仰天!インドのメタル・シーンの今 第4回

アジアのメタルシーン
実は人知れず伝統と革新を交えながら成長していたインドのメタル。そんな「今」、知っておくべき新世代のバンドたちを紹介していく。第4回はバンガロールのバンドたち。ここからメタルの新時代を切り開くニュー・ヒーローが誕生するかもしれない。

バンガロールのメタル・バンド

南部の高地に位置するカルナータカ州の州都バンガロール(註1)は、世界中の大手IT企業が集まることで、「インドのシリコンバレー」と呼ばれていることは有名だ。まさに国際都市といった様相を呈しているが、それと同時にインド各地からも多くの人々が集まっており、ここ数年の人口増加率もきわめて高くなっている。

そんなバンガロールには、1986年から活動を始めたMILLENNIUMという古株のメタル・バンドがいるものの、残念ながら昨今はアルバム発表などの目立った活動はない。

そのかわり、新世紀の若手がしっかりとシーンを築いているので、Bangalore Open Airの存在も含めてインド国内では、ムンバイと並びロック/メタルが盛んに感じられる町だろう。

海外でも認められるオールドスクール・メタル、KRYPTOS

第1回にて紹介したKRYPTOSは、メタル大国ドイツのAFM Recordsと契約して4作目となるアルバム『Burn Up The Night』(2016年)を発表。

2017年にはWacken Open Airなどのフェスに参加しながら1ヶ月以上に渡ってドイツ、オランダ、オーストリアをツアーを行った。

もちろん、インド国内でも一目置かれる存在として確固たる地位を築いている。

KRYPTOS - Full Throttle (2016) // official clip // AFM Records

ポーザーはお断り。本物による本物のためのメタル空間を楽しんでくれ。

アルバム『Burn Up The Night』からのPV、「Full Throttle」。

数学的不整脈。プログレッシヴなエクストリーム・メタル、ECCENTRIC PENDULUM

国内のMetal Battle Indiaを勝ち抜き、2011年にインドのバンドとして初めてWacken Open Airのステージに立ったのが、このECCENTRIC PENDULUM。

2011年のファースト・フル・アルバム『Winding The Optics』も注目を集めたアルバムだったが、2017年の『Telurian Concepts』EPでは、ゲストに変態フレットレス・ベーシストとして名高いMichael Manringや、YAKUZA、BLOODIEST、CORRECTIONS HOUSEで活躍するBruce Lamontをサックス奏者として迎え、MESHUGGAH的なサウンドをよりエクスペリメンタルにしたような作風へと成長してきた。

ジャンルにこだわりのない彼らの創作するサウンドは予測不能。

ECCENTRIC PENDULUM - "Tellurian Concepts" feat. Michael Manring, Bruce Lamont, Tony Das & Sandesh Nagaraj

奇妙で退廃的な18分の大作!

インドの伝統とメタルコア、FINAL SURRENDER

メロディアスでプログレッシヴなメタルコア、FINAL SURRENDER。

2010年結成。これまで2枚のフル・アルバムを発表。彼らはクリスチャンであることから、アメリカのクリスチャン・レーベル、Rottweiler Recordsと契約した。

オーケストレーションだけでなく、インドの伝統をさり気なくミックスさせて独自の世界観を演出するのがこのバンドの特徴。

FINAL SURRENDER - Refresh (Official) Music Video

踊って演奏してサークル・モッシュして……町なかの一角で何してんのこの人たち?っていう混沌がインド。

でも、ダサかっこいいんだな、これが!

デスラッシャー、INNER SANCTUM

スラッシュ系では、楽曲の質、人気ともに高く、活動歴10年を越えた中堅のデスラッシュ、INNER SANCTUMの存在が光っている。

2015年のアルバム『Legions Awake』は、ALESTORMやGLORYHAMMERなどの作品を手がけてきたLasse Lammertがプロデュースからエンジニアまで務めているので品質は確かだ。

INNER SANCTUM - Wake of Destruction (Official Lyric Video)

渋いドゥーム・メタル、BEVAR SEAとDJINN & MISKATONIC

インドではまだ数少ないドゥーム・メタル系として気を吐くBEVAR SEAやDJINN & MISKATONIC。

彼らの音楽が流れば空間は一気にスモーキー。デロ〜ンって合法的にキマっちゃう。

このバンドたちがいることで、バンガロールはインドにおけるドゥーム・メタルの拠点という見方をされることもある。

BEVAR SEA - Mono Gnome [album single]

この曲はBEVAR SEAのデビュー・アルバム『Bevar Sea』(2012年)から。

彼らは2015年にセカンド・アルバム『Invoke The Bizzare』をしている。

DJINN & MISKATONIC - Frost And Steel

2018年に発表されたセカンド・アルバム『Even Gods Must Die』から一番短い曲。

アングラ界の影の功労者、DYING EMBRACEとGRUESOME MALADY

さらにアンダーグラウンドなところでは、90年代から断続的に活動しているデス/ドゥーム・メタルのDYING EMBRACEやゴアグラインドのGRUESOME MALADYの存在も重要だ。

彼らは決してメジャー・シーンには浮上しないものの、早くから海外のデス・メタル・マニアの間では知られていた。両バンドとも、音楽性はマニアックで万人受けは難しいが、長年に渡ってエクストリーム・シーンを根底から支えてきた忘れてはならないバンドたちである。

GRUESOME MALADY ~ With Dawn Came The Stench (New Track 2017)

GRUESOME MALADYによる2017年の新曲……ということだけど、もう発表した瞬間から完全腐敗。

水没/水責めヴォーカルも彼らのトレードマーク。ゴボゴボッ……

DYING EMBRACE Live@Kyra_Theater_2011_Track 7_"Oremus Diabolum"

2011年再結成時のライヴ映像。

新人でもヘヴィ・メタル・マニアック、SPEEDTRIP

一方、新人に目を向ければ、2015年結成のSPEEDTRIPがいる。

まだアルバム1枚しか発表していないが、80年代のメタル・スピリットとワイルドさを継承する頼もしい存在だ。

SPEEDTRIP - House of Horrors (Lyrics Video)

2017年発表のデビュー・アルバム『Trapped In A Maze』からの曲。

インドへしか開かないどこでもドア、プログレッシヴなAGAM

しかし、最もインドらしさを感じられるのは、南インドの文化や古典音楽であるカルナータカ音楽を大胆に導入したプログレッシヴ・ロックのAGAM。

彼らの紡ぐ音は聴くだけで鼻腔をくすぐる神秘的なお香の香りが漂い、あなたがいつどこにいようとも、印度のマジカルな世界にトリップしてしまう。

Onwards and Upwards ( Subrahmanyena ) | Agam | A Dream To Remember | Music Video

フォーキー・グルーヴ・メタル、THE DOWN TRODDENCE

その他、南西部のケーララ州カンヌール出身で、現在はバンガロールに活動拠点を移したTHE DOWN TRODDENCEも素晴らしい。

彼らはプログレッシヴなメタルコアに出身地の伝統文化を取り入れており、南インドならではの雰囲気を堪能させてくれる。

THE DOWN TRODDENCE - Nagavalli ( Lyric Video By Riaz Hassan )




『仰天!インドのメタル・シーンの今 第5回』へとつづく。