人間椅子 鈴木研一<b>三十周年記念ベスト盤発売記念インタビュー
──まず最初に結石でライブを欠席したときの話(※)からお伺いしたいのですが。
鈴木研一(以下、鈴木) ライブ飛ばした1ヶ月後に同じ先生にMRIで見てもらったら、2個あった結石のうち、1個が消えていたんです。石が出るときってわかるのかな、と思ったら全然わからなかったですね。自分としては小便したときにカランコロンって音でもするのかなと思ったんですけど、そんなことはまったくなかった。気が付かないくらい小さかったのかな…。
──僕の友人も最近結石になったんですけど、医者から「自然に出ますよ」って診断されていました。
鈴木 そうなんですよねえ。
──死ぬほど痛いらしいですけど、死ぬことはない病気です。
鈴木 看護師さんに「お産と同じくらいの痛みですから」って言われたんですけど、こんなに痛いのかと。女性の気持ちがよくわかりました。
──やっぱり背中が痛むんですか。
鈴木 そう、ちょうど腎臓がある背中の部分が痛くなるんですけど、そのうち痛みが他の場所に移ったのか、膀胱とかの辺りも痛くなるんです。一日半くらいかけて痛みを味わっていた…。
──のたうちまわっていたんですか。
鈴木 ええ、じっとしていられないんですよ。病気になって夜中にタクシーに乗っているときが一番つらかった。でもまだあと1個石が残っているんですよ。「早く出してもらうわけにはいかないですか」って、医者に相談しても「自然に出るのを待つしかない」という。あまり激しい運動をするのはよくないらしいんですけど、落ちてきて痛くなったら跳ねるしかないって。
──え、ぴょんぴょん跳ねるんですか。
鈴木 跳ねれば早く落ちるんです(笑)。なったら試してみてください。
──わははは! なりたくないですけどねえ。
鈴木 調べたんですけど、食べちゃいけないものがたくさんありますね。絶対に食べちゃいけないのが、ほうれん草とタケノコなんです。シュウ酸っていう極悪な物質が入ってるんですよ。お腹の中でカルシウムと結合して腎臓に入って石になるという。
──ほうれん草って体に良さそうですけどねえ。
鈴木 もう野菜ジュースにほうれん草が入っていたら飲まないし、ラーメンは支那竹を外して食べるようにします。あとコーヒーとお茶がダメなんですよ。僕は水飲まないでコーヒーばかり飲んでいたのでヤメました。それにしても、尿管結石になったミュージシャンって他にいるんですかねえ。
──知らないですけど、いっぱいいると思いますよ(笑)。気づかない人もいるみたいですし。
鈴木 グレッグ・レイクとかジョン・ウェットンとか結石になってそうですけどね。
──ふたりとも亡くなってますけど、ありそうですね。クリス・グレンもヤバそうです。
鈴木 やっぱり太った人がヤバいらしいですよ。僕は今、水しか飲んでないから少し痩せました。でも勝負は50からですよ。40くらいなら暴飲暴食しても大丈夫でしょうけど、50過ぎたらウォーキングとかしないと。
──鈴木さんは山に登っていらっしゃいましたよね。
鈴木 そうなんですよ。暇なときは登るんですけど、レコーディング前の作曲期間は全然登らなかったんです。そうしているうちに石騒ぎですよ。やっぱり運動しないというのはよくなかった。
──じっとしてるとダメなんですよね。肩もグルグル回していないと、上がらなくなりますし。
鈴木 はいはいはい。僕も50肩になって、ライブで腕を上げたらバキッといって、そこから半年くらい腕が上がらなくなっちゃって。その後、『ためしてガッテン』でやっていた手を上げて体を壁の方にくっつけるみたいな運動をこまめにやっていたら良くなりましたけど。
──本当に健康には気をつけないとダメな年頃ですよねえ。
鈴木 すべては肥満からきているんです。だから今はもうコーラもやめたし、缶コーヒーの甘いのもやめました。少しづつ体重は落ちてきていますからいい方向に進んでいると思います。こうなる前はめまいも酷かったんですよ。例えばバイクに乗ってて、ちょっと右向くだけでめまいがしたんです。
──ええっ…!
鈴木 凄まじい量の糖分をやめただけでだいぶよくなった。ちょっと自分はかなりヤバい状態だったのかもしれませんね。ここで病気になっておいて良かったのかもしれません。ライブを観に来てくださったファンの人には悪いことしちゃいましたけど。
──また行けばいい話ですからね。あとタバコもやめたほうがいいですね。
鈴木 レコーディングとか曲作るとき、やっぱりアレがないと乗り切れません。
──和嶋(慎治/ギター)さんも吸ってますよね。
鈴木 和嶋君、やめるって何度も言ってますけどね。でも結局また吸ってる。じゃあ最初からやめるって言わなければいいんだけど(笑)。
──吸う場所もないですからね。ルノアールも禁煙になりますから。そのうち喫茶店って言葉が死語になりますよ。
鈴木 気になるのはパチンコ屋ですね。タバコなしでギャンブルは考えられない。同じくライブもそうだな。ライブとタバコってセットじゃないですか。最近は禁煙の楽屋ってあるんですよ。意味がわからないですよ(笑)。
──若い人たちは吸わないですからねえ。
鈴木 吸わないらしいですね。ギターのヘッドにタバコ挿して演奏するみたいな人もいないのかな。キース・リチャーズとか。
──アレを真似する人はもういないかもしれません。ロックのイメージも変わりますね。
鈴木 やけに健康的になるのかな。とにかくレミー(・キルミスター)みたいな人はもう出てこないんでしょうね。病気だって言うのにお酒飲んでタバコ吸ってスロットやってるんですから。
──お酒はジャックコーク。糖尿なるに決まっていますよ。
鈴木 昨日、人間ドック予約入れたら「いっぱいです」って言われちゃって、来月行って来ますけどね。
──なんだか切実な話になってしまいました(笑)。でもこの30年、健康のこと、将来のことを考えながらバンドやって来たわけじゃありませんよね。
鈴木 まあ幸い大きな病気もしなかったですから危機感もなかった。3人のうち自分が真っ先に死ぬんだろうなって思うんですけどね。で、そんな話ばかりよく楽屋で話してるんですけど、誰も否定しないんです(笑)。
──わははは!
鈴木 やっぱりみんなそう思ってるんだと思って。
──和嶋さんは健康なんですか。
鈴木 あまり食べないから、痩せすぎなんじゃないかってくらい痩せてるんですよ。だから肥満からくるような成人病はないでしょうね。あるとしたらタバコの吸いすぎかな。
──お酒も飲みますからね。
鈴木 でも酒はツアー中は最終日まで頑なに飲まないですよ。演奏に差し支えるからってね。ギタリストの鏡ですね。
──お酒はボーカリスト的にもよくないらしいですね。そして今回のツアーは仙台から始まって全7公演あります。
鈴木 あまり多くしなかったんですよ。サンプラザまでに力を残しておかないと。十数箇所とかいっぱいまわっちゃうと、最後はヘロヘロになっちゃうから。
──そしてドイツ、イギリス公演も決まりましたね。
鈴木 僕は行ったことがないから想像もつかないんですけど。行ったことありますか?
──僕はドイツは行ったことが無いんですけど、カムデンのアンダーワールドに行ったことがあります。
鈴木 カムデンっていうのは東京で言うと新宿みたいな街ですか。
──原宿みたいなところです。近くの屋台でパチもんのTシャツがいっぱい売っていますから楽しいと思いますよ。
鈴木 楽しみだなあ。ブラック・サバスの出身地、バーミンガムにも行ってみたいんだけど、他にも「ベーカー街221B」っていうシャーロック・ホームズの家にも行ってみたいんですよ。ついでにもう一泊して地元のハードロック・バンドのライブも観たかったんだけど。どうもそんな暇も無さそうだなあ。
──せっかく行くんですから楽しみたいですよね。
鈴木 もちろんライブやるのは楽しみなんですけど。海外でやってみたいという気持ちはずっとありましたからね。お客さんが入っても入らなくてもやりたかったから。
──ここから火がつくこともありますよ、きっと。
鈴木 もうギャンブルですね。でもまあ、そんなに大爆発するような音楽ではないんじゃないかな。
──いやいや、人間椅子の音楽はイギリス向きだと思いますよ。ドイツも向いていると思いますけど。ライブまでにまだ時間がありますからガンガン海外に向けて発信していけば。
鈴木 マニアックな人にはウケる自信があるんですけどね。古くからのハードロック・ファンがYou Tubeを観てくれるといいですけど。
「海外で『ネクストソング、コールド~』みたいなMCやってやろうかと」
鈴木 昔は開店から閉店までいましたけど、最近は意外と忙しくなりましたから(笑)。
──リリースイベントもたくさん入ってますしね。ツアー中はパチンコ行かないんですか。
鈴木 ツアー中は風邪ひくから行かないようにしています。結構な確立で風邪ひくんですよ。たぶん体が弱っているからだと思います。寒空の下、スキンヘッドでパチンコ屋を探して歩くだけで風邪ひくんですよ。
──そうなんですか(笑)。
鈴木 スキンヘッドをやったことがない人がスキンにすると、すぐに風邪ひきますよ。5厘刈りでも1分刈りでもいいんですけど、少しでも髪の毛があれば大丈夫なんですけど、剃ったら一発で風邪ひきます。弱点を剥き出しにして歩いているようなもんですからね。だからツアー中はなるべく打たないようにしたんです。
──ベスト盤の話に戻りますけど、ジャケットのアートワークにはどんな意味があるのですか。
鈴木 外国に向けてのベスト盤だから日本っぽい感じ、象徴的なものがいいのかなと思いました。そういう風に思って見ればなかなかいいジャケットですよね。そう思わないで見ると、普通の風景写真に見えちゃう(笑)。
──どんなライブになるんでしょうね。
鈴木 なんだったらMCも練習しようと思ってるんだけど(笑)。
──海外のバンドが日本に来たとき「コンバンワ」って言う感じで。
鈴木 「ネクストソングコール~」みたいな(笑)。ゴルフの石川遼君がやってるスピードラーニングの一週間無料体験をやってみようかなと思っています。
──わはははは!
鈴木 やっぱりLとRの発音って難しいですよね。
──新曲は“愛のニルヴァーナ”ですけど、たぶん“ニルヴァーナ”って発音は通じませんね。
鈴木 ああ、そうか(笑)。
──でも日本語的な英語の方が味があっていいと思います。
鈴木 日本語の英語か本物英語か、どちらかに寄せた方がいいですね。
──サンプラザ公演がますます楽しみになってきました。
鈴木 今度のツアーはこのベスト盤の選曲から新曲もやると思いますけど、それにレア曲もプラスして、バンド30年の総決算ライブになる予定です。
(※)2019年9月7日、長野CLUB JUNK BOXで行われる予定だった人間椅子のライブを鈴木が体調不良で欠場、急遽和嶋慎治/Vo&G)とナカジマノブ/Vo&Dr)の二人によるアコースティック・ライブが行われた。
2019年12月11日発売
初回限定盤(2CD+30周年記念手拭い) TKCA-74870
通常盤(2CD) TKCA-74871
※全楽曲の英語の翻訳詞をブックレットに掲載
※CD収録内容は初回、通常盤共通。全25曲
<DISC1>
命売ります
陰獣
針の山
なまはげ
芳一受難
人面瘡
羅生門
品川心中
りんごの泪
雪女
賽の河原
異端者の悲しみ
ダイナマイト
どっとはらい
<DISC2>
愛のニルヴァーナ *新曲
悪夢の序章 *新曲
宇宙からの色
洗礼
相剋の家
地獄
深淵
死神の饗宴
黒猫
芋虫
無情のスキャット
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