藤木昌生の密かな楽しみ Vol.11 ~ 気まぐれプレイリスト 4

藤木が思いつきで好きな曲をアルバム形式で並べて適当なコメントを添える企画『気まぐれプレイリスト』、時々「そういえば、あの曲は良かったな~」と思い出しては候補曲リストに追加してるんですが、根が軟弱メロハー野郎なので、どうしてもバラード系が多くなってしまいます。アルバム形式で選曲していくと、バラードは1回に入れられるのが2~3曲が限度だろうということになって、紹介できないバラードが溜まっていくという魔のスパイラル…。一度バラード・アルバムみたいなのをやって消化しないといけないかなと思っておりますが、やはり血気盛んなメタル野郎の皆さんはバラードばかりだと辟易しちゃうでしょうか?(笑)

とりあえず『気まぐれプレイリスト』の4回目、行ってみましょう。しばしお付き合いいただければ幸いです。

SIDE A
1. 聖飢魔II ”地獄の皇太子は二度死ぬ”→ Spotifyで聴く
このバンドはデビュー当時から気に入っていたんだけど、世間でどんどんビッグになっていくのとは裏腹に、3rdアルバム以降はバンド創設者のダミアン浜田の書いた曲がどんどん減っていって、音楽的に僕の好みから離れていって、興味も薄れていた。そんな時、1996年の9th「メフィストフェレスの肖像」の音を当時のレコード会社の人が、頼んでもいないのに送ってきてくれて、聴いてみたら、まさに原点回帰のような素晴らしいアルバムでぶっ飛んだという…。そのアルバムのオープニングを飾るのがこの曲で、作曲はルーク篁。このアルバムにダミアンは3曲を提供しているけど、他のメンバーが書いた曲もダミアン路線に寄っていて万歳。聖飢魔Ⅱをまともに聴いたことがないという人には、まずは「メフィストフェレスの肖像」がおすすめです。
2. WHITE SISTER ”Straight From The Heart” → Spotifyで聴く
元ANGELのグレッグ・ジェフリア<key>がGIUFFRIAでデビューして全米15位のヒット・シングルを生んで成功した後、新人バンドをプロデュースして世に送り出す!ということでちょっと話題になったのが、このWHITE SISTERだった。正直なところ、僕はGIUFFRIAの音楽にはあまりピンと来てなかったので、このWHITE SISTERを聴いて「こっちの方が全然いいじゃんか!」と思ったものです。でも、当時のLAメタル全盛の中で、このバンドは「その他大勢」の1つで終わってしまいましたね。
3. USER(OF A COMMON NAME)”Do You” → Spotifyで聴く
スウェーデンの男女混成4人組。2003年のデビュー・アルバムからのシングルとして多少ヒットしたみたいで、2005年に遅ればせながら日本デビューが実現した。世間的にはアヴリル・ラヴィーンを筆頭にガールズ・ロックがブームになっている中でデビューしたけど、日本のHM/HR界ではまだガールズ・メタル(女性ヴォーカルのメタル・バンド)が市民権を得るちょっと前で、このUSERはあと数年デビューが遅かったらもう少し多くのリスナーに支持されていたかも、という気がする。でも、当時の日本のレコード会社はショウケース来日もやってくれたし、情熱を持って仕事をしてくれてました。
4. USER(OF A COMMON NAME)”To Feel”→ Spotifyで聴く
USERは上の”Do You”が最大のヒット曲で、ドイツの人気バンドALOHA FROM HELLにカヴァー(曲名は”No More Days To Waste”に変更)されたりもしたけど、その曲だけを聴いて「ああ、明るいパワーポップ系のバンドね」と一蹴されたら嫌なので(笑)、もう1曲ピックアップしました。こういう泣きの入った曲もやれるバンドだったんですよ。中心人物だったリンダ・カールステット<vo>は本当に天才的なソングライター(かつ歌声もめっちゃ魅力的)だと僕は思っていて、以前『Frontiers Records』にも彼女を起用しろと提案したりしたんだけど、すでに引退していて消息不明で…。しかし、最近ようやく彼女の連絡が取れたので、是非またメロディック・ロック界に復帰してくれたらなと思ってます。
5. SKAGARACK ”Hungry FOr A Game” → Spotifyで聴く
80年代の北欧メタル・ブームの中で登場したデンマークのバンドで、デビュー・アルバムも日本発売されたけど、ポリドールがろくに宣伝しなかったから、全然注目されずじまい。その後、1988年の2nd「HUNGRY FOR A GAME」でビクターに移籍して、多少は宣伝してもらえたけど、当時のビクターはやっぱりジャーマン・メタル勢のプライオリティが高かったからね~。その2ndアルバムのこのタイトル曲はポップさと哀愁が絶妙にブレンドされた秀曲だと思います。ちなみに、オリジナルのジャケがあまりにダサかったので、この日本盤ジャケに変更されたんでしょうね。

SIDE B

1. GILLAN ”Future Shock” → Spotifyで聴く
以前にBURRN本誌でも書いたと思うけど、イアン・ギラン率いるこのGILLANはメンバー全員がバラバラの個性を発揮していて、それでいて音楽的には判りやすくてカッコいいメタルで、かなり稀有なバンドだったと思う。ぜひ動画サイトで1980~81年頃のGILLANのライヴ映像をチェックしてみてください。バーニー・トーメ<g>は華のあるプレイヤーで、でも出す音はズルズルの粘着質のギター・サウンドで、ランディ・ローズが他界した直後に彼が代役に抜擢されたのが何となく頷ける。
2. X-RAY ”Don't Lie, Don't Touch” → Spotifyで聴く
80年代中頃のジャパメタ・ブームの中で活躍したバンドだが、1983~85年に4枚のアルバムを出しただけで消滅してしまった。4th「STRIKE BACK」が素晴らしいアルバムだったので、余計に解散が残念だった。叙情的でキャッチーな曲も良いし、藤本 朗の強烈なハイトーンも素晴らしいんだけど、何といっても湯浅 晋のギター・プレイが圧巻。この曲のギター・ソロはジャパメタ史上に残る名演だと思う。ギタリストというのは偶数小節ごとにソロのフレーズを組み立てる習性があるんだけど、その枠に囚われずに自由に弾いてるところが凄い。湯浅はデビュー当時17歳だったから、20歳か21歳でシーンから姿を消したことになる。勿体ないというか何というか…。
3. PROPHET ”Street Secrets”→ Spotifyで聴く
1985年当時、伊藤政則氏のラジオ関東『ロック・トゥデイ』で初めてこの曲を聴いた時の衝撃を今でも覚えている。イントロを聴いただけで普通のメロハー・ファン、プログレ・ハード・ファンは脱糞だよね。(笑) その後、『ロック・トゥデイ』やBay FM移籍後の『パワー・ロック・トゥデイ』に何度もこの曲をリクエストしたけど、一度も採用してもらえませんでした。(笑)この曲が入った1st「PROPHET」はテッド・ポーリーがドラムを叩き、数曲でリード・ヴォーカルを担当してるってことでDANGER DANGERのファンの間でも有名なのかな? この曲で歌っている正式シンガーのディーン・ファサノはBON JOVI加入前のリッチー・サンボラとMESSAGEをやっていた人だけど、2009年に他界してしまった。
4. SWEDISH EROTICA ”We're Wild, Young And Free” → Spotifyで聴く
このSWEDISH EROTICAが出てきた時は「北欧出身のくせに野卑なロックン・ロールなんてやりやがって」と毛嫌いしたものだ。(笑) 当時は、北欧から様々なタイプのバンドが登場するようになって、それまでの北欧メタルのイメージが崩壊していった時代だった。それでも、この曲を聴いて「いや、でもブリッジからサビにかけての展開は見事で良い曲だな」と感心していた。何年も経ってから、この曲を書いたのがオーレ・エヴェンルードだと知って「なるほどね」と思うわけですが…。イングヴェイがニュー・シンガーにマッツ・レヴィンを起用したと聞いた時は、このSWEDISH EROTICAのイメージしかなかったので、おいおい勘弁しろよと思ったけど、実際に聴いてみたらマッツは凄い実力者で、ごめんなさい!と心の中で土下座したのでした。(笑)
5. THE STORM ”Show Me The Way” → Spotifyで聴く
JOURNEYのスピンオフ・バンドなんて言っちゃいけませんぜ。いや実際、JOURNEYのアルバムでTHE STORMのアルバムに匹敵する作品があるとすれば、「ESCAPE」がギリギリいい勝負かも…というのが僕の個人的な感想です。この曲は産業ロックのバラードの理想型を絵に描いたような美麗な曲で、ケヴィン・チャルファントの圧倒的な歌唱力があればこその名曲。そして、ジョシュ・ラモスのギター・ソロも悶絶級。いかに少ない音数でいかに多くを語るか、それを見事に体現したのがこのギター・ソロだと思う。歌詞の内容からして、この曲はSURVIVORの”The Search Is Over”と双璧を成す結婚式ソングではないでしょうか。(笑)

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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