仰天!インドのメタル・シーンの今 第2回

アジアのメタルシーン
実は人知れず伝統と革新を交えながら成長していたインドのメタル。そんな「今」、知っておくべき新世代のバンドたちを紹介していく。第2回はデリーのバンドたち。ここからメタルの新時代を切り開くニュー・ヒーローが誕生するかもしれない。

インドはデカイ

これで少しはインドのメタル・シーンが思いのほか面白くなってきていることがおわかりになるだろうか。

けれども、人口数世界第2位(2016年)を誇るインド。その国土は世界第7位の面積であり、日本と比べても約9倍近い広さを有しているのだ。山岳もあれば砂漠もある。平野もあれば高原もある。先に述べたように、その広大な土地には多彩で多様な民族、言葉、宗教、文化が渦巻きながら混在している。

だとするならば、さらに多くのユニークなバンドが蠢いているはず。

ここからは、人が集中すれば、当然メタルも集中する大都市を中心に近年注目のバンドを簡単に列挙していこう。

まずは難しいこと抜きに雰囲気だけを感じていただきたいので、詳細はすっ飛ばしてポイントだけをザックリと紹介する。ただし、インドのメタル・ファン同士の会話では頻出ワード(バンド名)だらけ(のはず)だから覚えておくのが吉。

デリーのメタル・バンド

北部に位置するインドの首都デリーは、世界で2番目(2016年)に人口が多い都市であり、政治、工業、商業の中心となっているが、歴史的に貴重な寺院や世界遺産も集中している場所でもある。

おしゃれセンスは世界規模、SKYHARBORとWHITE MOTH BLACK BUTTERFLY

そんなデリーで飛び抜けているのは、第1回でも登場したKeshav Dhar率いるSKYHARBORだ。

残念ながら、2015年にヴォーカリストのDaniel TompkinsとドラマーのAnup Sastry(ex-INTERVALS、ex-MONUMENTS)が脱退するものの、ドラムンベースのOX7GENでの活動やプロデュース業もこなすドラマーAditya Ashokと、米国人ヴォーカリストのEric Emeryが加入。

その後バンドはTESSERACTと北アメリカ・ツアー、DEFTONESとヨーロッパ・ツアーを行うなど積極的な海外進出を続けながらシングルを発表していく。それらの活動と音源からは、彼らのたゆまぬ音楽的な進歩が見て取れ、いやが上にも年内に発表予定の新作に期待がかかるというもの。

さらに中心人物でギタリストのKeshav Dharは、自国のメタル・バンドたちのプロデュース業も数多く手がけてシーンの底上げを行っており、名実ともにインドのモダン・プログレッシヴ・メタル界を先導する存在となっている。

SKYHARBOR - Dim (Official Video)

これが新曲。SKYHARBORは、今年、新たにEntertainment One、Good Fight Musicと契約を交わし、9月7日に約4年ぶりとなるサード・アルバム『Sunshine Dust』を発表予定。
さらにKeshav Dharは、Daniel Tompkins(TESSERACT、ex-SKYHARBOR)と再び手を組んでWHITE MOTH BLACK BUTTERFLYとしても活動。

もはやメタルという範疇を超え、崇高で透明度の高い音楽性を生み出している。

WHITE MOTH BLACK BUTTERFLY - Evelyn (from Atone)

WHITE MOTH BLACK BUTTERFLY。2017年発表のセカンド・アルバム『Atone』より「Evelyn」。

エクストリーム・メタル、UNDYING INC

その他の注目バンドとしては、ヘヴィでグルーヴィかつテクニカルさも持ち合わせたUNDYING INC。

結成から15年を超え、近年は特にメカニカルでモダンなエッジに拍車がかかってきた。

バンドは新たなベーシストを迎え、新作の準備に取り掛かっている模様。

Undying Inc | Alpha Absolute | Official Music Video

2014年のEP以来、3年ぶりに発表された2017年のシングルだけどバッキバッキだぜ!

プログレッシヴ・デス・メタル、FRAGARAK

OPETHやOBSCURAのような雰囲気プラスαを併せ持つプログレッシヴ・デス・メタルのFRAGARAK。

デビュー作は多少のアングラ臭が漂っていたが、現在はかなり洗練されており、その急成長ぶりには目を見張った。

彼らは、中国、マレーシア、シンガポールでのライヴ経験もあり、その中で親交を深めたLouis Rando(IMPIETY、BLOODLUST、ex-NERVECELL)が2017年のアルバム『A Spectral Oblivion』でドラムを叩いている。

FRAGARAK (India) - In Rumination II - Reflections (Experimental Death Metal)

ブラックメタルの基本、1833 AD

2004年から活動を開始し、インドにおけるブラック・メタルのパイオニアとも言われることがある1833 AD。

近年では多少このジャンルも増えてきたものの、彼らのように長期活動できているのみならず、質の高いフル・アルバムを発表して知名度を得ているバンドは少ない。

デビュー・アルバム『My Dark Symphony』を発表してからすでに6年の歳月が経過しているが、インドのブラック・メタルを聴く際のひとつの入り口になるだろう。

1833 AD - Wiser Than The Wisest - Playthrough

オルタナティヴ・ロック、THE CIRCUS

もちろん、そこまでヘヴィでダークではない都会ならではのセンスを持ったバンドもいる。

活動歴10年を超えた中堅のTHE CIRCUS。

彼らはエレクトロなオルタナティヴ・ロックとして知られているが、キャッチーなメロディとコーラスの美しさが際立っている。2016年に発表されたサード・アルバム『With Love』は、これまでよりもテンポを落として成熟したムードとグルーヴ感を強調しながらサウンドの幅を広げた意欲作。

THE CIRCUS - With Love (Official Lyric Video)

Rishabh Seen率いるシタール・メタル、MUTE THE SAINT

今注目を集める若きシタール奏者Rishabh Seen(出身はパンジャーブ州ジャランダール)は、ANIMALS AS LEADERS、MESHUGGAHといった有名メタル・バンドの曲をシタールでカヴァーして世界に広く知られるようになった人物。

彼が国内のリズム隊とアメリカ人ギタリストを従えて結成したのが新進気鋭のMUTE THE SAINT。
シタールがモダン・プログレッシヴ・メタルをリードしていくという新しい分野を開拓した。

SITAR METAL Mute The Saint "Sound Of Scars" Music Video | Metal Injection

醸し出される威厳と神秘性に圧倒される2016年のEPからのPV。

若きヒンディー・メタル、WARWAN

新しい分野といえば、インドのメタル界にまたひとつ新鮮な風が吹き込んできたとして話題になったWARWANがいる。

一部ではPERIPHERYのような多様さとモダンさがあるとして歓迎されているようだが、ポイントとなるのは、世界の"今"を捉えたサウンドにヒンディー語の歌がのることだ。
意外に思われるかもしないが、ロックならともかく、ヒンディー語で歌うメタル・バンドはまだ少ない。彼らはそこに挑戦し、このヒンディー・メタルをメイン・ストリームに押し上げようとしている。

WARWAN - ZANJEER | HINDI METAL | INDIAN BAND | OFFICIAL MUSIC VIDEO

オシャレで日本好き、KRAKEN

もうひとつ新しいところでは、ポスト・ハードコアとマス・ロックを融合したようなテクニカルでキャッチーなKRAKEN。

日本の音楽や映画が好きということで、確かに彼らの音楽性には日本の音楽からの影響がうかがえ、ミュージック・ビデオではメンバーが日本に訪れた時の映像や日本語も使用している。

現在のところ、インドにおいてはあまり類を見ないタイプといえるだろう。

KRAKEN -『Bouncy Bouncy Ooh Such A Good Time』

都内某所の有名な風景が。こうしてみると結構いい雰囲気になるのが不思議。映像のマジック?いや、音楽のマジックだ!

メタルでパロディ、BLOODYWOOD

毛色の変わったところでは、ボリウッド(ヒンディー映画)や海外でヒットしたポップ・ソング、さらには有名人や季節の祭事もゴリゴリのメタルで表現して茶化すパロディ・プロジェクト、BLOODYWOODも評判だ。

メタルって包容力あるんだなぁ……と、しみじみ思う。

METAL HOLI | Rang De Basanti | Bloodywood

例えばこの曲では、ボリウッドのヒット曲「Rang De Basanti」のメタル・アレンジでヒンドゥー教の春祭りホーリーを祝ってみちゃったり!

『仰天!インドのメタル・シーンの今 第3回』とへつづく。