アジア金属マル秘発掘報告 〜マレーシア|SHAMASH〜

アジアのメタルシーン
埋もれた秘宝を発見せよ!世界各地にはまだまだ知られざるバンドがうごめいている。ここではアジア圏に的を絞って探りをいれて掘り起こし、簡単な調査報告をしていく。その価値は未知数。
今回は、マレーシアのクリスチャン・メタルSHAMASH。
金属名:SHAMASH
産出地:クアラ・ルンプール
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2020年11月13日金曜日。突如としてマレーシアからSHAMASHなるメタル・バンドが登場し、『Suffering Servant』なるEPを世に送り出した。

そのEPは彼らにとってのデビュー作であり、CDはアメリカのRottweiler Recordsからのリリースとなった。インディアナ州フォートウェインに居を構えるこのレーベルは、ホラー・パンク・バンドGRAVE ROBBERShawn Browningが立ち上げたもので、クリスチャン・メタル・レーベルとして知られている。

ということは、このマレーシアのSHAMASHもクリスチャン系であることは想像に難くない。もちろん、マレーシアは多民族国家で信教の自由も認められていることから、何を信仰していても不思議はないのだが、国民の大多数はイスラム教徒であり、なおかつメタル・バンドで活動するキリスト教徒となるとやはり物珍しい部類に入るだろう。参考までに、外務省が発表しているデータ(令和2年3月23日付)を示すと、イスラム教が61%、仏教が20%、キリスト教は9%となっている。

さらにメンバーの名前に目を通してみれば、マレー・ロック/メタル界で20年、30年と活動してきた経験豊富なミュージシャンたちであることが発覚。どうやらSHAMASHを新人として見るわけにはいかないようだ。

2020年11月現在、SHAMASHのメンバーは以下の通り。

・André Chiang
・Alexaander Joseph Martin
・Darren Teh


今回は、イスラム教が国教であるマレーシアで新たに結成されたクリスチャン・メタルSHAMASHに関して、バンドの創設者で主軸となるAndré Chiangの話を伺うことにする。

同じ教会に通う仲間と、それは突然に始まった

SHAMASHは今年デビューしたバンドとは言えども、熟達したミュージシャンの集まり。各々がそれぞれのバンドで活動してきた。特に今回話す機会を頂けたAndréNECROMANICIDEというデス/スラッシュ・メタル系のエクストリーム・メタル・バンドで90年代初頭からシーンにいる人物だ。

どのような繋がりや経緯があってSHAMASHを開始することになったのだろうか。


André:そうだね、みんな違うバンドから集まったことは事実だけど、本当はみんな同じ教会に通っていた仲間なんだ。Darrenが最初にARMY OF THREEというバンドに参加していた10代の頃から知っていた。ベースの弦を交換するために俺の店に来た客として知り合い、友達になったのさ。Alexとは一緒に奉仕している教会とは別のところで知っていた。もっと言うと、兄弟のような存在で、俺たちは多くの事柄について同じビジョンを持っている。彼は“仕える”というシャマシュ(shamash)のビジョンとペルソナを体現しているんだ。このシャマシュというのは、ユダヤ教のメノーラー(メノラーとも表記される)という枝分かれした燭台の中央上部にある点火用の下僕のロウソクのこと。そして、このプロジェクトは俺がNECROMANICIDEで取り組んでいたオリジナルの素材を考察していた5月に実現した。今、このNECROMANICIDEは無期限に休止している状態。結局、NECROMANICIDEにとっては命取りになってしまったプロジェクトだけれども、SHAMASHは1カ月もしないうちにRottweiler Recordsと契約を結ぶことができたんだ。


異なったのバンドからの集合体のように見えたSHAMASHだったが、実は全員が同じ教会に通う仲間であるという共通点が判明した。

話を聞く限り、このプロジェクトは何かに導かれるかのように始まり、トントン拍子で進んでいるように見える。

クリスチャンとしてポジティヴなメッセージを届ける

現在、バンド・メンバーとして正式にクレジットされているのは、André Chiangのほか、クリスチャン・モダン・メタルARMY OF THREEAlexaander Joseph Martin、ポップ・パンクAN HONEST MISTAKEDarren Tehという3名。なお、DarrenはかつてARMY OF THREEにも在籍していたことがある。

しかし彼らは各々のバンドにおいてギターやヴォーカルを務めていることが多い。今回のデビューEPでは誰がどのような役割を担当したのだろうか。メンバー紹介を兼ねて話してもらうことにした。


André:最初は俺ひとりのワンマン・バンドとしてSHAMASHはスタートした。でも、プロジェクトが大きくなるにつれ、ラインアップも増えていき、今では俺とDarrenAlexのトリオ編成のバンドになった。でも、GLOW IN THE DARKというバンドのSteven Thangというギタリストがいて、ローテーションで参加してもらっているんだ。このプロジェクトでは、俺がメイン・ヴォーカルを務めている。だから、自分が歌っていた昔のNECROMANICIDEにちょっと似ているように聞こえるかもしれないね。そして俺が中心人物なんだけど、AlexDarrenは対等なパートナー。だから彼らのフィードバックをとても大切にしている。Alexはスピリチュアルな面で非常に強く、Darrenはマーケティングやプロダクションの技術的なことに関してはまさに達人だ。さらに、二人とも素晴らしいミュージシャンで、素晴らしいソングライターでもある。何よりも、彼らは自分たちのやることを愛している心優しい人たちだと言わなければならない。このバンドはメタルという音楽を愛しながらも、聖書のポジティヴなメッセージやイエス・キリストの教えを聞く必要がある人たちへの、一種のサービスの形として存在しているんだよ。メンバーは皆、献身的なクリスチャンであり、このバンドは俺たちが奉仕するための手段であり、表現する場でもある。このSHAMASHでは、俺が歌ってギターを弾き、Alexがギターとバックアップ・ヴォーカルを担当、Darrenはベースとバックアップ・ヴォーカル。それと現段階ではドラムはプログラムで、俺が手掛けたんだ。


思い起こせばAndréNECROMANICIDEが活発に活動していた90年代、彼らは“ポジティヴ・メタル”と呼ばれていた。バンドやメンバーが変化しても、あの頃からクリスチャンとしてポジティヴなメッセージを人々に伝えようとする姿勢は一貫して変わらないことがわかる。

ところで、前項でAndréが語ったように、バンド名のSHAMASHはユダヤ教のシンボルともなっているメノーラーの一部である。彼はどのような信仰をしているのかが気になった。

André:俺はメシアニックなんだ。ユダヤの習わしを持つクリスチャンだね。
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左からAlexaander Joseph Martin、André Chiang、Darren Teh

パッションや熱意を灯す役割を担う者、SHAMASH

最初の返答でAndréがバンド名についても軽く言及しているが、今一度、それがバンドにとってどのような意味を持つのかを尋ねてみた。


André:ユダヤ教の宗教的な枝分かれした燭台は“メノーラー”といって、神の民と教会を象徴している。そしてその中心部分のロウソクは“シャマシュ”と呼ばれているんだ。そのロウソクを使って他のロウソクに火を灯す。これがシャマシュの使命。俺たちは他の人々にパッションや熱意を灯すため、そして仕えるために存在している。つまり、我々はあなた方に奉仕するために存在しているということ。シャマシュはヘブライ語なんだけど、俺はヘブライ語とユダヤ文化が特に好きなんだ。多くの時間をかけて勉強してきたよ。​ユダヤ人はたくましい民族だ。​俺たちは彼らから学ぶことがたくさんある。​バンドのロゴにはSHAMASHという文字があり、Mの上を見るとヘブライ語でも書かれているんだよ。


彼の言う“パッション”は特に強調されていなかったけれども、いわゆる“受難”由来の意味合いも含まれていると思われる。
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よく見るとロゴ中央のMの上にヘブライ語でשמשと小さく書かれているのがわかる。

グレゴリオ聖歌の要素も併せ持つメタル

これまでの話でSHAMASHというバンドがどのような意義を持って存在しているのかが見えてきた。しかし、少し疑問に思うことは音楽性だ。

Alexはモダンなメタル・バンドARMY OF THREEDarrenも同様にかつてはARMY OF THREEにも在籍していたが、現在はポップ・パンクのAN HONEST MISTAKEだ。そして中心人物のAndréが少し前まで活動していたのはNECROMANICIDEというデス/スラッシュ・メタル系のバンド。彼らが演奏してきたジャンルにはばらつきが見られる。

けれども、そんなメンバーが集結したSHAMASHのデビュー作『Suffering Servant』を聴く限り、グロウルが所々に使用されてはいてもシンフォニック色と堂々たるコーラスが特徴のパワー・メタルの比重が大きく、1曲のみ、デス/ブラックの要素が強く押し出されているというもの。一体彼らはどのような方向性を狙っているのだろうか。


André:AlexDarrenARMY OF THREEというメタル・バンドに所属していた。だから、彼らはこの手のジャンルをよく知っているんだ。ビートダウン/ブレイクダウンといった新しい手法をまだ良く理解していない俺なんかよりもメタルのスタイルについて最新の知識を持っている。実際、二人はそういったことを理解しているから、俺は彼らから多くのことを学んでいるのさ。バンドの音楽性を説明すると、SHAMASHはメタル・バンドということになる。パワー・メタル、ブラック・メタル、デス・メタル、そしてグレゴリオ聖歌の要素も取り入れた幅広いメタル・バンド。ヘヴィでメロディアスな音楽を一つの流れの中にうまく融合させることをコンセプトにしている。


彼はグレゴリオ聖歌に限定するわけではなく、正統派のコーラルやラテン語のアリアなども好きということなので、注意深く聴くとクリーン・ヴォーカルのコーラス・パートなどに神聖で壮麗な雰囲気が醸し出されていることに気づく。

今後、それがより強力な持ち味になるならば、あのMORTIFICATION(オーストラリア)のCDが大型スーパーマーケットや書店のゴスペル・コーナーに並んだように、SHAMASHもメタルという範疇に限らない展開が期待できるかもしれない。

SHAMASH「Suffering Servant 」

では、SHAMASHの音楽が形成される過程でなにか手本としたバンドやアーティストはいたのだろうか。


André:俺はMORTIFICATIONBELIEVERTOURNIQUETCARCASSSTRYPERなどのバンドから大きな影響を受けて育った。このEPからはそんな彼らからの影響を感じ取ることができるはず。だから音楽的には今挙げたバンドたちを尊敬している。けれども、MORTIFICATIONSteve Roweのような模範となる人たちを見習ったことが、本当の意味で影響を受けたことだと俺は言わざるを得ない。彼はあらゆる種類の癌や病に冒され続けたのにもかかわらず、粘り強く作品を発表した。それは自分の音楽が聖書のポジティブなメッセージを聞く必要のある人々に手を差し伸べ、影響を与える可能性があることに気付いたからこそなんだ。俺にとって彼こそが真の英雄であり、尊敬している人物。俺の昔のバンドNECROMANICIDEは彼が作った曲にちなんで名づけたのさ。


やはり、彼はバンド活動を始めた90年代初頭からクリスチャン・メタルを中心に影響を受けていた。しかも、もっとも感銘を受けたのが、クリスチャン・デス/スラッシュ・メタルとして著名なMORTIFICATION(オーストラリア)のSteve Rowe(ヴォーカル/ベース)だという。彼は1996年に白血病に罹ってから癌にも冒されて一時は死の淵をさまよったこともある。その後見事に癌を克服するのだが下半身の麻痺や視力の低下などに苛まれてしまった。それでもSteve Roweはメタル宣教師としての活動をやめることなく、バンドを通じても情熱に溢れたキリスト教信仰を続けたのだ。この話の詳細が気になる方は彼の伝記『Metal Missionary: The Steve Rowe Story』Vic Campbell著)を参考にするのも良いだろう。

話を戻そう。デビュー作『Suffering Servant』を聴けば、彼が影響を受けたバンドの雰囲気も感じられるということは、やはりこのバンドで作曲を手掛けているのはAndréということになるのか。


André:『Suffering Servant』では、自分がほとんどの曲を書いたけれど、次のアルバムでは3人全員がチームとして書いている。そして、よりヘヴィになるよ。

Rottweiler Recordsとの契約

今年(2020年)5月に突如思いついたSHAMASHプロジェクトはあっという間に展開、成長し、そのわずか数カ月後の11月13日に発表された『Suffering Servant』EPは、アメリカのクリスチャン・メタル・レーベルRottweiler RecordsからCDとしてリリースされることとなった。


André:自分たちが何者であるかによって、そこに所属することになったんだ。俺たちはクリスチャン・メタル・バンドなんだからね。Rottweiler Recordsは一流のバンドが所属する素晴らしいレーベルだよ。だから彼らが俺たちをその一員にしようと考えていることには驚かされた。でも、ついにはこのレーベルを家族と呼ぶようになったんだ。この数ヶ月間、アーティストとして、そしてチームの一員として素晴らしい経験をしてきた。たくさんの友人ができたし、あえて言うならば、新しい“家族”ができたんだ。彼らはしっかりしたビジョンを持ったタイトなチームだ。契約したいと思う場所は、ほかに思いつかないな。オーナーのShawnは凄い人で、バンドにとっては素晴らしい兄弟だ。俺たちは彼と彼のリーダーシップが大好きなのさ。レーベルに所属しているバンドをチェックすることを本当にお勧めするよ。SYMPHONY OF HEAVENBROTALITYR.A.I.D.、TAKING THE HEAD OF GOLIATHのような本当に素晴らしいアーティストがいるんだ。彼らはすべてクリスチャン・メタル業界では巨人だからね。

神、聖書、イエス、愛と贖い。『Suffering Servant』EP

おおよそバンドの方向性が把握できたと思う。ここでは、あと一歩踏み込むために『Suffering Servant』EPで扱っているテーマを簡潔に教えてもらうことにする。詳細に関しては聖書に目を通していただくのが良いだろう。


André:このEPは一人称視点で書かれていて、作品に共通するテーマは、神、聖書、イエス、愛と贖い(あがない)だ。1曲目「For Unto Us」は、キリストの誕生について語るクリスマスのような歌。2曲目「At The Throne」は、俺のお気に入りの曲で、最後の審判の日に神の玉座へと近づく人の視点で語られている。3曲目「Spiritus Sanctus」は、福音を宣べ伝えよというイエスの戒めと聖霊によって力が与えられることについて。4曲目「Suffering Servant」は、救済と贖いについての考えを問いかけている。5曲目「The View Inside My Soul」は、話した言葉、それがどのように人を傷つけてしまうのかについて。

光の担い手を目指して。『Suffering Servant』のアートワーク

歌詞の内容となると、ある程度は聖書に触れたことがなければその詳細は把握しづらいかもしれない。しかし、彼らの目指すところや言いたいことはEPのアートワークにも端的に描かれているはずだ。


André:“Suffering Servant”とは聖書のイザヤ書53章に基づいているんだ。そこでは、イエスが人類のために苦しみながら贖われたことについて語られている。イエスは十字架に磔になって死ぬことで、罪の贖いというユダヤ教の律法を全うした。これはイエスが経験しなければならなかった残酷な現実だった。アートワークはアルゼンチンのブエノスアイレスにあるFrack StudiosJoel Ignacioが描いてくれたもの。そこでは、暗い世界に福音のメッセージを象徴的に伝えているボロを着た人がいる。このイメージはバンドの使命を表しているんだ。世界は暗闇の中にあり、俺たちは光を運ぶ者になることを望んでいるということ。
SHAMASH『Suffering Servant』

SHAMASH『Suffering Servant』

01.For Unto Us
02.At The Throne
03.Spiritus Sanctus
04.Suffering Servant
05.The View In My Soul

プロジェクトからメインのバンドへ

NECROMANICIDEから派生し、同じ教会へ通う仲間を引き入れながら発展してきたSHAMASH。先程の話によれば、「次のアルバムはよりヘヴィになる」ということも言っていたので、順調に歩みを進めているように見える。今後の計画はすでにある程度決まっているのだろうか。


André:もちろん今後も続けていく。SHAMASHは俺のメイン・バンドなんだ。たくさんの計画があるよ。Rottweiler Recordsはとても良くサポートしてくれているし、彼らがやっていることが大好きなんだ。2021年頃にはもっと多くの素材をリリースする予定でいる。


AndréSHAMASHをメイン・バンドに据え、今後もアルバムをリリースする意思があることがはっきりした。しかし、それとは別に今後は、スラッシュ・メタルのプロジェクトも計画しているということも小耳に挟んでいる。あらゆる方面での精力的な活動が期待できそうだ。

クリスチャン・メタルのパイオニアNECROMANICIDE

敬愛するMORTIFICATIONの2ndアルバム『Scrolls Of The Megilloth』(1992)に集録されている曲名を自らのバンド名に冠して90年代初頭から活動していたAndréNECROMANICIDE

主な作品は、以下。

1995年、『The Underground Scene』スプリット・アルバムに参加。
STOMPIN’ GROUNDOPPOSITION PARTYといったシンガポールの伝説的ハードコア、パンク系のバンドと共に集録されていた。

1998年、初のフルレンス・アルバム『Hate Regime』

90年代中期まではデス/スラッシュ・メタル路線。90年代後期になると、そこにインダストリアル・メタル/メタルコアなどの要素が入り混じったスタイルとなる。

NECROMANICIDE「Society」

アルバム『Hate Regime』より。
どちらの作品も当時マレーシアにあったポニーキャニオン(PonyCanyon Entertainment (M) Sdn. Bhd.)からリリースされた。大手レーベルということで流通も良く、比較的目に留まりやすいバンドのひとつだったように思うが、その後、André以外のメンバーがアメリカやイギリスへ渡ったことで2000年に解散してしまった。

けれども、約20年近い歳月を経た2016年頃から再び彼らは動き出す。AndréJeretを中心にDavidという新たなメンバーを含めたトリオ編成。どうやら2ndアルバム『Vengeance Eternal』の発表を目標に楽曲を制作し始めたようで、2017年に「Feed The Mold」、2018年に「New」、2019年に「Attrition」とシングルを発表した。

月日が流れて時代が移り変わったからだろうか、それとも新メンバーの影響か、ずいぶんと現代的なスタイルへと変化を遂げた。特に「New」は同じバンドとは思えないほどプログレッシヴ。

NECROMANICIDE「New」

このまま新生NECROMANICIDEの新作が聞けるのかと思っていたが、冒頭でAndréが語ったようにNECROMANICIDEは現在活動をしていない。


André:そう、無期限に活動休止中なんだ。NECROMANICIDENicholas Leeと俺で1991年に結成したバンドなんだけど、すぐにJeretAdrianStefanが加入した。実はNECROMANICIDEはアジアで最初のクリスチャン・メタル・バンドだった。その後にKEKAL(インドネシア)やBEALIAH(インドネシア)のようなバンドが続いたんだ。でも、間違いなくこのジャンルのパイオニアだよ。当時マレーシアにオフィスを持っていたポニーキャニオンに拾われたのは幸運だったね。ドラマーのJeretとベーシストのDavidは今、TRANSFIXという新しいプロジェクトに取り組んでいる。これは非常にクールなプログレッシヴ・ロック/メタルだ。NECROMANICIDEで発表したシングル「New」と似たような流れにある。本当にクールだからチェックしてみて。ただ、その一方で、俺はNECROMANICIDEを結成した時に考えていたデス・メタルという原点に立ち返るのは良いアイデアなんじゃないかと感じていたのさ。パワー・メタルとブラック・メタルの影響を受けて​サウンドを少しアップデートしたけど、たぶん、SHAMASH『Suffering Servant』NECROMANICIDE『Hate Regime』の間にある繋がりをわかってもらえると思う。なにしろ俺が両方のバンドで作曲とヴォーカルを務めているんだからね。

TRANSFIX「On Earth」

『In Terra』EP(2020)より

神のお告げ

東南アジアのメタル史においても重要な位置にあったNECROMANICIDE。そのバンドを置き去りにしてまでSHAMASHにかけるのはどうしてだろうか。両立させるわけにはいかないのか。また、いつの日か復活する可能性はないのだろうか。


André:事と次第によっては戻ってくることもあるかもしれないけど。でも、とにかく今のところは、SHAMASHへのお告げがあったと感じていて、これこそが、神が俺に望んでいることなんだと信じている。だから今はSHAMASHに100%集中しているんだ。


実は以前彼に話を聞いたとき、「NECROMANICIDEの新しいシングルは、TRANSFIXへ移行していったメンバーが望んでいた方向性。だからTRANSFIXにも似ているじゃないかな。でも俺はNECROMANICIDEが本来持っていたデス・メタル、そしてメロディアスなスタイルへと回帰したかった。それでSHAMASHを始めたんだよ」と話してくれた。

新生NECROMANICIDEの方向性による問題で分裂したというこの話も事実。けれどもその深層では神の意志が働いていたということだ。

ひとつのバンドが保留されたことで新しいバンドが生まれた。すべてはTRANSFIXSHAMASHへと続く道であったということか。であるならば、NECROMANICIDEはまさに“一粒の麦”だったと言えよう。

ともかく、AndréにとってSHAMASHは“神のみこころ”であり“天職”であると感じ取った。そう、“召命”されたからには“使命”として応えるのは至極当然なのだ。これからも彼らは必要としている人々に必要としているものを届けていくのだろう。

今、我々は、マレーシアに新たなメタル宣教師誕生の瞬間を目撃したのである。