仰天!インドのメタル・シーンの今 第3回

アジアのメタルシーン
実は人知れず伝統と革新を交えながら成長していたインドのメタル。そんな「今」、知っておくべき新世代のバンドたちを紹介していく。第3回はムンバイのバンドたち。ここからメタルの新時代を切り開くニュー・ヒーローが誕生するかもしれない。

ムンバイのメタル・バンド

西海岸に面するマハーラーシュトラ州の州都ムンバイは、人口の多さで世界第四位(2016年)であり、首都デリーと一二を争う巨大都市だ。

商業、金融、そして世界一の映画大国インドを担う映画産業「ボリウッド」(ムンバイの旧称ボンベイとハリウッドのもじり)の本拠地というのはあまりに有名。

世界で一番名の知れたインド・メタル、DEMONIC RESURRECTION

いち早く世界に打って出たことで、海外でもっとも名の通ったインドのメタル・バンドとなったDEMONIC RESURRECTION。

彼らの音楽は、数種の声色を駆使した唱法と、デス、ブラック、そしてパワー・メタルの要素を融合させた劇的さに特徴がある。

2017年のアルバム『Dashavatar』では、ヴィシュヌ神をテーマとして扱い、古典楽器を導入。インドのバンドならではのアイデンティティを強固に打ち出してさらなる注目を浴びている。

DEMONIC RESURRECTION - Matsya - The Fish (Official Lyric Video)

『Dashavatar』からシタールとタブラを導入した曲。

シタールを担当したのはRishabh Seen (MUTE THE SAINT)。

世界中からテクニシャンが集う、DEMONSTEALER

DemonstealerことSahil Makhija。彼はDEMONIC RESURRECTIONの中心人物であり、自己のスタジオで数多くのバンドの作品を手がけるほか、インド初となるメタル専門のインディー・レーベルを立ち上げたり、『Demonstealer's Indian Metal Podcast』で自国のバンドを紹介。さらに自身が料理しながらレシピを紹介する(ときにはミュージシャンを招いて手料理を振る舞う)オンライン・クッキング・ショー『Headbanger's Kitchen』を制作するなど、あらゆる手段を使いながら約20年に渡ってインドのシーンを活性化させてきた人物だ。

そんな彼が、メインとして行っているDEMONIC RESURRECTIONでは表現できないことを行うために始めたソロ・スタジオ・プロジェクトが、このDEMONSTEALERである。

ソロということでこじんまりしているかと思いきや、さにあらず。

2016年の『This Burden Is Mine』では、ドラマーにGeorge Kollias(NILE)を起用。

さらに今年発表された『The Last Reptilian Warrior』では、以下の腕利きミュージシャンがゲスト参加して世界中からマニアの注目を集めている。

ドラマー:
David Diepold (COGNIZANCE)
Romain Goulon (SPECTRAL、SPHERIC UNIVERSE EXPERIENCE、ex-NECROPHAGIST、ex-DISAVOWED)
Kerim Lechner (SEPTICFLESH、ex-DECAPITATED)
Daniel Presland (NE OBLIVISCARIS)
Kevin Paradis (BENIGHTED、MITHRIDATIC)

ベーシスト:
Arran McSporran (DE PROFUNDIS)
Stefano Franceschini (ABORTED、HIDEOUS DIVINITY)

ギタリスト:
Rami H. Mustafa (NERVECELL)
Soikot Sengupta (DE PROFUNDIS)
Mendel Bij De Leij (ABORTED)

DEMONSTEALER (feat Krimh, Stefano & Rami H. Mustafa) - Sculpting The Archetype

ドラマーにKerim Lechner (SEPTICFLESH、ex-DECAPITATED)、ベーシストにStefano Franceschini (ABORTED、HIDEOUS DIVINITY)、さらにギター・ソロでRami H. Mustafa (NERVECELL)が参加した曲。

宇宙的無限の可能性、AMOGH SYMPHONY

すでに超絶テクニカル・メタルを極めたAMOGH SYMPHONYは、既存の枠組みを超えるために、マルチな才能を持つ世界各国のマエストロたちを集めることでインターナショナルなメンバー構成となった。

彼らは、メタル、プログレ、ジャズ、アンビエント、民族音楽、アヴァンギャルドを通過して聴手のはるか先を突き進むエクスペリメンタルで芸術性の高い音楽を常に生み出し続けている。

これはもはや無限の宇宙だ。

AMOGH SYMPHONY - IV(Sampler II) 2018.

2018年に発表予定となっている4作目『IV』のサンプル。

AMOGH SYMPHONYの中心人物であるVishal J. Singh(インド)。そして、Andrey Sazonov(ロシア)、Derick Gomes(ポルトガル)、さらに2017年には、OBSCURA、NYN、DEFEATED SANITYなどでテクニカル・デス・メタル・ファンにはお馴染みのギタリスト、Tom Fountainhead Geldschläger (ドイツ)が加入。さらに、ゲスト・ドラマーとして、CYNICやDEATHで活躍し、現在はÆON SPOKE、PERFECT BEINGSのSean Reinertが参加。

この新たな布陣で挑む次なる境地。それは果たして……?

男のメタル、BHAYANAK MAUT

安定した人気と信頼を保っているのは、タフでグルーヴィなメタルコア・モンスター、BHAYANAK MAUT。

分厚いリフの壁をバックにツイン・ヴォーカルで煽りまくる彼らのライヴ・パフォーマンスはモッシュ必至。普段はおとなしい少年でもすぐにその場で男にしてくれる。

しかし、2017年後半にトレードマークだった2人のヴォーカリストが揃って脱退。残念ではあるが、バンドは活動を続行。ちょっとやそっとではびくともしそうにない奴らなので、さらに強靭な怪物となって戻ってくるその瞬間を待とう。

Bhayanak Maut - Ungentle (Live @ Independence Rock 2011)

スラッシャー、DEVOID、SCEPTRE、ZYGNEMA

スラッシュ系では、活動歴20年を迎えるベテランのSCEPTREを筆頭に、Metal Battle Indiaを勝ち抜き、インド代表としてWacken Open Airのステージに立ったDEVOIDやZYGNEMAといったバンドもいる。

DEVOID - Brahma Weapon (Official Music Video)

2005年に結成。2010年にファースト・アルバム『A God's Lie』を発表。

「Brahma Weapon」は2013年に発表された『The Invasion』EPからの曲。

SCEPTRE - Hate Infested (Official Video)

1998年から活動を続けるベテラン。これまでに1枚のEPと2枚のアルバムを発表。

このビデオクリップはセカンド・アルバム『Age Of Calamity』(2013)後の2015年に発表された曲。しばらくまとまった形での音源の発表はないが、バンドはライヴを続けながら順調に曲作りを行っている。

ZYGNEMA- "The Phoenix Effect" - OFFICIAL LYRIC VIDEO

2006年結成、アルバムは2枚。グルーヴを活かしたモダンなスラッシュということだが、PANTERAやMESHUGGAHからの影響が顕著だ。
バンドはWacken Open Air以外に、Inferno Metal Festival(ノルウェー)への出演経験もある。

PVになったこの曲は2015年に発表された『What Makes Us Human Is Obsolete』に収録。

ホラーメタル、ALBATROSS

流行りの音楽なんてどこ吹く風。
珍しいところでは、KING DIAMONDから影響を受けたホラー・メタルのALBATROSS。

すぐに映画化できそうなしっかりとしたストーリーでシアトリカルに展開していくアルバムを発表している。

Albatross- Jugglehead the Clown

アメリカンなノリの、OVERHUNG

珍しいといえば、70年代ハード・ロックからグラム・メタル/LAメタル風までこなすOVERHUNGもインドでは貴重な存在だ。

カナダのTest Your Metal Recordsと契約を交わしたので、今後はさらに注目を集めると思われる。

OVERHUNG (You Think You're So Cool LIVE footage from Harley Rock Riders)

深きヒンディー・プログレッシヴ・ロックの世界、COSHISH

他国から見た一般的なインドのバンドに期待するイメージを裏切らないのが、COSHISH。

バンドはまだ『Firdous』(2013)というアルバムを1枚発表したのみだが、インドならではの宗教/文化的コンセプトとメロディが満載のヒンディー語による渾身のプログレッシヴ・ロックだ。

バンドは2014年にRadiocity Freedom Awardsにて「Best Rock Band」を受賞。総合的に高く評価されていることが伺える。

COSHISH - Maya

デスメタル、GUTSLITとBIOPSY

デス・メタル。このジャンルも今後の成長が期待されるところ。

現在、ブルータル・デス・メタルとして名が通っているのは、ヨーロッパで最もブルータルなフェスティヴァルと呼ばれているドイツのDeath Feast Open Air 2017に出演した最注目のGUTSLITや、ゴアでシックな世界を演出する渋いBIOPSY。

GUTSLIT - Scaphism (Official Music Video)

ファースト・アルバムがCoyote Records(ロシア)やGhastly Music(日本)から発表になるなど、早くから注目されていた。

このPVは2017年に発表のセカンド・アルバム『Amputheatre』に収録されている。

BIOPSY - Hemolytic Crisis

2012年に結成。
『Fractals Of Derangement』EPを2015年に発表。
マッド・ドクターに拉致されて解剖されるが如きサージカル・ブルータリティが炸裂する。

インスト・プログ・メタル、THE MINERVA CONDUCT

さらに、GUTSLIT、DEMONIC RESURRECTION、ALBATROSSなどで演奏してきたメンバーたちが集まったプロジェクト、THE MINERVA CONDUCTというのもある。
音は意外にもアトモスフェリックでジェントなインストゥルメンタル・プログレッシヴ・メタル。

ちなみに2017年発表のデビュー・アルバムでは、Navene Koperweis(ENTHEOS、ex-ANIMAL AS LEADERS)がドラムを叩いているのも大きなポイントだ。

THE MINERVA CONDUCT (India) - Vile (Atmospheric Progressive Metal)

ハードロックのベテランは大人の貫禄、INDUS CREED

大御所にはINDUS CREEDというバンドもいる。

80年代中期からROCK MACHINEとして活動し、90年代にINDUS CREEDへと改名して1997年まで活躍したインドを代表するハード・ロック・バンド。

そんな彼らが2008年になって衝撃の再結成。2012年に発表した復活作『Evolve』では、タイトルが示すとおり、現代的にアップデートしつつプログレッシヴな雰囲気も漂わせる成熟した姿を見せている。

INDUS CREED - Fireflies (Official Music Video)

INDUS CREEDは決して過去のバンドではない。
進化を続けて今という時代を生き、大きな愛をもってすべてを包み込んでいるのだ。
年月を重ねなければできない音である。



『仰天!インドのメタル・シーンの今 第4回』へとつづく。