藤木昌生の密かな楽しみ Vol.10 ~ 気まぐれプレイリスト3

先日、ライターの川合(Jun Kawai)さんから「この10歳のギタリスト、上手です」とYouTubeのリンクが送られてきたので観てみたら、まさに「将来有望な逸材だ!」と思ったので、ぜひ皆さんもチェックしてみてください。

Kinoko Helmetという名前でギター演奏動画をアップしているこの少女、本当に上手い。特に右手のピッキングが素晴らしくて、僕も若い頃はこういう軽やかで無駄のないピッキングを目指してさんざん練習したけど全然ダメだったな~。最近の日本のシーンで活躍してる女性ギタリストでも、こういう見事なピッキングを体得してる人はほとんどいないんじゃないかな。このKinoko Helmetちゃんは、もしかしたらLi-sa-Xのピッキングとかをお手本にしてるのかな?(ということは、つまりポール・ギルバートがお手本?)と思ったり。

カヴァーする曲のセンスも「憎いね、このど根性ガエル!」てなもんだし、お顔立ちもそのへんのアイドル・グループにいそうな美少女系だし、5年後、10年後にはガールズ・メタル・シーンの中核を担うスター・プレイヤーになっていても全然おかしくない…いや、そうなっていてほしい逸材だと思います。

1999 Secret Object(聖飢魔Ⅱ) 弾いてみた 10歳 ギター練習中
SOLDIER OF FORTUNE(LOUDNESS) 弾いてみた 10歳 ギター練習中
さて、それでは今回も行ってみましょう。僕が思いつきで好きな曲をアルバム形式で並べて適当なコメントを添える企画『気まぐれプレイリスト』の第3回目です。

SIDE A
1. KAMELOT ”Center Of The Universe”→ Spotifyで聴く
KAMELOTはこの曲が入った「EPICA」のツアーで初来日を果たしたわけだけど、そのショウのオープニングがこの曲で、ロイ・カーン<vo>の登場の仕方に度肝を抜かれたのをよく覚えている。(笑) 普通、ライヴのオープニングでフロントマンは場を盛り上げようと、あるいは自分もアドレナリンが出ていて、エネルギーが思い切り外に向かうはずなのに、ロイは目を閉じ、俯きがちに歌いながら登場したのだ。「やべえ、こいつ本気だ」と思った瞬間でした。(笑)
2. WARDRUM ”After Forever” → Spotifyで聴く
現BEAST OF BLACKのヤニス・パパドプロス<vo>が在籍していたバンド。この曲が入っているのは日本デビュー作となった3rd「MESSENGER」で、他にも泣きメロが堪能できる秀逸なメタル曲が多数収録されているし、ギタリストも超絶技巧で、素晴らしいアルバムだったのだが、あまり売れずに終わったらしい。BURRN!のレビューが平凡な点数だったのもあると思うが、サウンド・プロダクションがシンプル過ぎたのがアピールに欠けたのかも…。キーボードや同期サウンドでとりあえず隙間を埋めておけば、より幅広い層のメタル・ファンを引き付けることも出来たかも…?
3. TERRA NOVA ”Hey Babe” → Spotifyで聴く
まだまだグランジ/オルタナ・ブームの余波が残っていて、次のトレンドはメロディック・パンクか、みたいな時代だった1996年に、こういう伝統的メロハーを聴かせてくれるバンドの登場は日本では大歓迎されましたね。TERRA NOVAは単独来日公演もやったし、プチ・ビッグ・イン・ジャパンなバンドと言えるかも。そういえば新作はまだ聴いてなかったな。聴いてみなきゃ。
4. FOREIGNER ”Break It Up” → Spotifyで聴く
個人的には、FOREIGNERのアルバムは「凄い曲が2曲ぐらいあるけど他の曲は平凡」みたいなのばかりで、トータルで名盤と言えるアルバムがなくて、人におすすめするのに困るバンドではあるんだけど(ベスト盤をおすすめすりゃ済む話なんだけど)、メイン・ソングライターのミック・ジョーンズ<g>は間違いなく天才だと思う。彼らの曲に漂う独特の“冷たさ”は唯一無二の魅力だし、後続のメロディック・ロック・バンドが模倣するいくつかの曲作りのスタイルを発明した人だと思う。
5. KILLER ”Stay With Me” → Spotifyで聴く
マニアにとっては、ベルギーのKILLERかスイスのKILLERか、というのは永遠のテーマだと思いますが(そんなわけあるか!)、これはスイスのKILLERです。正直、何枚かアルバムを聴いても特筆すべきものはないバンドだと思うんですが、この曲だけは隠れた名曲だと言いたいです。全体的に朗らかで、おめでたい雰囲気も漂ってますが(笑)、曲の終盤に思わぬ展開が待ってるんですよ。それを聴いた時は、まさに天を見上げてガッツポーズでしたね。(笑)

SIDE B

1. THE UNCROWNED ”SHIVER” → Spotifyで聴く
個人的には、ここ30年くらいに耳にした日本のHM/HR作品の中で最高峰と言えるのがこのバンドのデビュー作「REVIVE」。北欧様式美メタルと90年代ビーイング系の美しき融合とでも言うべきアルバムで、楽曲粒揃いの充実度がハンパない。そのアルバムの幕開けを飾るのがこの曲。SHAL<vo>が癌と闘いながら作り上げた新作が間もなく完成予定だという。彼女は現在も強靭なスピリットと前向きなハートで病と闘っているので、ぜひ応援してあげて!→https://twitter.com/shal_uncrowned
2. KANSAS ”Silhouettes In Disguise” → Spotifyで聴く
KANSASが80年代に入って低迷期を経た後、スティーヴ・ウォルシュ<vo>復帰第1弾となった「POWER」のオープニング曲。スティーヴ・モーズ<g>加入第1弾でもあるが、当時の僕はスティーヴ・モーズという名前は知ってはいたものの、どんなギタリストかよく知らなかった。で、これを聴いてスゲー!と思ったわけです。この爽快にドライヴする曲は、確か当時日本のBLIZARDもカヴァーしていたと思う。
 
3. WARLORD ”Winter Tears” → Spotifyで聴く
すみません、またお得意のへなちょこクサ・メタルでございます。(笑) 日本の伝説的レーベル『FEMS』の作品で初めて買ったのが、このWARLORDの「DELIVER US」だった。盤に針を落とした瞬間は、スカスカなプロダクションにズッコケたが、何度か聴いているうちに怪しく哀しいメロディがクセになってしまった。サンダーチャイルドことマーク・ゾンダー<ds>は今でもこの頃と同じオカズを繰り出すことがあって嬉しくなってしまう。バンドの頭脳だったデストロイヤーことビル(ウィリアム)・ツァミス<g>は昨年他界してしまったけど、心に沁みる音楽を作ってくれて感謝しています。
 
4. HEAVENS GATE ”Livin' In Hysteria” → Spotifyで聴く
このバンドは、80年代終盤~90年代初頭のジャーマン・メタル・ブームの中でしっかりと爪痕を残したと思うけど、ピークは一瞬だったかもね。BURRN!がこのバンドを表紙にしたのは黒歴史か?(笑) いや、でも彼らの「LIVIN' IN HYSTERIA」が楽曲粒揃いの名盤であることは疑いようのない事実だと思う。トーマス・リトケ<vo>は良い声してたよね~。サシャ・ピート<g>が後にプロデューサーとして大成功を収めたのは皆さんご存知のとおり。
5. ASIA ”The Smile Has Left Your Eyes” → Spotifyで聴く
ASIAがデビューした1982年というのは貸レコードが全盛期で、僕も近所の『友&愛』でASIAの1stアルバムを借りて聴いたのだが、あまりにポップだし、ちょっと朗らかすぎたりもして、当時の僕にはすぐに魅力が理解できなかった。でも、この曲が入った2nd「ALPHA」を聴いた時に「この人達、やっぱスゲーんだな」と思うことができて、1stアルバムも楽しめるようになった。この切なく、はかなく、哀しく、美しい至高のバラードは、CHICAGOの”Hard To Say I'm Sorry”と並んでジャンルや世代を超えて人々の心に響く芸術的な作品だと思います。
 

★上記10曲がまとまったプレイリストは → Spotifyで聴く

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