『メタル第7世代~ザ・ワールド・イズ・マイン』 07“絶対可憐”

今回は最近形を潜めつつあるBABYMETAL問題についてです。“問題”という理由は推して知るべし…というわけにもいかないので、自分なりに説明してみますね。
BABYMETALは、元々義務教育下の女の子だけが所属できるアイドルグループ、さくら学院のサイド・プロジェクト「重音部」として結成されました。

東阪でのワンマン・ライブ・ツアーが行なわれるまでは通常のアイドルと同じくカラオケ形式でのパフォーマンスが披露されており、ファンもほとんどがさくら学院から流入した人達だったため、メタラーとの接点はさほどありませんでした。しかし『LOUD PARK 2013』への出演が発表されたことで、多くのメタル・ファンにその存在が知れ渡りました。受け入れ難いという意見が大半でした。

確かにアイドルソングを手掛ける作曲家によるメタル“風”の楽曲を、ガイコツスーツを着たあて振りのバックバンドを従えてパフォーマンスされても「これはメタルだ」と感じるのは難しいでしょう。けれども自身が熱心なメタル・リスナーであるプロデューサーのKOBAMETALさんの戦略でしょうか、敏腕ミュージシャンによる生演奏を背に、メタル系クリエイターが提供した曲を披露する体制へと改革が行なわれました。これによりファンの中のメタラーが占める割合が大幅に増しました。
BABYMETAL - いいね!- Iine! - Live in TOKYO 2012
 非生演奏時代のライブ動画
これがおそらく「BABYMETAL問題」の引き鉄でした。アイドルオタクは当然ながらヘヴィ・メタルに特段のこだわりはありません。楽曲を評価こそすれ、それがメタルと認められるかどうかなどは気にかけていなかったのです。
ですが、メタル・ファンはどうでしょうか。自分の好きなメタルと、自分の好きになったBABYMETALというアーティスト。結びつけたくなるのは当然でしょう。好きなものと好きなものの接点なんて、多ければ多いほど嬉しいのです。仮にバンドとして活動していたならすんなりメタルとして受け入れられていたような楽曲だってあるのも事実です。かくしてメタラーはBABYMETALをメタルの新しい旗手とする層と、BABYMETALはメタルの一角さえ担わないとする層に分かたれました。

この分断と、時折起こる論争こそ私が「BABYMETAL問題」と呼ぶものです。

私自身はさくら学院の水野由結ちゃん時代からYUIMETALを推していましたので、BABYMETALという存在自体に反感を覚えることはありませんでした。
が、同じファン(いわゆるメイトですね)として、なぜそこまでメタルであることを認めさせたいのか?と疑問を感じることがしばしばあります。
BABYMETALはメタルに分類されようがされなかろうがクオリティの高いパフォーマンスと楽曲を提供してくれることに変わりはないからです。他のグループにおいても、高いスキルを持つアイドルに「アイドルとは思えない」だとか、「アイドルではなく最早アーティストだ!」という賛辞を送る風潮がありますし、「(こんなに能力が高いのに)なんでアイドルなんてやってるの?」という声さえ聞きます。

ここで引っ掛かるのは、アイドルはミュージシャンより下位の存在であるとされる空気です。おそらくこの背景にはモーニング娘。の成り立ち――ソロ歌手オーディションに落選した少女たちが、グループとしてデビューした――などがあるのではないでしょうか。
けれど今は名のあるミュージシャンでさえ埋められないキャパシティの会場をアイドルが埋めてみせる時代。アイドルだからって、肩身が狭いとは感じません。それに何より、メンバー自身が元来アイドルをやろうという決意を持ってこの世界に踏み込んできたということを忘れないでほしいのです。

本人が「アイドルを脱したい」と主張しない限りは、アイドルとしての活動形態に否定的な発言は控えていただきたいところ。例え正統なメタルとして認められなくとも、肩書がアイドルだとしても、それが何だと言うのでしょう。私の周りにはアイドルオタクでもなく、メタル好きでもない、BABYMETALファンが何人もいました。その人達にはジャンルに関するエゴはなく、ただ与えられたコンテンツを享受し全力で楽しむ姿勢を持っていました。BABYMETALをただ“BABYMETAL”として応援してみるのも、なかなか楽しいものですよ。
モーニング娘。'14 『What is LOVE?』 (MV)
 歌手オーディションから生まれたモーニング娘。
 現在BABYMETALサポートメンバーとして活躍中の鞘師里保在籍時代の動画。
BABYMETAL - Distortion (LIVE AT DOWNLOAD FESTIVAL 2018)
 アーティストか、アイドルか。
賛否両論あると思われますが、自分が常々感じていたことを書き綴ってみました。
今回はここまでです。ではまた。
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