぶち込むあたりさすがである。フレディ・マーキュリーばりに“デ~オ!”のコール・アンド・レスポンスまで入れてくるのである。この時事ネタを取り入れる匙加減が絶妙なのだ。当然、フロアも敏感に反応している。さらには粗大ごみの話など、誰にでも経験のあるネタを織り込み会場を和ませていく。あの有名な“ケンちゃん、油揚げ焼いたから食べてきなさい”のエピソードから、大槻のスタンスは何も変わっていない。脱力MCと、熟練のメンバーたちから繰り広げらる緻密かつアグレッシヴな演奏のギャップ。これが筋少の魅力のひとつであることは間違いない。本日のライヴはニコ生でも中継されており、自宅で視聴している人もきっと笑顔になっていることだろう。

筋少のライヴは音が大きい。メタルにとって音が大きいということは正義だ。それに彼らはアンプからしっかりと音を鳴らしている、古式ゆかしいロック・バンドである。近頃アンプがなかったりする最先端の技術を使ったバンドも増えてきたので、なんだか少しホッとするのである。

「I,頭屋」、「衝撃のアウトサイダー・アート」、「ネクスト・ジェネレーション」、「マリリン・モンロー・リターンズ」、と最新作から充実したナンバーが繰り広げられていく。高速チューンの「ゾンビリバー~Row your boat」から「イワンのばか」では、凄まじい音圧で客席を攻めまくる。バンドのメンバー全員がバラバラの個性を放ちながらも、ガチガチのハードロック/ヘヴィメタル・サウンドを大きな音で鳴らしていくという、きわめて痛快なステージなのだ。

前半終了。すると大槻以外のメンバーが下がりステージには巨大なスクリーンが下ろされ、『筋肉少女帯メジャーデビュー30周年記念!投票企画~あなたの好きな筋少楽曲に清き1票をお願いします~』の結果発表が始まった。大槻による解説付きでランキングが発表されていくという、なんとも楽しい趣向である。10位から6位までを発表。途中、ワンコーラスのみ口ずさんだ「人間のバラード」も実に味わい深く、内田による「久保田安紀さんに捧げます」とのMCに導かれ披露されたインスト・バージョン「夜歩くプラネタリウム人間」も最高であった。久保田さんは今年11月27日に逝去された音楽家である。マリンコーニアや高円寺百景といったバンドでの活動で知る人ぞ知る存在だった。彼女は筋肉少女帯の日本武道館や渋谷公会堂での公演にもコーラスで参加しており、バンドとの繋がりも深いヴォーカリストだった。ご冥福をお祈りしつつ、演奏を噛み締めた。

80年代産業ロック的なトラックに載せて歌われる「なぜ人を殺しちゃいけないのだろうか?」、メランコリックなポップチューン「宇宙の法則」と新作からのナンバーが披露され、再びスクリーンが下ろされると、2019年6月30日に東京・中野サンプラザホールでの30周年記念イヤーを締めくくるファイナル公演の開催が発表され、フロアが一気に沸いた。

続けて上位ランキングの発表。ベスト10は以下の通りである。

【筋肉少女帯メジャーデビュー30周年記念!投票企画
~あなたの好きな筋少楽曲に清き1票をお願いします~ 結果発表ベスト10】
1位 サンフランシスコ
2位 機械
3位 釈迦
4位 サーチライト
5位 僕の歌を総て君にやる
6位 夜歩く
7位 再殺部隊
8位 いくじなし
9位 詩人オウムの世界
10位 くるくる少女

後半突入。第1位に輝いた人気曲にして劇的なナンバー「サンフランシスコ」が披露され、「バトル野郎~100万人の兄貴~」、「再殺部隊」、「釈迦」といったアグレッシヴなキラーチューンで畳み掛けていく。

圧巻のステージだった。一体、この興奮はどこまで上り詰めていくのだろうか。これ以上の体験があるのだろうか。爆音を浴びながらそんなことを思っていた。ところが、フロアの熱も最高潮に達した瞬間に本編終了となるのだった。あっという間の出来事に、我々は夢を見ていたのではないかと感じてしまうのだ。筋少のライヴはいつもこんな気分にさせられてしまう。最初から最後まで観客を飽きさせることはなく、細やかなサービス精神に溢れたステージに惹きつけられっぱなしで、時間の感覚がなくなってしまうのである。全19曲中9曲も披露された新曲の完成度がセットリストをより充実させていたことも大きく作用している。アンコール3曲で再び赤坂ウェンブリー・スタジアムをひとつに纏め上げ、楽しい時間は終了した。来年6月30日の中野サンプラザ公演まで、様々なイベントが企画されているという。まだまだ楽しみは続くのだ。

筋肉少女帯メジャーデビュー30周年記念
オリジナルNew Album「ザ・シサ」リリース・ツアー
12/9(日)マイナビBLITZ 赤坂
<SETLIST>
                   
01. オカルト
02. 暴いておやりよドルバッキー
03. I,頭屋
04. 衝撃のアウトサイダー・アート
05. ネクスト・ジェネレーション
06. マリリン・モンロー・リターンズ
07. ゾンビリバー ~ Row your boat
08. イワンのばか
09. 人間のバラード
10. 夜歩くプラネタリウム人間
11. なぜ人を殺しちゃいけないのだろうか?
12. 宇宙の法則
13. サンフランシスコ
14. バトル野郎~100万人の兄貴~
15. 再殺部隊
16. 釈迦

Encore
17. パララックスの視差
18. 機械
19. ディオネア・フューチャー

筋肉少女帯
「ザ・シサ」

■初回限定盤A(CD+BD)TKCA-74724
[収録曲]
01. セレブレーション
02. I,頭屋
03. 衝撃のアウトサイダー・アート
04. オカルト
05. ゾンビリバー ~ Row your boat
06. なぜ人を殺しちゃいけないのだろうか?
07. 宇宙の法則
08. マリリン・モンロー・リターンズ
09. ケンヂのズンドコ節
10. ネクスト・ジェネレーション
11. セレブレーションの視差
12. パララックスの視差

BD:「筋少動画02」
[月光蟲レコーディング風景や、MV撮影時のオフショット、さらには移動時やステージ裏でのシーン満載のライヴ映像など“レア映像流しっぱなし!90年代の記録”を収録]
・大槻ケンヂによる「筋少動画02」ライナーノーツ封入
・トレーディングカード1枚封入 *全10種のうち1種ランダム

■初回限定盤B(CD+DVD)TKCA-74725
CD:初回限定盤Aと同一内容
DVD:初回限定盤Aと同一内容
・大槻ケンヂによる「筋少動画02」ライナーノーツ封入
・トレーディングカード1枚封入 *全10種のうち1種ランダム

■通常盤(CD) TKCA-74726
CD:初回限定盤Aと同一内容
・トレーディングカード1枚封入 *全10種のうち1種ランダム
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