年末恒例のメタル大忘年会<HEAVY METAL SOUNDHOUSE 2019>開催記念、DJ伊藤政則インタビュー
Interview by 倉田真琴
伊藤 BURRN!ONLINEが始まってからサウンドハウスのことを訊かれるのは初めてだよね。せっかくだからイベントが始まった頃の話をしようか。
──是非お願いいたします。
伊藤 大貫憲章さんが1980年からツバキハウスで『LONDON NITE』を始めたわけなんだけど、その前は西麻布のトミーズっていう小さなバーでDJをやっていたんだよね。大貫さんがザ・クラッシュの『ロンドン・コーリング』発売直後の16tonsツアーを観に行って、そこに出演していたDJ(※01)に感化されてトミーズでDJをやり始めたんだ。僕もよく遊びに行っていたんだけど、それほど大きな音ではなく普通に会話ができるくらいのレベルで音楽が流れていた。するとこれが評判になって、ツバキハウスの人に引っ張られてやることになったんだよね。
──それが1980年の話なんですね。
伊藤 僕もその頃、ニール・ケイが『BANDWAGON』(※02)をやっていたことは知っていたからね。ヘヴィ・メタルでもDJイベントをやりたいということで、いろいろとツテを探していたんだ。その頃、後にアースシェイカーやアウトレイジの著作権でお世話になる渡辺音楽出版のTさんという、人脈の広い人に相談してね。すると、すぐに「それいいね」っていう話になって動いてくれたんだよ。それでツバキハウスを経営している日新物産の偉い方を紹介してもらったの。それが1981年の春頃だったと思う。やはりその人も「面白いね」と言ってくれたんだよね。二週間後に再びミーティングしたとき、新宿ツバキハウスの店長の増田さんを連れてきた。ツバキハウスは六本木にもあったんだけど、やっぱり大貫さんもやっていることだし、新宿でやるのがいいんじゃないかという話になった。しかし、スタート当初は、なぜだかわからないけど毎週月曜だった。大貫さんも他のインタビューで回想していたけど、客層が全然違うし、ディスコDJと交代でやるからなかなかうまくいかなかった。“愛のコリーダ”がかかるとフロアに人が集まるんだけど、ロックがかかると人が引いたりして。テーマはアイアン・メイデンの“ランニング・フリー”だったけど、その曲だけはウケがいいんだよね。
伊藤 マイクが下に置いてあるのと、上から垂れ下がってるのと2種類あるでしょう。マイクが下にある方が1981年。82年以降はマイクが上からぶら下がってるの。
──なるほど、DJブースの仕様変更があったんですね。
伊藤 ちなみに僕はビング・クロスビーの顔がプリントされたトレーナーを着ているんだけど、これはUFOのフィル・モグとピート・ウェイが『SOUNDS』紙の表紙を飾ったときにフィルが着ていたのと同じものだよ(※03)。1980年にハイ・ストリート・ケンジントンの裏にあったブティックでたまたま見つけて買った。で、91年にUFOが来日したとき、インタビューにこれを着ていったんだよ。フィルもピートも僕を指さしてマジで驚いていたよ。もう1枚の女性の顔が大きくプリントされたやつも同じブランドだと思う。懐かしいなあ。
──ツバキハウスで開始当初はなかなか客が集まらなかったわけですが、いつからお客さんが増えたんですか。
伊藤 「月曜じゃダメだな」ってボヤいていたら、「それじゃあ日曜はどうですか」という話になって、移動することになった。そんなときに中野サンプラザで『ミュージック・ライフ』主催のヘヴィ・メタルのフィルム・コンサートがあって、その舞台上で「是非来てください」って宣伝したり、『ミュージック・ライフ』で記事を書いてもらったりしてね。
伊藤 少しづつだね。お客さんが入り始めたのは、82年から83年あたりじゃないかな。口コミで増えていったんだろうね。ツバキハウスはキャパ1000だったんだけど、いつのまにか毎週500、600人くらい当たり前に入っていた。このフロアの写真は普通の日曜日の風景だよ。夏になるとバケツに氷を入れて、そこにビールの大瓶を数本差したやつを店の従業員が僕に持って来るんだよね。人が多すぎてDJブースからバーまで取りに行けないからね。
──そこまでお客さんが入っていたんですか。
伊藤 1987年12月にお店が終わるんだけど、それまでずっと毎週盛況だったよ。
──伊藤さんも若かったから、飲みながらやってたんですね。
伊藤 うん、ビールをよく飲んでいたね。ぐでんぐでんになることもあったけど(笑)。若いからぐでんぐでんでも何とかなったんだよね。
──ツバキハウスはなぜ終わったんでしょうか。
伊藤 他のディスコを経営している会社に買収されたと聞いている。その後、僕たちは流浪の民のごとく転々として、最終的にCLUB CITTA'に辿り着いたという感じになるわけだけど。大貫さんもミロスガレージとか転々としていたわけでしょう。
──ツバキが終わって、HMサウンドハウスはインクスティック芝浦でもやりましたね。その次が新宿のクロスポイントで。
伊藤 細かい順番は覚えていないんだよなあ。
──それでCLUB CITTA'で月イチでやって、その次が1992年から新宿のGB・RABBITSにて再び毎週日曜開催になります。
伊藤 GBの一回目は凄かったね。あまりの行列に警察が来たんだから。
──軽く1000人は来ていました。いや、もっと来ていたかもしれません。コマ劇の前まで列が延びていましたね。
伊藤 やっぱりBURRN!の表2広告がインパクトあったんだろうね。みんなが復活を待っていてくれたわけだ。で、GBの次がCLUB CITTA'に戻って年一回のスタイルに落ち着くわけだね。そういえば、20周年のときは夏に渋谷AXでやったから年二回やったこともあるよ。バックチェリーのアンプラグド、ポール・ギルバート、マイケル・アモットとアンジェラ・ゴソウ、デイヴ・ムステインとアル・ピトレリが出演したんだよ。結構豪華なメンツだったから、もちろんソールド・アウトだった。
──そんなわけで現在、38年続いているイベントということになります。さて、今回の出演者で大きな話題となっているのは、久しぶりの和田誠さんですね。
伊藤 そうだね、いつ以来なのか覚えていないくらい久しぶりだからね。去年もオファーしていたんだけど、彼の体調が悪くてね。今年は大丈夫、やる気満々だよ。LOVEBITESのmihoは3年連続。彼女はこういう選曲にしたいと、ちゃんと訊いてくるよ。真面目だからね。僕はいつも好きにしていいよって言うけど。去年のマーティ・フリードマンにしても選曲の縛りなんてないから。でも今年はDJが3人だけなんだよ。
──OUTRAGEのライブがありますからね。
伊藤 OUTRAGEは2019年1月1日からNWOBHMの40thリスペクト企画が始まったわけだけど、ちなみに世界で一番最初に宣言したのが彼らなんだよ。この一年の締めくくりとして今回のステージがあるというわけ。レアなカバー曲をたくさんやってくれるでしょう。
──そしてTHE MANも楽しみです。
伊藤 今回出演するレフティーのギタリストの斉藤和正は、清水明男が加入する際のオーディションに参加していたんだよ。残念ながら様々な理由で加入しなかったけどね。グラハム・ボネットが参加した『HEAVY METAL ANTHEM』(2000年作)に2曲参加(※04)しているギタリストで、かなりのテクニシャンだよ。斉藤と清水のツインギターは、ANTHEMの歴史上、結構、凄いことになるでしょう。THE MANは50分くらいやるんじゃないかな。
仕様:A4サイズ (見開き使用時 A3サイズ)
2020年1月〜2021年1月まで月めくり28頁
写真:菊池茂夫
価格:1,000円(税込)
※12/15(日)クラブチッタで開催の『HEAVY METAL SOUNDHOUSE 2019"』会場内ディスクユニオン・ブースにて先行販売。先着購入特典として、直筆サイン入り 1982年新宿ツバキハウスのポートレートを使用した"特製ポストカード"を贈呈!
──そして今年のグッズ、ビールのラベルを見たんですけど、素晴らしいですね。
伊藤 そう、写真家の菊池茂夫氏に撮ってもらったんだよ(※05)。ビールは4本入り50セットとバラが少しあるくらいだから、すぐに売り切れちゃうんじゃないかな。中身も初めて販売する味なんだよ。とくにオーガニックのビールは繊細な味で、酵母に干し柿を使っているから甘みと酸味がある。ヴァイツェン・ボックはドイツで冬に飲まれているアルコール度数高めの伝統的なビール。どちらも美味しいよ。で、ビールの4本セットを買ってくれた人はツーショット撮影会もあるんだけど、さらに特典用に今、メッタリマンシールを作っているんだ。出演者の顔でディープ・パープルの「Burn」のジャケットを作ってみたんだけど、これは近日公開できると思う。
──面白いですねえ。
伊藤 あとバンドの各ブースでグッズを買うとそれぞれのポストカードがもらえるよ。また、サウンドハウスのオフィシャルTシャツを買うと先着でサイン入りポストカードがもらえるお渡し会の整理券が配布される。例えば、和田さんのお渡し会では、僕と和田さんの昔の写真のポストカード。
──あのロック喫茶「レインボー」の前で撮った写真ですね(※06)。
伊藤 そう、あれが額縁に入ったデザインになっている。すべて限定だから早めに来ないと売り切れちゃうよ。あとカレンダーも作った。さっき名前が挙がった菊池さんの撮りおろし。伊藤政則カレンダーの特典は、1982年にツバキハウスのDJブースで撮った写真のポストカードだよ(※07)。
──例年以上の盛り沢山な内容じゃないですか。
伊藤 たぶん過去最大級じゃないかな。ビールとカレンダーはディスクユニオンが販売するし、渋谷BLITZも出店する。年一回のお祭りだからね。できるだけ多くの人に楽しんでほしいね。
──ちなみに選曲はいつやっていらっしゃるんですか。
伊藤 まったく。いつもギリギリというか、あまり決めてないよ。
──今年は来日が発表になったからアイアン・メイデンの曲が盛り上がりそうですね。
伊藤 ああ、間違いないね。あとはスレイヤーも盛り上がるだろうね。3月のDOWNLOADフェスの余韻もあるから、もちろんジューダス・プリーストとか、mihoが大好きなアンスラックスとかね。いろんな曲がかかると思う。和田さんの選曲も楽しみだね。
──本当にいろいろ楽しみです。ありがとうございました。
<脚注>
(※01)今も現役のDJとして活動しているバリー・マイヤースがクラッシュのツアーで開演前にレゲエやロカビリーをかけていたという。
(※02)1978年にロンドンにてDJのニール・ケイがハードロックのクラブ・イベント『BANDWAGON』をスタートさせる。
(※03)英『SOUNDS』1980年1月26日号の表紙がこちら。
(※04)“GYPSY WAYS(WIN, LOSE OR DRAW)”と“MR. GENIUS”の2曲に参加。
(※05)ビールのラベルはこちら。
(※06)『HEAVY METAL SOUNDHOUSE 2019 』オフィシャルTシャツとTHE MAN Tシャツ どちらか1点お買い上げで①THE MAN ②和田 誠 ③OUTRAGE ④LOVEBITES のいずれかご希望のサイン入りポストカードお渡し会の参加券を限定枚数配布。和田さんのポートレイトはこちら。
(※07)カレンダーの特典“伊藤政則直筆サイン入り1982年新宿ツバキハウス ポートレイト”。
ーMAKE EPOCH!ー』
2019年12月15日(日)
OPEN 16:00 / START 17:00
会場:CLUB CITTA'
出演:伊藤政則
【GUEST DJ】
和田 誠 / miho (LOVEBITES)
【VERY SPECIAL GUEST】
THE MAN 『GOLDEN AGE OF...』
OUTRAGE 『N.W.O.B.H.M. 40th Anniversary Final』
【座種/料金】
オールスタンディング
前売り¥4,000(税込)
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